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触手系な彼女から見て
飛躍、結婚前提?
しおりを挟む何か、色んな過程をすっ飛ばした発言に私はぽかんとせざる得ません。
いや、最初の「性行為目的での彼女もしくはセフレ」発言も確かに相当でしたけど、「結婚前提のお付き合い」となると、ちょっと話が飛躍しすぎて私も困ります。
先輩のご両親について詳しく知りませんが、こんなマンションを借りられるという事は相当なお金持ちのはずです。
私は、地元ではご先祖様の存在で有名――ではあるが別に名家というわけではありません、ぶっちゃけ「触手族」の血を引くという事を知っている地元の男性、もしくは女性が来てくれるというだけで運よく血が続いていただけの家です。
私を連れ去ろうとした男の方々の反応が普通なんですよ。触手族って割とそういうイメージが今も強いんですよ。あと数が少ないし、私みたいな血を引いて体を触手化できるタイプの存在は更に……あ、違った、聞いた話だと現在は私だけっぽいです。
触手族は単一で増えることができるから、他の種族と交わる必要性は低いし、何より他の知能ある種族のようには暮らせないんですよ、色んな理由から。
だから、ご先祖様以外の触手族はほとんど研究施設とかで保護されています。
私のご先祖様が例外なんですよ。いえ一応頻繁に研究者とか行政の方が来ているみたいですが。
大昔は娼婦、男娼、性奴隷とかを調教するための道具として触手族は扱われてたそうです。まぁ、触手族は自分が生きられる環境とかを提供してくれるならと従うわけです。
そう言った経歴もありますし、今だ裏でそういうことをさせるお馬鹿さん達がおります。ちなみに見つかったら触手族は研究機関へ収容、触手族にそういうことを命令したその方々はすっごい重い罰を受けますし財産とかも没収されます。
ぶっちゃけると、触手族は非常に生きづらいし、生活しづらいんですよ。その血を引いて、しかも触手状態にもなれる私はそれを隠さないと生きるのが本当面倒なんです。
まぁ、彼女なら何時か別れる、もしくは先輩のソレが治って、よりいい人が見つかると温かい気持ちで受け入れられるんですが。
結婚前提のお付き合いになると話は別です。そうですね、大昔の言い方をすれば王族が奴隷と結婚する位無謀すぎます。反感買うってレベルじゃない。
そうぐるぐる考えながら先輩を見ます。
まぁ、さっき治るとか思いましたが、一回性行為をしただけで分かります。先輩のソレは「治療不可能」です。
お金持ちなら確実にそういう治療が得意な方々に診てもらい治療してもらったこともあると思う――いえ、治療痕跡が残ってました。
ですが、それでも先輩のソレは治らなかった。
例えるなら、一生物のお皿があります。それは捨てる事はできません。もしそれが壊れたらどうしますか? というものです。
破片が大きいなら金継ぎなどで、繋いで直すことができます。
先輩の「お皿」は粉々なのです、どれをくっつければいいのか、繋げばいいのか、全く分からない程に、粉々にされ、そのまま誰も手を付けられず、片付けることもできずそのまま置かれた状態。
先輩はそれをなんとか、それっぽく並べて、それっぽく見せているだけ。
ぶっちゃけ先輩の精神はギリギリ状態なんです。それを必死に保つ先輩に、もし悪意がある人が先輩の「お皿」を粉々にするようなことをもう一度をしたら――先輩は今度こそ壊れてしまうでしょう。
「――先輩、条件があります」
「……何だ?」
先輩が身構えます。
「まぁ、条件は色々ありますが、先輩を傷つける内容ではありません。安心してください」
私は先輩を見つめ口を開きます。
「結婚前提、というのでしたらご両親に私の事を話してください。許可が出たなら私は結婚前提でのお付き合いという内容を受け入れます」
「……君の両親は?」
「私は触手族の血が濃く出てるので、両親も結婚は厳しそうと感じてますのでそちらに関してはなにも。家に関しては私の兄に奇特かつ素敵な女性がお嫁に来てくださったので心配ありません、仲も良好ですし。」
事実です、触手族の血が濃く出たのは四人兄妹では私だけなので。
「……分かった、少し待ってくれ」
先輩はスマートフォンで電話をかけ始めました、何か行動がすごく早いですね、本当いいんですか?
怒鳴り声を上げるとか、何か口論になるかと思いましたが、そう言うのは全く無く、急にスマートフォンを渡されました。
「何ですか?」
「――父が君と話したがっている」
内心、マジかー、と思いながらもスマートフォンを受けとり、耳に近づけます。
「はい、お電話変わりました、クルス先輩のお父様ですか? 初めまして私は違う学部ですがクルス先輩と同じ大学のマナと申します」
『初めましてマナさん、クルスの父グレイブです』
丁寧な言い方をしてますが、声色はかなり低め。そしてどことなく電話越しに圧を感じます、うーん。
『セクハラじみた質問になることが多いが許していただけるかな?』
「はい、構いません」
『マナさんは、触手族として他の誰かと性行為をしたことは?』
「ありません、先輩が初めてです」
『では、人型の種族としては』
「それもありません。私はそちらの方では欲求がないのでするという考えもありませんでした」
『ふむ、で君は私の息子をどう思った』
「――」
おっと、ちょっと先輩には聞かせ辛いですね、これは。
「先輩、外へ――」
「……隣に個室がある、そっちで話すといい」
気にしてませんでしたが、そう言えば扉がありました。私はそちらの部屋に移動し、扉を閉めて会話を再開します。
「そうですね、クルス先輩とちゃんと話などをしたのは今日が初めてですが――危ういと思いました」
『……その理由は何かね?』
「クルス先輩は、おそらく治療しても治らない程の『重傷』です。普通の生活を送れている風に見えますが、それは必死にそうあろうと取り繕っている状態です。おそらくクルス先輩のお父様は一度クルス先輩に、隠遁生活――そういう害を加えられないような場所で静かに生活するのをご提案していると思われますが、おそらくクルス先輩は否定されたのではないでしょうか?」
『――クルスはそこまで話したのかね?』
「いいえ、触手族ですので、治療痕跡が残っていたのと、クルス先輩の現在住んでいるこのマンションの状況などから推測したまでです。でもクルス先輩はそれを拒否した――クルス先輩はきっと」
「つけられた傷が癒える事はない。隠遁すれば傷つくことは無いが苦しみ続ける。だからわずかに望みをかけてクルス先輩は他の人と『関わる』ことになる生活を選んだのかと。その傷を理解して、寄り添ってくれるか、傷を刺激しない誰かと出会うことを願って」
全部私の推測です。
真実はクルス先輩しか知らないでしょう。
『……君はクルスとどうなりたいのかね?』
「まだ、わかりません。クルス先輩からのいきなりの申し出ですから。ただ、私はクルス先輩を大切にしたいです。傷つけるような行為はしたくないです。触手族の欲求が満たせなくていいのかとか言われましても、私はご先祖様から『相手は大切にしなさい』と口酸っぱく言われているので、私の欲求を満たすよりも先輩の欲求を満たすのが大事です」
『……そうか、ありがとう』
「いいえ、ただ一つだけ危惧するのが――」
『何かね?』
「私、触手族の血を引いてるのと触手状態になれることを大学側には報告してるんですが、学生で知ってるのはおそらくクルス先輩だけなんですよ。そして私とクルス先輩には他からみると接点がないんです。大学では超有名人のクルス先輩が付き合うとなると、何か変な噂とかそういうのが立ちそうなので心配なんですよ……私の事を悪く言われるのは別に慣れてるからいいんですが、クルス先輩が悪く言われる可能性がないとは言い切れないんですよね……私もクルス先輩も人付き合いしないので友達がいないし、私はスルーとか得意なのでいいんですが、クルス先輩はしつこすぎるとスルーできないようですし……」
『ああ、なるほどそれも問題だ……』
「それに、私は何度も言って申し訳ございませんが『触手族』の血を引いています。しかもその性質はかなり濃くでています。結婚前提ということになると、クルス様のお父様たちの評判などにも悪影響が出る恐れがあります」
はい、私が危惧するものです。
もし、隠し通すことができればいいのですが、こういうのは大抵バレます。
ですので、其処をどうするかが、問題です。
『――別に問題はこちらにはないのだ、私の運営する会社の一つが「触手族」の研究に携わっているからね。別に一人息子の嫁が触手族の血を引いている事を言われても「それがなんだ」で済むから安心してくれないかね』
「あ、そうなんですか」
ふむ、安心――じゃないですね、これ確実に「結婚前提」の基盤を固められてますよね??
『まぁ、結婚前提という事だ。一度ご両親も含めてお会いしてみたいのだが、可能ならば君が言う「ご先祖様」とも』
「あ――……すみません、ご先祖様は亡くなったお相手さんとの住処から離れるのを拒否しているので、ちょっと無理です」
『そうか、ならば仕方ない。では近いうちにご両親も含めて話をしたい。場所などのセッティングは私共に任せていただけるかね?』
「え――……その」
『ははは、金銭の方なら私が全て持つから安心してくれ。そんな事は起こらないだろうと諦めていた事が叶いそうなのだからね』
何でしょう、クルス先輩のお父様、とてもノリノリと言うか何と言うか……うん、何だろう、私が考えてる事と斜め上に進みすぎててちょっと思考が追い付きません。
『さて、最後に一つ聞きたい。まぁ確認だがね』
「何でしょう?」
『君は「触手族」特有の能力を悪用したいと考えたことは』
「ありません。クルス先輩と『触手族』特有の性行為をした以外で使うのは基本威嚇だけなので。あと飛行機をハイジャックしたテロリスト締め上げた位です。なので、一度も」
『そうか、何度もすまない。では息子と代わってくれないかな?』
「はい、畏まりました」
私は部屋を出て先輩にスマートフォンを渡して、念のため先ほどの部屋にこもります。
いない方が色々と話ができるでしょうし。
しばらくして話が終わったのか、先輩が私を呼びました。
「どうでした? 何か私は両親も含めて一度話がしたいと言われました。」
「私もだいたいそんな感じだ。急ですまないが、君のご両親にもお伝えできるかな? 父は良ければ交通費はこちらが負担すると――」
「あ、いえ。触手族的な内容で移動する場合は国からお金が出てそれで移動できるので大丈夫です。触手族の特徴が濃い私が結婚前提で誰かとお付き合いする、というのでも多分出ると思います」
「……そうか、ああ良ければ送る――」
「いえ、大丈夫です。送った帰りに先輩が危険な目に遭わないという保証もないので」
「……すまない」
「いいえ」
私は先輩とメールアドレスなどの交換を行い、常にやり取りできるようにしてから、私は先輩に出口まで案内され、自分のマンションへと戻りました。
その間に、母に「結婚前提でお付き合い申し込まれた。ちなみに相手は私が触手族の血と特徴を濃く持っているの知った上で」とメールを送りました。
お部屋を借りているマンション――まぁ、政府さんの監視下にあるマンションですが、家賃も割安で、部屋もよく、防犯もしっかりしているので文句はありません。
私は借りている部屋に戻り、鍵をかけて、くつろぎながら鞄に入れたスマートフォン取り出して見れば着信の嵐。
嫌な予感がしつつ電話に出れば、私の母は酷く興奮して何があったと聞き、それを父が取り上げて「変な輩じゃないだろうな?!」と五月蠅く質問を繰り返し、父と母が取り合いをしている隙をついたのでしょうか、義姉さんが「ね、言ったでしょう? マナちゃんにはきっと素敵な人が現れるって!!」と興奮したように言ってきました。
素敵な人――うーん、素敵のラインが分からないので難しいですね。
でも、あまりに五月蠅かったので、一通り説明して、偉い方々への報告を頼んでから、さくっと通話を切り、電源を落として、お風呂に向かいます。
ゆっくりとお風呂に浸かったら、パジャマに着替えて眠ります。
講義の宿題は全部済ませておいてあるので、良かったです。
明日から先輩とどう接することになるんだろう?
少しだけ不安を感じながら私は目を閉じました。
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