僕が君に殺されるまで

フィボナッチ恐怖症

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27話 気まぐれ

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「お疲れ様~」

 比奈が緩ーく話しかけて来る。それどころじゃ無いでしょうに。というか、今回の戦いで、比奈がえげつなく活躍していたことは明らかだ。まるで、最初から全ての展開を知っていたかのように動いていたように感じられた。まず初めに、潔が倒れた時だ。潔を隠し玉としてずっと意識を失わせたまま保持させていた。
そうか、潔が残っていることにぼくは気づかなければいけなかったのか。もやしがリーゼントを殺しても死ななかった時に把握していればもう少し戦いやすかったかもしれない。そのことが戦闘中において最もミスったと思ったことだ。
また、ナイフを床に、という指示だ。あれだけは何か今でも分からずじまいだ。
あと、あの電気の攻撃は恐らく比奈のものだ。相手の男を撹乱させる狙いがあったのだと、今落ち着いてみて気づいた。

 でも、1番大きな、トリックと呼べばいいのだろうか、それは最後の電車の脱線だ。
もやしがレーザー光線を打った時だ。なぜかもやしは下に外したのだ。あれは、比奈がもやしの手を少し微生物でずらしたのだろう。
違和感があったのは確かだ。
しかし、それで線路の一部を破壊なんて到底思いつかないし、思いついてもできないはずなのだ。ただ、ぼくは戦闘中になんとなく勘付いていた。だから、脱輪するのを待っていたのだ。

 比奈は何手先を見ているのだろうか。本当に、ぼくが守る必要なんてあるのだろうか。

 ただ、最初に頼ってくれたのだ。その事実は揺らがない。比奈ならもしかしたら、これから先ぼくが必要になる時が来るのも読んでいるのかもしれない。
きっとそうだ。そういうことにしておこう。

「今日もまた、とりあえずどこかの家を勝手に使うことにしようか」

 一旦、足の補修もしなければならないし、外にあまりいたくはないからだ。

「そうしましょう」

「ん? どうするんだ?」

 潔がよく分からないことを言った。あ、そうか。ぼくが時間のずれを解除してないからか。
確かに、今まで潔と話したのって限られたタイミングだけだったような気がする。
時間のずれを解除しておこう。

「人の家を使わせてもらおうってことだよ」

 潔に説明する。そして、3人で近くの家に窓を小さく割って入った。
家で少しゆっくりしていると、

ゴーンゴーン

 と、時計の鐘が12時を告げる。
ぼくはすぐさまプロフィール画面をチェックする。

生存者数 700万人
ポイント 37

 人も相当減ってきたな......
ポイントも37と結構増えた。どうやらあの男は殺したやつを殺してポイント稼ぎをしていたらしい。

「比奈はポイントどうなった?」

「23だった」

 大きく差が空いてしまったようだ。比奈にポイントを移行してあげたい。
と、それよりもまた今日も人探しか。人も減ってきたことだし、さっさと新しい左足を見つけたら家から出よう。
個人的にあの机の足を気に入っていたので、新しいのを探すのは少し残念な気がする。

「これでどうだ?」

 潔がそう言いながら持ってきたのは、洗濯物用の竹竿だ。しかも、本格的な竹で出来ていて、なんか高そうだ。
確かに、竹なら、動く時に適度にしなってスムーズに動けるかもしれない。

「よし、それにしよう」


 そんなこんなで2:00頃まで家の中で過ごし、外に出ることにした。
突然、比奈が玄関を出て右手の方、都心の方を指差して、

「あっちに行こう」

 と言った。比奈から提案をすることはあまりなかったため、少し意外だったが、比奈が言うことなのだから、きっと何かしらの意図があるのだろう。

「よし、そっちに行ってみようか」

 都心の方に歩いて行くと、時々死体が転がっていた。しかし、やはり黒い塊が見当たらない。

 しばらく都心のビルを見ながら向かっていると、なぜだろうか少しずつビルが小さくなっていく。
明らかにおかしい。近づいて行くほどにビルが小さくなって......
その時気づいた。ビルが1階ずつ、スッスッとだるま落としをされているかのように減っていくのが。

 きっとあそこに何かしら恐ろしいレベルの能力者がいるのだろう。しかし、こちらは3人いる。それに、強いやつならポイントをたくさん持っているはずだ。
比奈は迷いなく、小さくなっていくビルの方に向かって行く。恐らく、気づいているのだろう。いや、気づいていたのだろう。
確かに、最終的にどの相手ともぶつかるなら、恐らく単独行動であり、ポイントも持っているであろう相手を倒しに行くのが合理的だ。

 ただ、ビルを縮めるという派手なことをやっているということは、罠である可能性も高い。
誘われているような......
でも、自分のペースでいるということは、逆に油断もしやすいということ。それなら、乗ってやろうじゃないか。

 目的地に着いたときにはビルは一階だけを残して、無くなっていた。
何をしたらそんなことになるのだろうか。

「おい、いるんだろう? というか待っていたんだろう? ぼくたちが来るのを」

 呼んで出てきてくれると助かるのだが。

「ほう。まさか来る奴がいるとはな。いいだろう。歓迎してやる」

 そう言いながら、ビルの正面玄関から、スーツ姿のキッチリした姿の男が出てきた。しかし、目つきが悪く、なんか真面目感が微妙に出ていない。後、口調が偉そう。

「今のうちに降参してくれるとこっちとしてはありがたいのだがな」

 同じような口調で返答する。

「残念ながらお前では俺に勝てないと思うが」

「それはどうだろうな。こっちは3人だ。対してお前は1人。囲まれたら終わりじゃないのか?」

「確かにそうだな。もし仮に3人ならばな」

 男は薄い笑みを浮かべている。呆れたことを言うやつだ。

「比奈、潔、話しても無駄らしい。一気に行こうか」

 無駄なことは知っていた。周りの状況を把握する時間稼ぎだ。

......返答がない。

「凛、3対1じゃないよ。1対2だから」

 比奈の言っている意味が理解できなかった。

「何を言っ......」

 振り向きながらぼくは言った。いや、言おうとしたぼくの言葉は最後まで続かなかった。
比奈の隣にいたはずの潔がいつの間にかいなかった。代わりにあったのは赤い池と肉片だった。


「ほら、1対2だよ?」

やっと意味を理解した。ぼくの目から涙が溢れて来た。

「比奈。ねぇ、どうして? どうして?」

「気まぐれかな」
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