騎士団長のお抱え薬師

衣更月

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鼎談

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 ローリック村から戻った翌日。
 第3騎士団の応接室で向き合うのはグレン団長だ。
 普段は王子様然りとした風貌のグレン団長が、今日に限っては草臥れている。
 覇気のない声音に、目の下には立派な隈。風呂にも入れていないようで、鳥の巣状にこんがらがった黒髪は少し脂っぽい。口周りに生えた無精髭も、そろそろ”無精”の域を出そうな濃さがある。
 あと、すごく臭い。
 汗と、微かに厩の臭いがする。
 窓を閉め切った密室だったらむせてたと思うほどだ。
 2徹目か3徹目か、もっとかも…。
「しかし、大伯母様が無事で良かった。なんて言うと叱られそうだけど、グレートウルフの襲撃に遭って死者数が9名だったのは、不幸中の幸いだな…」
「ルートは探れたのか?」
「隣領だ。ルートはペルル川。川縁に複数の足跡が見つかった」
 残念ながら、地理に疎い私には分からないけど、ジャレッド団長は違う。
「ペルル川?」と、器用に片方の眉を跳ね上げた。
「領境の一部は急流になっているはずだ。川幅もある。橋を……いや、まさか、泳いだのか?」
「境界線ぎりぎりまで調べたよ。川面から突出している岩肌に、何ヶ所か獣の爪痕を見つけた。激流を泳いだか、点在する岩を足場にしたのかは知らないが、渡って来たのは確かだよ」
 グレン団長は肩を竦め、握っていた手拭いで顔を拭うと疲弊したため息をひとつ落とした。
「で、その調査中、お隣さんのがぞろぞろ来たよ。そりゃあ、そうだ。隣の騎士が領境付近で嗅ぎまわってたら、こっちだって何だ何だと探りに行くよ」
「問題は?」
「ないない」と、グレン団長が苦笑する。
「別に隠しごとでもないしな。正直にグレートウルフの調査だと言ったら、あちらさん、顔面蒼白で走って行った。今頃、向こうも調査に駆け回ってるんじゃないか?もしかすると、いくつかの集落で被害が出てるかもしれないな」
 そう言って、紅茶を一気に飲み干す。
「この魔物の多さ、どうなってんだって感じだよ。今朝は、こっちでジャッカロープだ」
「群れと言ったか。ケリはついたのか?」
 と、ジャレッド団長が眉を顰める。
「ついた…。いや…どうかな。森の中までは追えないから、人里に出た分は討伐し終えた。肉が手に入ったと喜ぶにしても、魔物が湧きすぎ!」
魔物の暴走スタンピードじゃないだけマシだろ?」
 肩を竦め、紅茶に口をつけるジャレッド団長に、グレン団長は恨めし気な目を向ける。
 ちょっとばかり唇を尖らせ、乱暴な手櫛で頭を整え姿勢を正すと、あら不思議。アンニュイな王子様の出来上がりだ。
 無精髭の分、ワイルドさがあるけれど。
「前回は魔物はそれほどでもなかったけど、今回は酷い」
「兄上が領民に武装を許可したそうだ」
「さすがに死者が出たんじゃね…。イヴがいてくれて良かったよ」
 グレン団長が私に顔を向け、口元に弱々しい笑みを浮かべる。
 快活なグレン団長とは違い、憂いのあるグレン団長は麗しさに磨きがかかる気がする。兄弟なだけあって、ハワード団長に似ているのだ。
「治験で、聖魔力の入った薬の効果には驚いたよ」
「さっき、薬の納品ついでに新しく作ったっていう治療室に行きましたよ。数人の怪我人が寝てましたが、グレン団長が目の下に隈を作るほどに魔物が多いんですか?」
 怪我を負った騎士は4人。
 痛み止め薬を処方され、強烈な眠気でダウンしていた。痛みに強い獣人が鎮痛薬を処方されたのだから、よほど大きな怪我なのだと思う。
「多いな。兄貴が言うような魔物の暴走スタンピードじゃない分、御しやすくはあるが…。今冬を考えれば、田畑を荒らされたくはない。人命が優先ではあるけど、田畑を荒らされるというのは、結局は冬に餓死者を出すことに繋がるからな。昼夜問わず、第3は領内を駆け回っているよ」
魔物の暴走スタンピードは大量の魔物が森から溢れるんですよね?」
 昔話として聞いたことがある。
 魔物への警戒心を忘れないようにと、貧富貴賤関係なく、森に沿った領地に住む者は子供の頃から聞かされて育つ。
 キャトラル王国でもヴォレアナズ帝国でも魔物の暴走スタンピードが記録されているのは百年以上昔になると聞く。各地に冒険者ギルドが設立され、冒険者たちが魔物を狩り、森から溢れることを防いでいるために魔物の暴走スタンピードが起き難くくなったそうだ。
 それでも、数年に1度は何処かの国で小規模な魔物の暴走スタンピードが起こる。
 ちなみに、”魔女の森”は他所の森よりも深く、危険度が高い魔物が棲息しているので、”魔女の森”を有する6ヵ国は、森に関する平和協定を結んでいる。
 何しろ、ひとたび大規模な魔物の暴走スタンピードが起これば国が傾くと言われているのだ。
 国が傾く理由の1つが、魔物の暴走スタンピードが起きたどさくさ紛れ戦争をしかける国があるからだ。
 そもそも魔物の暴走スタンピードという多くの国が抱える脅威の隙を衝く卑怯国は、近隣諸国から総スカンを食らうので戦勝国とはならない。ただ復興を大幅に遅らせる負債を残すだけだ。
 その為、”魔女の森”に接する6ヵ国は如何な理由があれど、戦争に森を利用しないと約束している。
「今回のは小規模な魔物の暴走スタンピードとは言わないんですか?」
「これは単に森から溢れているだけだ。魔物に”冬ごもりの食糧確保”という意思があるからな。草食の魔物が人里に農作物を荒らしに出て、それを捕食する大型種が追いかけて来る。一方、魔物の暴走スタンピードを起こす魔物には意思がないと言われるパニック行動だ。原因は多岐にわたる」
「昔は戦争にそれを利用してたってやつね。森に火をつけ、わざと魔物を混乱させて敵国に流し込むらしいっていうのを俺も読んだことがある」
 グレン団長は冷ややかな笑みを口の端に浮かべると、がしがしと頭を掻いた。
魔物の暴走スタンピードよりはマシだけど、厄介なのは違いないよ。これが雪がちらつくまで続くのかと思うと気が重い」
 暗澹としたため息を吐くグレン団長に対し、ジャレッド団長はどこか機嫌が良さそうだ。
 魔物討伐と言えば第3騎士団だけど、今夏のように特殊な事情の場合は第1騎士団や第2騎士団からも討伐隊が結成される。中でも、第2騎士団で出動回数が突出しているのがジャレッド団長だ。率先して、大型種を嬉々として狩っている。
 その成果を嬉しそうに見せようとするのは止めてほしいけど。
 キース副団長曰く、「書類仕事より体を動かすのが好きなタイプだからね。特に手加減なしにできる討伐は団長にとっては遊びだよ」と笑っていた。
 向かうところ敵なしの団長様らしい。
「そういえば、トードブルーはどうなったんだ?」
「一昨日、オークションにかけられた。今は父上からの文待ちだ」
 終わってたの…。
 これに領民の命がかかっているのかと思うと、緊張に指先に震えが走る。
「開始価格が大金貨50枚だから、最低でも大金貨50枚は手に入る。ハベリット商会が魔道具や魔石を大量に取り寄せているそうだ」
「他所の国は不思議だろうな。帝国の公爵は頭がイカれたのかって」
「雪が降りだして気づくのだろう」
 ジャレッド団長が腹黒く笑う。
 ヴォレアナズ帝国としては白魔茸と大雪の関係を発表している。それを獣人差別で取り合わなかったのは人族の国で、災害級の大雪で悲鳴をあげても自業自得となる。
 可哀想なのが、その煽りを受けるのが平民だということだ。
 平民は日々の生活のためにあくせく働くだけで、政のことなど分からない。貴族が獣人を差別するから、それに従うだけ。獣人の存在すら知らない民もいるだろう。
 なのに、連座のごとく全ての民が冬の厳しさに慄くことになる。
 まぁ、ハノンはランスがなんとかするから大丈夫かな。
「他国が慌てる頃には、こちらの準備は終わっている」
「兄上は俺以上に目の下に隈かな…」
「兄上は大変だろうが、魔物討伐に関しては直に楽になるだろ。トードブルーの落札額が噂となれれば、欲を掻いた冒険者が各国から集まって来るはずだからな。それでなくとも、冒険者ギルドにはトード種の討伐依頼が幾つも貼られていたぞ」
「マジかよ」
 グレン団長は呆れつつも、一攫千金狙いの冒険者が集まることに期待した目をしている。
「最大の欠点は、さらに薬が足りなくなるということだな」
「どうしてですか?」
 口を挟むと、ジャレッド団長が肩を竦める。
「馬鹿が湧くからだ。森の恐ろしさを知る者はギルド規約に従って立ち入らないだろうが、森の恐ろしさを知らない者はギルドから警告を受けても無視するだろうな。”魔女の森”に接している国は6ヵ国だ。冒険者は国に属さない自由業を謳っているが、多くが母国を中心にして動く。他国から依頼が無ければ、足を延ばしても隣国程度だ。だが、例外となるものがある」
「トードブルー…」
「遠くの国では、トードブルーを巡って血が流れ、”呪われた宝石”の異名を持つと聞く。”女神の涙”と例える国もあるし、トードブルーで作られた王冠を国宝としている国もある」
 ぞぞぞ、と背筋に悪寒が走る。
「なぜかトード種が生み出す希少魔石は、どの希少魔石よりも美しいと言われる。磨けば燦然と輝きを放ち、さらに魔石なので術師によって強固な守護陣を刻むことができる。故に貴重で高価。今回、森の浅い場所で採取されたからな。危険を冒して森の奥へ行かずとも、運が良ければ入手できるというのは、博打好きの冒険者にとっては魅力的だ。お前も覚えてるだろう?ディノルニスに返り討ちに遭った低ランク冒険者を。ああいう手合いが森へ集う。願わくば、低ランカーは帝国以外の国から森に入ってもらいたいものだ」
 器用に片方の眉を上げたジャレッド団長に、私はきつく唇を結んで頷く。
「はぁ~ディノルニスに挑んだ低ランカーがいたのかぁ」
「イヴがいなければ死んでいたな」
 ジャレッド団長は穏やかに目を細め、ぽん、と私の頭に手を置くと、髪を指に絡めるようにして頭を撫で始めた。
 それにぎょっとする。
 愕然とジャレッド団長を見上げるけど素知らぬ顔だ。正面に目を向ければ、グレン団長がにやついている。
 その撫で方はそこはかとなく卑猥で恥ずかしく、緊張に体が強張ってしまう…。
「んで、イヴは褒賞に何をねだるんだ?」
「ほ…褒賞?」
「褒美だよ、褒美。トードブルーを献上し、ペーペー冒険者の命を救い、ローリック村の治療に貢献。薬不足解消にも奔走しているんだ。それを当然の義務だと踏ん反り返るような父上じゃない。オークションは社交シーズンの終わりに開催されるからな。諸々の手続きは叔父上に任せ、父上は既に向こうを発ったはずだ。こっちに戻って来て早々に呼び出しがかかるんじゃないか?」
 目を丸めてジャレッド団長を見れば、ジャレッド団長も頷いている。
「仰々しい披露目はないだろうが、最低限の形は取るだろう。少なくとも、父が功労者を労い褒美を与えたという事実は必要だ」
 ぽんぽん、と私の頭の上で手を弾ませながら、ジャレッド団長は苦笑する。
「安心しろ。俺も共に行くし、恐らく身内だけの食事会だろう」
 最後にくしゃりと頭を撫でつけて、ようやくジャレッド団長の手が退いた。 
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