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目覚め
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目が覚めたのは3日目の夜だ。
眠りから覚め、真っ先に視界に飛び込んで来たのは、険しい表情の新だった。
新は怒るでも、泣きつくでも、喜ぶでもない。何か言いたげな顔は、本音を呑み込み、「食事にしようか」とだけ言った。
声のトーンから、少しばかり不機嫌なのが分かった。
新は普段が温厚な分、機嫌が悪いと周囲を萎縮させることがある。本人にそのつもりはないのだろうが、鬼の機嫌の善し悪しは周囲に影響を与えるのだ。
実際、座敷へと向かう道すがら、妖怪が一匹も見当たらない。
我が家はここまで静かだっただろうかと疑問に思うほど、しん、とした静けさが広がっている。
まぁ、責任の一端は僕にあるのかと思えば、反省しなければならない。
今回は軽率だった。
なんとはなしに首に手を当て、不快なざらつきに眉根が寄る。手を見れば、指先に赤黒い塊がこびり付いている。
そういえば、望海に首の付け根を噛みつかれていたなと思い出す。
痛みはない。ざらつき以外には、瘡蓋もなかった。
3日の間に、傷口は完治したようだ。僕たちは傷の治りが早いから、恐らく、噛まれた日のうちには完治していたはずだ。
いつもの座敷に入り、腰を落ち着けて、ようやく新が口を開いた。
「体調は?」
じっと僕を見る顔つきは、普段の”困り顔”とは異なる。
「全身が痛いな」
肩を竦め、軽く肩を回す。
寝返りを打つことがなかったのか、節々が錆びついたようにキリキリ痛む。肩は凝っているし、首を回せばパキパキと音が鳴る。背中は鈍痛、腰には疲労感が蓄積している。
「人間が寝すぎてキツイと言うのを聞いたことがあるが、これがそうなんだろうな」
苦笑し、手を叩く。
しばらくして、三紗が酒を運んで来た。三紗の後ろには、ひとつ目の女と狸顔の小男が盆に豪勢な料理を載せている。
牛蒡が香る鰻の炊き込みご飯、大根おろしを添えた秋刀魚の塩焼き、揚げ茄子と香味野菜の豚しゃぶ、根菜がたっぷりの肉じゃが、海老や舞茸の天麩羅、蛤の吸い物と豪勢だ。酒のツマミになりそうなものは、胡瓜と茄子と大根の浅漬けくらいしかない。
「若様。お体の方は大丈夫なのですか?」
三紗が不安げな表情をしている。
普段ならてきぱきと配膳を行う手つきが、いつにも増して鈍い。猪口を置き、徳利に触れたままの手が動いていない。
「問題ない」
僕が徳利を手にすれば、ようやく三紗が徳利を持ち、酌をしてくれる。
女中と下男が、新の機嫌を窺いつつ配膳を行う。少しばかり緊張の面持ちなのは、新の機嫌が下降したままだからだろう。手際よく配膳を済ませると、早々に頭を下げて座敷を後にしてしまった。
付き合いの長い三紗すら、居心地悪そうに身動ぎしている。
「三紗。たぶん、僕のシーツや枕が汚れている。取り換えてくれ」
「かしこまりました」
三紗は徳利を置くと、ひとつ頷いた。
「何か要りようでしたら呼んで下さい」
そう言って、新には当たらず触らずに退室して行った。
僕は三紗が注いでくれた酒を飲み干し、改めて新に向き直る。
「新。お前の機嫌が悪いと、屋敷中が怯える」
「機嫌が悪いわけじゃないよ…」
ぶすり、と唇を尖らせ、僅かばかりに怒らせていた肩から力が抜ける。
「3日間、心配で心配で堪らなかったんだ」と、眉尻を下げた。
なんとも情けない顔つきだが、普段の新に戻りつつあることに安堵する。
「最悪、君の父親に助けを求めなければとも思っていたんだ」
「悪い冗談だ」
思わず顔を顰め、新を睨みつける。
それが最善でないことは、新も理解しているらしい。「だから、最悪と言っただろ?」と小声で反論した。
「それほど心配したんだ」
新は言って、前庭へと視線を投げる。
青白い鬼火が2、3漂い、夜行性の妖怪たちが走り回っている。庭師に命じた池も元に戻ったのだろう。鬼火に照らされながら、錦鯉がジャンプした。
「コグレさんは、いつ惟親くんが起きても良いように、常に料理を作っていたよ」
なるほど。
だから滞ることなく、料理が並んだのかと得心が行く。
「ならば、コグレが腕に縒りをかけた料理に舌鼓を打とうか」
炊き込みご飯が盛られた茶碗を手に取る。鰻に牛蒡、人参が、甘辛い味付けでご飯と炊き上がっている。口いっぱいに頬張ると鰻と牛蒡の風味が鼻から抜けた。微かに人参の甘みが追いかけて来る。
不思議なもので、飯を腹に入れれば、急激な空腹が襲って来る。
「新も食え」
そう言えば、新は苦笑しながら箸を手にした。
汁物に口をつけ、笑みを浮かべると海老の天麩羅に箸を付ける。少しばかり機嫌が上向いたのが、小物たちの気配で分かる。
「で、僕が寝ていた間の報告はあるか?」
天麩羅に茶塩を付けて食べる新を見ながら、僕は豚しゃぶを頬張る。
「そうだね。これといって報告するような問題は起きてないよ。強いて伝えるなら、望海ちゃんが清掃中に玄関に飾ってある花瓶を割ったことくらいかな?」
「あれを…?」
花瓶というよりは壷だ。
紗がすっぽりと隠れられそうなサイズの、信楽焼の値の張る品だったと記憶する。色合いは地味だが、活ける花を選ばず。サイズがあるので、季節によっては梅や桜、桃なども豪快に活けられていた。
僕としては「大きな壷」ていどの感想だが、あれを好む客人は多かった。
「三紗はショックだろうな」
「ヤソさんが1時間くらい説教をしていたよ。さすがに可哀想になって止めたけどね。望海ちゃんも落ち込んで、紗ちゃんが慰めてたんだ」
その光景を思い出したのか、新は穏やかな表情で頬を緩める。
何を笑うことがある。
新は甘すぎるのだ。
「あれは女中には向かないな」
「今回は仕方ないよ。惟親くんの心配で、心ここにあらずって感じだったし。大学でも失敗続きらしくて、しょんぼりして帰って来るんだ」
可哀想に、と新まで情けない顔をする。
「それだけか?」
「あとは、穀雨くんが新しい契約書を作成してくれたよ」
「土蔵の整理か…」
「そう」と、新は頷く。
「色々と厄介そうだったしね。写真を撮ってて良かったよ」
新は嘆息して、「殆ど心霊写真だったけど」と肩を竦める。
心霊写真とは言っても、はっきりと何かが写っていたわけではない。吹雪のようにオーブが画面を覆い、人影が写り込んでいたくらいだ。
そんなものは重要ではない。重要なのは荷物の量だ。
「あれは1日じゃ無理そうだな」
「そうだろうね」
新は深々と頷き、「2日は欲しいかも」と、肉じゃがを頬張る。
コグレの肉じゃがは新に合わせているのか、牛肉少な目、じゃがいも大き目という感じだ。色合いに人参と絹さやが盛り付けられているので、見栄えが良い。
「青砥家から連絡は?」
「来たよ。他の案件もあるから、日程を調整していると返答してる」
「様子は訊いたか?」
「相変わらず、鬼が出るそうだよ」
新は口角を歪め、大きな図体を猫背にして縮める。
出るのが本物ではないと理解していても、”鬼”という言葉がダメなのだろう。頭に立派な角が2本も生えていると言うのに、ネガティブ思考で自分を卑下して止まない。
まぁ、新みたいなのが、キレると一番畏ろしいのだけど。
「で、今度は私が訊いてもいいかな?何があったんだい?」
新はぺろりと猪口の酒を舐めて、旨そうに目を細めた。
「このお酒、美味しいね」
「隣県の酒蔵から取り寄せたやつだ。小さな酒蔵だから量はないが、酒は旨い。これは秋上がりだろう」
くいっと酒を煽れば、新も酒を飲み干す。
秋上がりとは、夏を越した清酒のことだ。スッキリとした新酒とは異なり、ひと夏越した酒は熟成され、まろやかなコクのある味わいになる。
空の猪口に酒を注ぎ、飲み干し、徳利が1本空になったのを見計らって、「そうだな」と口を開いた。
「何から話すべきか」
猪口を置き、新を見据えれば、新も箸を置いた。
「あの時、望海の様子がおかしかっただろ?」
「憑かれたようにね」
「その時の会話を覚えているか?」
「会話?」と、新は無精髭を撫でた。
「確か……金屋子神の話をしていたように思うよ」
「そう」
僕は頷く。
「それに引き寄せられたんだろう。望海が僕に噛みついた時、望海の中にいたモノが、僕の中に入って来たんだ」
にやりと笑った僕に、新は片手で顔を覆った。
「まさか、自分を餌にしたわけじゃないよね?」
「どうやって望海の中から出すかを考えてはいた。それこそ、最悪は親父に頼むしかないとも思ったよ。だが、それは悪手になり兼ねない。借りは作りたくないしな」
うんざりと顔を顰める。
「お前も知ってるだろ?僕はあいつが嫌いなんだ。仕事上の付き合い以外では関わりたくはない。まぁ、そんな悩みもなくなった。僕の中に入って来たのはラッキーだったよ。まさか3日も眠り続けるとは思わなかったけどな」
ふふ、と笑えば、「笑い事じゃないだろ」と叱られた。
「だが、望海の中に入ったままだと、あいつは死んでた可能性がある。生きてても、精神がイカれてた」
僕が自分の頭を突けば、新の顔から血の気が引いた。
口元を強張らせ、「そんなに危険だったの?」と声を震わせる。
「僕が寝てる間、望海の様子は?」
「凄く心配してたよ」
「怯えているとか、眠れていないようなことは?」
新は唸り声を上げながら天井を見上げた。
頭を左右に傾げながら、「特には…」と悩んだ様子で答える。
「眠れてない様子はあるよ。惟親くんが心配だって言ってたからね。でも、何かに怯えるような様子はなかったと思う。普通に清掃に勤しんでいたし、学校にも行ってる。三紗さんからも、これといって報告は上がってないね」
「恐らく、望海は夢の始まり部分しか見ていないんだろう」
「始まり?」
新が疑問を呈すように顔を顰める。
秋刀魚の身を解し、大根おろしと一緒に口に頬張りながら、「よく分からないな」と咀嚼音と共に口の中のものを酒で飲み下す。
「つまり、望海ちゃんに入っていたナニかは、夢を見せようとしたということ?」
「そうだ」
蛤の身を食べ、汁を飲み干す。
空の椀を隅に追いやり、話を進める。
「望海に憑き、僕へと移動して来たナニかは、八市と言う」
「八市。人間かな?」
「ああ、そうだ。人間の男だな。詳しい容貌は分からないが、幼馴染を見るに、年は二十歳前後だ」
新は気難しい顔で酒を注ぎ、ぐいっと飲み干す。
「金屋子神とは違うんだね。人間が惟親くんを3日も眠らせることができるの?」
「僕は拒絶しかなかったからな」と笑えば、新に睨まれる。
「反省はしている。だが、見ないことには始まらないだろ?」
肩を竦め、秋刀魚をツマミに酒を煽る。
「僕は夢の中で、八市の記憶を追体験させられた。つまり、僕は八市だったんだ。とても生々しく、不快だったよ。序盤でも、望海には……というより、人間の女にはキツイだろうな」
それで察したのだろう。
新は口角を捻じ曲げた。
「夢の始まりは禿山の中腹で蹈鞴の村を見下ろしているところだ。要塞のように櫓が建ち、関所があり、野盗対策に武器を所持した者が見張りに立っていた。僕は……八市は、そこから山を一つ越えるんだ。まるで、何かに導かれているように、足に迷いはなかった。山を越えると、木々の間で男3人が女1人と獣のように媾っていたよ。恐らく、望海はここまでは見ていると思う」
「確かに…女の子にはキツイ場面だけど、夢を中断させるほどかな?」
「八市の感情も受けてのことなんだろうな。自分の感情と八市の感情が混ざり合うんだよ。結果、なんでもないセックスが吐き気がするほど醜穢で、気持ち悪く見えた」
暴行を加えての強姦じゃないというのに、実に不快だった。
「僕のは1mmも反応しなかったんだ」
新に人差し指を向け、アレを比喩するように上下に揺らす。
新が渋面を作った。
「望海ちゃんがそこで抵抗したとなぜ分かるんだい?」
「この後、八市は4人を斬り殺すからだ。刃毀れた刀で、容赦なく殺害する。刃毀れているから、切り口は汚いし、即死でもない。男1人は殺し損ねたが、山犬の遠吠えがしていたから、生きてはいないだろう」
「殺したって……まさか、その女は八市の奥さんだったとか?」
「いや。八市の村に女はいない。金屋子神を崇拝し、厳格なルールを敷いていた。僕の中に流れて来た感情は、女の臭いをつけて鞴を踏むのかという怒りの声だ。金屋子神は嫉妬深い女神だ。村の男衆は金屋子神の息子であり、夫でもあるという教えがある。だから、八市は掟破りを罰した。それが八市の仕事だ」
「うへぇ…」と、新は口元を歪めた。
「女性を相手にしただけで死刑になるんだ…」
手にした箸を置き、胸を摩り、ぶるりと身震いする。
「人間は恐ろしいね」
「そんな夢を見て、望海が平然と出来るはずがないだろ?」
「きっと寝込むだろうね」
新は言って、酒を煽る。
「かなりリアルだったよ。僕自身、肉を切る生々しい手応えを感じた。血の臭いも覚えている。今だって、本当に僕が斬ったんじゃないのかと疑っている」
「望海ちゃんなら耐えられないだろうね」
「ああ」
僕は人間を斬り殺すことに抵抗も躊躇いもない。リアルな手応えを思い出しても、後悔の念すら生まれない。だが、望海は違う。
初期に夢見ることを抵抗していなければ、望海は八市として人斬りになった。抗うこともできず、あの陰湿な村で半年も、陰間を相手にし、掟破りに罰を下す生活を強いられたのだ。
目が覚めれば、精神が正常である保証はない。
「惟親くん。八市というのは…」
「青砥家の先祖だろう。青砥家は石見の出身だと言っていたしな。向こうは蹈鞴が盛んだった地域だ」
「3日も寝続けたのなら、まだ続きがあるんだろう?」
聞きたくはないが、聞かなくてはならないだろうね、と新の愚痴が聞こえてきそうだ。そんな顔つきをしている。
「村に帰ると、異常な光景だった。兎に角、臭う」
「臭う?」
「色んな臭いが混ざっているんだ。女がいないから家族がいない。余計な燃料も使いたくないから、男たちは道端で酒宴を開く。博打をする。物陰では、人目も憚らずに陰間が掘られている。しかも、穴掘りが草筵に包まった腐乱死体を引き摺っているんだ。反吐が出そうだったよ」
「穴掘りというのは、墓守のようなことかな?」
「村のシステムを説明するのを忘れていたな」
僕は苦笑し、ぱりぽりと大根の浅漬けを頬張る。
「まず村を維持する担い手は、外から連れて来る。捨て子や間引かれた男児を見つけて来るんだ。陰間に良さそうな男児がいれば、買っているようだったな。子供が10才になると、それぞれの役目を決められる。蹈鞴場で働く村下。帯刀を許された社守。通称、刀持ち。八市はこれだ。社の御神体である金屋子神を護ることの他に、野盗の討伐、掟破りに鉄槌を下す処刑人、鋼を卸す際に町までの警護と多岐に渡る。穴掘りは、村で死んだ者を始末する。村の外に棄てるのが役目だ。それを目当てに獣が集まるから、村から離れた場所に遺棄する穴を掘って、そこに放り込んでいるらしい。そして、最後に陰間だ。八市の幼馴染は陰間に割り振られ、12で男を教えられるんだが、その相手が八市だ」
「どうにも稚児というのは好きになれない。それを割り切れる子供なんていないだろ?大人の捌け口でしかないんだから憐れだよ。それで内臓がやられて死ぬ子も多い」
「村そのものがカルト教団じみていて、死もセックスも隠すものじゃなかった。八市たちは、大人に囲まれた中、行為を強要されたんだ。初めてが大人では、せっかくの陰間が死にかねないから、最初は近しい年齢で慣らすらしい。痛みで泣き叫んでも止めてもらえず、強引に快楽を教え込まれ、遂には2人とも心が死んだ。八市の幼馴染は二十歳頃で病で死んだ。村で死ぬと、金屋子神を喜ばせるために蹈鞴炉の柱に吊るされる。腐り落ちると、穴掘りが処分する。八市は幼馴染が腐り落ちたのを見て、キレてしまったんだ」
違うな、と頭を振る。
「洗脳から解けたと言った方が正しいな。そして、完全にイカれてしまった」
「まさか、村人を殺して回ったとか?」
ごくり、と新が息を呑む。
「いや。八市は意外と策士だった。半年ほど、幼馴染を亡くした憐れな男を演じていたよ。陰間を抱いて、博打をして、櫓の見張りのローテンションなんかを聞き出していた。頭の中は、復讐しか考えていなかった。もはや村は護るべき家族ではなくなったんだ。実行したのは半年後の朔の晩。同僚を斬り殺し、社の御神体を盗み出し、逃亡した」
新の顔が青くなる。
「……青砥家の忌み物って……」
「可能性は高いだろうな」
「神!神様はいた!?」
座卓に手をつき、腰を浮かしたかと思うと、鬼気迫る表情で僕の顔を覗き込んで来る。
「金屋子神を見たのか、という問いなら答えはノーだ。元々が八市の記憶だからな。八市が見えていなければ意味がない。妖怪も見えなかった。僕の勘では、恐らく金屋子神はいない」
「どうして分かるの?」
「昔はいたのかも知れないが、八市は蹈鞴場の将来を危惧していた節があった。金屋子神がいたのなら、鐵の質が落ちるようなことはない」
「そうなの?」
「金屋子神は残忍だが、自分を信仰する人間には愛情深い一面があるんだ」
ため息を吐いて、豚しゃぶをひと口頬張る。
「なんにせよ、神がいないから安全とも限らない。村は掟を厳格に守っていた。思い出してもみろ。昔は迷信が根付いていたが、カルト的な迷信を遵守していた村を見たことがあるか?」
新は困惑気味に頭を振る。
「江戸の頃なら蹈鞴の村を通ったこともあるけど…普通の村だったかな…」
「そう。他所の村では、蹈鞴場が女人禁制だったくらいだ。掟を破った者が処刑されることもない。なのに、あの村は金屋子神に異常な執着を見せていたんだ」
「どうしてそこまで金屋子神に忠誠を誓ったんだろ…」
新は体を引き、すとんと腰を下ろした。
「上質な玉鋼が採れたから、村は裕福だった。家こそ質素なものだったが、庶民ではありえない上等な酒と白米が食えた。幕府の後ろ盾があり、飢饉とは無縁。戦場にならぬように協定も結ばれ、野盗を追い払う侍も定期的に寄越された。至れり尽くせりだ」
「それじゃあ、金屋子神がいたかもしれないよ?」
張り詰めた声に、僕は頭を振る。
「過去にいたのかも知れない。それは否定しない。その際に加護を受けた可能性もある。だが、一番の要因は、良い真砂砂鉄が採れたんだろ。それらの相乗効果だったのかもな」
「……鳥肌が治まらないんだけど……」
と、新が利き腕を僕に見せて来る。
鬼と言うには薄い体毛が、静電気を浴びたように逆立っている。筋肉質の腕は、蕁麻疹のようにぷつぷつと肌を粟立てている。
「お前はネガティブすぎる。もっとポジティブになれ」
「ポジティブになる要素がないだろ?」
新が不貞腐れながら腕を引っ込めた。
いじけた様子で炊き込みご飯を、ちまちまと口に運ぶ。
「今回の依頼は厄介だが、ハズレの可能性が出て来た。だが、金屋子神の加護付き御神体だ。さぞかし高値が付きそうだろ?」
「惟親くんの頭の中は、金と酒で占められてそうだよね」
深々としたため息で、新は箸を咥える。
恨めし気な視線を向けられても、依頼を反故にする気はない。
「金がなければ、旨い酒は飲めない」
ふん、と鼻を鳴らして酒を煽る。
と、騒々しい足音が屋敷の奥から聞こえた。どたどたと下品な音が、こちらへと近づいて来る。
こんな足音を立てるのは一人しかいない。
僕は嘆息し、新は箸を咥えたまま目元を緩め、廊下へと振り向いた。この些細な行動が不運を齎すなど、新は考えも及ばなかったのだろう。
「大神さん!目が覚めたんですか!?」
まだ姿も見せぬうちから望海は叫び、恐らく、何かに足をとられたのだろう。「きゃ!」と悲鳴が聞こえたかと思うと、そのままに前につんのめったのか、勢いをつけて新の胸に飛び込んで行った。
いや、そんな生易しいものじゃない。
3日ぶりに見た望海は、ロケットのように新の胸に頭突きを決めたのだ。
不運だったのは、新が箸を咥えていたことだ。衝撃で箸が喉の奥に刺さったらしい。嘔吐き、咳き込み、箸を投げ捨ててもんどりを打った。
望海が「いたたた…」と、鼻を押さえているが、痛いのは新の方だ。
「おい。新を殺す気か?」
「わ!態とじゃないんです…」
望海はしょんぼりと眉尻を下げ、新の傍らに座る。
「鬼頭さん。大丈夫ですか?」
畳に手を付き、「ごめんなさい」と頭を下げる。
土下座だけは一人前だ。
新は何度か咳き込み、喉を摩り、よたよたと体を起こした。涙目ながらに、弱々しい笑みを浮かべ、擦れ声が「大丈夫だから」と望海を宥めている。
呆れるほどお人好しだ。
投げ捨てた箸を拾い集める新を一瞥し、望海へと目を向ける。
風呂上りなのか、化粧のない子供じみた顔が反省しきりの顔で新に謝罪している。着ているものは、以前見たVネックのニットとショートパンツのパジャマだ。
「何の用だ?」
「大神さんが目覚めたって聞いたから来たんです」
ぷくり、と頬を膨らませる。
「今日も僕に抱きつきに来たのかと思った」
「は?抱きつきませんよ!」
「たっぷり胸を揉んでやっただろ?寝る時はブラジャーなしなんだな」
両手で胸を揉む仕草をすれば、望海は羞恥と憤怒で、肩を小刻みに揺らした。
「鬼頭さん。アレ、どうにかして下さい」
アレ、と僕を非難するように指さす。
新は困惑の表情だ。何しろ僕は、嘘を一言も吐いていない。
「情熱的にここに噛みついたのを覚えてないのか?」
首の付け根を指さして言えば、望海が茹で蛸になった。
「そんなことしてません!止めて下さい。セクハラですよ」
ほんとイヤ、と顔を顰めて僕を睨んでいる。
「そうか。でも、お前に襲われたのは事実だ」
「私のこと、揶揄って遊んでます?」
望海は言って、器用に片眉を跳ね上げ、目を細めて僕を見据える。
その顔を見るに、本当に何も覚えていないらしい。
「なら訊くが、3日前、お前は何をしていた?」
「え?」と、望海が不安げに新を見上げた。
新は望海を座卓の前に座らせながら、「覚えている範囲でいいよ」と軽く肩を叩いた。
「えっと…青砥さんのところの蔵を見てから記憶が途切れ途切れなんですけど…夕方の6時前には帰り着いて、三紗さんに言われてお風呂に入りました。それから仕事はないか訊いて、ご飯を食べて休めと言われたから、紗ちゃんとご飯を食べて…10時前に寝ました。で、6時のアラームで起きました」
「ん?」と、新が首を傾げた。
「夜中の0時頃に、ホットミルクを飲んだのは?」
確かに、八十吉が「少し前に起きて来て、炊事場で紗とホットミルクを飲んでいました」と言っていた。その時の時刻が、0時を少し回っていたと記憶する。
望海は驚いたように目を丸めて、「飲んでません」と頭を振った。
「私、寝つきは良いんです。一度寝たら朝まで起きません。あの日は朝から青砥さんの家に行っていたし、疲れてたから熟睡してました」
新が困惑の顔で僕を見る。
1つ言えることは、八十吉が虚偽の報告はしないということだ。化けに特化したモノの悪戯でも、望海に化けて、紗とホットミルクを飲むことに益はない。誰も驚かないし、気にも留めないからだ。
「あ…あの…私、何かしたんですか?」
先までの威勢は消え失せ、不安な表情が僕と新を交互に見ている。
「八十吉によれば、お前は0時頃に紗とホットミルクを飲んでいたそうだ。それから此処に来て、僕に抱きつき、そして、噛みついた」
とん、と噛まれた箇所を指させば、望海の顔色が青くなる。
「望海ちゃんのせいじゃないから気にしないで。あの土蔵で、質の悪いモノに憑かれたんだ」
「わ、私、何をやったんですか?も…もしかして…大神さんが寝続けたのも…私のせいですか?」
声が震えている。
新が背中を撫で、宥めているが効果は薄い。遂には声を上げて泣き出した。
こうなってくると、再び同行させるのは厳しいかもしれない。
酒を飲もうと徳利を振れば、酒が切れている。手を叩き、酒が来るのを待つ間、秋刀魚を平らげた。
酒を持って来たのは顔のない女だ。てきぱきと空の徳利と椀を下げ、骨しか残っていない秋刀魚を乗せた長皿を盆に載せ、早々に退出して行った。
僕は酒を煽り、小さく息を吐く。
「新。青砥家の依頼だが、レンタカーを借りて行くから、手配を頼むぞ」
「ワンボックス?」
「それがいいだろ。日程は1泊2日だな。2日あれば片付けられるだろう。あとは穀雨に任せることにする」
「穀雨くんに丸投げだと伝えておこう」
新は望海の背中に手を当てたまま、「う~ん」と考え込むように天井を見上げた。
「泊りがけになるなら、望海ちゃんはどうするの?土蔵の件もあるし…」
望海がニットの袖で涙を拭い、洟を啜りながら僕を見る。なんとも恨めし気な目だ。
「…行きます」
「ホテルの部屋が取れればいいけど、取れなければ私たちと雑魚寝になるんだよ?以前、穀雨くんを現場に連れて行った時、まさに雑魚寝でね。でも、望海ちゃんは女の子だから…」
「大丈夫です!」
ずびずびと鼻を鳴らし、唇を噛んだ。
「問題はお前が女かどうかじゃない。霊媒体質かどうかだ」
「確かに…そうだね」
新が困ったように眉を八の字にする。
「惟親くん。何かお守りみたいなのは作れないの?」
「僕より適任がいるだろうが」
そう言えば、新は気が乗らないとばかりに「ああ…」と頭を掻いた。
望海は両手で涙を拭いながら、不安げな顔で僕を見ている。
「私は…中途半端に仕事を投げ出したくはないです…。怖いけど…」
「まぁ、今回の同行はお前が考えればいい。お前がパスしても、他の奴を見繕う。雑用が出来れば良いんだ」
「穀雨くんはダメだよ?フィールドワークは嫌がってるから。雑用なんて頼んだら、青砥家に氷が張るかも」
「それじゃあ、他の人間っぽいのは……」
誰かいただろうか、と腕を組む。
狐狸の類は化けることは得意だが、パーフェクトじゃない。三紗でさえ、24時間ぶっ続けで化けていることはできないだろう。ふとした拍子に、耳や尻尾が出かねない。八十吉は見てくれは人間だが、些細な動作が人間ではない。
やはり、穀雨が最も人間らしいのだ。
「あの!私、パスするなんて言ってません」
思わず、新と一緒に望海を注視してしまう。
ぶすりと唇を尖らせ、「行きます」と宣言している。
「でもね、望海ちゃん。怖い思いをしただろ?それに、惟親くんのセクハラは嫌だって…」
「そうですけど…。大神さんのセクハラは鬼頭さんが止めて下さい。あと、私は蔵に入りません。入らなければセーフじゃないですか?蔵の整理ですよね?2人が蔵の物を外に出して、私と青砥さんが記録付けと、コレクションの選り分けをすれば良いと思います」
それが妥当なのだろう。
新の表情は渋いが、僕は不承不承と頷いた。
眠りから覚め、真っ先に視界に飛び込んで来たのは、険しい表情の新だった。
新は怒るでも、泣きつくでも、喜ぶでもない。何か言いたげな顔は、本音を呑み込み、「食事にしようか」とだけ言った。
声のトーンから、少しばかり不機嫌なのが分かった。
新は普段が温厚な分、機嫌が悪いと周囲を萎縮させることがある。本人にそのつもりはないのだろうが、鬼の機嫌の善し悪しは周囲に影響を与えるのだ。
実際、座敷へと向かう道すがら、妖怪が一匹も見当たらない。
我が家はここまで静かだっただろうかと疑問に思うほど、しん、とした静けさが広がっている。
まぁ、責任の一端は僕にあるのかと思えば、反省しなければならない。
今回は軽率だった。
なんとはなしに首に手を当て、不快なざらつきに眉根が寄る。手を見れば、指先に赤黒い塊がこびり付いている。
そういえば、望海に首の付け根を噛みつかれていたなと思い出す。
痛みはない。ざらつき以外には、瘡蓋もなかった。
3日の間に、傷口は完治したようだ。僕たちは傷の治りが早いから、恐らく、噛まれた日のうちには完治していたはずだ。
いつもの座敷に入り、腰を落ち着けて、ようやく新が口を開いた。
「体調は?」
じっと僕を見る顔つきは、普段の”困り顔”とは異なる。
「全身が痛いな」
肩を竦め、軽く肩を回す。
寝返りを打つことがなかったのか、節々が錆びついたようにキリキリ痛む。肩は凝っているし、首を回せばパキパキと音が鳴る。背中は鈍痛、腰には疲労感が蓄積している。
「人間が寝すぎてキツイと言うのを聞いたことがあるが、これがそうなんだろうな」
苦笑し、手を叩く。
しばらくして、三紗が酒を運んで来た。三紗の後ろには、ひとつ目の女と狸顔の小男が盆に豪勢な料理を載せている。
牛蒡が香る鰻の炊き込みご飯、大根おろしを添えた秋刀魚の塩焼き、揚げ茄子と香味野菜の豚しゃぶ、根菜がたっぷりの肉じゃが、海老や舞茸の天麩羅、蛤の吸い物と豪勢だ。酒のツマミになりそうなものは、胡瓜と茄子と大根の浅漬けくらいしかない。
「若様。お体の方は大丈夫なのですか?」
三紗が不安げな表情をしている。
普段ならてきぱきと配膳を行う手つきが、いつにも増して鈍い。猪口を置き、徳利に触れたままの手が動いていない。
「問題ない」
僕が徳利を手にすれば、ようやく三紗が徳利を持ち、酌をしてくれる。
女中と下男が、新の機嫌を窺いつつ配膳を行う。少しばかり緊張の面持ちなのは、新の機嫌が下降したままだからだろう。手際よく配膳を済ませると、早々に頭を下げて座敷を後にしてしまった。
付き合いの長い三紗すら、居心地悪そうに身動ぎしている。
「三紗。たぶん、僕のシーツや枕が汚れている。取り換えてくれ」
「かしこまりました」
三紗は徳利を置くと、ひとつ頷いた。
「何か要りようでしたら呼んで下さい」
そう言って、新には当たらず触らずに退室して行った。
僕は三紗が注いでくれた酒を飲み干し、改めて新に向き直る。
「新。お前の機嫌が悪いと、屋敷中が怯える」
「機嫌が悪いわけじゃないよ…」
ぶすり、と唇を尖らせ、僅かばかりに怒らせていた肩から力が抜ける。
「3日間、心配で心配で堪らなかったんだ」と、眉尻を下げた。
なんとも情けない顔つきだが、普段の新に戻りつつあることに安堵する。
「最悪、君の父親に助けを求めなければとも思っていたんだ」
「悪い冗談だ」
思わず顔を顰め、新を睨みつける。
それが最善でないことは、新も理解しているらしい。「だから、最悪と言っただろ?」と小声で反論した。
「それほど心配したんだ」
新は言って、前庭へと視線を投げる。
青白い鬼火が2、3漂い、夜行性の妖怪たちが走り回っている。庭師に命じた池も元に戻ったのだろう。鬼火に照らされながら、錦鯉がジャンプした。
「コグレさんは、いつ惟親くんが起きても良いように、常に料理を作っていたよ」
なるほど。
だから滞ることなく、料理が並んだのかと得心が行く。
「ならば、コグレが腕に縒りをかけた料理に舌鼓を打とうか」
炊き込みご飯が盛られた茶碗を手に取る。鰻に牛蒡、人参が、甘辛い味付けでご飯と炊き上がっている。口いっぱいに頬張ると鰻と牛蒡の風味が鼻から抜けた。微かに人参の甘みが追いかけて来る。
不思議なもので、飯を腹に入れれば、急激な空腹が襲って来る。
「新も食え」
そう言えば、新は苦笑しながら箸を手にした。
汁物に口をつけ、笑みを浮かべると海老の天麩羅に箸を付ける。少しばかり機嫌が上向いたのが、小物たちの気配で分かる。
「で、僕が寝ていた間の報告はあるか?」
天麩羅に茶塩を付けて食べる新を見ながら、僕は豚しゃぶを頬張る。
「そうだね。これといって報告するような問題は起きてないよ。強いて伝えるなら、望海ちゃんが清掃中に玄関に飾ってある花瓶を割ったことくらいかな?」
「あれを…?」
花瓶というよりは壷だ。
紗がすっぽりと隠れられそうなサイズの、信楽焼の値の張る品だったと記憶する。色合いは地味だが、活ける花を選ばず。サイズがあるので、季節によっては梅や桜、桃なども豪快に活けられていた。
僕としては「大きな壷」ていどの感想だが、あれを好む客人は多かった。
「三紗はショックだろうな」
「ヤソさんが1時間くらい説教をしていたよ。さすがに可哀想になって止めたけどね。望海ちゃんも落ち込んで、紗ちゃんが慰めてたんだ」
その光景を思い出したのか、新は穏やかな表情で頬を緩める。
何を笑うことがある。
新は甘すぎるのだ。
「あれは女中には向かないな」
「今回は仕方ないよ。惟親くんの心配で、心ここにあらずって感じだったし。大学でも失敗続きらしくて、しょんぼりして帰って来るんだ」
可哀想に、と新まで情けない顔をする。
「それだけか?」
「あとは、穀雨くんが新しい契約書を作成してくれたよ」
「土蔵の整理か…」
「そう」と、新は頷く。
「色々と厄介そうだったしね。写真を撮ってて良かったよ」
新は嘆息して、「殆ど心霊写真だったけど」と肩を竦める。
心霊写真とは言っても、はっきりと何かが写っていたわけではない。吹雪のようにオーブが画面を覆い、人影が写り込んでいたくらいだ。
そんなものは重要ではない。重要なのは荷物の量だ。
「あれは1日じゃ無理そうだな」
「そうだろうね」
新は深々と頷き、「2日は欲しいかも」と、肉じゃがを頬張る。
コグレの肉じゃがは新に合わせているのか、牛肉少な目、じゃがいも大き目という感じだ。色合いに人参と絹さやが盛り付けられているので、見栄えが良い。
「青砥家から連絡は?」
「来たよ。他の案件もあるから、日程を調整していると返答してる」
「様子は訊いたか?」
「相変わらず、鬼が出るそうだよ」
新は口角を歪め、大きな図体を猫背にして縮める。
出るのが本物ではないと理解していても、”鬼”という言葉がダメなのだろう。頭に立派な角が2本も生えていると言うのに、ネガティブ思考で自分を卑下して止まない。
まぁ、新みたいなのが、キレると一番畏ろしいのだけど。
「で、今度は私が訊いてもいいかな?何があったんだい?」
新はぺろりと猪口の酒を舐めて、旨そうに目を細めた。
「このお酒、美味しいね」
「隣県の酒蔵から取り寄せたやつだ。小さな酒蔵だから量はないが、酒は旨い。これは秋上がりだろう」
くいっと酒を煽れば、新も酒を飲み干す。
秋上がりとは、夏を越した清酒のことだ。スッキリとした新酒とは異なり、ひと夏越した酒は熟成され、まろやかなコクのある味わいになる。
空の猪口に酒を注ぎ、飲み干し、徳利が1本空になったのを見計らって、「そうだな」と口を開いた。
「何から話すべきか」
猪口を置き、新を見据えれば、新も箸を置いた。
「あの時、望海の様子がおかしかっただろ?」
「憑かれたようにね」
「その時の会話を覚えているか?」
「会話?」と、新は無精髭を撫でた。
「確か……金屋子神の話をしていたように思うよ」
「そう」
僕は頷く。
「それに引き寄せられたんだろう。望海が僕に噛みついた時、望海の中にいたモノが、僕の中に入って来たんだ」
にやりと笑った僕に、新は片手で顔を覆った。
「まさか、自分を餌にしたわけじゃないよね?」
「どうやって望海の中から出すかを考えてはいた。それこそ、最悪は親父に頼むしかないとも思ったよ。だが、それは悪手になり兼ねない。借りは作りたくないしな」
うんざりと顔を顰める。
「お前も知ってるだろ?僕はあいつが嫌いなんだ。仕事上の付き合い以外では関わりたくはない。まぁ、そんな悩みもなくなった。僕の中に入って来たのはラッキーだったよ。まさか3日も眠り続けるとは思わなかったけどな」
ふふ、と笑えば、「笑い事じゃないだろ」と叱られた。
「だが、望海の中に入ったままだと、あいつは死んでた可能性がある。生きてても、精神がイカれてた」
僕が自分の頭を突けば、新の顔から血の気が引いた。
口元を強張らせ、「そんなに危険だったの?」と声を震わせる。
「僕が寝てる間、望海の様子は?」
「凄く心配してたよ」
「怯えているとか、眠れていないようなことは?」
新は唸り声を上げながら天井を見上げた。
頭を左右に傾げながら、「特には…」と悩んだ様子で答える。
「眠れてない様子はあるよ。惟親くんが心配だって言ってたからね。でも、何かに怯えるような様子はなかったと思う。普通に清掃に勤しんでいたし、学校にも行ってる。三紗さんからも、これといって報告は上がってないね」
「恐らく、望海は夢の始まり部分しか見ていないんだろう」
「始まり?」
新が疑問を呈すように顔を顰める。
秋刀魚の身を解し、大根おろしと一緒に口に頬張りながら、「よく分からないな」と咀嚼音と共に口の中のものを酒で飲み下す。
「つまり、望海ちゃんに入っていたナニかは、夢を見せようとしたということ?」
「そうだ」
蛤の身を食べ、汁を飲み干す。
空の椀を隅に追いやり、話を進める。
「望海に憑き、僕へと移動して来たナニかは、八市と言う」
「八市。人間かな?」
「ああ、そうだ。人間の男だな。詳しい容貌は分からないが、幼馴染を見るに、年は二十歳前後だ」
新は気難しい顔で酒を注ぎ、ぐいっと飲み干す。
「金屋子神とは違うんだね。人間が惟親くんを3日も眠らせることができるの?」
「僕は拒絶しかなかったからな」と笑えば、新に睨まれる。
「反省はしている。だが、見ないことには始まらないだろ?」
肩を竦め、秋刀魚をツマミに酒を煽る。
「僕は夢の中で、八市の記憶を追体験させられた。つまり、僕は八市だったんだ。とても生々しく、不快だったよ。序盤でも、望海には……というより、人間の女にはキツイだろうな」
それで察したのだろう。
新は口角を捻じ曲げた。
「夢の始まりは禿山の中腹で蹈鞴の村を見下ろしているところだ。要塞のように櫓が建ち、関所があり、野盗対策に武器を所持した者が見張りに立っていた。僕は……八市は、そこから山を一つ越えるんだ。まるで、何かに導かれているように、足に迷いはなかった。山を越えると、木々の間で男3人が女1人と獣のように媾っていたよ。恐らく、望海はここまでは見ていると思う」
「確かに…女の子にはキツイ場面だけど、夢を中断させるほどかな?」
「八市の感情も受けてのことなんだろうな。自分の感情と八市の感情が混ざり合うんだよ。結果、なんでもないセックスが吐き気がするほど醜穢で、気持ち悪く見えた」
暴行を加えての強姦じゃないというのに、実に不快だった。
「僕のは1mmも反応しなかったんだ」
新に人差し指を向け、アレを比喩するように上下に揺らす。
新が渋面を作った。
「望海ちゃんがそこで抵抗したとなぜ分かるんだい?」
「この後、八市は4人を斬り殺すからだ。刃毀れた刀で、容赦なく殺害する。刃毀れているから、切り口は汚いし、即死でもない。男1人は殺し損ねたが、山犬の遠吠えがしていたから、生きてはいないだろう」
「殺したって……まさか、その女は八市の奥さんだったとか?」
「いや。八市の村に女はいない。金屋子神を崇拝し、厳格なルールを敷いていた。僕の中に流れて来た感情は、女の臭いをつけて鞴を踏むのかという怒りの声だ。金屋子神は嫉妬深い女神だ。村の男衆は金屋子神の息子であり、夫でもあるという教えがある。だから、八市は掟破りを罰した。それが八市の仕事だ」
「うへぇ…」と、新は口元を歪めた。
「女性を相手にしただけで死刑になるんだ…」
手にした箸を置き、胸を摩り、ぶるりと身震いする。
「人間は恐ろしいね」
「そんな夢を見て、望海が平然と出来るはずがないだろ?」
「きっと寝込むだろうね」
新は言って、酒を煽る。
「かなりリアルだったよ。僕自身、肉を切る生々しい手応えを感じた。血の臭いも覚えている。今だって、本当に僕が斬ったんじゃないのかと疑っている」
「望海ちゃんなら耐えられないだろうね」
「ああ」
僕は人間を斬り殺すことに抵抗も躊躇いもない。リアルな手応えを思い出しても、後悔の念すら生まれない。だが、望海は違う。
初期に夢見ることを抵抗していなければ、望海は八市として人斬りになった。抗うこともできず、あの陰湿な村で半年も、陰間を相手にし、掟破りに罰を下す生活を強いられたのだ。
目が覚めれば、精神が正常である保証はない。
「惟親くん。八市というのは…」
「青砥家の先祖だろう。青砥家は石見の出身だと言っていたしな。向こうは蹈鞴が盛んだった地域だ」
「3日も寝続けたのなら、まだ続きがあるんだろう?」
聞きたくはないが、聞かなくてはならないだろうね、と新の愚痴が聞こえてきそうだ。そんな顔つきをしている。
「村に帰ると、異常な光景だった。兎に角、臭う」
「臭う?」
「色んな臭いが混ざっているんだ。女がいないから家族がいない。余計な燃料も使いたくないから、男たちは道端で酒宴を開く。博打をする。物陰では、人目も憚らずに陰間が掘られている。しかも、穴掘りが草筵に包まった腐乱死体を引き摺っているんだ。反吐が出そうだったよ」
「穴掘りというのは、墓守のようなことかな?」
「村のシステムを説明するのを忘れていたな」
僕は苦笑し、ぱりぽりと大根の浅漬けを頬張る。
「まず村を維持する担い手は、外から連れて来る。捨て子や間引かれた男児を見つけて来るんだ。陰間に良さそうな男児がいれば、買っているようだったな。子供が10才になると、それぞれの役目を決められる。蹈鞴場で働く村下。帯刀を許された社守。通称、刀持ち。八市はこれだ。社の御神体である金屋子神を護ることの他に、野盗の討伐、掟破りに鉄槌を下す処刑人、鋼を卸す際に町までの警護と多岐に渡る。穴掘りは、村で死んだ者を始末する。村の外に棄てるのが役目だ。それを目当てに獣が集まるから、村から離れた場所に遺棄する穴を掘って、そこに放り込んでいるらしい。そして、最後に陰間だ。八市の幼馴染は陰間に割り振られ、12で男を教えられるんだが、その相手が八市だ」
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「村そのものがカルト教団じみていて、死もセックスも隠すものじゃなかった。八市たちは、大人に囲まれた中、行為を強要されたんだ。初めてが大人では、せっかくの陰間が死にかねないから、最初は近しい年齢で慣らすらしい。痛みで泣き叫んでも止めてもらえず、強引に快楽を教え込まれ、遂には2人とも心が死んだ。八市の幼馴染は二十歳頃で病で死んだ。村で死ぬと、金屋子神を喜ばせるために蹈鞴炉の柱に吊るされる。腐り落ちると、穴掘りが処分する。八市は幼馴染が腐り落ちたのを見て、キレてしまったんだ」
違うな、と頭を振る。
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ごくり、と新が息を呑む。
「いや。八市は意外と策士だった。半年ほど、幼馴染を亡くした憐れな男を演じていたよ。陰間を抱いて、博打をして、櫓の見張りのローテンションなんかを聞き出していた。頭の中は、復讐しか考えていなかった。もはや村は護るべき家族ではなくなったんだ。実行したのは半年後の朔の晩。同僚を斬り殺し、社の御神体を盗み出し、逃亡した」
新の顔が青くなる。
「……青砥家の忌み物って……」
「可能性は高いだろうな」
「神!神様はいた!?」
座卓に手をつき、腰を浮かしたかと思うと、鬼気迫る表情で僕の顔を覗き込んで来る。
「金屋子神を見たのか、という問いなら答えはノーだ。元々が八市の記憶だからな。八市が見えていなければ意味がない。妖怪も見えなかった。僕の勘では、恐らく金屋子神はいない」
「どうして分かるの?」
「昔はいたのかも知れないが、八市は蹈鞴場の将来を危惧していた節があった。金屋子神がいたのなら、鐵の質が落ちるようなことはない」
「そうなの?」
「金屋子神は残忍だが、自分を信仰する人間には愛情深い一面があるんだ」
ため息を吐いて、豚しゃぶをひと口頬張る。
「なんにせよ、神がいないから安全とも限らない。村は掟を厳格に守っていた。思い出してもみろ。昔は迷信が根付いていたが、カルト的な迷信を遵守していた村を見たことがあるか?」
新は困惑気味に頭を振る。
「江戸の頃なら蹈鞴の村を通ったこともあるけど…普通の村だったかな…」
「そう。他所の村では、蹈鞴場が女人禁制だったくらいだ。掟を破った者が処刑されることもない。なのに、あの村は金屋子神に異常な執着を見せていたんだ」
「どうしてそこまで金屋子神に忠誠を誓ったんだろ…」
新は体を引き、すとんと腰を下ろした。
「上質な玉鋼が採れたから、村は裕福だった。家こそ質素なものだったが、庶民ではありえない上等な酒と白米が食えた。幕府の後ろ盾があり、飢饉とは無縁。戦場にならぬように協定も結ばれ、野盗を追い払う侍も定期的に寄越された。至れり尽くせりだ」
「それじゃあ、金屋子神がいたかもしれないよ?」
張り詰めた声に、僕は頭を振る。
「過去にいたのかも知れない。それは否定しない。その際に加護を受けた可能性もある。だが、一番の要因は、良い真砂砂鉄が採れたんだろ。それらの相乗効果だったのかもな」
「……鳥肌が治まらないんだけど……」
と、新が利き腕を僕に見せて来る。
鬼と言うには薄い体毛が、静電気を浴びたように逆立っている。筋肉質の腕は、蕁麻疹のようにぷつぷつと肌を粟立てている。
「お前はネガティブすぎる。もっとポジティブになれ」
「ポジティブになる要素がないだろ?」
新が不貞腐れながら腕を引っ込めた。
いじけた様子で炊き込みご飯を、ちまちまと口に運ぶ。
「今回の依頼は厄介だが、ハズレの可能性が出て来た。だが、金屋子神の加護付き御神体だ。さぞかし高値が付きそうだろ?」
「惟親くんの頭の中は、金と酒で占められてそうだよね」
深々としたため息で、新は箸を咥える。
恨めし気な視線を向けられても、依頼を反故にする気はない。
「金がなければ、旨い酒は飲めない」
ふん、と鼻を鳴らして酒を煽る。
と、騒々しい足音が屋敷の奥から聞こえた。どたどたと下品な音が、こちらへと近づいて来る。
こんな足音を立てるのは一人しかいない。
僕は嘆息し、新は箸を咥えたまま目元を緩め、廊下へと振り向いた。この些細な行動が不運を齎すなど、新は考えも及ばなかったのだろう。
「大神さん!目が覚めたんですか!?」
まだ姿も見せぬうちから望海は叫び、恐らく、何かに足をとられたのだろう。「きゃ!」と悲鳴が聞こえたかと思うと、そのままに前につんのめったのか、勢いをつけて新の胸に飛び込んで行った。
いや、そんな生易しいものじゃない。
3日ぶりに見た望海は、ロケットのように新の胸に頭突きを決めたのだ。
不運だったのは、新が箸を咥えていたことだ。衝撃で箸が喉の奥に刺さったらしい。嘔吐き、咳き込み、箸を投げ捨ててもんどりを打った。
望海が「いたたた…」と、鼻を押さえているが、痛いのは新の方だ。
「おい。新を殺す気か?」
「わ!態とじゃないんです…」
望海はしょんぼりと眉尻を下げ、新の傍らに座る。
「鬼頭さん。大丈夫ですか?」
畳に手を付き、「ごめんなさい」と頭を下げる。
土下座だけは一人前だ。
新は何度か咳き込み、喉を摩り、よたよたと体を起こした。涙目ながらに、弱々しい笑みを浮かべ、擦れ声が「大丈夫だから」と望海を宥めている。
呆れるほどお人好しだ。
投げ捨てた箸を拾い集める新を一瞥し、望海へと目を向ける。
風呂上りなのか、化粧のない子供じみた顔が反省しきりの顔で新に謝罪している。着ているものは、以前見たVネックのニットとショートパンツのパジャマだ。
「何の用だ?」
「大神さんが目覚めたって聞いたから来たんです」
ぷくり、と頬を膨らませる。
「今日も僕に抱きつきに来たのかと思った」
「は?抱きつきませんよ!」
「たっぷり胸を揉んでやっただろ?寝る時はブラジャーなしなんだな」
両手で胸を揉む仕草をすれば、望海は羞恥と憤怒で、肩を小刻みに揺らした。
「鬼頭さん。アレ、どうにかして下さい」
アレ、と僕を非難するように指さす。
新は困惑の表情だ。何しろ僕は、嘘を一言も吐いていない。
「情熱的にここに噛みついたのを覚えてないのか?」
首の付け根を指さして言えば、望海が茹で蛸になった。
「そんなことしてません!止めて下さい。セクハラですよ」
ほんとイヤ、と顔を顰めて僕を睨んでいる。
「そうか。でも、お前に襲われたのは事実だ」
「私のこと、揶揄って遊んでます?」
望海は言って、器用に片眉を跳ね上げ、目を細めて僕を見据える。
その顔を見るに、本当に何も覚えていないらしい。
「なら訊くが、3日前、お前は何をしていた?」
「え?」と、望海が不安げに新を見上げた。
新は望海を座卓の前に座らせながら、「覚えている範囲でいいよ」と軽く肩を叩いた。
「えっと…青砥さんのところの蔵を見てから記憶が途切れ途切れなんですけど…夕方の6時前には帰り着いて、三紗さんに言われてお風呂に入りました。それから仕事はないか訊いて、ご飯を食べて休めと言われたから、紗ちゃんとご飯を食べて…10時前に寝ました。で、6時のアラームで起きました」
「ん?」と、新が首を傾げた。
「夜中の0時頃に、ホットミルクを飲んだのは?」
確かに、八十吉が「少し前に起きて来て、炊事場で紗とホットミルクを飲んでいました」と言っていた。その時の時刻が、0時を少し回っていたと記憶する。
望海は驚いたように目を丸めて、「飲んでません」と頭を振った。
「私、寝つきは良いんです。一度寝たら朝まで起きません。あの日は朝から青砥さんの家に行っていたし、疲れてたから熟睡してました」
新が困惑の顔で僕を見る。
1つ言えることは、八十吉が虚偽の報告はしないということだ。化けに特化したモノの悪戯でも、望海に化けて、紗とホットミルクを飲むことに益はない。誰も驚かないし、気にも留めないからだ。
「あ…あの…私、何かしたんですか?」
先までの威勢は消え失せ、不安な表情が僕と新を交互に見ている。
「八十吉によれば、お前は0時頃に紗とホットミルクを飲んでいたそうだ。それから此処に来て、僕に抱きつき、そして、噛みついた」
とん、と噛まれた箇所を指させば、望海の顔色が青くなる。
「望海ちゃんのせいじゃないから気にしないで。あの土蔵で、質の悪いモノに憑かれたんだ」
「わ、私、何をやったんですか?も…もしかして…大神さんが寝続けたのも…私のせいですか?」
声が震えている。
新が背中を撫で、宥めているが効果は薄い。遂には声を上げて泣き出した。
こうなってくると、再び同行させるのは厳しいかもしれない。
酒を飲もうと徳利を振れば、酒が切れている。手を叩き、酒が来るのを待つ間、秋刀魚を平らげた。
酒を持って来たのは顔のない女だ。てきぱきと空の徳利と椀を下げ、骨しか残っていない秋刀魚を乗せた長皿を盆に載せ、早々に退出して行った。
僕は酒を煽り、小さく息を吐く。
「新。青砥家の依頼だが、レンタカーを借りて行くから、手配を頼むぞ」
「ワンボックス?」
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新は望海の背中に手を当てたまま、「う~ん」と考え込むように天井を見上げた。
「泊りがけになるなら、望海ちゃんはどうするの?土蔵の件もあるし…」
望海がニットの袖で涙を拭い、洟を啜りながら僕を見る。なんとも恨めし気な目だ。
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望海は両手で涙を拭いながら、不安げな顔で僕を見ている。
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「それじゃあ、他の人間っぽいのは……」
誰かいただろうか、と腕を組む。
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やはり、穀雨が最も人間らしいのだ。
「あの!私、パスするなんて言ってません」
思わず、新と一緒に望海を注視してしまう。
ぶすりと唇を尖らせ、「行きます」と宣言している。
「でもね、望海ちゃん。怖い思いをしただろ?それに、惟親くんのセクハラは嫌だって…」
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新の表情は渋いが、僕は不承不承と頷いた。
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