8 / 17
8
しおりを挟む
今年最後のジャムの発送が終わった。
混雑した郵便局から抜け出せると、ほっとした息が零れる。
郵便局の年内営業は今日までだ。混むだろうとは思っていたけど、想像以上に局内の人熱れは凄かった。朝一の方がスムーズだと来てみれば、暖房よりも冷房が欲しいと思ったくらいの混み具合なのだから、年末の忙しさを舐めていた。
それでも、外に一歩踏み出せば寒さに頬が強張る。汗ばむほどの局内にいたのだから、余計に寒い。
ぶるりと身震いして、空を見上げれば曇天。低く垂れ込めた墨色の雲が、今にも雪を降らせそうだ。
天気予報では、元日にかけて天気は大荒れなのだという。風が強まり、平野部でも積雪の恐れがあると注意を促していた。
ならば、ここは積雪確実なのだろう。
白い息を大きく吐き出して、駆け足で車に乗り込む。座るのは助手席だ。シートベルトをつけてすぐに、運転手兼荷物持ちを買って出てくれた篁さんが車を発進させる。路肩には、駐車待ちの車が並んでいるので、もたもた出来ないのだ。
「で、次は?」
「えっと…買い物ですね」
他に忘れ物はないかと、指折り数えて確認する。
「国道沿いのショッピングモールにお願いします」
「了解」
運転は篁さんに任せて、私は膝に抱えたバッグからメモ帳を取り出す。
年内のやることリストと、買い物のメモを書いてある。年賀状の投函、注連縄の飾りつけ、正月用の活け花には、終了の二重線が引いている。ジャムの発送にも二重線を引く。
残すは買い出し。
うちの近所には年中無休のコンビニなんてないので、買い忘れは厳禁だ。積雪を考えると、少し多めに食材を買い込んでいても良いかもしれない。
「畑は良かったんですか?」
「若菜さんが、輝ちゃんを手伝えって。1人じゃ大変だろうからって」
長ネギと言えば、今の時期が出荷の最盛期だ。稼ぎ時こそ男手が必要なのに…。なんだか若菜さんに申し訳なくなる。
「今日の買い出しは大量なんだろ?」
「はい。帰って大掃除もあるので、洗剤も買い足したいし…」
ふと、正月を考えてしまう。
祖父母がいなくなって、独りぼっちの正月は孤独との我慢比べだった。お節を作る気力も、買う気力もなく、カップラーメンとインスタントカレーで飢えを凌いでいた。事情を知る友達に呼ばれて初詣に行ったりしたけど、気を使わせているようで居た堪れなかった。
今年はどうしようか。
「なに?」
「え?」
「じっと見てるから」と、篁さんは苦笑する。
無意識に篁さんを見ていたらしい。
気恥ずかしさに慌ててメモ帳に目を落とす。
「お節はどうしようかなって…」
「お節?輝ちゃんはお節まで作るの?」
「祖母直伝です。私は両親が早くに死んじゃったから。祖父母が、将来苦労しないようにと色々教えてくれたんです。なかでも料理は、食べることは生きること一緒だと言って、厳しく教えられました」
「素敵な御祖父母様だったんだね」
「自慢の祖父母です」
祖父母を褒められると、とても誇らしくなる。
祖父母に甘やかされていたら、きっと今頃は途方に暮れていた。働くために家を出て、帰る場所すら失っていたかもしれない。
それはとても恐ろしいことだ。
ネガティブが胸に燻りそうになったところで、篁さんが「俺は黒豆が好き」と破顔した。
「伊達巻、田作り、筑前煮も好きだよ。数の子は苦手かな…」
「てっきり、篁さんは帰るんだと思いました」
「え?なんで?納屋だってまだ完成してないし…」
しょんぼりと眉尻を下げた顔が、ちらちらと私を見てくる。
「黒が目処がついたって言ってたから、家族と和解して帰るのかなって…。違うんですか?」
「違う違う」
篁さんは緩く頭を振って、静かにブレーキを踏んだ。
渋滞だ。
年末恒例というには、上りも下りも車が滞り、進んでいる様子が見られない。
「黒が言った目処は、例の噂の方だよ。協会が調査員を派遣をするって話なんだ。もう到着して、空飛ぶ人間を捜し回ってるんじゃないかな?」
篁さんは言って、なぜか頬を赤らめて視線を泳がせた。「だから…その…」とか、「あの…」と呟き、そわそわと前方と私を交互に見ている。
何を言い淀んでいるのかは分からないけど、その様子は、やっぱり凄い魔法使いには見えない。まるで人見知りの男の子だ。
と、微かにサイレンが聞こえてきた。
こちらに向かっているようなのに、渋滞に阻まれて思うように進めていないらしい。四方八方からサイレンはするのに、遅々として近づいて来ない。
サイドミラーを覗き込めば、2人の警察官が歩道を走って来ているのが見えた。何処から走って来たのか、頬の汗を拭いながら前方へと走って行く。
「事故でもあったのかな?」
「警察官が走って行きましたね。パトカーが通れないってあります?」
この道が渋滞でも、他の道を使えばいいだけなのに。それすら出来ない事故となれば、恐ろしいほどの大事故だ。そんなものが起これば、空にはヘリコプターが旋回していそうなものだけど、空を飛ぶものはない。
カバンからスマホを取り出し、SNSで渋滞を検索する。流石に年末というだけあって、各地で渋滞が発生している。地域名を追加して、絞り込みをかける。
「あ…」
「やっぱり事故?」
「いえ…」
頭を振って、ヒットした情報を篁さんに見せる。
今日の日付。ほんの2、3分前に、「車が飛んだ!マジか!?」という呟きと共に、動画がアップされている。
撮影したのは、カップルらしい。ヒップホップをBGMに、女の子が可愛い声で運転席の彼氏と、年末の渋滞を撮影している。渋滞と言っても、時速2、30キロほどで車は進む。信号が赤になり、白いSUVの後ろに停車した。女の子が「いつ着くの~」「コンビニ寄って~」と甘い声を出し、前方にカメラを向ける。「あそこにコンビニあるよ」と言ったところで、黒いファミリーカーが交差点を飛んだ。
事故によるクラッシュではない。
ふわり、と弧を描いて飛んだのだ。
飛距離は3、4メートルほどだろうか。着地したファミリーカーは小さくバウンドして、交差点を塞ぐように斜めに止まった。
進んでいた車が次々とブレーキを踏む。
事故が起きた音は聞こえない。
そもそもスピードを出して走行していた車はないのだ。ブレーキ音の代わりに、けたたましくクラクションが鳴らされ、大小様々な車がパズルのように隙間なく車体を滑り込ませていく。上から撮っているわけではないので正確さには欠けるけど、雰囲気としては、交差点に車がきっちりと詰め込まれたみたいに見える。それも衝突することなく…だ。
動画は、「へ?」とか「うそ…」とか、カップルの呆然とした声で終わった。
篁さんの表情は硬い。
拙いことが起きたのだ。
パトカーが近寄れないのは、交差点が機能不全を起こしたことで、四方に伸びる道が大渋滞を起こしているからだ。
篁さんは歯軋りして、力強くハンドルを握り締めた。
少し雰囲気が怖い。
「……魔法……ですか?」
「間違いなく魔法だね」
声に苛立ちが潜んでいる。
「篁さんも…出来るんですか?」
「できるよ。この地域は理想的なエネルギーの循環をしているからね」
「エネルギーの循環?」
「そもそも魔法使いというのは、自然エネルギーを取り込むことで、初めて魔法を発動できるんだ。自分の体内で魔力は生成できない」
篁さんは言って、苛立ちを霧散させるように眉尻を下げて私を見た。
「川に例えるなら、この地域は清流。エネルギーの循環が悪い地域は濁流だね。それは魔法使いのコンディションにも関わって来る。清流では体調面も含めて好調だけど、濁流では息苦しさを感じるほど不調になるんだ。実際、体調を崩す魔法使いは少なくないよ」
「清流だから、車を飛ばせるんですか?」
「魔法という才を開花させたばかりの新米でも、それは可能だろうね。ただ、分不相応の力は、清流の中でも酸欠に陥る原因になる」
厳しさを忍ばせる声に、思わずスマホを握り締める。
「魔法使いは超人じゃない。個々に備わったバッテリーの容量があるんだ。魔法使いの子供は幼い頃から、自分の容量を見極める訓練を行う。でも、そうじゃない魔法使いは降って湧いた力に、自分は超人だと勘違いするだろうね」
「容量オーバーになったらどうなるんですか?」
「どれほどオーバーするかによるけど、自滅するだろうね。この車にジェット燃料を入れるようなものだよ」
どう自滅するのか、考えたくない。
「魔法使いって、なんていうか…自分の力で色々やれると思ってました」
「それは超能力者。スプーンを曲げたり、透視したり………」
篁さんは不意に言葉を切って、首を伸ばすようにして前方を見る。
前を見たところで、長々と続く車のルーフしかみえない。4台前には市営バスが止まっているので、思うように渋滞の長さを測ることは不可能だ。
「どうかしたんですか?」
「いや………」
口籠り、丸々と目を見開く。その視線を追えば、遥か前方で青白い光が一帯に走った。まるで落雷だ。でも、雷が落ちた轟音は聞こえない。
何が起きたのかと窓に張り付き前を覗き込もうとしたところで、横から手が伸びて来た。
「伏せて!」
叫ぶが早いか、篁さんは私の頭に手を添え、覆いかぶさるように蹲った。
一拍遅れて、バチバチバチ!と視界の隅で青白い火花が爆ぜる。電線に沿って、雷が縦横無尽に駆けている。歩行者は悲鳴を上げて逃げ惑い、警察官が一般市民を守ろうと奔走する。数台の車が、パニックになったようにクラクションを鳴らす。何処かで動転した運転手がアクセルを踏んだのか、ガツン!と衝突の音がした。
「ひゃ」と悲鳴が漏れる。
パニックの連鎖でみんながアクセルを踏めば、この車もタダじゃ済まない。
衝撃に備えて身を固くする私を抱き込んだまま、篁さんは右手を翻した。瞬間、バチバチと聞こえていた火花の音が静まった。
悲鳴が泣き声に変わり、「救急車!」と叫ぶ声がする。
「輝ちゃん。大丈夫?」
ゆっくりと体を離して、顔を覗き込んで来る。
初めて、至近距離で篁さんの顔を見た。鳶色かと思った瞳は、よくよく見ると左右で濃さが違う。左目の方が、僅かながらに黒っぽい。
そんな暢気なことを考えるくらいには、きっと心の余裕があるのだろう。
「輝ちゃん」
「あ…だ、大丈夫です」
そう言う声が震えている。
スマホを掴んだ手も震えている。
震えを認識した途端、頭の中に恐怖が巡った。車が飛んで、一帯の電線がスパークした。死者が出てもおかしくない状況だ。私が知らないだけで、犠牲者が出ている可能性だってある。
外から聞こえて来る泣き声や、緊迫した声で無線を交わす警察官の声にぎゅっと心臓が縮む。
「無理しなくていい。怖いなら怖い。そう言っていいんだよ」
頭を撫でる手が優しい。
頼りない大人だと思っていたのに、今は篁さんが一緒にいて良かったと思っている。私一人だったら、きっと他の人たちと同じでパニックに襲われていた。反射的にアクセルを踏んでいたかもしれない。
「こ…怖いです…。でも…篁さんが一緒だから…平気です」
心臓がバクバクしてますが、と付け足せば篁さんは笑う。
「俺が一緒に来れて良かった」
そう言って運転席に座り直し、「手、握ろうか?」と手を差し出してきた。
「何かあれば、手が必要でしょ?なので、大丈夫です」
篁さんが魔法を使う時の仕草を真似れば、篁さんは頬を赤らめながら苦笑する。
私は呼吸を整え、胸をひと撫でしてフロントガラスに落ちて来た水滴に空を見る。雨かと思ったけど、細かな雪だ。
遂に降り出した雪の中、子供を庇って火傷を負った母親が、警察官に支えられて歩いている。救急車を呼んだところで、パトカーすら通れないのだ。渋滞を抜けた場所まで歩かなければならない。子供は泣きながら、母親の手を握って懸命に歩いている。
応援に駆け付けた警察官は、車の窓を一つ一つ叩いて無事を確認する。
私たちの車にも、婦警さんが強張った顔を覗かせた。「無事です」と言えば、頷いて次の車へと向かう。全ての車を確認するには、警察官の数は足りない。早急に渋滞を解消させる必要もある。遠方でサイレンが無数に鳴っている。サイレンの種類も違う。パトカー、消防車、救急車。
ラジオをつければ、落雷によって停電が起きているといった内容が読まれている。車が飛び、交差点に車が詰め込まれ、電線が火花を散らしたことは含まれていない。
停電の地域を読み終えた後は、発達した低気圧による悪天候のニュースに続く。この騒動も、嵐によるものだと女性アナウンサーが不要不急の外出を控えるように、繰り返し注意を促している。
「大晦日前に外出するなと言われても無理な話ですよね」
「この御園っていうアナウンサー。恐らく協会の人だったと思うよ」
「え?魔法使いなんですか?」
「たぶんね。言葉の強弱や淡々とした口調は、催眠をかける時の使う手なんだよ。催眠状態にして、”悪天候のせい”と暗示をかける。と言っても、強力なものじゃなくて誘導だね。それでもリスナーの多くは騙される。協会に何人かいるんだよ。テレビ局とかラジオ局で働いているのが」
あの手この手で隠蔽がされているのか。
それは関心するような、怖いような気もする。
「あ…でも…。証拠が残ってますよ?」
もう一度、例の動画を開く。
動画をアップしていた人が、「こわ…」と呟き、新たな動画をアップしている。激しく放電する電線の動画だ。交差点は花火大会の会場のように、四方から火花が散り、アスファルトや車の上に降り注いでいる。撮影者の悲鳴とは別に、交差点で逃げ惑う人たちが叫び続けている。
「ちょっと待って」
篁さんがスマホを覗き込む。
動画の再生箇所を示すバーを数秒前に戻し、タイミングを見計らって停止させる。
「どうしたんですか?」
「ここ」と、撮影者の車の斜め奥を拡大させた。
拡大すると画質の悪さが目立つ。
それでも、道沿いに植えられた街路樹の下に男性が立っているが分かる。自転車から降り、街路樹に寄り添うようにして火花を散らす電線を見上げているように見える。
辛うじて性別が男性だと分かるくらいで、年齢の絞り込みも無理だ。なんとなく、背格好から20代から40代の間かなと当たりを付けるしかない。
「木の下にいるなんてラッキーですね。あ、雷なら危ないのか…。でも、魔法だし、火花からは身を守れますよね」
「まるで火花が散るのが分かっていたみたいだね」
怒りを押し殺した顔が、再生を押す。
注目するのは、街路樹にいる人だ。
悲鳴に泣き声が混じり、パニックのクラクションがあちことで鳴らされる。と、火花が収まった。篁さんの魔法が、全体に影響したようだ。
「やっぱり画像が良くないな…。杖を持っていたら決定打なんだけど」
苛立ったように周囲を見渡し、コートのポケットを気にしているように見えるが、杖のような枝は確認できない。
「篁さんみたいに、手を翻してるんじゃないですか?」
「それはないよ。訓練をしていなければ、杖なしで力を使えない。よほど集中力が高く、センスがなければね」
皮肉めいた口調は、その可能性がゼロだと語っている。
「黒がいたら、追跡させれたのにな」
「嫌ですよ。車からカラスが飛び立つなんて、こっちが目立つじゃないですか」
「そ…そうか…」
篁さんは首の後ろに手を当てて、「スズメの方が良かったな」と嘆息する。
黒が聞いたら激昂しそうなセリフだ。
それから30分後、車はのろのろと動き出した。
停電は継続中らしい。ピー、ピー、と笛の音が、信号に代わって交通整理をしていた。
混雑した郵便局から抜け出せると、ほっとした息が零れる。
郵便局の年内営業は今日までだ。混むだろうとは思っていたけど、想像以上に局内の人熱れは凄かった。朝一の方がスムーズだと来てみれば、暖房よりも冷房が欲しいと思ったくらいの混み具合なのだから、年末の忙しさを舐めていた。
それでも、外に一歩踏み出せば寒さに頬が強張る。汗ばむほどの局内にいたのだから、余計に寒い。
ぶるりと身震いして、空を見上げれば曇天。低く垂れ込めた墨色の雲が、今にも雪を降らせそうだ。
天気予報では、元日にかけて天気は大荒れなのだという。風が強まり、平野部でも積雪の恐れがあると注意を促していた。
ならば、ここは積雪確実なのだろう。
白い息を大きく吐き出して、駆け足で車に乗り込む。座るのは助手席だ。シートベルトをつけてすぐに、運転手兼荷物持ちを買って出てくれた篁さんが車を発進させる。路肩には、駐車待ちの車が並んでいるので、もたもた出来ないのだ。
「で、次は?」
「えっと…買い物ですね」
他に忘れ物はないかと、指折り数えて確認する。
「国道沿いのショッピングモールにお願いします」
「了解」
運転は篁さんに任せて、私は膝に抱えたバッグからメモ帳を取り出す。
年内のやることリストと、買い物のメモを書いてある。年賀状の投函、注連縄の飾りつけ、正月用の活け花には、終了の二重線が引いている。ジャムの発送にも二重線を引く。
残すは買い出し。
うちの近所には年中無休のコンビニなんてないので、買い忘れは厳禁だ。積雪を考えると、少し多めに食材を買い込んでいても良いかもしれない。
「畑は良かったんですか?」
「若菜さんが、輝ちゃんを手伝えって。1人じゃ大変だろうからって」
長ネギと言えば、今の時期が出荷の最盛期だ。稼ぎ時こそ男手が必要なのに…。なんだか若菜さんに申し訳なくなる。
「今日の買い出しは大量なんだろ?」
「はい。帰って大掃除もあるので、洗剤も買い足したいし…」
ふと、正月を考えてしまう。
祖父母がいなくなって、独りぼっちの正月は孤独との我慢比べだった。お節を作る気力も、買う気力もなく、カップラーメンとインスタントカレーで飢えを凌いでいた。事情を知る友達に呼ばれて初詣に行ったりしたけど、気を使わせているようで居た堪れなかった。
今年はどうしようか。
「なに?」
「え?」
「じっと見てるから」と、篁さんは苦笑する。
無意識に篁さんを見ていたらしい。
気恥ずかしさに慌ててメモ帳に目を落とす。
「お節はどうしようかなって…」
「お節?輝ちゃんはお節まで作るの?」
「祖母直伝です。私は両親が早くに死んじゃったから。祖父母が、将来苦労しないようにと色々教えてくれたんです。なかでも料理は、食べることは生きること一緒だと言って、厳しく教えられました」
「素敵な御祖父母様だったんだね」
「自慢の祖父母です」
祖父母を褒められると、とても誇らしくなる。
祖父母に甘やかされていたら、きっと今頃は途方に暮れていた。働くために家を出て、帰る場所すら失っていたかもしれない。
それはとても恐ろしいことだ。
ネガティブが胸に燻りそうになったところで、篁さんが「俺は黒豆が好き」と破顔した。
「伊達巻、田作り、筑前煮も好きだよ。数の子は苦手かな…」
「てっきり、篁さんは帰るんだと思いました」
「え?なんで?納屋だってまだ完成してないし…」
しょんぼりと眉尻を下げた顔が、ちらちらと私を見てくる。
「黒が目処がついたって言ってたから、家族と和解して帰るのかなって…。違うんですか?」
「違う違う」
篁さんは緩く頭を振って、静かにブレーキを踏んだ。
渋滞だ。
年末恒例というには、上りも下りも車が滞り、進んでいる様子が見られない。
「黒が言った目処は、例の噂の方だよ。協会が調査員を派遣をするって話なんだ。もう到着して、空飛ぶ人間を捜し回ってるんじゃないかな?」
篁さんは言って、なぜか頬を赤らめて視線を泳がせた。「だから…その…」とか、「あの…」と呟き、そわそわと前方と私を交互に見ている。
何を言い淀んでいるのかは分からないけど、その様子は、やっぱり凄い魔法使いには見えない。まるで人見知りの男の子だ。
と、微かにサイレンが聞こえてきた。
こちらに向かっているようなのに、渋滞に阻まれて思うように進めていないらしい。四方八方からサイレンはするのに、遅々として近づいて来ない。
サイドミラーを覗き込めば、2人の警察官が歩道を走って来ているのが見えた。何処から走って来たのか、頬の汗を拭いながら前方へと走って行く。
「事故でもあったのかな?」
「警察官が走って行きましたね。パトカーが通れないってあります?」
この道が渋滞でも、他の道を使えばいいだけなのに。それすら出来ない事故となれば、恐ろしいほどの大事故だ。そんなものが起これば、空にはヘリコプターが旋回していそうなものだけど、空を飛ぶものはない。
カバンからスマホを取り出し、SNSで渋滞を検索する。流石に年末というだけあって、各地で渋滞が発生している。地域名を追加して、絞り込みをかける。
「あ…」
「やっぱり事故?」
「いえ…」
頭を振って、ヒットした情報を篁さんに見せる。
今日の日付。ほんの2、3分前に、「車が飛んだ!マジか!?」という呟きと共に、動画がアップされている。
撮影したのは、カップルらしい。ヒップホップをBGMに、女の子が可愛い声で運転席の彼氏と、年末の渋滞を撮影している。渋滞と言っても、時速2、30キロほどで車は進む。信号が赤になり、白いSUVの後ろに停車した。女の子が「いつ着くの~」「コンビニ寄って~」と甘い声を出し、前方にカメラを向ける。「あそこにコンビニあるよ」と言ったところで、黒いファミリーカーが交差点を飛んだ。
事故によるクラッシュではない。
ふわり、と弧を描いて飛んだのだ。
飛距離は3、4メートルほどだろうか。着地したファミリーカーは小さくバウンドして、交差点を塞ぐように斜めに止まった。
進んでいた車が次々とブレーキを踏む。
事故が起きた音は聞こえない。
そもそもスピードを出して走行していた車はないのだ。ブレーキ音の代わりに、けたたましくクラクションが鳴らされ、大小様々な車がパズルのように隙間なく車体を滑り込ませていく。上から撮っているわけではないので正確さには欠けるけど、雰囲気としては、交差点に車がきっちりと詰め込まれたみたいに見える。それも衝突することなく…だ。
動画は、「へ?」とか「うそ…」とか、カップルの呆然とした声で終わった。
篁さんの表情は硬い。
拙いことが起きたのだ。
パトカーが近寄れないのは、交差点が機能不全を起こしたことで、四方に伸びる道が大渋滞を起こしているからだ。
篁さんは歯軋りして、力強くハンドルを握り締めた。
少し雰囲気が怖い。
「……魔法……ですか?」
「間違いなく魔法だね」
声に苛立ちが潜んでいる。
「篁さんも…出来るんですか?」
「できるよ。この地域は理想的なエネルギーの循環をしているからね」
「エネルギーの循環?」
「そもそも魔法使いというのは、自然エネルギーを取り込むことで、初めて魔法を発動できるんだ。自分の体内で魔力は生成できない」
篁さんは言って、苛立ちを霧散させるように眉尻を下げて私を見た。
「川に例えるなら、この地域は清流。エネルギーの循環が悪い地域は濁流だね。それは魔法使いのコンディションにも関わって来る。清流では体調面も含めて好調だけど、濁流では息苦しさを感じるほど不調になるんだ。実際、体調を崩す魔法使いは少なくないよ」
「清流だから、車を飛ばせるんですか?」
「魔法という才を開花させたばかりの新米でも、それは可能だろうね。ただ、分不相応の力は、清流の中でも酸欠に陥る原因になる」
厳しさを忍ばせる声に、思わずスマホを握り締める。
「魔法使いは超人じゃない。個々に備わったバッテリーの容量があるんだ。魔法使いの子供は幼い頃から、自分の容量を見極める訓練を行う。でも、そうじゃない魔法使いは降って湧いた力に、自分は超人だと勘違いするだろうね」
「容量オーバーになったらどうなるんですか?」
「どれほどオーバーするかによるけど、自滅するだろうね。この車にジェット燃料を入れるようなものだよ」
どう自滅するのか、考えたくない。
「魔法使いって、なんていうか…自分の力で色々やれると思ってました」
「それは超能力者。スプーンを曲げたり、透視したり………」
篁さんは不意に言葉を切って、首を伸ばすようにして前方を見る。
前を見たところで、長々と続く車のルーフしかみえない。4台前には市営バスが止まっているので、思うように渋滞の長さを測ることは不可能だ。
「どうかしたんですか?」
「いや………」
口籠り、丸々と目を見開く。その視線を追えば、遥か前方で青白い光が一帯に走った。まるで落雷だ。でも、雷が落ちた轟音は聞こえない。
何が起きたのかと窓に張り付き前を覗き込もうとしたところで、横から手が伸びて来た。
「伏せて!」
叫ぶが早いか、篁さんは私の頭に手を添え、覆いかぶさるように蹲った。
一拍遅れて、バチバチバチ!と視界の隅で青白い火花が爆ぜる。電線に沿って、雷が縦横無尽に駆けている。歩行者は悲鳴を上げて逃げ惑い、警察官が一般市民を守ろうと奔走する。数台の車が、パニックになったようにクラクションを鳴らす。何処かで動転した運転手がアクセルを踏んだのか、ガツン!と衝突の音がした。
「ひゃ」と悲鳴が漏れる。
パニックの連鎖でみんながアクセルを踏めば、この車もタダじゃ済まない。
衝撃に備えて身を固くする私を抱き込んだまま、篁さんは右手を翻した。瞬間、バチバチと聞こえていた火花の音が静まった。
悲鳴が泣き声に変わり、「救急車!」と叫ぶ声がする。
「輝ちゃん。大丈夫?」
ゆっくりと体を離して、顔を覗き込んで来る。
初めて、至近距離で篁さんの顔を見た。鳶色かと思った瞳は、よくよく見ると左右で濃さが違う。左目の方が、僅かながらに黒っぽい。
そんな暢気なことを考えるくらいには、きっと心の余裕があるのだろう。
「輝ちゃん」
「あ…だ、大丈夫です」
そう言う声が震えている。
スマホを掴んだ手も震えている。
震えを認識した途端、頭の中に恐怖が巡った。車が飛んで、一帯の電線がスパークした。死者が出てもおかしくない状況だ。私が知らないだけで、犠牲者が出ている可能性だってある。
外から聞こえて来る泣き声や、緊迫した声で無線を交わす警察官の声にぎゅっと心臓が縮む。
「無理しなくていい。怖いなら怖い。そう言っていいんだよ」
頭を撫でる手が優しい。
頼りない大人だと思っていたのに、今は篁さんが一緒にいて良かったと思っている。私一人だったら、きっと他の人たちと同じでパニックに襲われていた。反射的にアクセルを踏んでいたかもしれない。
「こ…怖いです…。でも…篁さんが一緒だから…平気です」
心臓がバクバクしてますが、と付け足せば篁さんは笑う。
「俺が一緒に来れて良かった」
そう言って運転席に座り直し、「手、握ろうか?」と手を差し出してきた。
「何かあれば、手が必要でしょ?なので、大丈夫です」
篁さんが魔法を使う時の仕草を真似れば、篁さんは頬を赤らめながら苦笑する。
私は呼吸を整え、胸をひと撫でしてフロントガラスに落ちて来た水滴に空を見る。雨かと思ったけど、細かな雪だ。
遂に降り出した雪の中、子供を庇って火傷を負った母親が、警察官に支えられて歩いている。救急車を呼んだところで、パトカーすら通れないのだ。渋滞を抜けた場所まで歩かなければならない。子供は泣きながら、母親の手を握って懸命に歩いている。
応援に駆け付けた警察官は、車の窓を一つ一つ叩いて無事を確認する。
私たちの車にも、婦警さんが強張った顔を覗かせた。「無事です」と言えば、頷いて次の車へと向かう。全ての車を確認するには、警察官の数は足りない。早急に渋滞を解消させる必要もある。遠方でサイレンが無数に鳴っている。サイレンの種類も違う。パトカー、消防車、救急車。
ラジオをつければ、落雷によって停電が起きているといった内容が読まれている。車が飛び、交差点に車が詰め込まれ、電線が火花を散らしたことは含まれていない。
停電の地域を読み終えた後は、発達した低気圧による悪天候のニュースに続く。この騒動も、嵐によるものだと女性アナウンサーが不要不急の外出を控えるように、繰り返し注意を促している。
「大晦日前に外出するなと言われても無理な話ですよね」
「この御園っていうアナウンサー。恐らく協会の人だったと思うよ」
「え?魔法使いなんですか?」
「たぶんね。言葉の強弱や淡々とした口調は、催眠をかける時の使う手なんだよ。催眠状態にして、”悪天候のせい”と暗示をかける。と言っても、強力なものじゃなくて誘導だね。それでもリスナーの多くは騙される。協会に何人かいるんだよ。テレビ局とかラジオ局で働いているのが」
あの手この手で隠蔽がされているのか。
それは関心するような、怖いような気もする。
「あ…でも…。証拠が残ってますよ?」
もう一度、例の動画を開く。
動画をアップしていた人が、「こわ…」と呟き、新たな動画をアップしている。激しく放電する電線の動画だ。交差点は花火大会の会場のように、四方から火花が散り、アスファルトや車の上に降り注いでいる。撮影者の悲鳴とは別に、交差点で逃げ惑う人たちが叫び続けている。
「ちょっと待って」
篁さんがスマホを覗き込む。
動画の再生箇所を示すバーを数秒前に戻し、タイミングを見計らって停止させる。
「どうしたんですか?」
「ここ」と、撮影者の車の斜め奥を拡大させた。
拡大すると画質の悪さが目立つ。
それでも、道沿いに植えられた街路樹の下に男性が立っているが分かる。自転車から降り、街路樹に寄り添うようにして火花を散らす電線を見上げているように見える。
辛うじて性別が男性だと分かるくらいで、年齢の絞り込みも無理だ。なんとなく、背格好から20代から40代の間かなと当たりを付けるしかない。
「木の下にいるなんてラッキーですね。あ、雷なら危ないのか…。でも、魔法だし、火花からは身を守れますよね」
「まるで火花が散るのが分かっていたみたいだね」
怒りを押し殺した顔が、再生を押す。
注目するのは、街路樹にいる人だ。
悲鳴に泣き声が混じり、パニックのクラクションがあちことで鳴らされる。と、火花が収まった。篁さんの魔法が、全体に影響したようだ。
「やっぱり画像が良くないな…。杖を持っていたら決定打なんだけど」
苛立ったように周囲を見渡し、コートのポケットを気にしているように見えるが、杖のような枝は確認できない。
「篁さんみたいに、手を翻してるんじゃないですか?」
「それはないよ。訓練をしていなければ、杖なしで力を使えない。よほど集中力が高く、センスがなければね」
皮肉めいた口調は、その可能性がゼロだと語っている。
「黒がいたら、追跡させれたのにな」
「嫌ですよ。車からカラスが飛び立つなんて、こっちが目立つじゃないですか」
「そ…そうか…」
篁さんは首の後ろに手を当てて、「スズメの方が良かったな」と嘆息する。
黒が聞いたら激昂しそうなセリフだ。
それから30分後、車はのろのろと動き出した。
停電は継続中らしい。ピー、ピー、と笛の音が、信号に代わって交通整理をしていた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
神様の許嫁
衣更月
ファンタジー
信仰心の篤い町で育った久瀬一花は、思いがけずに神様の許嫁(仮)となった。
神様の名前は須久奈様と言い、古くから久瀬家に住んでいるお酒の神様だ。ただ、神様と聞いてイメージする神々しさは欠片もない。根暗で引きこもり。コミュニケーションが不得手ながらに、一花には無償の愛を注いでいる。
一花も須久奈様の愛情を重いと感じながら享受しつつ、畏敬の念を抱く。
ただ、1つだけ須久奈様の「目を見て話すな」という忠告に従えずにいる。どんなに頑張っても、長年染み付いた癖が直らないのだ。
神様を見る目を持つ一花は、その危うさを軽視し、トラブルばかりを引き当てて来る。
***
1部完結
2部より「幽世の理」とリンクします。
※「幽世の理」と同じ世界観です。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる