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半吸血鬼の彼氏から見て
顔合わせ~君が愛しい~
しおりを挟むしばらくの間平穏が続いた。
私はマナと付き合いながら、学業にいそしむ日々を送っていた。
他人には言えないが性行為もわりと行っていた。
かなりの回数マナにねだって、そして行うのが常だった。
あの女は退学になったそうだ、両親はそんな事をさせるために大学に入れたんじゃ無いと叱りつけたとかまぁ、両親がまともならいい。
ただ、まだ実家に戻ってないので、あの女が何かしてこないか気が気で無い。
そして、ついに私と私の両親、マナとマナの両親が対面する日になった。
あれほど自重してくれと言った父はやっぱり、感極まりすぎて店一店舗貸し切りにしてしまった。
わりと高い店だ、これではマナのご両親の心労になりかねない。
母は何度か言った結果これだったらしく、正直、父の喜び具合には引いてしまう。
「父さん、もう少し庶民的な店とか考えられなかったのですか?」
「ない! 何かあったらあちらも迷惑だろうからな、念には念を入れてだ」
こういう父はもうどうしようも無い。
母は苦笑いを浮かべている。
少しすると、マナとマナのご両親らしき男女がやって来た。
ガチガチになっている男性と、柔和な笑みを浮かべている女性。
おそらく、女性が触手の血を引いている側なのだろう。
「マナ」
「せ……クルスさん」
いつもの癖で先輩呼びしそうになってて慌てて言い直すマナがなんだか愛おしいのと、こそばゆい感覚でなんとも言えなかった。
「すまない、その父がやはり張り切ってしまった」
マナはやっぱりと言わんばかりの顔をしていた。
「貸し切りにしてしまった」
そして遠い目をしていた。
「貴方、一室貸し切るという方法もあったでしょう?」
ガチガチの男性を見て母がもう一度たしなめていた。
「だ、だがな万が一何かあったらと思うと……」
父はやっぱりいいわけ三昧。
「マナ、紹介しよう。私の父のグレイブと、母のマリーだ」
「マナさんとは電話越し以来だね、初めまして、と言っておこう。私はクルスの父グレイブだ」
「母のマリーです」
「どうも、クルスさんの恋人にさせていただいたマナです、でこっちが……」
マナが後ろに隠れる父母を引っ張りだして紹介する。
「父のシンジと、母のアイカです」
「ど、どうも、シンジです。宜しくお願いします」
「お招きくださり感謝の限りです、マナの母、アイカです。宜しくお願いします」
緊張しきっている父と、柔和な母、政府とのやりとりを母親の方がやっていたのだろうか?
「お父さん、もう少しシャンとしてよね」
「そ、そうはいうものの……」
「まぁ、まずは中に入りましょう」
貸し切りの店内に入る。
父はコース料理を選んでいた、父よコース料理じゃない方が良かったのでは?
「さて、食べながらでいい。クルスとマナさんのなり染めは聞かせて貰った、最近はどうだろう?」
「クルスさんと課題を終わらせたら、ゲームや映画やデートとかたまにしてますよ。留年は無いとは言え単位取らないと卒業できないので」
「そうか……ゲームや映画?」
「です、ぷにっこたち~まほうの子と白の絵本~とか見に行きましたよ。セクシャルなシーンがある奴は除外して見てます」
マナは淡々と事実を述べた。
「ほほう……して、ゲームは?」
「初心者もできるパーティゲームとかそう言った類いのものですよ。刺激の強い物はクルスさんに進めるかどうか迷ったので興味を持ったときにプレゼンしようかと思いました」
「……マナさん貴方は息子を大切に思っているようだ。最初電話で話した時も思ったよ」
「有り難うございます」
「ところでご両親は、マナさんの婚約──結婚に反対は?」
「いいえ、マナの選んだ方ですもの。反対する理由はありません」
「寧ろ結婚できないだろうと思ってましたから……」
「やはり、触手の要素が強い事が原因ですか」
触手はそこまで忌避されるのかと、思わされた。
「はい。マナは一見すると普通の女性ですが、性的役割は触手よりです。ですのでそれにあった人物でないと無理だろうと」
マナの父親は正直に言っているのだろう。
「触手は未だ忌避される存在ですから」
マナの母親が言う。
「どちらが触手の血を」
「私です。ですが私は触手の血はほとんどないに等しいですが──」
「先祖返りですか」
「はい、マナはそれに近く触手の要素が強く出てしまったため……苦労をかけました」
「お母さん、お父さん、私苦労だと思った事なんて一つもないよ」
マナが父母の言葉に反論した。
事実なのだろう。
マナと過ごすうちに、マナには故郷に友人がいるのも聞かされた。
友人は触手族の血の濃さをはねのけた。
要するに気にしなかったそうだ。
ただ、男性陣は近寄らなかったらしい。
触手の特性を考えれば普通はそうなる。
友人達が羨ましいが、それ以上に私は優越感もあった。
ただ、同時に酷く怖くなった。
「立派に育てられましたね」
「はい、私達にはもったいない娘です」
「もったいないとかそういうの抜きにして欲しいなぁ……」
マナがこちらに気づいた。
「クルスさん?」
「?! あ、いや、何でも無い……」
「……私クルスさんと二人っきりになりたいので個室ありませんか?」
マナがそう言い出したのには驚いた。
「あるとも、どうぞ」
「では、親同士で積もる話もあるでしょう、子どもに遠慮なく話しあってください」
マナに手を引かれ、個室へと案内される。
見た感じ防音がしっかりされている個室だ。
「先輩、どうしましたか?」
「……君は愛されてるな……と」
「先輩も愛されているでしょう?」
「……あれ以降腫れ物扱いだ」
そうだ、私は愛されていた。
だが、あの事件以来腫れ物扱い。
今はそうは見えないが、実際親子二人っきりになるとそれが見えてしまう。
愛されているのに、何か違う様に感じて、それが怖かった。
「それなら私もですよ、触手の血が濃いからって失礼しちゃいます」
マナの言葉に目を見開く。
「そう、なのか?」
「そうですよ」
マナは私を抱きしめた。
「大丈夫です、先輩。私は先輩が大好きですよ」
マナの大好きは「愛している」と相違ない。
恥ずかしくて大好きがまだ限界らしいのは分かっている。
だから嬉しかった。
「──私も、君を愛しているよ。マナ」
マナにそう告げる。
そして口づけをかわします。
深い口づけを。
毎回キスの時思うが、触手族の体液は甘いのだろうか?
その為かキスをしていると、その甘さの虜になる。
しつこい甘さではなく、心を蕩かす優しい甘さ。
だから、それを味わうようにキスしてしまう。
キスを終えると、私は囁いた。
「後で私を抱いて欲しい」
彼女の返事は──
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