82 / 178
第十二話 暗中
暗中 一
しおりを挟む
昨今はジェンダーフリーを唱える世の中で、女が外で働き、男が家を守ることがふつうだそうです。わたしの周りにはそんな家庭ひとつもありませんが、そういうことになってるらしいです。
すばらしい世の中ですね。かつてはそんな自由ありませんでした。そもそも女性が男と対等に話すことさえ許されなかったと聞きます。
それだけ余裕があるということでしょう。毎日山ほど食品を捨て、だれもが高級な電話機を持ち歩く時代です。不安なのは、男も女も働いたら、ひとりあたりの給料が半分になっちゃうんじゃないかってことくらいです。
ぜひわたしも有能な女人にめとってもらって、家庭を守りながらのんびり小説を書きたいものです。ドカタ仕事は疲れます。
しかし男がそれでいいんでしょうか。
いいんです。だって女性のみなさんがそうおっしゃるんですから。
第十二話 暗中
「あら、おかえりなさい」
レオの館の庭で紅茶をすすっていたアクアリウスが言った。
彼女はぼくらが海に旅行に行っているあいだ館の留守を守ってくれていた。
「ただいま帰りました」
森の小道から顔を出したレオが深く頭を下げながら応えた。レオはだれに対しても偉そうにするが、アクアリウスだけには礼儀正しい。なにせいのちの恩人だし、魔法や呪術を教えてくれた師匠だ。それに何年も生活の世話もしてくれた、半ば血のつながっていない姉のような存在でもある。だから敬いながらも気の置けない仲で、こういった頼み事もできたのだろう。
「数週間ものあいだ、ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございます」
「ううん、いいのよ。かわいいあなたの頼みだもの」
「痛み入ります」
とレオはあくまで慇懃だが、アクアリウスは気さくだった。
「あら、すごい量の魂ね」
アクアリウスは”かご”を見て言った。
ぼくと使い魔たちはレオのうしろにおり、レグルスが巨虎の姿でかごをくわえていた。大型犬のケージほどもある大きなかごは重く、人間の姿では運ぶのが大変だ。馬車でここまで来られれば楽だったけど、森の中には入ってこれないので、こうしてレグルスが運んでいる。
ちなみにレオはものを軽くする魔法が使えるが、あらゆる物体の中で銀だけは魔法が効かない。魂を入れるかごは銀製だからこうするほかなかった。
「どれも白色なのね」
「はい。海の悪霊の魂です」
「ああ、そういうこと。でも軽い薬を作るのにはちょうどよさそうだわ」
「そうでしょう。今回の礼と言ってはなんですが、アクア様にもお分けさせていただきます」
「まあ、うれしいわ。ありがたくいただきましょう」
ふたりはレグルスを連れて商品倉庫へと向かった。魂は適切な方法で保管しないとどんどん消えてしまうから、まずは倉庫へと向かったのだろう。
「ぼくらも荷物を片付けようか」
ぼくはうしろを振り返り、デネボラとゾスマに言った。ゾスマはひとの姿だが、デネボラは馬の姿で背に荷物をどっさり乗せていた。アルテルフは街まで馬車を返しに行っている。
「ひいん! ひひいん!」
デネボラは荒っぽくいななき、重い馬体を館へと進めた。運動ぎらいの彼女にとって、荷物を背負うことほどいやなことはなかった。
やがてぼくらは荷を片付け、全員でみやげものを広げた。一階の大リビング、その中央の巨大なテーブルの端を埋め、ひとつひとつ並べていく。
「まずこれはアクア様へのおみやげです」
「まあ、どんなものをくれるの?」
「はい。魚の開き、乾燥貝柱、それと美しいアクア様にお似合いの真珠の指輪です」
「あら! ステキね! それにひさびさに海のものが食べられてうれしいわ」
「乾き物ですので、お帰りになってからお召し上がりください。今夜はこちらの冷凍した魚介類を焼いていっしょにいただきましょう」
「まあ~、カニさんにエビさん、それから魚の切り身もあって、いいわねぇ。たくさんあるし、これなら焼くより”土鍋”にした方がいいんじゃない?」
「は、土鍋とは」
「鍋で煮ながらつまむのよ。薄口に味をつけて、酸味のあるタレで食べるの。ここにある”芋酒”なんかよく合うと思うわ。ね、そうしましょう」
「ほう、芋酒と……それはたのしみです。ぜひそういたしましょう」
レオはゴクリとのどを鳴らし、
「おい、デネボラ。あとでアクア様に土鍋の作り方をご教授いただいて準備しろ」
「はぁい、お任せくださぁい」
デネボラは道中買ったクッキーを食べながら言った。彼女は客の前だろうがお構いなくおやつを食べる。もちろんレオはすぐに叱ったが、アクアリウスが、
「いいのよ。デネボラちゃん気にしないで」
と許したので、あるじの険しい視線も気にせず堂々としていた。
……それにしても土鍋か。いったいどんな料理なんだろう。なにせぼくら内陸の人間は海のものに疎いからなぁ。
その点アクアリウスは各所を旅しているからさまざまな調理法を知っている。土地土地の食材の、地元民しか知らないような食べ方を覚えている。
今回ぼくらが行った漁港では土鍋なんて見なかったから、レストランでは出さないような郷土料理か、よほどまれな技法なのだろう。ぼくは旅に興味はないけど、こういうのがあるとちょっとうらやましいと思っちゃうな。
ぼくらは食材の整理を終え、こんどは雑貨品を並べはじめた。
「その、ひもで繋がった貝殻はなあに?」
「ああ、これはわたしの水着です」
「水着? いいわねえ、それ。おっぱいも下も、ホタテの貝殻だけで隠すの?」
「ええ。近々これでアーサーを誘惑しようと思っています」
「ま、やらしい! アーサー君ったらしあわせものね! このお!」
とアクアリウスがぼくにウィンクした。そ、そうかもしれないけどさ……こんなみんなの前で言わないでほしいなぁ。なんでテーブルの上に置くのさ。恥ずかしいよ。
「まあ、真っ赤になっちゃって。あら、レグルスちゃんも真っ赤ね」
「あ、は、その……ひぃ」
レグルスは性的なことが大の苦手だ。言葉を聞いただけで恥ずかしくなり、下手をすれば泣いてしまう。もしかしたらレオが貝殻水着でぼくを誘惑するところを想像してしまったのかもしれない。彼女は肩をすぼめ、目を白黒させていた。
「これを着たらきっと魅力倍増よ。ねえ、レオ。レグルスちゃんにも貸してあげなさいよ。かわいくてスタイル抜群だから似合うわよ~」
「そうですね。健康的な黒い肌に白い貝殻、きっと似合うに違いありません。ぜひそうしましょう」
「えっ!? そ、そんな破廉恥なものを!?」
「わたし見たいわぁ。ねえ、荷物の整理が終わったら着て見せて。ね、いいでしょ? お願い」
「ぜ、ぜ、ぜ、絶対にいやです!」
レグルスはそう言って立ち上がり、いまにも泣きそうな赤面で逃げ去ってしまった。あーあ、かわいそうに。でもたぶんアクアリウスは悪気なんてないんだろうなぁ。
「あらあら、ウブねぇ。でもそこがあの子のかわいいところなのよね」
ほら、やっぱり。からかって遊んでるんだ。レオもそうだけど師匠もたいがいだよ。いや、この師匠にこの弟子ありってとこか。
と、ぼくがそんなことを考えていると、
「ただいまー!」
馬車を返しに行っていたアルテルフが帰ってきた。彼女は鷹だ。行きは馬の速度で、帰りは飛べるからうんと早い。
「アクア様おひさしぶりですー」
「あら、おひさしぶり」
彼女は律儀に挨拶をし、レグルスがいた席にぴょこんと座った。そして、あれはわたしのだとか、これはだれのだと、率先してものの整理をはじめた。
アルテルフはけっこう仕切り屋だ。それにレオの使い魔のリーダーでもある。といっても最初にレオに仕えたというだけで、自分で勝手にそう決めているだけらしいけど。
そんなアルテルフがなにげなく言った。
「それにしてもアクア様よく我慢できましたねー」
我慢?
「だって、アクア様はかなりの男好きでしょー? それなのに館にこもりっ切りじゃーつまんなかったでしょー」
「こら! アクア様に失礼だぞ!」
レオが手を上げそうないきおいで叱りつけた。しかし、
「いいのよ、ホントのことじゃない」
アクアリウスはにこやかだった。ちょっとくらいの失礼じゃ彼女は怒らない。アルテルフもそれがわかっているから軽口を叩くのだろう。
「すみません、うちのバカが」
「ううん、謝ることないわ。その通りだもの。実際男漁りもしてたしね」
「る、留守中にですか?」
「ああ、安心して。連れ込んだりしてないわ。うちの使い魔に留守を頼んで、近くの街や村にナンパされに行ってたのよ。田舎の男はがっついてるから簡単だったわ」
「は、はあ……」
さすがのレオもこれには呆れ気味だった。自身の淫乱ぶりを平気で話すなんてまともな精神じゃない。豪胆ともとれるが、それは男に限っての言葉だろう。
「でも失敗したわ。あの子がいればそんな必要なかったのにね」
「あの子?」
「ほら、名前なんていったかしら。アーサー君のお友達で、元騎士で、魔術師団を抜けてわたしの弟子になった子」
それって……まさかコジャッブ!?
「そうそう、コジャッブ君。あの子はこの館に来れたでしょう。捨てなければよかったわ。それにあの子の”アレ”すごく大きかったしね。まあ、テクニックはいまいちだったけど」
そういえば忘れていた。ぼくの親友コジャッブはアクアリウスの弟子になって旅立ったんだ。でも、レオが言っていた。アクアリウスは男を取っ替え引っ替えするから、きっとすぐに捨てられてしまうって。あのときは一日心配したけど、ぼくって忘れっぽいから次の日には記憶から消えてしまっていた。
ああ、コジャッブ。君はいまどうしているんだ。”捨てられた”って、どんな状態になっているんだ。ぼくに劣らない力の剣と、まだ新人とはいえ魔法の才能があるから、そう簡単にくたばることはないと思うけど……
すばらしい世の中ですね。かつてはそんな自由ありませんでした。そもそも女性が男と対等に話すことさえ許されなかったと聞きます。
それだけ余裕があるということでしょう。毎日山ほど食品を捨て、だれもが高級な電話機を持ち歩く時代です。不安なのは、男も女も働いたら、ひとりあたりの給料が半分になっちゃうんじゃないかってことくらいです。
ぜひわたしも有能な女人にめとってもらって、家庭を守りながらのんびり小説を書きたいものです。ドカタ仕事は疲れます。
しかし男がそれでいいんでしょうか。
いいんです。だって女性のみなさんがそうおっしゃるんですから。
第十二話 暗中
「あら、おかえりなさい」
レオの館の庭で紅茶をすすっていたアクアリウスが言った。
彼女はぼくらが海に旅行に行っているあいだ館の留守を守ってくれていた。
「ただいま帰りました」
森の小道から顔を出したレオが深く頭を下げながら応えた。レオはだれに対しても偉そうにするが、アクアリウスだけには礼儀正しい。なにせいのちの恩人だし、魔法や呪術を教えてくれた師匠だ。それに何年も生活の世話もしてくれた、半ば血のつながっていない姉のような存在でもある。だから敬いながらも気の置けない仲で、こういった頼み事もできたのだろう。
「数週間ものあいだ、ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございます」
「ううん、いいのよ。かわいいあなたの頼みだもの」
「痛み入ります」
とレオはあくまで慇懃だが、アクアリウスは気さくだった。
「あら、すごい量の魂ね」
アクアリウスは”かご”を見て言った。
ぼくと使い魔たちはレオのうしろにおり、レグルスが巨虎の姿でかごをくわえていた。大型犬のケージほどもある大きなかごは重く、人間の姿では運ぶのが大変だ。馬車でここまで来られれば楽だったけど、森の中には入ってこれないので、こうしてレグルスが運んでいる。
ちなみにレオはものを軽くする魔法が使えるが、あらゆる物体の中で銀だけは魔法が効かない。魂を入れるかごは銀製だからこうするほかなかった。
「どれも白色なのね」
「はい。海の悪霊の魂です」
「ああ、そういうこと。でも軽い薬を作るのにはちょうどよさそうだわ」
「そうでしょう。今回の礼と言ってはなんですが、アクア様にもお分けさせていただきます」
「まあ、うれしいわ。ありがたくいただきましょう」
ふたりはレグルスを連れて商品倉庫へと向かった。魂は適切な方法で保管しないとどんどん消えてしまうから、まずは倉庫へと向かったのだろう。
「ぼくらも荷物を片付けようか」
ぼくはうしろを振り返り、デネボラとゾスマに言った。ゾスマはひとの姿だが、デネボラは馬の姿で背に荷物をどっさり乗せていた。アルテルフは街まで馬車を返しに行っている。
「ひいん! ひひいん!」
デネボラは荒っぽくいななき、重い馬体を館へと進めた。運動ぎらいの彼女にとって、荷物を背負うことほどいやなことはなかった。
やがてぼくらは荷を片付け、全員でみやげものを広げた。一階の大リビング、その中央の巨大なテーブルの端を埋め、ひとつひとつ並べていく。
「まずこれはアクア様へのおみやげです」
「まあ、どんなものをくれるの?」
「はい。魚の開き、乾燥貝柱、それと美しいアクア様にお似合いの真珠の指輪です」
「あら! ステキね! それにひさびさに海のものが食べられてうれしいわ」
「乾き物ですので、お帰りになってからお召し上がりください。今夜はこちらの冷凍した魚介類を焼いていっしょにいただきましょう」
「まあ~、カニさんにエビさん、それから魚の切り身もあって、いいわねぇ。たくさんあるし、これなら焼くより”土鍋”にした方がいいんじゃない?」
「は、土鍋とは」
「鍋で煮ながらつまむのよ。薄口に味をつけて、酸味のあるタレで食べるの。ここにある”芋酒”なんかよく合うと思うわ。ね、そうしましょう」
「ほう、芋酒と……それはたのしみです。ぜひそういたしましょう」
レオはゴクリとのどを鳴らし、
「おい、デネボラ。あとでアクア様に土鍋の作り方をご教授いただいて準備しろ」
「はぁい、お任せくださぁい」
デネボラは道中買ったクッキーを食べながら言った。彼女は客の前だろうがお構いなくおやつを食べる。もちろんレオはすぐに叱ったが、アクアリウスが、
「いいのよ。デネボラちゃん気にしないで」
と許したので、あるじの険しい視線も気にせず堂々としていた。
……それにしても土鍋か。いったいどんな料理なんだろう。なにせぼくら内陸の人間は海のものに疎いからなぁ。
その点アクアリウスは各所を旅しているからさまざまな調理法を知っている。土地土地の食材の、地元民しか知らないような食べ方を覚えている。
今回ぼくらが行った漁港では土鍋なんて見なかったから、レストランでは出さないような郷土料理か、よほどまれな技法なのだろう。ぼくは旅に興味はないけど、こういうのがあるとちょっとうらやましいと思っちゃうな。
ぼくらは食材の整理を終え、こんどは雑貨品を並べはじめた。
「その、ひもで繋がった貝殻はなあに?」
「ああ、これはわたしの水着です」
「水着? いいわねえ、それ。おっぱいも下も、ホタテの貝殻だけで隠すの?」
「ええ。近々これでアーサーを誘惑しようと思っています」
「ま、やらしい! アーサー君ったらしあわせものね! このお!」
とアクアリウスがぼくにウィンクした。そ、そうかもしれないけどさ……こんなみんなの前で言わないでほしいなぁ。なんでテーブルの上に置くのさ。恥ずかしいよ。
「まあ、真っ赤になっちゃって。あら、レグルスちゃんも真っ赤ね」
「あ、は、その……ひぃ」
レグルスは性的なことが大の苦手だ。言葉を聞いただけで恥ずかしくなり、下手をすれば泣いてしまう。もしかしたらレオが貝殻水着でぼくを誘惑するところを想像してしまったのかもしれない。彼女は肩をすぼめ、目を白黒させていた。
「これを着たらきっと魅力倍増よ。ねえ、レオ。レグルスちゃんにも貸してあげなさいよ。かわいくてスタイル抜群だから似合うわよ~」
「そうですね。健康的な黒い肌に白い貝殻、きっと似合うに違いありません。ぜひそうしましょう」
「えっ!? そ、そんな破廉恥なものを!?」
「わたし見たいわぁ。ねえ、荷物の整理が終わったら着て見せて。ね、いいでしょ? お願い」
「ぜ、ぜ、ぜ、絶対にいやです!」
レグルスはそう言って立ち上がり、いまにも泣きそうな赤面で逃げ去ってしまった。あーあ、かわいそうに。でもたぶんアクアリウスは悪気なんてないんだろうなぁ。
「あらあら、ウブねぇ。でもそこがあの子のかわいいところなのよね」
ほら、やっぱり。からかって遊んでるんだ。レオもそうだけど師匠もたいがいだよ。いや、この師匠にこの弟子ありってとこか。
と、ぼくがそんなことを考えていると、
「ただいまー!」
馬車を返しに行っていたアルテルフが帰ってきた。彼女は鷹だ。行きは馬の速度で、帰りは飛べるからうんと早い。
「アクア様おひさしぶりですー」
「あら、おひさしぶり」
彼女は律儀に挨拶をし、レグルスがいた席にぴょこんと座った。そして、あれはわたしのだとか、これはだれのだと、率先してものの整理をはじめた。
アルテルフはけっこう仕切り屋だ。それにレオの使い魔のリーダーでもある。といっても最初にレオに仕えたというだけで、自分で勝手にそう決めているだけらしいけど。
そんなアルテルフがなにげなく言った。
「それにしてもアクア様よく我慢できましたねー」
我慢?
「だって、アクア様はかなりの男好きでしょー? それなのに館にこもりっ切りじゃーつまんなかったでしょー」
「こら! アクア様に失礼だぞ!」
レオが手を上げそうないきおいで叱りつけた。しかし、
「いいのよ、ホントのことじゃない」
アクアリウスはにこやかだった。ちょっとくらいの失礼じゃ彼女は怒らない。アルテルフもそれがわかっているから軽口を叩くのだろう。
「すみません、うちのバカが」
「ううん、謝ることないわ。その通りだもの。実際男漁りもしてたしね」
「る、留守中にですか?」
「ああ、安心して。連れ込んだりしてないわ。うちの使い魔に留守を頼んで、近くの街や村にナンパされに行ってたのよ。田舎の男はがっついてるから簡単だったわ」
「は、はあ……」
さすがのレオもこれには呆れ気味だった。自身の淫乱ぶりを平気で話すなんてまともな精神じゃない。豪胆ともとれるが、それは男に限っての言葉だろう。
「でも失敗したわ。あの子がいればそんな必要なかったのにね」
「あの子?」
「ほら、名前なんていったかしら。アーサー君のお友達で、元騎士で、魔術師団を抜けてわたしの弟子になった子」
それって……まさかコジャッブ!?
「そうそう、コジャッブ君。あの子はこの館に来れたでしょう。捨てなければよかったわ。それにあの子の”アレ”すごく大きかったしね。まあ、テクニックはいまいちだったけど」
そういえば忘れていた。ぼくの親友コジャッブはアクアリウスの弟子になって旅立ったんだ。でも、レオが言っていた。アクアリウスは男を取っ替え引っ替えするから、きっとすぐに捨てられてしまうって。あのときは一日心配したけど、ぼくって忘れっぽいから次の日には記憶から消えてしまっていた。
ああ、コジャッブ。君はいまどうしているんだ。”捨てられた”って、どんな状態になっているんだ。ぼくに劣らない力の剣と、まだ新人とはいえ魔法の才能があるから、そう簡単にくたばることはないと思うけど……
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる