16 / 19
第三章
小さな星屑 第十五話
しおりを挟む
遡ること三十分前。比奈は羅夢と一緒に帰り道を歩いていた。昨日の一件を聞いた比奈は、今日は一人で帰るという羅夢を心配して一緒に付いて帰っていたのだ。
「比奈先輩、ほんとに大丈夫ですから」
「何言ってんの‼︎ 今日は瑞希ちゃん居ないんでしょ‼︎ 昨日の奴らがまた来たら一人じゃ危ないでしょうが‼︎」
そう言って比奈は辺りを警戒しながら歩いていた。昔から面倒見が良い比奈は、羅夢のことを誰よりも気にかけていた。
中学の時から髪が明るかった羅夢は、先生からもクラスメイトからも目を付けられることが多かった。先生には地毛なのに髪を染めていると疑われてその場で黒く染められそうになったり、クラスメイトからはガラの悪い連中と付き合っていると、あらぬ噂を立てられたこともあった。流石の羅夢もその時ばかりはひどく落ち込んだ。
そんな時でも比奈は真っ先に羅夢に寄り添い味方になった。見た目だけで人を判断するな。噂話だけで勝手に決めつける前にもっと羅夢のことを理解しようとしろと、先生やクラスメイトに直接抗議しに行ったのだ。おかしいことはおかしいと他人の為に必死になって動ける比奈のことを羅夢は心から尊敬していたのだった。
「いつまでも変わらないんだなぁ、この人は」
周りを警戒しながら自分の前を歩く比奈の後ろ姿を見て少し笑いながら、羅夢はそう思っていた。
すると突然、前を歩いていた比奈が立ち止まった。目線の先には昨日の男たちが待ち伏せしていた。慌てて来た道を戻ろうとすると後ろからも男たちが現れ、挟み込まれてしまった。
「あんた達、この子に何か用?」
比奈が羅夢を庇いながら一歩前に出た。しかし、男は羅夢ではなく比奈に向かって指を差した。
「お前が魚谷比奈か?」
「そうだけど何?」
比奈は男を鋭く睨みつけた。
「あいつの言う通りだったな。ちょっと俺たちと一緒に来てくれないかなぁ」
そう言うと男たちは比奈の腕を掴んで、強引に連れて行こうとした。
「ちょっと何すんの‼︎離して‼︎」
比奈がカバンで男たちを叩くが全く動じない。
「比奈先輩‼︎」
羅夢が叫ぶと男たちの中の一人が振り返った。
「丁度いい。今から言うことを八木と牛島ってやつに伝えろ」
「無事に比奈先輩を返して欲しければ、蒼太先輩と隼人センパイの二人だけで町外れの倉庫まで来い。誰にも知らせるんじゃないぞって」
羅夢はここに至るまでの経緯と男に言われたことを二人に伝えた。預かった伝言を二人に話すと羅夢は力が抜けたのか、その場にしゃがみ込んだ。
「ごめんなさい……私のせいで先輩たちをこんな目に合わせてしまって……」
「大丈夫だ。羅夢のせいじゃない」
落ち込む羅夢に隼人は優しく声をかけた。
「誰だよ‼︎ こんなことするやつは‼︎」
蒼太はやり場のない怒りを空にぶつける。
「とにかく町外れの倉庫だな。行くぞ蒼太」
「あぁ、弓瀬と純はここで村田と待っててくれ」
「うん、わかった蒼太君も隼人君も気をつけてね」
「気ぃつけろよ‼︎」
蒼太と隼人は二人に羅夢のことを頼み、急いで屋上を後にした。
同じ頃、鋏介と瑞希は動物たちの世話も終わったので掃除用具を片付けている最中だった。すると勢いよく校舎から出ていく蒼太と隼人の姿が二人の目に入った。
「あれ? 蒼太先輩と隼人先輩だ。あんなに急いでどうしたんだろう?」
慌てて走っていく姿を見た鋏介の頭に嫌な予感がよぎった。昨日の今日だ。あの男たちが何かしらの仕返しを企んでいても不思議じゃない。
「まさか……すまない‼︎ 後片づけ、任せて良いか?」
鋏介は掃除用具を瑞希に渡すと、蒼太たちの後を追いかけた。
「比奈先輩、ほんとに大丈夫ですから」
「何言ってんの‼︎ 今日は瑞希ちゃん居ないんでしょ‼︎ 昨日の奴らがまた来たら一人じゃ危ないでしょうが‼︎」
そう言って比奈は辺りを警戒しながら歩いていた。昔から面倒見が良い比奈は、羅夢のことを誰よりも気にかけていた。
中学の時から髪が明るかった羅夢は、先生からもクラスメイトからも目を付けられることが多かった。先生には地毛なのに髪を染めていると疑われてその場で黒く染められそうになったり、クラスメイトからはガラの悪い連中と付き合っていると、あらぬ噂を立てられたこともあった。流石の羅夢もその時ばかりはひどく落ち込んだ。
そんな時でも比奈は真っ先に羅夢に寄り添い味方になった。見た目だけで人を判断するな。噂話だけで勝手に決めつける前にもっと羅夢のことを理解しようとしろと、先生やクラスメイトに直接抗議しに行ったのだ。おかしいことはおかしいと他人の為に必死になって動ける比奈のことを羅夢は心から尊敬していたのだった。
「いつまでも変わらないんだなぁ、この人は」
周りを警戒しながら自分の前を歩く比奈の後ろ姿を見て少し笑いながら、羅夢はそう思っていた。
すると突然、前を歩いていた比奈が立ち止まった。目線の先には昨日の男たちが待ち伏せしていた。慌てて来た道を戻ろうとすると後ろからも男たちが現れ、挟み込まれてしまった。
「あんた達、この子に何か用?」
比奈が羅夢を庇いながら一歩前に出た。しかし、男は羅夢ではなく比奈に向かって指を差した。
「お前が魚谷比奈か?」
「そうだけど何?」
比奈は男を鋭く睨みつけた。
「あいつの言う通りだったな。ちょっと俺たちと一緒に来てくれないかなぁ」
そう言うと男たちは比奈の腕を掴んで、強引に連れて行こうとした。
「ちょっと何すんの‼︎離して‼︎」
比奈がカバンで男たちを叩くが全く動じない。
「比奈先輩‼︎」
羅夢が叫ぶと男たちの中の一人が振り返った。
「丁度いい。今から言うことを八木と牛島ってやつに伝えろ」
「無事に比奈先輩を返して欲しければ、蒼太先輩と隼人センパイの二人だけで町外れの倉庫まで来い。誰にも知らせるんじゃないぞって」
羅夢はここに至るまでの経緯と男に言われたことを二人に伝えた。預かった伝言を二人に話すと羅夢は力が抜けたのか、その場にしゃがみ込んだ。
「ごめんなさい……私のせいで先輩たちをこんな目に合わせてしまって……」
「大丈夫だ。羅夢のせいじゃない」
落ち込む羅夢に隼人は優しく声をかけた。
「誰だよ‼︎ こんなことするやつは‼︎」
蒼太はやり場のない怒りを空にぶつける。
「とにかく町外れの倉庫だな。行くぞ蒼太」
「あぁ、弓瀬と純はここで村田と待っててくれ」
「うん、わかった蒼太君も隼人君も気をつけてね」
「気ぃつけろよ‼︎」
蒼太と隼人は二人に羅夢のことを頼み、急いで屋上を後にした。
同じ頃、鋏介と瑞希は動物たちの世話も終わったので掃除用具を片付けている最中だった。すると勢いよく校舎から出ていく蒼太と隼人の姿が二人の目に入った。
「あれ? 蒼太先輩と隼人先輩だ。あんなに急いでどうしたんだろう?」
慌てて走っていく姿を見た鋏介の頭に嫌な予感がよぎった。昨日の今日だ。あの男たちが何かしらの仕返しを企んでいても不思議じゃない。
「まさか……すまない‼︎ 後片づけ、任せて良いか?」
鋏介は掃除用具を瑞希に渡すと、蒼太たちの後を追いかけた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】彼女はボクを狂おしいほど愛する ー超絶美少女の転校生がなぜかボクにだけぞっこんな件ー
竜竜
青春
————最後のページにたどり着いたとき、この物語の価値観は逆転する。
子どもの頃から周りと馴染めず、一人で過ごすことが多いボク。
そんなボクにも、心を許せる女の子がいた。
幼い頃に離れ離れになってしまったけど、同じ高校に転校して再開を果たした朱宮結葉。
ボクと結葉は恋人関係ではなかったけど、好き同士なことは確かだった。
再び紡がれる二人だけの幸せな日々。だけどそれは、狂おしい日常の始まりだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる