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妹さん来訪~何で俺?~
しおりを挟む「ふぁあ、何だねミラ。私は眠い」
「見合い断ってたのってお兄様人間を囲ってからなのですか!」
オルフェウスさんは欠伸をして裸のまま少女を見ている。
「それと裸のままなのもいい加減にしてください」
「仕方ない」
オルフェウスさんはばっと着替え、パリッとしたスーツに身を包んだ。
「私の可愛い妹ミラ、何の用だね」
「お兄様がお見合い拒否しててお父様達カンカンですよ!」
「知らないね、会社をこれ以上大きくするなんて欲がすぎてる」
「では、この人間は?」
「吸血鬼の若造の暴漢に襲われていたのを助けて、会社を頑張ってたのにリストラされてたところを拾ったのだよ」
「この国はブラック企業が多いですものね……じゃなくて! そんなことしていいんですか!」
「いいとも、クロスブラッドは吸血鬼達にとっては保護存在だろう?」
「クロスブラッド⁈ こんな平凡顔が⁈」
平凡面で悪かったね!
「ミラ、少しはその口を慎み給え、言っていいことと悪い事がある」
「ご、ごめんなさい、お兄様」
オルフェウスさんが俺の代わりに怒ってくれたので溜飲は下がった。
「そ、それなら吸血鬼の会議に出て報告をしないと……」
「クロスブラッドの取り合いになる、無駄なことはしない」
「いいんですか、お兄様……」
「私は彼が気に入っていてね、だから余所にとられるのはごめんなのだよ」
「お兄様……」
「分かったらミラ、このことは内密に」
「は、はい、お兄様」
少女──ミラは出て行った。
「全く、ミラの突然の訪問癖には困ったものだ」
「そうなんですか?」
「ああ、決まって男と寝ている時に突撃してくる」
「……」
俺以外の男とも寝てるんですね……
思わず俺は複雑な表情をした。
「そんな顔をしなくても良いとも、今は君以外とは寝ていないからね」
「そうですか……」
何故か喜んでしまう自分がいる。
何でだ⁈
「さてと」
オルフェウスさんが扉を締めて鍵をかける。
「君の血を少し拝借したいのだが良いかな」
「まぁ、別に良いですけど」
首を見せると首を隠された。
「首だと血を吸いすぎるかもしれないので、手をだしてくれないかね?」
「は、はあ……」
手を出すと、オルフェウスさんは指をすっと撫でた。
ぷつっと血が出てくる。
オルフェウスさんはそれを指を舐るように血を飲んだ。
エロいと思った。
「ふぅ、さすがクロスブラッド、今までの生活習慣がアレでも、血は極上だ」
「今までの生活習慣がアレですみませんね」
俺はむっとする。
好きでそう言う生活してたわけじゃないっての。
元勤め先に言ってくれ。
「元の勤め先が悪かったのだ、仕方あるまい」
この吸血鬼の考え全然わかんないなぁ。
俺をむっとさせたと思えば、そうじゃなくさせたり、わかんないなぁ。
「さて、食事にしよう。妹が何か言ってるかもしれないから今日は家の中でにしよう」
「あ、はい」
オルフェウスさんがスマホで何か連絡する。
しばらくすると、オルフェウスさんに連絡が来た。
オルフェウスさんは立ち上がり、手招きをする。
俺は黙って後をついて行く。
食堂のテーブルには和食が並んでいた。
創作和食っぽいのも並んでいる。
何よりも炊きたての白いご飯の匂いが食欲をそそった。
「では食べることにしようか」
「は、はい」
椅子に座り、俺は手を合わせる。
「いただきます」
何か分からないが魚の味噌煮は上手かった。
味噌汁は豆腐とわかめのだったが出汁をしっかりとっていて上手かった。
たくあんも良い歯ごたえと味で美味かった。
他にもまあ色々あったが全部残さず食べきるというのは俺の胃袋では無理だった。
「すみません、もう無理です」
「いや、君の食べる量を少し多く見積もりすぎた私が悪い、すまないが残りは下げてくれ」
「はい」
腹が一杯になり、歯磨きをさせてもらって部屋に横になる。
しばらくは、スマホのゲームをやってのんびりしていた、俺は。
オルフェウスさんは本を読んでいた。
二時間くらい経過したところでオルフェウスさんが俺をベッドに引きずっていった。
「ちょちょ、何なんですか⁈」
「今なら『運動』をしても良いだろう? 満腹で『運動』して吐いたら大変だからねぇ」
そういってオルフェウスさんは服を脱ぎだした。
「ちょ、ま、アー‼」
はい、喰われました。
騎乗位で乗っかられて襲われました。
逆レもいい加減にしてほしいけど、俺何か言える立場じゃないし、どうしよう。
搾り取られて、オルフェウスさんはつやつや。
この吸血鬼、実は淫魔じゃないのか?
と思ってしまうが言わないでおく。
言ったら怖いし。
裸で寝ているオルフェウスさんを見て、俺はため息をついて寝ることにした。
会社を理不尽な理由でクビにされ。
吸血鬼の暴漢共に襲われ、俺の人生終わりかと思ったら。
この吸血鬼に拾われて養われている。
俺のどこが良かったのだろう?
やっぱりクロスブラッド?
もんもんとしながら俺はなんとか眠りに落ちた──
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