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第二章
小さな星屑 第十話
しおりを挟む純はゲームセンターを出た後も、隼人に言われたことを考えていた。
「好きなだけじゃ、どうにもならないよ……ん?あそこで何やってるんだろ?」
純の目線の先には人だかりが出来ていた。どうやら、路上で何かパフォーマンスをしているようだった。純は人混みの中に入っていった。
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今からダンスパフォーマンスショーの始まりやで‼︎おっ、そこの兄ちゃん姉ちゃん見ていかへんか?」
人だかりの真ん中で呼び込んでいたのは真矢だった。その隣には蒼太もいる。
「えっ、蒼太君?その隣にいるのは……弓瀬君だっけ?何してるんだろ……?」
まさかこんなところに蒼太がいるとは思わず純は目を丸くして驚いた。
「おいおい、それじゃあバナナの叩き売りじゃねぇかよ」
「それもそうやな」
蒼太のツッコミに集まっていた人たちも、釣られて笑っていた。
「さぁ、始めるぞ」
「おう‼︎ほな、ミュージックスタートや‼︎」
真矢の合図と同時にスピーカーから軽快な音楽が流れてきて二人がダンスを披露していく。やがて、誰かが始めた手拍子が徐々に周りに広がっていき、次第に大きくなっていく。その大勢の中に紛れて、純は蒼太たちが踊っている姿を真剣な眼差しで見ていた。
「皆さん、有難うございました‼︎」
「おおきに、また見にきてやぁ」
二人はパフォーマンスを終えると、立ち止まってくれた人たちに深々と一礼した。集まっていた人たちが解散する中、純はその場に一人だけ残っていた。
「おぉ、純‼︎やっと来たか‼︎」
「えっ?どういうこと?」
「お前のこと待ってたんだよ。ここいつものお前の帰り道だろ?ここで踊ってたら、いつかは純が通ると思ってな」
真矢が思いついた良い考えとは、この路上パフォーマンスのことだった。純の帰り道に先回りしてパフォーマンスをすることで、自分たちのダンスを見て貰おうという作戦だった。
「俺もさぁ、最初は乗り気じゃなかったんだけど。やってみたらめちゃくちゃ楽しくてさぁ」
「蒼太君、確かに楽しそうだった」
「純は?見てて楽しくなかったのか?」
「僕は……」
大勢の人の前でダンスをしている蒼太と真矢の姿に、純が引き込まれていたのは事実だった。楽しそうに踊っている姿を見て、自分もあんな風に好きなことが出来たら良いのになぁとも思っていた。
「二人の姿を見て、楽しそうだなとは思ったよ」
「じゃあ、一緒に……」
「でも、無理だよ。僕、運動出来ないし、性格も暗いから……二人みたいにはなれない」
純はまた俯きながら答えた。
「……それがどないしたっていうんや?」
蒼太と純のやり取りを横で聞いていた真矢が、純に向かって尋ねた。
「そら、運動が出来たり、性格が明るい方が周りから見たらええなぁって思うやろう。せやけど、それがダンスをせん理由にはならんとちゃうんか?性格も能力も大事やけど、一番大事なんは、純がダンスを好きかどうかってことやろ」
真矢に続いて蒼太も口を開いた。
「なぁ、純。俺さ、今まで色んなことをやってきたんだけど全然続かなかったんだ。それって本当にやりたい事じゃなかったからだと思う。俺のやりたかった事ってやっぱりダンスだったって、この前気付いたんだ。だから、純にも自分の気持ちに素直になって欲しいんだよ」
「自分の気持ち……」
「明日の朝、屋上で待ってるから。絶対に来いよ」
蒼太は純にそう言い残して帰っていった。
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