小さな星屑

イケダユウト

文字の大きさ
上 下
11 / 19
第二章

小さな星屑 第十話

しおりを挟む


 純はゲームセンターを出た後も、隼人に言われたことを考えていた。



「好きなだけじゃ、どうにもならないよ……ん?あそこで何やってるんだろ?」



純の目線の先には人だかりが出来ていた。どうやら、路上で何かパフォーマンスをしているようだった。純は人混みの中に入っていった。



「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今からダンスパフォーマンスショーの始まりやで‼︎おっ、そこの兄ちゃん姉ちゃん見ていかへんか?」



人だかりの真ん中で呼び込んでいたのは真矢だった。その隣には蒼太もいる。



「えっ、蒼太君?その隣にいるのは……弓瀬君だっけ?何してるんだろ……?」



まさかこんなところに蒼太がいるとは思わず純は目を丸くして驚いた。



「おいおい、それじゃあバナナの叩き売りじゃねぇかよ」

「それもそうやな」



蒼太のツッコミに集まっていた人たちも、釣られて笑っていた。


「さぁ、始めるぞ」

「おう‼︎ほな、ミュージックスタートや‼︎」



真矢の合図と同時にスピーカーから軽快な音楽が流れてきて二人がダンスを披露していく。やがて、誰かが始めた手拍子が徐々に周りに広がっていき、次第に大きくなっていく。その大勢の中に紛れて、純は蒼太たちが踊っている姿を真剣な眼差しで見ていた。








「皆さん、有難うございました‼︎」

「おおきに、また見にきてやぁ」



二人はパフォーマンスを終えると、立ち止まってくれた人たちに深々と一礼した。集まっていた人たちが解散する中、純はその場に一人だけ残っていた。



「おぉ、純‼︎やっと来たか‼︎」

「えっ?どういうこと?」

「お前のこと待ってたんだよ。ここいつものお前の帰り道だろ?ここで踊ってたら、いつかは純が通ると思ってな」



真矢が思いついた良い考えとは、この路上パフォーマンスのことだった。純の帰り道に先回りしてパフォーマンスをすることで、自分たちのダンスを見て貰おうという作戦だった。



「俺もさぁ、最初は乗り気じゃなかったんだけど。やってみたらめちゃくちゃ楽しくてさぁ」

「蒼太君、確かに楽しそうだった」

「純は?見てて楽しくなかったのか?」

「僕は……」



大勢の人の前でダンスをしている蒼太と真矢の姿に、純が引き込まれていたのは事実だった。楽しそうに踊っている姿を見て、自分もあんな風に好きなことが出来たら良いのになぁとも思っていた。



「二人の姿を見て、楽しそうだなとは思ったよ」

「じゃあ、一緒に……」

「でも、無理だよ。僕、運動出来ないし、性格も暗いから……二人みたいにはなれない」



純はまた俯きながら答えた。



「……それがどないしたっていうんや?」



蒼太と純のやり取りを横で聞いていた真矢が、純に向かって尋ねた。



「そら、運動が出来たり、性格が明るい方が周りから見たらええなぁって思うやろう。せやけど、それがダンスをせん理由にはならんとちゃうんか?性格も能力も大事やけど、一番大事なんは、純がダンスを好きかどうかってことやろ」



真矢に続いて蒼太も口を開いた。



「なぁ、純。俺さ、今まで色んなことをやってきたんだけど全然続かなかったんだ。それって本当にやりたい事じゃなかったからだと思う。俺のやりたかった事ってやっぱりダンスだったって、この前気付いたんだ。だから、純にも自分の気持ちに素直になって欲しいんだよ」

「自分の気持ち……」

「明日の朝、屋上で待ってるから。絶対に来いよ」




蒼太は純にそう言い残して帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

秘密基地には妖精がいる。

塵芥ゴミ
青春
これは僕が体験したとある夏休みの話。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】彼女はボクを狂おしいほど愛する ー超絶美少女の転校生がなぜかボクにだけぞっこんな件ー

竜竜
青春
————最後のページにたどり着いたとき、この物語の価値観は逆転する。 子どもの頃から周りと馴染めず、一人で過ごすことが多いボク。 そんなボクにも、心を許せる女の子がいた。 幼い頃に離れ離れになってしまったけど、同じ高校に転校して再開を果たした朱宮結葉。 ボクと結葉は恋人関係ではなかったけど、好き同士なことは確かだった。 再び紡がれる二人だけの幸せな日々。だけどそれは、狂おしい日常の始まりだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...