吸血鬼のヒモになりまして

琴葉悠

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色んな意味で気に入られ

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「……」
 いつの間にか寝ていたようだ。
 横を見ると裸のオルフェウスさんが俺と同じ毛布で体を覆って眠っている。
 俺の体を抱きしめて。

 起きれない。

 どうしよう。
「……」

 そう思っているとオルフェウスさんが目を覚ました。
「ああ、よく寝た。実にいい抱き枕だ」
「そうですか……」
「冗談だよ」
 オルフェウスさんはいたずらっ子のように笑った。

「さて、君には何をしてもらおうか?」
「えっと俺、会社で色々やらされてたんで……」
「ふむ、ならばしばし休養が必要だな」
「はい?」
「君はブラック企業で酷使され、捨てられた。ならば必要なのは休養だ」
「……俺、どっか悪いんですかね?」
「一週間くらいは何もせず休みたまえ」
「え⁈ いいんですか?」
「勿論だとも、その間は抱き枕になってもらうよ」
「オウフ」
 なんとも言えない顔をする俺を見て、オルフェウルさんはまた笑った。


「まぁ、しばらくは休み給え、私も君に会わせて休ませて貰うとしよう」
「え。大丈夫なんですか」
「優秀な部下達から連絡が毎時間のように届く、だから場合によっては会社に行く」
「そうですか……」
「まぁ、その部下達に休めと言われたから休む事にしたのだがね」
「え?」

 俺はきょとんとする。

「私もワーカーホリックでね、君を拾ってからそのことも含めて話したところ『何やってんですか社長!』『そんなことするなんて疲れてるんですよ、休んでください!』と言われてね、失礼な」
「俺を拾った事ですか……」
「ああ『犬猫じゃないんですから!』とも言われたよ」
「犬猫……」
 確かに、俺は大の大人だ。
 社会人だ、リストラされたけど。
 吸血鬼達に襲われてたからといって拾ってきて良いものなのかと聞かれたら俺も疑問に思う。
「……」
「君も思うところはあるだろうが、私はそんな君を気に入っている、光彦」
 オルフェウスさんは服に着替えながら言う。
「はぁ……」
「では、食事と行こうか、何も食べてないだろう?」
「あ……」
 意識するとぐう~と腹が鳴った。
 そうだ何も食べてない!
 おいてあったクッキーも食べて良いか分からないから喰わなかった!
 社畜時代の名残で飯を食わなくても動けるようになってるから。

 悲しい習性だ……

「一日食べずに居たのだろう? 用意した菓子や冷蔵庫の食事にも手をださなかった」
「何というか食べていいか分からなかったので」
「美徳かもしれないがあまり良い傾向ではないね、さぁこちらに」

 オルフェウスさんに手を引かれた。
 そこは食堂があり、テーブルには胃袋に優しそうな料理ばかりならんでいた。

「これは……」
「君の食事だ、胃が弱ってるかもしれないからね」
「お気遣い有り難うございます」
「いやいや君が寝ている間にちょっと血を頂戴させてもらったからね」

 うおおい!
 勝手に吸血されてたよ!
 でも、俺今立場ないしなぁ、怒れない……

「……あんまりそういうことしないで下さいね、血なら欲しい時差し上げますので……」
「おや、怒らないのだね」
「今の俺の立場、めっちゃ弱いので」
「君は確かに賢いね、でも怒ってもいいんだよ」
「はぁ……」
 なんか調子狂うなぁ……

 とりあえず、朝食はいただいた。
 オルフェウスさんは高そうなワインを口にしていた、一杯だけ。

「さて、今日はどうしようか」
「はぁ……」
「君は、気持ちよいことに興味はあるかね」
「そりゃあありますよ」

 男だし。

 しかし、何だろう、今は答えをミスった気がする。

「それはちょうど良い」
 オルフェウスさんはにたりと笑った。
 そしてずるりと服を脱いだ。
「ちょ、何してるんですか⁈」
 慌てる俺、目を隠す。

 そのままベッドに押し倒され──




「──まさか、童貞をこんな形で失うとは」
「おや、童貞だったのかい。そんな風には思えない腰使いだったよ」
「あんまり嬉しくないです」
「褒めてるのに」
 はい、喰われました。
 いや、襲われた?

 どっちでも同じだよな、うん。

 と言うか比べたと無いけどこの吸血鬼フェラ上手だし、準備もできてるしで初めてだったけど気持ち良くなれたというのは嘘ではない。

「確かに気持ち良かったけど、人様には言えないー」
「うむ、それは分かる」
「じゃあ何でしたんですか⁈」

 ベッドの上で裸のままの俺が言うとオルフェウスさんは笑った。

「言っただろう、君を気に入っていると」
 こういう意味でもきにいられてたとは。
 かーちゃん、とーちゃん、なんかごめん。

「さて、運動もしたし、一眠りしようか」
「え、ちょ」
 また、抱き枕にされる。

 若干生殺し感を感じながら、俺はオルフェウスさんの抱き枕にさせられた。

 オルフェウスさんは、幸せそうな寝顔で眠っている。
 俺はどうしたらいいんだ、これから──





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