神様の許嫁

衣更月

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まれびとの社(二部)

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 スピーカーにしたスマホの向こうから聞こえてくるのは、神直日神の絶叫だ。
『だぁ~~!!なんで俺が泥にまみれなきゃならないんだよ!こういうのは年神の役目だろ!俺は便利屋じゃない!須久奈と一緒が良いーーー!!』
 最後のが本音かな。
 そして、標的としてロックオンされているのが年神様。
 須久奈様と同行しているの許せないらしく、『恨むぞ』とか『祟ってやる!』とか妬み嫉みの呪詛が延々と紡がれている。対して年神様は苦笑だけ。神直日神の呪詛は何一つ効いていない。
 さすが神様。
 どんな呪詛を吐かれようとも微動だにしない。
 単なる冗談としても、神様の口から”祟る”なんて出たら私なら耐えられない。スマホを持つ鬼頭さんも震えている。なのに、意に介さないのが年神様。と、もう1人。堂々と呪詛の間に割って入った大神さんだ。
『しかし、中村何某の情報は殆どありません。どのように探しましょうか』
 なんともクールな口調の大神さんに、『そいつが持ってる保証はないだろ!全部年神の妄言だ!』と神直日神が吐き捨てた。
「持っているとは言ってないよ。持っている確率が高いね、という話だよ」
 断言せずに飄々としているのが年神様らしい。
『何が確率だ!保険かけてんじゃねぇよ!』
 輩のように年神様に絡んでいるけど、年神様は「事実だよ」と肩を竦めた。
 さっきから2柱…主に神直日神の鬱憤大爆発ループに陥っている。
 そんな中、沈黙を保っていた須久奈様が、「……ヤサカに…会いに行くか…」と呟いた。
「ヤサカ様に、ですか?」
「ヤ…ヤサカは…元はとりだ…。そ、それが年を経て…化けた…」
「化け猫的な感じですか?」
 ヤサカ様は翁面の小柄なおじいさんだ。
 面に隠された顔は分からないけど、杖をつき、腰の曲がった姿は高齢の老人そのもの。鳥が化けたと言われても、その要素が欠片も見当たらない。
「…ふ、梟だ。八ツ女坂やつめさかという村で生まれたと言うので…お俺がヤサカと名付け…からの社を与えた。…神格化したのは社持ちとなったからだ。人間が…参り…、人間が思い描く神の姿が顕現し…今のヤサカとなった」
「え!ヤサカ様って元からおじいちゃんの姿じゃなくて、人の想像が作った姿なんですか!?」
「そ、そう…。数十年かけて…ヤサカの姿がアレになった…。い一花も以前、神を”雲の上で杖をついた白髭のおじいちゃん”と…想像してただろ?」
 確かに、そんなことを言った記憶はある。
「…その想像が今のヤサカだ…。姿は違えど…本質は変わらない…。ヤサカは、社に縛られているが…飛び交う鳥の声を聞き…じょ、情報を得ている」
 そういえば、初めてヤサカ様と会った時、カラスが噂話をしていると言っていたように思う。あの時は、神様というのは何でもアリの存在だと思っていたから疑問に思わなかったけど、しっかり理由があったらしい。
「ヤサカというのは、鹽土老翁神しおつちおじのかみの社だったかな」
「津守神社の神様です」
「それじゃあ、次はそこだね。直日たちは時間がかかりそうかい?」
 たぶん、年神様に悪気はない。
 にこにことした笑顔が向こうにも伝わったのか、神直日神が『だぁーーーー!!』と吠えた。
『俺、お前のそういうとこが、すっげぇ嫌いだわ!』
『今、土砂崩れ跡を掘り起こしていますので、まだ時間がかかります』
 やっぱりクールな大神さんの声に被せる様に、『覚えてろ年神ーーー!!』と神直日神が怒声を飛ばした。

 車で行ったり来たり。
 一度家に帰って、ヤサカ様の手土産を用意する。
 お土産は母お手製の酒饅頭だ。
 年神様と鬼頭さんのウケが良かったこともあり、朝からせっせと作っていた。それをヤサカ様のお土産にすると伝えると、バスケットに酒饅頭と小瓶のお酒、お茶、紙コップを入れてくれた。
「くれぐれも粗相のないように」とは、母の口癖のようなものだ。
 昼食とお風呂の準備をしておくという母に見送られ、炎天下を津守神社目指して歩く。
 私と日向さんは日傘を差し、暑さに汗を流しながら歩いているというのに、須久奈様たちは涼やかな顔だ。
 この強烈な日射しすら、年神様は「ここまで暑いと来年はパイナップルを育ててみようかな」と暢気に笑う。
 年神様は趣味で野菜を作っていて、我が家にお裾分けをしてくれる。特にスイカが多い。しかもデカい。次いでトマトとキュウリ、ナスと続く。
 年神様からお裾分けを貰う度、律儀な母は須久奈様に供える。
 離れに野菜が供えられてると、年神様が遊びに来たのが分かる。
 須久奈様はめちゃくちゃ迷惑そうしているけど、ちゃんとスイカを食べているので、こちらも律儀なのだ。
「年神様ってなんでも作れちゃうんですね。ていうか、パイナップルって、どんな感じで生るんですか?木ですか?りんごみたいに」
「へへへ…。お、お俺は…い一花の、そういう…無知なところが…可愛いと思う…」
 全然嬉しくない”可愛い”だ。
 イラっとした私に、鬼頭さんがすかさずスマホを見せてくれた。
 想像と全然違った。
 木じゃない。
 パイナップルの下。お尻に茎が繋がっている。しかも葉は鋭く固そうだ。パイナップル畑は、ひたすらに”痛そう”の感想しかない。収穫する人も大変だと思う。
 てっきり、頭の葉の方が枝に繋がっているのかと思ったので勉強になった。
 日向さんも知らなかったのか、「こんな風に生るんですね」と驚いている。
「ていうか、須久奈様ってパイナップル知ってるんですね」
「ば、馬鹿にするな…!お俺だってそれくらい知ってる…!」
「まぁ、須久奈は横文字に弱いから、知らないと思われても仕方ないかな。でも、須久奈だってパイナップルとバナナくらいは知ってるよ」
 朗らかに笑う年神様に、私の時とは違う低音ボイスの「馬鹿にするな」が飛んだ。
 須久奈様は頑として認めないけど、年神様とは仲が良い。これが嫌いな神様相手なら手で出ている。いや、足かも…。
 最近は、神直日神も懐に入れている感がある。学生なら年神様とは同級生で、神直日神は後輩って感じ。実際のところ、一番の年下は年神様らしい。聞いた時は驚いた。
「一花ちゃん。その…ヤサカ様?ってどんな神様?」
 私の隣に並んだ日向さんが、少し不安げに訊いてくる。
 気持ちは分かる。
 神様というのは、必ずしも人に優しいとは限らない。
 神様の本質はほぼほぼ怖い。年神様のように気遣いに満ちた神様は少数なのかもしれない。ぱっと見、チャラ男フランクな神直日神も、実際は怖い。それは身をもって経験しているので、”須久奈様がいてこそのフランクさ”だと断言できる。
「本質は知りませんけど、ヤサカ様は優しい感じの神様ですよ。翁面をかぶった、小柄なおじいちゃんです」
「本質…」
「私が言っても説得力がないんですけど、神様って怖いんですよ。私のおばあちゃんは、神様は優しい側面と怖い側面があるって言ってました。その通りだと思ってます」
「怖い側面…」
 日向さんが、ちらりと年神様を見て首を傾げた。
 まぁ、その気持ちは分からなくでもない。
「たぶんなんですけど、須久奈様がいるから、年神様たちは怖くないんです。ちなみに、私と神直日神様の出会いは最悪で、駕予稲荷神社の鬼頭さんの気持ちがすごく分かったくらいです」
「え!?」と、鬼頭さんが驚愕する。
「あ…あの恐怖を体験したの?」
「気絶しました」
「それは初耳だね」と、年神様が面白そうに口にを挟む。
「遺恨はないのかい?直日が嫌いとか、怖いとか」
「今はないですよ。須久奈様が報復して…途中で可哀想になったので」
「ボコボコにされたのか」
 そのボコボコ現場を通り過ぎ、社が見えてきた。
「津守神社が見えてきましたよ」
 比較的新しい家屋が並ぶ住宅街の道路脇に茂る椿が目印だ。
 椿に隠れるほど小さな鳥居と社なので、初めて来る人には分かり辛い。
 前回同様、ぞくん、と背筋に悪寒が走ると同時に、周囲の音が遠ざかるように消えた。
 遠くで行き交う車の走行音に、お盆を過ぎて勢いを減らしたセミの鳴き声。子供たちの賑やかな笑い声も、犬の遠吠えも、そよぐ風も途絶えた。
 神様の領域だ。
 ここで迷えば”神隠し”となる。
 人である私は異物なので神域が拒絶するのか、悪寒と不安が終始肌を撫でつける。
 初めて経験する日向さんも震えている。震えながら、ようやく姿を現した須久奈様に気が付いて硬直している。
 顔半分が隠れるほどもっさりした黒髪に着物姿の長身痩躯の男性が急に現れれば、普通に驚くし、トラウマレベルの恐怖だと思う。
 それでも日向さんは悲鳴を堪えた。
 偉い。
 鬼頭さんはと目を向ければ、神域は平気らしい。
「日向さん。日傘を畳みましょう」
「は、はい!」
 いそいそと日傘を畳み、社へと向き直る。
 社の前には、木賊色の着物に杖をついたヤサカ様がこっちを向いて立っていた。翁面で表情は分からないけど、鬼頭さんを見ても拒絶している様子はないので大丈夫なのだろう。
「ようこそお出で下さいました。須久奈比古命様。年神様。一花様」
「…ヤサカ。澱が消え、少しは楽になったように見えるな」
「須久奈比古命様並びに神直日神様には、ご尽力いただき感謝しております」
「そうか…」
 こくり、と須久奈様が頷き私を見た。
「あ…。ヤサカ様。ご無沙汰しております!これ、母が作った酒饅頭とお茶。うちの酒蔵のお酒です」
 ヤサカ様の前に駆け寄り、バスケットの中身をヤサカ様に見せる。
 ヤサカ様は「ふぉふぉ」と笑い、「先日は一花様の弟君おとうとぎみが参りに来て下さいました」と嬉しそうに肩を揺らす。
「誓志が来たんですね」
「父君と母君、姉君も来て下さいましたよ。一花様が世話になったと。私は何もしておりませぬが、篤い信仰心と心遣いにより、百は若返ったように身が軽くなりました」
 初めて会った時は、須久奈様が座れと気遣っていたのに、今は杖を無視して軽くジャンプしてみせている。
 元気になって安心した。
「それにしても、弟君は見る目はなくとも、とても勘が良いですな。まるで見えているかのように、私に頭を下げるので驚きました。この年で、まだ驚かされることがあるのかと愉しくなりました」
「ヤサカ様の退屈が少しでも解消されたのなら良かったです」
 バスケットは後日取りに来る旨を伝え、鳥居の前で一礼して賽銭箱の傍らにバスケットを供える。
 須久奈様の傍に戻れば、ヤサカ様は嬉しそうに頷く。
「それにしても、神と人。そして鬼とは…。これほど驚かされる日はありませんな」
 ヤサカ様が朗らかに笑う。
「ヤサカ様は鬼頭さんを見ても嫌悪や殺意は抱かないんですね。須久奈様は凄かったですよ」
「それは事前に知っていたからでしょう。お喋りな雀が噂をしておりましたので、肝を冷やさずに済みました」
「ではヤサカ…。我々が来た凡その事情は分かっているのか?」
 須久奈様の問いに、ヤサカ様は深々と頷いた。
「ここ数日、妖怪を目にする機会が増えております。昔は…そうですね、一花様が幼少の頃でしょうか。神籟町を中心に妖怪がいなくなりました。あの時は須久奈比古命様が追い払っておりましたが、今回は、その時に似ております」
「どういう事だい?」と、年神様。
「あの頃は、妖怪が畏れに触れて神籟町から一斉に逃げたのです。今回も、妖怪が何かから逃げているように感じられます。神籟町にまで逃げ込んだのは、あれから十余年経っておりますので安全になったと考えたのか、はたまた神々の存在を知らない虚けなのか…。どちらにしても、多くの妖怪がパニックに陥り、蜘蛛の子を散らすように方々に逃げているのは間違いありません」
 妖怪が一斉に逃げている。
 その事実だけで、忌み物が神様由来であると確定したようなものだ。
「…鬼」
 須久奈様が命じれば、腰の引けた鬼頭さんが怖ず怖ずと進み出た。
 両手に持って捧げているのは、例のペットボトルだ。
「ヤサカ…。これを山に捨てた人間を探している…」
「この容器ですか?」
 ひょいっとペットボトルを手にしたヤサカ様が、しげしげとラベルを見ている。
「須久奈、もっと範囲を広げて力を借りようか」
 年神様の言葉に、ヤサカ様が年神様に向き直った。
「私たちは川守村に祀られていたモノを探しているんだよ。そのモノがあっただろう場所にそれが落ちていてね。ヒントにならないかと拾ったわけだ。ちなみにヤサカは川守村については何か知らないかい?」
「カワカミ村。ええ、ええ。存じております。嵐から逃れ、ここにも避難して来た村人がおりましたから。何より、あまり評判の宜しくない村でした…」
「評判が良くないというのは?」
「鳥たち言うには、カワカミ村というのは空気が澱み、鳥だけでなく獣も寄り付かない忌避すべき場所だったのです。何か起こるのではないかと、鳥たちは警戒し、監視していたのです。私がここで神と言われるようになった頃は、そのような村はなかったと記憶していますが…」
 聞けば聞くほどヤバさが上昇していく。
「今、鳥に情報を訊けるか?」
 じっと須久奈様がヤサカ様を見下ろし、その視線にヤサカ様は嬉しそうに体を揺らす。
「ええ、ええ。最近は身が軽いですから。なにより須久奈比古命様のお役に立てるのであらば、老骨に鞭を打ってでも働きましょう」
 すごい信奉者だ…。
 神様は見た目に惑わされてはいけないとは分かっているけど、須久奈様よりうんと年老いたヤサカ様を見ると、無理はしないでほしいと祈ってしまう。
「須久奈比古命様。神域を解いて下さいませ」
 須久奈様が頷くと同時に、音が戻った。熱風に近い風がそよぎ、遠くで子供の笑い声が聞こえる。
「感謝申し上げます」
 ヤサカ様が頭を下げ、すすす、と私たちから離れた。
「い、一花…ヤサカが見えるか?」
 そういえば以前、ヤサカ様は弱っているから私に見えない可能性があると言っていたのを思い出す。
 見えはする。
 ただ、須久奈様たちと違って、どこか霞んで見える。
「見えます。でも、輪郭がぼんやりしているような感じです…」
 それがなんだか寂しい。
「し…心配するな。神というのは、すぐに消えるわけじゃない。例え信仰心が潰えても、しばらくは生き永らえる。まだ一花の目に映るなら…大丈夫だ」
 須久奈様の優しさに頬が緩む。
 ヤサカ様を見れば、電柱にとまったカラスや電線のスズメ、飛び交うツバメに手振り身振りで会話を交わしている。セキレイが道路に下り立った。長い尾を上下させながら、ヤサカ様へと近寄っている。
 私の目にはファンタジーな場面でしかない。
 小鳥と戯れるおじいちゃん。
 日向さんを見れば、周囲に集まる鳥に驚いている。
「ああ…」
 ヤサカ様は悲哀を込めた声を零し、電柱のカラスが「カァ」とひと鳴きして飛び去った。
「さきほどの烏の仲間の1羽が、穢れをまとった何かを運び息絶えたそうです…」
「何かとはなんだ」
「棒切れのような…萎びた動物の一部のような…そのようなものだったそうです。何やら操られたようだったとも言い、ひたすら悲しいと去って行きました」
 ヤサカ様も悲しそうに肩を落とす。
 チチ、と椿にシジュウカラが止まった。
 軽やかな鳴き声だというのに、ヤサカ様の気分は晴れない。相槌を打つ声は暗く、緩く頭を振ったり、頷いたりしては落胆の息を吐く。
「その容器を捨てる男を見たと四十雀が言っております。白髪の男が、山の中で禍々しい物を拾い上げ、その容器に入っていた水で汚れを落としていたそうです」
「その男は?」
 須久奈様の問いに、ヤサカ様の目がシジュウカラに移る。
 シジュウカラが歌うように鳴き、呼応するようにスズメやセキレイが囀った。
「大事に風呂敷に包み、持ち帰ったそうです」
 ずん、とお腹の底に重しが沈んだような息苦しさを感じた。
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