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第三章
小さな星屑 第十五話
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遡ること三十分前。比奈は羅夢と一緒に帰り道を歩いていた。昨日の一件を聞いた比奈は、今日は一人で帰るという羅夢を心配して一緒に付いて帰っていたのだ。
「比奈先輩、ほんとに大丈夫ですから」
「何言ってんの‼︎ 今日は瑞希ちゃん居ないんでしょ‼︎ 昨日の奴らがまた来たら一人じゃ危ないでしょうが‼︎」
そう言って比奈は辺りを警戒しながら歩いていた。昔から面倒見が良い比奈は、羅夢のことを誰よりも気にかけていた。
中学の時から髪が明るかった羅夢は、先生からもクラスメイトからも目を付けられることが多かった。先生には地毛なのに髪を染めていると疑われてその場で黒く染められそうになったり、クラスメイトからはガラの悪い連中と付き合っていると、あらぬ噂を立てられたこともあった。流石の羅夢もその時ばかりはひどく落ち込んだ。
そんな時でも比奈は真っ先に羅夢に寄り添い味方になった。見た目だけで人を判断するな。噂話だけで勝手に決めつける前にもっと羅夢のことを理解しようとしろと、先生やクラスメイトに直接抗議しに行ったのだ。おかしいことはおかしいと他人の為に必死になって動ける比奈のことを羅夢は心から尊敬していたのだった。
「いつまでも変わらないんだなぁ、この人は」
周りを警戒しながら自分の前を歩く比奈の後ろ姿を見て少し笑いながら、羅夢はそう思っていた。
すると突然、前を歩いていた比奈が立ち止まった。目線の先には昨日の男たちが待ち伏せしていた。慌てて来た道を戻ろうとすると後ろからも男たちが現れ、挟み込まれてしまった。
「あんた達、この子に何か用?」
比奈が羅夢を庇いながら一歩前に出た。しかし、男は羅夢ではなく比奈に向かって指を差した。
「お前が魚谷比奈か?」
「そうだけど何?」
比奈は男を鋭く睨みつけた。
「あいつの言う通りだったな。ちょっと俺たちと一緒に来てくれないかなぁ」
そう言うと男たちは比奈の腕を掴んで、強引に連れて行こうとした。
「ちょっと何すんの‼︎離して‼︎」
比奈がカバンで男たちを叩くが全く動じない。
「比奈先輩‼︎」
羅夢が叫ぶと男たちの中の一人が振り返った。
「丁度いい。今から言うことを八木と牛島ってやつに伝えろ」
「無事に比奈先輩を返して欲しければ、蒼太先輩と隼人センパイの二人だけで町外れの倉庫まで来い。誰にも知らせるんじゃないぞって」
羅夢はここに至るまでの経緯と男に言われたことを二人に伝えた。預かった伝言を二人に話すと羅夢は力が抜けたのか、その場にしゃがみ込んだ。
「ごめんなさい……私のせいで先輩たちをこんな目に合わせてしまって……」
「大丈夫だ。羅夢のせいじゃない」
落ち込む羅夢に隼人は優しく声をかけた。
「誰だよ‼︎ こんなことするやつは‼︎」
蒼太はやり場のない怒りを空にぶつける。
「とにかく町外れの倉庫だな。行くぞ蒼太」
「あぁ、弓瀬と純はここで村田と待っててくれ」
「うん、わかった蒼太君も隼人君も気をつけてね」
「気ぃつけろよ‼︎」
蒼太と隼人は二人に羅夢のことを頼み、急いで屋上を後にした。
同じ頃、鋏介と瑞希は動物たちの世話も終わったので掃除用具を片付けている最中だった。すると勢いよく校舎から出ていく蒼太と隼人の姿が二人の目に入った。
「あれ? 蒼太先輩と隼人先輩だ。あんなに急いでどうしたんだろう?」
慌てて走っていく姿を見た鋏介の頭に嫌な予感がよぎった。昨日の今日だ。あの男たちが何かしらの仕返しを企んでいても不思議じゃない。
「まさか……すまない‼︎ 後片づけ、任せて良いか?」
鋏介は掃除用具を瑞希に渡すと、蒼太たちの後を追いかけた。
「比奈先輩、ほんとに大丈夫ですから」
「何言ってんの‼︎ 今日は瑞希ちゃん居ないんでしょ‼︎ 昨日の奴らがまた来たら一人じゃ危ないでしょうが‼︎」
そう言って比奈は辺りを警戒しながら歩いていた。昔から面倒見が良い比奈は、羅夢のことを誰よりも気にかけていた。
中学の時から髪が明るかった羅夢は、先生からもクラスメイトからも目を付けられることが多かった。先生には地毛なのに髪を染めていると疑われてその場で黒く染められそうになったり、クラスメイトからはガラの悪い連中と付き合っていると、あらぬ噂を立てられたこともあった。流石の羅夢もその時ばかりはひどく落ち込んだ。
そんな時でも比奈は真っ先に羅夢に寄り添い味方になった。見た目だけで人を判断するな。噂話だけで勝手に決めつける前にもっと羅夢のことを理解しようとしろと、先生やクラスメイトに直接抗議しに行ったのだ。おかしいことはおかしいと他人の為に必死になって動ける比奈のことを羅夢は心から尊敬していたのだった。
「いつまでも変わらないんだなぁ、この人は」
周りを警戒しながら自分の前を歩く比奈の後ろ姿を見て少し笑いながら、羅夢はそう思っていた。
すると突然、前を歩いていた比奈が立ち止まった。目線の先には昨日の男たちが待ち伏せしていた。慌てて来た道を戻ろうとすると後ろからも男たちが現れ、挟み込まれてしまった。
「あんた達、この子に何か用?」
比奈が羅夢を庇いながら一歩前に出た。しかし、男は羅夢ではなく比奈に向かって指を差した。
「お前が魚谷比奈か?」
「そうだけど何?」
比奈は男を鋭く睨みつけた。
「あいつの言う通りだったな。ちょっと俺たちと一緒に来てくれないかなぁ」
そう言うと男たちは比奈の腕を掴んで、強引に連れて行こうとした。
「ちょっと何すんの‼︎離して‼︎」
比奈がカバンで男たちを叩くが全く動じない。
「比奈先輩‼︎」
羅夢が叫ぶと男たちの中の一人が振り返った。
「丁度いい。今から言うことを八木と牛島ってやつに伝えろ」
「無事に比奈先輩を返して欲しければ、蒼太先輩と隼人センパイの二人だけで町外れの倉庫まで来い。誰にも知らせるんじゃないぞって」
羅夢はここに至るまでの経緯と男に言われたことを二人に伝えた。預かった伝言を二人に話すと羅夢は力が抜けたのか、その場にしゃがみ込んだ。
「ごめんなさい……私のせいで先輩たちをこんな目に合わせてしまって……」
「大丈夫だ。羅夢のせいじゃない」
落ち込む羅夢に隼人は優しく声をかけた。
「誰だよ‼︎ こんなことするやつは‼︎」
蒼太はやり場のない怒りを空にぶつける。
「とにかく町外れの倉庫だな。行くぞ蒼太」
「あぁ、弓瀬と純はここで村田と待っててくれ」
「うん、わかった蒼太君も隼人君も気をつけてね」
「気ぃつけろよ‼︎」
蒼太と隼人は二人に羅夢のことを頼み、急いで屋上を後にした。
同じ頃、鋏介と瑞希は動物たちの世話も終わったので掃除用具を片付けている最中だった。すると勢いよく校舎から出ていく蒼太と隼人の姿が二人の目に入った。
「あれ? 蒼太先輩と隼人先輩だ。あんなに急いでどうしたんだろう?」
慌てて走っていく姿を見た鋏介の頭に嫌な予感がよぎった。昨日の今日だ。あの男たちが何かしらの仕返しを企んでいても不思議じゃない。
「まさか……すまない‼︎ 後片づけ、任せて良いか?」
鋏介は掃除用具を瑞希に渡すと、蒼太たちの後を追いかけた。
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