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まれびとの社(二部)
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昼食とも夕食ともつかない時間帯。
座敷に揃った面々は相も変わらず奇妙の一言に尽きる。
全員が汚れと疲れを取るためにお風呂を済ませてさっぱりしているにも関わらず、室内に籠るのは陰鬱な空気だ。その主な発生源は須久奈様になる。
汗は掻かなくとも山の中を飛び回った須久奈様を強引にお風呂に押し込めたのは1時間前。ドアの向こうから、「い、一緒に入ろう…」とか「ななぜ拒絶する!」とか「おお俺が嫌いなのか…」とか泣き声が聞こえてきたけど無視した。
その結果が、涼やかな生成色の浴衣とは相反するおどろおどろしい顔つきだ。
非常に機嫌が悪い。
でも、この機嫌の悪さは、畏怖の念を抱くものではない。ねばねばとした粘着質な不平不満からくるものなので、ひたすら鬱陶しいものになる。終始、聞こえるか聞こえないかの声量でぶつぶつと「ケチか…!」と悪態を吐いているのだから、心の底からうんざりする。
ケチで結構だ。
むしろ警戒すべきは神直日神で、年神様に怒りをぶつけている。
まぁ、年神様はノーダメージで穏やかな笑みで聞き流しているけど…。
神様の怒りというのは、空気を悪くする。比喩ではなく、実際に悪くなる。ぴりりっと空気が張り詰め、畏れが支配するのだ。
今は年神様に向けられているけど、八つ当たりがこちらに向く危険性を考えると怖くなる。
それを重々察しているのが鬼頭さんで、涼やかな甚平姿も額には汗の玉が光っている。
大神さんは相変わらずクールで感情が読み取れない。その隣の日向さんは、鬼頭さんと同様に神直日神が気になって仕方がない様子。
「神直日神様」と名を呼べば、「あ”?」とチンピラみたいな声が返ってきた。
怖い。
「お召し物の着心地はいかがですか?」
「んだ急に。サイズがデカいが普通だろ」
「須久奈様の浴衣になります」
「なにっ!?」
神直日神は肩を跳ね上げ、白藍色の浴衣をしげしげと見下ろす。
「鬼頭さんの甚平は、終ぞ須久奈様が袖を通すことはなかったのですが、その浴衣は普通に須久奈様がお召しになっています。現在進行形で」
「マジか!」
喜色満面。年神様への怒りオーラが霧散して、嬉しそうにぺたぺたと浴衣を触っている。
思った通りに神直日神の機嫌が急上昇だ。
年神様も須久奈様の紺地の浴衣を着ているのだけど、神直日神は自分の浴衣に夢中で気づいていない。
「一花ちゃんの掌の上だね」
年神様は黙っていてほしい。
雰囲気も少し良くなったところで食事の時間だ。
「みなさん、遠慮せず召し上がって下さい」
ささ、どうぞ、と卓上に配膳された料理を手で示す。
きゅうりとみょうがの和え物、うなぎの茶わん蒸し、大葉を散らしたマグロのカルパッチョ、夏野菜の揚げびたし、からあげ、オクラの肉巻き。
ナスとトマト、みょうがのタレをかけた素麺は、私のリクエストだ。
「使われている野菜は年神様に頂いたんですよ」
どこ産なのかは怖くて訊けないけど、とても美味しい野菜なのは間違いない。
日向さんもお腹がペコペコだったのか、「いただきます」と手を合わせ、和え物から口に運んでいる。鬼頭さんも「美味しい」と頬を緩めながら、揚げびたしを口に運ぶ。あとは全員、キンキンに冷えたビールで喉を潤す。
ちらり、と須久奈様を見れば口はへの字のままだ。
「それで、須久奈はなぜ臍を曲げているんだい?」
カルパッチョを口に運びながら、年神様が首を傾げている。
それに舌打ちしたのは須久奈様だ。
「い、一花が一緒に風呂に入らない…!ケチだろ!」
「いやいや。ケチではないよ。須久奈。婚姻もまだなのに」
「…だ、だが!」
「それじゃあ、離れの浴室は広いのかい?」
「………いや?」
こてん、と須久奈様が首を傾げた。
「それでは無理じゃないかな?それでなくとも須久奈は大きいからね。窮屈で一緒には入れない」
「…そ、そうか……そう…なのか?」
「一花ちゃんと一緒にお風呂に入りたいなら、温泉にでも連れて行くといいよ。新婚旅行とか良いんじゃないかな」
のほほん、と年神様はビールを飲む。
さすが年神様だ。
須久奈様を言い含めた。
神直日神が白い目で年神様を見ているけど、私は年神様リスペクトだ。
「須久奈様。いつか温泉旅行に連れて行って下さいね」
「りょ…旅行………」
しおしおと須久奈様の背中が丸まっていく。
引きこもりにはハードルが高いのかもしれない。可哀想に思うけど、こればかりはどうしようもない。
今の私には添い寝が限界。一緒にお風呂に入るなんて、想像だけで心臓が震える。神様とはいえ、男性の裸を見るのは抵抗しかないのに、あの顔が不意打ちで出てきたらと思うと心臓が止まるかもしれない。
水も滴るイケメンへの免疫はないのだ。
そのお詫びに、お箸で摘まみ上げたのは夏野菜の揚げびたし。その中のししとうを、「あ~ん」と須久奈様の口元に向ける。
須久奈様が驚いたのが分かった。それから、もっさり前髪の奥で頬が紅潮する。
「あ~ん、ですよ?」
ほら、とししとうを少し口元に近づける。
「食べないのなら、私が食べます」
「た!食べる!」
叫ぶ須久奈様の頬は真っ赤だ。嬉しそうに口角を上げると、ぱくり、とししとうを食べた。
もぐもぐと咀嚼しながらも、須久奈様の白い肌がじわじわと赤らみを広げる。今や耳どころか首筋まで真っ赤だ。
「美味しいですか?」
聞けば、こくこくと頷く。
機嫌が上向いたようだ。
「一花ちゃんは上手に転がすね」
本当に年神様は黙っていてほしい。
「い、一花」
今度は率先して口を開いたので、2本目のししとうを放り込む。
せっせとししとうを放り込んで、須久奈様はご機嫌だけど、ジト目でこちらを見る神様が1柱。
「おい。お前、なんで連続してしし唐を食べさせてるんだ?よもや、自分の嫌いな物を須久奈に食わせてるわけじゃねぇだろうな~」
さすが神様するどい…。
ししとうは、小さい時にハズレを食べて、あまりの辛さに泣き出すというトラウマがある。
「い、一花は、小さい頃に…しし唐を食べて泣いてたからな…。しし唐や苦瓜が嫌いだよな?」
どうして知ってる?
どこで見てたの?
普通に怖い。
「須久奈騙されるな!嫌いなものを食わされてるんだぞ?怒れ!」
「…黙れ。俺は…一花になら何をされても怒らない…」
なかなかの宣言が、少し嬉しい。
と思うあたり、私もかなり須久奈様が好きなんだろうなと自覚してしまう。
「須久奈は一花ちゃんを甘やかすのが趣味だからね。こういうのを寵愛や溺愛というのだろうね」
過保護というのが、一番しっくりくる気がする。
神直日神はジト目だけど、その隣の鬼頭さんからは優しい視線を送られている。
「さて、須久奈の機嫌も持ち直したことだし、そろそろ直日と大神くんの収穫を聞きこうか」
年神様はビールを口に運びながら、にこりと神直日神を見る。
神直日神は重労働を思い出したのか、めちゃくちゃ顔を顰めた。
説明を始めたのは大神さんだ。
「川守村ですが、動画で見た通りでした。現存する建物はなく、かといって森に呑まれるわけでもない村の跡地です。人の営みの痕跡は各所に残ってはいましたが、当然ながら人の気配はありません。さらに、今も尚、其処彼処にこびりついていた澱が、本来あるはずの自然の回復力を妨げているようでした」
「自然の回復力?」
それが何か分からずに首を傾げれば、年神様が「再生する力だね」と言う。
「本来、森を切り開いて作られた村が廃れれば、年月をかけて森が再生するんだよ。野生動物も戻ってきたりしてね。それが自然の回復力だね」
「草こそ茂っていましたが、木々が生えた個所は見当たりませんでした。動物も鳥も妖怪もいない。せいぜい小さな羽虫を見たくらいです」
大神さんが肩を竦める。
「人間が蓄積させた負の感情も、びっちり残ってたぜ。あの地から憂いが消えるのは、さらに年月が必要だろうよ」
「中でも禍々しさを感じたのは2ヵ所。1つは例の神事を行っていた川です。今も川縁には禍々しい穢れが張り付いていました。そして、もう1つが村の端。土砂崩れ跡の辺りです。そこに社があったのだろうと目星をつけ、掘り進めました」
「スコップ持参で良かったね」
他人事のように年神様が笑い、「そういうとこだよ!」と神直日神が怒声を飛ばす。
かなりの重労働だったのは、神様とは思えないほどの泥まみれで戻って来たので容易に察することが出来た。
「結果として、ゑびす像の一部を掘り起こすことができましたが、ゑびす像が目当ての忌み物ではないことは確認できました」
「つっても、成果はある」
神直日神は口角を吊り上げ、「残滓が兄の気配だった」と嘲笑した。
嫌味を込めた口調に、鬼頭さんが素麺を啜り上げる途中で硬直する。日向さんも居心地が悪そうに身動ぎしながら、乾いた唇を麦茶で湿らせた。
須久奈様と年神様は予想通りだったのだろう。大した反応を示すことなく、ビールを口につけている。
「やはり黒ゑびすが持っていたという木片が忌み物になるんだろうね」
「それを人間が大事に持ち去ったんだろ~?」
神直日神は渋面を作り、一気にビールを飲み干した。
すかさず、鬼頭さんがビール瓶を手に注ぎ足す。とても手慣れた給仕だ。
「んで、その男は何処よ?」
「…ヤサカが捜す」
「鳥だっけか?」
あまり興味はなさそうだ。からあげとビールを交互に口に運びながら、「さっさと終わらせてぇ~」と愚痴る。
さっさと終わらせたいというのは賛成だ。
でも、終わらせるには忌み物に近づかなきゃならない。それは怖い。カラスは穢れに触れて死んだと聞いて、すごく怖くなった。
忌み物を風呂敷に包んで持ち去った男性は無事なのだろうか…。
「い…一花」
須久奈様に呼ばれて「はい?」と振り向けば、口元にごま油が香るナスがある。
「箸が止まってる…。”あ~ん”だろ?」
須久奈様なりの気遣いらしい。
する時は別段何も思わなかったけど、される側は恥ずかしさが凄い。特に、じっとりと突き刺さる神直日神の視線には恐怖だ。
「ほら」と急かされ、意を決してぱくりとナスを食べた。
めんつゆに漬けられたナスが、歯を当てただけでじゅわりと解ける。トマトの酸味と大葉とみょうがの爽やかな風味が鼻に抜け、ごくり、と口の中のものを飲み込めば、不思議と食欲が復活した。
怖いことは全て神様たちに丸投げにしよう。
3柱もいるんだから!
なるようになる!
素麺を手繰り寄せて、ちゅるちゅると啜る。
やけ食いになるのかな?
「い、一花…かわいいな…かわいいな…」と頬を突いてくる須久奈様は鬱陶しいけど、私は黙々とお箸を動かした。
ヤサカ様からの連絡が来たのは翌早朝。
「い…い一花…」
もごもごと、いつも以上に不明瞭な声が傍でする。
むにゅ…、と頬を突かれて、ハァハァと変態じみた息遣いで目が覚めた。
案の定と言うべきか、目と鼻の先に頬を上気させた須久奈様が横になっている。
須久奈様用に布団を敷いているのに、そこで寝ているのを見たことがない。結果として、須久奈様は体の半分を畳の上に投げ出し、添い寝を敢行する。
最初は羞恥と恐怖と気持ち悪さで頭がぐちゃぐちゃしたけど、毎朝続けば嫌でも慣れる。
つまるところ”キモイ”で落ち着いた。
「お…おはよ…。目、覚めたか?」
ニチャア、と下手糞な笑顔で、ちゅ、と鼻先に唇が落ちてくる。
「……おはようございます。今、何時ですか?目覚まし鳴ってませんよ?」
眠たすぎて目がしばしばする。
「まだ…5時を少し回ったところだ」
5時…。
「ヤ、ヤサカの遣いが来たぞ」
「え!?」
一気に目が覚めた。
勢いよく体を起こして、寝ころんだままの須久奈様の手を引っ張る。
「何を悠長に寝転んでるんです。ヤサカ様に失礼ですよ」
「べ別にヤサカが来たわけではないし、”ヤサカに失礼”の意味が分からない。い一花が来たら教えろって言うから…教えたけど、お、俺の方が偉いんだからな」
むす、と唇を尖らせながらも、須久奈様はのたのたと起き上がる。
「外にいる…」と歩き出した後ろを、そそくさと付いて行く。頭は寝癖で爆発しているし、寝起き顔のパジャマ姿だけど、身支度の優先順位は下位だ。
サンダルをつっかけて外に出る。
日の出前の夜が和らいだ色合いの空に、ぽつぽつと星が瞬いている。
山の稜線が薄っすら白んでいるので、日の出が近そうだ。
ほんの僅かに涼しく感じる風に、コロコロ、ジィジィと虫が鳴いている。さすがに秋の虫がヤサカ様の遣いではないはず。たぶん鳥かな。
目を細めながら空を仰げば、母屋の屋根に止まったカラスと目が合った。
鳥目とは言うけど、カラスは違うのか。しっかりと私たちを見下ろしている。
カラスは「カァ!」とひと声鳴くと、屋根から舞い降りて来た。
カラスが羽を休めたのは母屋と離れを結ぶ渡り廊下の手すりだ。
手を伸ばせば触れられそうな距離で見るカラスは、想像よりもひと回り大きな体躯をしている。太い嘴と鋭い爪。円らな瞳は可愛いというより心理的な怖さがある。
そそくさと須久奈様の背中に隠れた私を、興味深げに見下ろしてくるから息が詰まる。テレビか何かで、カラスは頭が良くて、人の顔を覚えて攻撃すると聞いたように思う。
「…い、一花。烏が怖いのか?」
「今度からヤサカ様にはスズメでお願いして下さい…」
「…雀。ち、小さすぎて…不便だろ」
須久奈様は言いながら、カラスの足に巻き付けられた手紙を解いた。
「…ヤサカに礼を伝えてくれ」と言えば、カラスは「カァ!」とひと鳴きして母屋の屋根に戻る。
「須久奈様はカラスと話せるんですか?」
「は、話せるわけないだろ…。鳥だぞ」
やっぱり神様の力は分からないことが多い。
幽霊と変わらないと嘆きながら草花を枯らしたり、生やしたり。かと思えば、有象無象と評する八百万の神であるヤサカ様が出来る鳥との会話は出来ないと言う。
「それで、ヤサカ様は?」
身長差があると、須久奈様の手元を覗き込むのも一苦労だ。
須久奈様に抱き着くように背伸びして、ようやく見えた手紙は、びっくりするほど達筆で何一つ読めない…。
「い居所が分かったと…書いてある。案内は、あの烏がするそうだ…」
ちらり、と見上げた先には、じっとこちらを見下ろすカラス。
帰らないと思ったら、案内係だったのか。
「場所は遠いんですかね。それとも近いのかな?」
鳥を追いかけるのは容易じゃない。
「す、少し遠い。山中のようだが……鬼の車があるだろ」
また山…。
鬼頭さんの車があっても全員は乗れない。でも、何が何でも神直日神と年神様は同行を願いたい。特に神直日神は禍を正す神様なので、実はかなり頼りにしている。
「車1台じゃ足りませんよ?たぶん5人乗りです。しかも全員体格がいいので、ぎゅうぎゅう詰めになります」
「そ、それじゃあ…幸輝がいるだろ…。は初めて役に立つな…」
散々な言われように、私は微妙な顔で離れに戻った。
座敷に揃った面々は相も変わらず奇妙の一言に尽きる。
全員が汚れと疲れを取るためにお風呂を済ませてさっぱりしているにも関わらず、室内に籠るのは陰鬱な空気だ。その主な発生源は須久奈様になる。
汗は掻かなくとも山の中を飛び回った須久奈様を強引にお風呂に押し込めたのは1時間前。ドアの向こうから、「い、一緒に入ろう…」とか「ななぜ拒絶する!」とか「おお俺が嫌いなのか…」とか泣き声が聞こえてきたけど無視した。
その結果が、涼やかな生成色の浴衣とは相反するおどろおどろしい顔つきだ。
非常に機嫌が悪い。
でも、この機嫌の悪さは、畏怖の念を抱くものではない。ねばねばとした粘着質な不平不満からくるものなので、ひたすら鬱陶しいものになる。終始、聞こえるか聞こえないかの声量でぶつぶつと「ケチか…!」と悪態を吐いているのだから、心の底からうんざりする。
ケチで結構だ。
むしろ警戒すべきは神直日神で、年神様に怒りをぶつけている。
まぁ、年神様はノーダメージで穏やかな笑みで聞き流しているけど…。
神様の怒りというのは、空気を悪くする。比喩ではなく、実際に悪くなる。ぴりりっと空気が張り詰め、畏れが支配するのだ。
今は年神様に向けられているけど、八つ当たりがこちらに向く危険性を考えると怖くなる。
それを重々察しているのが鬼頭さんで、涼やかな甚平姿も額には汗の玉が光っている。
大神さんは相変わらずクールで感情が読み取れない。その隣の日向さんは、鬼頭さんと同様に神直日神が気になって仕方がない様子。
「神直日神様」と名を呼べば、「あ”?」とチンピラみたいな声が返ってきた。
怖い。
「お召し物の着心地はいかがですか?」
「んだ急に。サイズがデカいが普通だろ」
「須久奈様の浴衣になります」
「なにっ!?」
神直日神は肩を跳ね上げ、白藍色の浴衣をしげしげと見下ろす。
「鬼頭さんの甚平は、終ぞ須久奈様が袖を通すことはなかったのですが、その浴衣は普通に須久奈様がお召しになっています。現在進行形で」
「マジか!」
喜色満面。年神様への怒りオーラが霧散して、嬉しそうにぺたぺたと浴衣を触っている。
思った通りに神直日神の機嫌が急上昇だ。
年神様も須久奈様の紺地の浴衣を着ているのだけど、神直日神は自分の浴衣に夢中で気づいていない。
「一花ちゃんの掌の上だね」
年神様は黙っていてほしい。
雰囲気も少し良くなったところで食事の時間だ。
「みなさん、遠慮せず召し上がって下さい」
ささ、どうぞ、と卓上に配膳された料理を手で示す。
きゅうりとみょうがの和え物、うなぎの茶わん蒸し、大葉を散らしたマグロのカルパッチョ、夏野菜の揚げびたし、からあげ、オクラの肉巻き。
ナスとトマト、みょうがのタレをかけた素麺は、私のリクエストだ。
「使われている野菜は年神様に頂いたんですよ」
どこ産なのかは怖くて訊けないけど、とても美味しい野菜なのは間違いない。
日向さんもお腹がペコペコだったのか、「いただきます」と手を合わせ、和え物から口に運んでいる。鬼頭さんも「美味しい」と頬を緩めながら、揚げびたしを口に運ぶ。あとは全員、キンキンに冷えたビールで喉を潤す。
ちらり、と須久奈様を見れば口はへの字のままだ。
「それで、須久奈はなぜ臍を曲げているんだい?」
カルパッチョを口に運びながら、年神様が首を傾げている。
それに舌打ちしたのは須久奈様だ。
「い、一花が一緒に風呂に入らない…!ケチだろ!」
「いやいや。ケチではないよ。須久奈。婚姻もまだなのに」
「…だ、だが!」
「それじゃあ、離れの浴室は広いのかい?」
「………いや?」
こてん、と須久奈様が首を傾げた。
「それでは無理じゃないかな?それでなくとも須久奈は大きいからね。窮屈で一緒には入れない」
「…そ、そうか……そう…なのか?」
「一花ちゃんと一緒にお風呂に入りたいなら、温泉にでも連れて行くといいよ。新婚旅行とか良いんじゃないかな」
のほほん、と年神様はビールを飲む。
さすが年神様だ。
須久奈様を言い含めた。
神直日神が白い目で年神様を見ているけど、私は年神様リスペクトだ。
「須久奈様。いつか温泉旅行に連れて行って下さいね」
「りょ…旅行………」
しおしおと須久奈様の背中が丸まっていく。
引きこもりにはハードルが高いのかもしれない。可哀想に思うけど、こればかりはどうしようもない。
今の私には添い寝が限界。一緒にお風呂に入るなんて、想像だけで心臓が震える。神様とはいえ、男性の裸を見るのは抵抗しかないのに、あの顔が不意打ちで出てきたらと思うと心臓が止まるかもしれない。
水も滴るイケメンへの免疫はないのだ。
そのお詫びに、お箸で摘まみ上げたのは夏野菜の揚げびたし。その中のししとうを、「あ~ん」と須久奈様の口元に向ける。
須久奈様が驚いたのが分かった。それから、もっさり前髪の奥で頬が紅潮する。
「あ~ん、ですよ?」
ほら、とししとうを少し口元に近づける。
「食べないのなら、私が食べます」
「た!食べる!」
叫ぶ須久奈様の頬は真っ赤だ。嬉しそうに口角を上げると、ぱくり、とししとうを食べた。
もぐもぐと咀嚼しながらも、須久奈様の白い肌がじわじわと赤らみを広げる。今や耳どころか首筋まで真っ赤だ。
「美味しいですか?」
聞けば、こくこくと頷く。
機嫌が上向いたようだ。
「一花ちゃんは上手に転がすね」
本当に年神様は黙っていてほしい。
「い、一花」
今度は率先して口を開いたので、2本目のししとうを放り込む。
せっせとししとうを放り込んで、須久奈様はご機嫌だけど、ジト目でこちらを見る神様が1柱。
「おい。お前、なんで連続してしし唐を食べさせてるんだ?よもや、自分の嫌いな物を須久奈に食わせてるわけじゃねぇだろうな~」
さすが神様するどい…。
ししとうは、小さい時にハズレを食べて、あまりの辛さに泣き出すというトラウマがある。
「い、一花は、小さい頃に…しし唐を食べて泣いてたからな…。しし唐や苦瓜が嫌いだよな?」
どうして知ってる?
どこで見てたの?
普通に怖い。
「須久奈騙されるな!嫌いなものを食わされてるんだぞ?怒れ!」
「…黙れ。俺は…一花になら何をされても怒らない…」
なかなかの宣言が、少し嬉しい。
と思うあたり、私もかなり須久奈様が好きなんだろうなと自覚してしまう。
「須久奈は一花ちゃんを甘やかすのが趣味だからね。こういうのを寵愛や溺愛というのだろうね」
過保護というのが、一番しっくりくる気がする。
神直日神はジト目だけど、その隣の鬼頭さんからは優しい視線を送られている。
「さて、須久奈の機嫌も持ち直したことだし、そろそろ直日と大神くんの収穫を聞きこうか」
年神様はビールを口に運びながら、にこりと神直日神を見る。
神直日神は重労働を思い出したのか、めちゃくちゃ顔を顰めた。
説明を始めたのは大神さんだ。
「川守村ですが、動画で見た通りでした。現存する建物はなく、かといって森に呑まれるわけでもない村の跡地です。人の営みの痕跡は各所に残ってはいましたが、当然ながら人の気配はありません。さらに、今も尚、其処彼処にこびりついていた澱が、本来あるはずの自然の回復力を妨げているようでした」
「自然の回復力?」
それが何か分からずに首を傾げれば、年神様が「再生する力だね」と言う。
「本来、森を切り開いて作られた村が廃れれば、年月をかけて森が再生するんだよ。野生動物も戻ってきたりしてね。それが自然の回復力だね」
「草こそ茂っていましたが、木々が生えた個所は見当たりませんでした。動物も鳥も妖怪もいない。せいぜい小さな羽虫を見たくらいです」
大神さんが肩を竦める。
「人間が蓄積させた負の感情も、びっちり残ってたぜ。あの地から憂いが消えるのは、さらに年月が必要だろうよ」
「中でも禍々しさを感じたのは2ヵ所。1つは例の神事を行っていた川です。今も川縁には禍々しい穢れが張り付いていました。そして、もう1つが村の端。土砂崩れ跡の辺りです。そこに社があったのだろうと目星をつけ、掘り進めました」
「スコップ持参で良かったね」
他人事のように年神様が笑い、「そういうとこだよ!」と神直日神が怒声を飛ばす。
かなりの重労働だったのは、神様とは思えないほどの泥まみれで戻って来たので容易に察することが出来た。
「結果として、ゑびす像の一部を掘り起こすことができましたが、ゑびす像が目当ての忌み物ではないことは確認できました」
「つっても、成果はある」
神直日神は口角を吊り上げ、「残滓が兄の気配だった」と嘲笑した。
嫌味を込めた口調に、鬼頭さんが素麺を啜り上げる途中で硬直する。日向さんも居心地が悪そうに身動ぎしながら、乾いた唇を麦茶で湿らせた。
須久奈様と年神様は予想通りだったのだろう。大した反応を示すことなく、ビールを口につけている。
「やはり黒ゑびすが持っていたという木片が忌み物になるんだろうね」
「それを人間が大事に持ち去ったんだろ~?」
神直日神は渋面を作り、一気にビールを飲み干した。
すかさず、鬼頭さんがビール瓶を手に注ぎ足す。とても手慣れた給仕だ。
「んで、その男は何処よ?」
「…ヤサカが捜す」
「鳥だっけか?」
あまり興味はなさそうだ。からあげとビールを交互に口に運びながら、「さっさと終わらせてぇ~」と愚痴る。
さっさと終わらせたいというのは賛成だ。
でも、終わらせるには忌み物に近づかなきゃならない。それは怖い。カラスは穢れに触れて死んだと聞いて、すごく怖くなった。
忌み物を風呂敷に包んで持ち去った男性は無事なのだろうか…。
「い…一花」
須久奈様に呼ばれて「はい?」と振り向けば、口元にごま油が香るナスがある。
「箸が止まってる…。”あ~ん”だろ?」
須久奈様なりの気遣いらしい。
する時は別段何も思わなかったけど、される側は恥ずかしさが凄い。特に、じっとりと突き刺さる神直日神の視線には恐怖だ。
「ほら」と急かされ、意を決してぱくりとナスを食べた。
めんつゆに漬けられたナスが、歯を当てただけでじゅわりと解ける。トマトの酸味と大葉とみょうがの爽やかな風味が鼻に抜け、ごくり、と口の中のものを飲み込めば、不思議と食欲が復活した。
怖いことは全て神様たちに丸投げにしよう。
3柱もいるんだから!
なるようになる!
素麺を手繰り寄せて、ちゅるちゅると啜る。
やけ食いになるのかな?
「い、一花…かわいいな…かわいいな…」と頬を突いてくる須久奈様は鬱陶しいけど、私は黙々とお箸を動かした。
ヤサカ様からの連絡が来たのは翌早朝。
「い…い一花…」
もごもごと、いつも以上に不明瞭な声が傍でする。
むにゅ…、と頬を突かれて、ハァハァと変態じみた息遣いで目が覚めた。
案の定と言うべきか、目と鼻の先に頬を上気させた須久奈様が横になっている。
須久奈様用に布団を敷いているのに、そこで寝ているのを見たことがない。結果として、須久奈様は体の半分を畳の上に投げ出し、添い寝を敢行する。
最初は羞恥と恐怖と気持ち悪さで頭がぐちゃぐちゃしたけど、毎朝続けば嫌でも慣れる。
つまるところ”キモイ”で落ち着いた。
「お…おはよ…。目、覚めたか?」
ニチャア、と下手糞な笑顔で、ちゅ、と鼻先に唇が落ちてくる。
「……おはようございます。今、何時ですか?目覚まし鳴ってませんよ?」
眠たすぎて目がしばしばする。
「まだ…5時を少し回ったところだ」
5時…。
「ヤ、ヤサカの遣いが来たぞ」
「え!?」
一気に目が覚めた。
勢いよく体を起こして、寝ころんだままの須久奈様の手を引っ張る。
「何を悠長に寝転んでるんです。ヤサカ様に失礼ですよ」
「べ別にヤサカが来たわけではないし、”ヤサカに失礼”の意味が分からない。い一花が来たら教えろって言うから…教えたけど、お、俺の方が偉いんだからな」
むす、と唇を尖らせながらも、須久奈様はのたのたと起き上がる。
「外にいる…」と歩き出した後ろを、そそくさと付いて行く。頭は寝癖で爆発しているし、寝起き顔のパジャマ姿だけど、身支度の優先順位は下位だ。
サンダルをつっかけて外に出る。
日の出前の夜が和らいだ色合いの空に、ぽつぽつと星が瞬いている。
山の稜線が薄っすら白んでいるので、日の出が近そうだ。
ほんの僅かに涼しく感じる風に、コロコロ、ジィジィと虫が鳴いている。さすがに秋の虫がヤサカ様の遣いではないはず。たぶん鳥かな。
目を細めながら空を仰げば、母屋の屋根に止まったカラスと目が合った。
鳥目とは言うけど、カラスは違うのか。しっかりと私たちを見下ろしている。
カラスは「カァ!」とひと声鳴くと、屋根から舞い降りて来た。
カラスが羽を休めたのは母屋と離れを結ぶ渡り廊下の手すりだ。
手を伸ばせば触れられそうな距離で見るカラスは、想像よりもひと回り大きな体躯をしている。太い嘴と鋭い爪。円らな瞳は可愛いというより心理的な怖さがある。
そそくさと須久奈様の背中に隠れた私を、興味深げに見下ろしてくるから息が詰まる。テレビか何かで、カラスは頭が良くて、人の顔を覚えて攻撃すると聞いたように思う。
「…い、一花。烏が怖いのか?」
「今度からヤサカ様にはスズメでお願いして下さい…」
「…雀。ち、小さすぎて…不便だろ」
須久奈様は言いながら、カラスの足に巻き付けられた手紙を解いた。
「…ヤサカに礼を伝えてくれ」と言えば、カラスは「カァ!」とひと鳴きして母屋の屋根に戻る。
「須久奈様はカラスと話せるんですか?」
「は、話せるわけないだろ…。鳥だぞ」
やっぱり神様の力は分からないことが多い。
幽霊と変わらないと嘆きながら草花を枯らしたり、生やしたり。かと思えば、有象無象と評する八百万の神であるヤサカ様が出来る鳥との会話は出来ないと言う。
「それで、ヤサカ様は?」
身長差があると、須久奈様の手元を覗き込むのも一苦労だ。
須久奈様に抱き着くように背伸びして、ようやく見えた手紙は、びっくりするほど達筆で何一つ読めない…。
「い居所が分かったと…書いてある。案内は、あの烏がするそうだ…」
ちらり、と見上げた先には、じっとこちらを見下ろすカラス。
帰らないと思ったら、案内係だったのか。
「場所は遠いんですかね。それとも近いのかな?」
鳥を追いかけるのは容易じゃない。
「す、少し遠い。山中のようだが……鬼の車があるだろ」
また山…。
鬼頭さんの車があっても全員は乗れない。でも、何が何でも神直日神と年神様は同行を願いたい。特に神直日神は禍を正す神様なので、実はかなり頼りにしている。
「車1台じゃ足りませんよ?たぶん5人乗りです。しかも全員体格がいいので、ぎゅうぎゅう詰めになります」
「そ、それじゃあ…幸輝がいるだろ…。は初めて役に立つな…」
散々な言われように、私は微妙な顔で離れに戻った。
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