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ハベリット商会
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ジャレッド団長に案内されたのは、集合住宅のような見た目の建物だ。
煉瓦造りの3階建て。
どの窓も鎧戸が閉まり、ぱっと見はテナント募集中。
歴史はありそうだけど、目当ての看板がない。古ぼけたドアからも、商会の雰囲気は感じられない。
なのに、ジャレッド団長は迷うことなくドアを開いた。「入れ」という声はぶっきら棒だけど、ドアを開けたまま待ってくれる様は紳士そのものだ。
ハノンでは、紳士な対応をする人なんて終ぞ見ることはなかった。
ドアを開いてくれてるだけで、なんだか新鮮な驚きと嬉しさがある。
「ありがとうございます」
にやつきそうになる口元を引き締め、ぺこりと頭を下げる。
そそくさと建物に入れば、屋内は事務所になっていた。
商会というから、商品がずらりと並んでいるのかと思っていたのに、入ってすぐに受付カウンターがある。その奥に、デスクが整然と並ぶ。
脇目もふらずに算盤を弾いている事務員が7人。書類と睨めっこしながら話し込んでいる人たちが3人。書棚に並ぶファイルを整理する人が2人。他にも、奥にある階段を慌ただしく上り下りする人たちがいる。
その中でも、一番奥の立派なデスクに座り、黙々とペンを走らせている男性が代表なのだと思う。偉い人の雰囲気がある。
「トニー」とジャレッド団長が名前を呼べば、慌ただしく熱気の籠った空気が一瞬で静まった。
水を打ったように…とはこのことだろう。
全員の目が一斉にこちらを向き、ぴりりと空気が引き締まる。
なんという居心地の悪い注目だろうか。
「クロムウェル様」
そう言って立ち上がったのは、やはり奥に座った男性だ。
意外と背が低い。
薄々感じていたけど、獣人は全員が大柄なわけじゃないらしい。町で見かけた人たちも、騎士たちのような体躯ではなかった。人族に比べれば背が高いものの、威圧感を覚えるほどデカくもなければ、筋骨隆々なわけでもない。
中でも、この人は小柄だ。
どことなくリスっぽく、黒渕の丸メガネと相俟って愛嬌のある顔立ちをしている。薄くなった灰褐色の髪を後ろに撫でつけ、白いワイシャツの袖をたくし上げている様は、まさに事務員スタイルだ。
「先触れもなく悪いなトニー」
「いえいえ。クロムウェル様ならいつでも大歓迎です。先日もクロム…ハワード様にお世話になったばかりです」
「兄だ」と、ジャレッド団長が説明する。
事務員改めトニーが、ようやく私に気がついた。一瞬、訝しげな目をした後、絵にかいたような愛想笑いを浮かべた。
「トニー。紹介しよう。こいつはイヴ・ゴゼット。人族の治癒師だ」
人族という言葉に、さきほどよりも強烈な視線が集まる。
興味が半分、不安が半分といったところだ。ゴールドスタイン伯領から来たと知れれば、興味と不安が敵意に変換されそうで恐ろしい。
だけど、流石というべきか。トニーは感情を押し込め、「お初にお目にかかります」と丁寧に頭を下げた。
「わたくしはハベリット商会を任されておりますトニー・ゾラと申します」
「は…初めまして。薬師の勉強をしているイヴ・ゴゼットです」
「薬師」
トニーは言って、「ああ、あの注文の」と合点がいったように頷いた。
「今回、こいつが取り扱っている薬草の種類を知りたいと言ってな。連れて来た」
「あれでは不足でしたか?」
「かなり」と、ジャレッド団長が頷く。
「どうやら我々は薬草に関しての知識が不足しているらしい。それで、足りないものは取り寄せてもらいたい。取り寄せが厳しいものは、こちらで採取する」
途端、トニーは人当たりの良い笑みを掻き消した。
商人らしい顔つきは、品揃えに対するプライドに火を点けたと分かる。
「急で悪いが、現物を見ることは出来るか?」
「当然でございます」
トニーは頷き、後ろに振り向いた。
「スタン」
呼ばれて立ち上がったのは、ソバカスの散った黒髪の少年だ。
「メモを持ってついて来なさい」
「はい!」
スタンと呼ばれた少年は、元気よく頷いて慌ててメモとペンを用意すると、早くも歩き出したトニーを追いかけた。
トニーに案内されたのは3階だ。
「ハベリット商会は実店舗ごとに商品の在庫を管理していますが、実店舗が構えられない商品に関しては本部管理となっております」
「治療院関係…ということです?」
「はい。治療院や研究所などに直接卸す商品は、全てここに保管されています」
医者が纏う白衣や聴診器に始まり、注射器、専門書、名称の分からない器具がずらりと棚に納まっている。包帯や三角巾には、専用棚がある。山積みの木箱には、ポーション上級、中級、低級と紙が貼られている。
ポーション頼みな面が、木箱の数から窺える。
薬草は一番奥のスペースが割り振られていた。
およそ3分の1のスペースなので、かなりの量だ。
薬草特有の匂いも凄い。慣れていなければ噎せ返るかもしれない。実際、ジャレッド団長は鼻を抓み、険しい顔つきをしている。
残念なのは、種類は多くないし、やっぱり葉が多いことだろう。
保存方法は間違ってはいない。薬草のスペースには窓はないし、湿気がこもらない配慮もある。通気性の良い麻袋を使い、薬草の種類や効能、採取日が記されている。
「あの…トニーさん。薬草はどうやって入手してますか?」
「帝国南東部にローリングス領があるのですが、そこは元人族の国であったこともあり、薬草栽培が盛んなのです。主な薬草はローリングス産になりますが、冒険者ギルドに依頼を出すことも少なくありません。冒険者ギルドはカスティーロにもあるので、恐らく”魔女の森”で採取しているのだと思いますよ」
それにしては種類が少ない。
「失礼かも知れないんですけど、この商会は人…人族はいますか?」
「いえ。そもそも純粋な人族自体が珍しいんですよ。十数年前に”魔女の森”を抜ける街道が出来ましたが、出来た先に問題ありでしょう?」
やっぱりゴールドスタイン伯爵の差別主義は、こっちでも有名らしい。
だから、ハノンにいた時も獣人を見たことがなかったのだ。なにしろ、差別主義者の領地で因縁をつけられ、冤罪で捕えられたら敵わない。
対してゴールドスタイン伯領からも、安全性の欠いた街道を使い、命懸けでヴォレアナズ帝国に向かう人はいない。せいぜい冒険者くらいだ。
「出身地は秘密にしてください」
ジャレッド団長のジャケットを引っ張り、小さな声で頼み込む。
「考えすぎだ」
わしゃわしゃと頭を撫で回されて、私の頭は鳥の巣みたいに爆発した。
「あの…それで、どうしてそのようなことを?」と、トニー。
「薬草の量は多いんですけど、種類が少ないからです。獣人って自己治癒力が凄いって聞きました。薬草の知識が乏しいのは、知る必要なかったのかなって。その差が、ここの在庫に出てる気がして…」
「確かに、わたくしたち獣人は人族のように怪我に苦しむことは滅多にありません。病を退けるほどではありませんが、大病にかかれば医者にかかります。ポーションはヴォレアナズ帝国の属国4ヵ国から取り寄せているので、困ることもないのです…」
トニーの言葉は尻すぼみに小さくなって行く。
「ああ…もしかすると、ヴォレアナズ帝国に観光客が少ないのは、差別以外に治療面の問題もあるのかもしれませんね…。人族がこちらで怪我を負った場合、迅速な処置が行えません。些細な怪我でポーションを使うには財布事情もありますから。なにより治癒師以前に、傷薬という概念が乏しすぎる気がします…」
トニーの言葉に、目からうろことばかりにスタンが口をぱくぱくさせている。
「それって意外と大切なことだと思うんですよ。差別って、どこにでもあるんです。向こうの階級差別は根深くて、日常的に転がってるんです。でも、差別のある場所に人が立ち寄らないわけじゃないでしょ?王都なんて、威張り散らした理不尽の権化王侯貴族の巣窟だけど…」
そこまで言って、「あ…」とジャレッド団長を見て口を噤む。
ジャレッド団長は凶悪な笑みで、顎をしゃくるように先を促す。
私は怖ず怖ずと俯くと、「えっと…」と口を開いた。
「つまり…差別があっても、人は集まるものなんです。王都みたいに大きな都は特に。貴族の顔色を窺いながら、平民は逞しく生きてるんです…。で、そういう場所は、色んな所に治療院や薬草屋があって…。お金がある人は治療院に、お金がない人は薬草屋で…。でも、この町を歩いて気付いたのは…活気があって華やかだけど、薬草屋が見当たらないこと。じっくり散策したわけじゃないから…治療院が点在してるのかもしれないけど……人の多さに対して…少ないなって。私たちはちょっとしたことで怪我をするし、治るのに日数が必要です。化膿でもしたら命にかかわるから、心許ないというか…なんというか…。観光や移住で人族が住むにはハードルが高いかなって…」
「つまり、リスクのある土地には来たくないということか?」
「まぁ…そうです。聖属性であっても、病気には太刀打ちできないので。薬草屋がないと、人族……特に平民は気軽に観光しようとはならないと思います」
「なるほどな。だが、威張り散らした理不尽の権化としては、そこを変えていきたいと思っている」
ジャレッド団長の言葉に、ますます身を縮ませる。
「こいつには、第2騎士団から実験的に腕前を見せてもらっている。追々、クロムウェル領を帝国内のモデル地区として皇帝陛下に売り込むそうだ。その為には土台である薬草の確保が必要になる。トニー、出来るか?」
「粉骨砕身の覚悟で努めます。まずは薬草屋の開業を視野に、法律の専門家の意見を伺い、対策を練りましょう。薬師の有資格者が必要になりますので、人材育成にも努めます。スタン、早急に薬草の取り扱い種類を見直しますよ」
「ゴゼットさん。まずは薬草について教えて下さい。よろしくお願いします!」
スタンが元気に頭を下げ、私は気後れしながら頷いた。
煉瓦造りの3階建て。
どの窓も鎧戸が閉まり、ぱっと見はテナント募集中。
歴史はありそうだけど、目当ての看板がない。古ぼけたドアからも、商会の雰囲気は感じられない。
なのに、ジャレッド団長は迷うことなくドアを開いた。「入れ」という声はぶっきら棒だけど、ドアを開けたまま待ってくれる様は紳士そのものだ。
ハノンでは、紳士な対応をする人なんて終ぞ見ることはなかった。
ドアを開いてくれてるだけで、なんだか新鮮な驚きと嬉しさがある。
「ありがとうございます」
にやつきそうになる口元を引き締め、ぺこりと頭を下げる。
そそくさと建物に入れば、屋内は事務所になっていた。
商会というから、商品がずらりと並んでいるのかと思っていたのに、入ってすぐに受付カウンターがある。その奥に、デスクが整然と並ぶ。
脇目もふらずに算盤を弾いている事務員が7人。書類と睨めっこしながら話し込んでいる人たちが3人。書棚に並ぶファイルを整理する人が2人。他にも、奥にある階段を慌ただしく上り下りする人たちがいる。
その中でも、一番奥の立派なデスクに座り、黙々とペンを走らせている男性が代表なのだと思う。偉い人の雰囲気がある。
「トニー」とジャレッド団長が名前を呼べば、慌ただしく熱気の籠った空気が一瞬で静まった。
水を打ったように…とはこのことだろう。
全員の目が一斉にこちらを向き、ぴりりと空気が引き締まる。
なんという居心地の悪い注目だろうか。
「クロムウェル様」
そう言って立ち上がったのは、やはり奥に座った男性だ。
意外と背が低い。
薄々感じていたけど、獣人は全員が大柄なわけじゃないらしい。町で見かけた人たちも、騎士たちのような体躯ではなかった。人族に比べれば背が高いものの、威圧感を覚えるほどデカくもなければ、筋骨隆々なわけでもない。
中でも、この人は小柄だ。
どことなくリスっぽく、黒渕の丸メガネと相俟って愛嬌のある顔立ちをしている。薄くなった灰褐色の髪を後ろに撫でつけ、白いワイシャツの袖をたくし上げている様は、まさに事務員スタイルだ。
「先触れもなく悪いなトニー」
「いえいえ。クロムウェル様ならいつでも大歓迎です。先日もクロム…ハワード様にお世話になったばかりです」
「兄だ」と、ジャレッド団長が説明する。
事務員改めトニーが、ようやく私に気がついた。一瞬、訝しげな目をした後、絵にかいたような愛想笑いを浮かべた。
「トニー。紹介しよう。こいつはイヴ・ゴゼット。人族の治癒師だ」
人族という言葉に、さきほどよりも強烈な視線が集まる。
興味が半分、不安が半分といったところだ。ゴールドスタイン伯領から来たと知れれば、興味と不安が敵意に変換されそうで恐ろしい。
だけど、流石というべきか。トニーは感情を押し込め、「お初にお目にかかります」と丁寧に頭を下げた。
「わたくしはハベリット商会を任されておりますトニー・ゾラと申します」
「は…初めまして。薬師の勉強をしているイヴ・ゴゼットです」
「薬師」
トニーは言って、「ああ、あの注文の」と合点がいったように頷いた。
「今回、こいつが取り扱っている薬草の種類を知りたいと言ってな。連れて来た」
「あれでは不足でしたか?」
「かなり」と、ジャレッド団長が頷く。
「どうやら我々は薬草に関しての知識が不足しているらしい。それで、足りないものは取り寄せてもらいたい。取り寄せが厳しいものは、こちらで採取する」
途端、トニーは人当たりの良い笑みを掻き消した。
商人らしい顔つきは、品揃えに対するプライドに火を点けたと分かる。
「急で悪いが、現物を見ることは出来るか?」
「当然でございます」
トニーは頷き、後ろに振り向いた。
「スタン」
呼ばれて立ち上がったのは、ソバカスの散った黒髪の少年だ。
「メモを持ってついて来なさい」
「はい!」
スタンと呼ばれた少年は、元気よく頷いて慌ててメモとペンを用意すると、早くも歩き出したトニーを追いかけた。
トニーに案内されたのは3階だ。
「ハベリット商会は実店舗ごとに商品の在庫を管理していますが、実店舗が構えられない商品に関しては本部管理となっております」
「治療院関係…ということです?」
「はい。治療院や研究所などに直接卸す商品は、全てここに保管されています」
医者が纏う白衣や聴診器に始まり、注射器、専門書、名称の分からない器具がずらりと棚に納まっている。包帯や三角巾には、専用棚がある。山積みの木箱には、ポーション上級、中級、低級と紙が貼られている。
ポーション頼みな面が、木箱の数から窺える。
薬草は一番奥のスペースが割り振られていた。
およそ3分の1のスペースなので、かなりの量だ。
薬草特有の匂いも凄い。慣れていなければ噎せ返るかもしれない。実際、ジャレッド団長は鼻を抓み、険しい顔つきをしている。
残念なのは、種類は多くないし、やっぱり葉が多いことだろう。
保存方法は間違ってはいない。薬草のスペースには窓はないし、湿気がこもらない配慮もある。通気性の良い麻袋を使い、薬草の種類や効能、採取日が記されている。
「あの…トニーさん。薬草はどうやって入手してますか?」
「帝国南東部にローリングス領があるのですが、そこは元人族の国であったこともあり、薬草栽培が盛んなのです。主な薬草はローリングス産になりますが、冒険者ギルドに依頼を出すことも少なくありません。冒険者ギルドはカスティーロにもあるので、恐らく”魔女の森”で採取しているのだと思いますよ」
それにしては種類が少ない。
「失礼かも知れないんですけど、この商会は人…人族はいますか?」
「いえ。そもそも純粋な人族自体が珍しいんですよ。十数年前に”魔女の森”を抜ける街道が出来ましたが、出来た先に問題ありでしょう?」
やっぱりゴールドスタイン伯爵の差別主義は、こっちでも有名らしい。
だから、ハノンにいた時も獣人を見たことがなかったのだ。なにしろ、差別主義者の領地で因縁をつけられ、冤罪で捕えられたら敵わない。
対してゴールドスタイン伯領からも、安全性の欠いた街道を使い、命懸けでヴォレアナズ帝国に向かう人はいない。せいぜい冒険者くらいだ。
「出身地は秘密にしてください」
ジャレッド団長のジャケットを引っ張り、小さな声で頼み込む。
「考えすぎだ」
わしゃわしゃと頭を撫で回されて、私の頭は鳥の巣みたいに爆発した。
「あの…それで、どうしてそのようなことを?」と、トニー。
「薬草の量は多いんですけど、種類が少ないからです。獣人って自己治癒力が凄いって聞きました。薬草の知識が乏しいのは、知る必要なかったのかなって。その差が、ここの在庫に出てる気がして…」
「確かに、わたくしたち獣人は人族のように怪我に苦しむことは滅多にありません。病を退けるほどではありませんが、大病にかかれば医者にかかります。ポーションはヴォレアナズ帝国の属国4ヵ国から取り寄せているので、困ることもないのです…」
トニーの言葉は尻すぼみに小さくなって行く。
「ああ…もしかすると、ヴォレアナズ帝国に観光客が少ないのは、差別以外に治療面の問題もあるのかもしれませんね…。人族がこちらで怪我を負った場合、迅速な処置が行えません。些細な怪我でポーションを使うには財布事情もありますから。なにより治癒師以前に、傷薬という概念が乏しすぎる気がします…」
トニーの言葉に、目からうろことばかりにスタンが口をぱくぱくさせている。
「それって意外と大切なことだと思うんですよ。差別って、どこにでもあるんです。向こうの階級差別は根深くて、日常的に転がってるんです。でも、差別のある場所に人が立ち寄らないわけじゃないでしょ?王都なんて、威張り散らした理不尽の権化王侯貴族の巣窟だけど…」
そこまで言って、「あ…」とジャレッド団長を見て口を噤む。
ジャレッド団長は凶悪な笑みで、顎をしゃくるように先を促す。
私は怖ず怖ずと俯くと、「えっと…」と口を開いた。
「つまり…差別があっても、人は集まるものなんです。王都みたいに大きな都は特に。貴族の顔色を窺いながら、平民は逞しく生きてるんです…。で、そういう場所は、色んな所に治療院や薬草屋があって…。お金がある人は治療院に、お金がない人は薬草屋で…。でも、この町を歩いて気付いたのは…活気があって華やかだけど、薬草屋が見当たらないこと。じっくり散策したわけじゃないから…治療院が点在してるのかもしれないけど……人の多さに対して…少ないなって。私たちはちょっとしたことで怪我をするし、治るのに日数が必要です。化膿でもしたら命にかかわるから、心許ないというか…なんというか…。観光や移住で人族が住むにはハードルが高いかなって…」
「つまり、リスクのある土地には来たくないということか?」
「まぁ…そうです。聖属性であっても、病気には太刀打ちできないので。薬草屋がないと、人族……特に平民は気軽に観光しようとはならないと思います」
「なるほどな。だが、威張り散らした理不尽の権化としては、そこを変えていきたいと思っている」
ジャレッド団長の言葉に、ますます身を縮ませる。
「こいつには、第2騎士団から実験的に腕前を見せてもらっている。追々、クロムウェル領を帝国内のモデル地区として皇帝陛下に売り込むそうだ。その為には土台である薬草の確保が必要になる。トニー、出来るか?」
「粉骨砕身の覚悟で努めます。まずは薬草屋の開業を視野に、法律の専門家の意見を伺い、対策を練りましょう。薬師の有資格者が必要になりますので、人材育成にも努めます。スタン、早急に薬草の取り扱い種類を見直しますよ」
「ゴゼットさん。まずは薬草について教えて下さい。よろしくお願いします!」
スタンが元気に頭を下げ、私は気後れしながら頷いた。
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