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1.three guys and a lady
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「妙案がありまして」
と、エリオットが持ち出したのは、オーランドの縁談だった。
今年二十五歳になるオーランドが、結婚相手を探しているということは、知られた話だった。
オーランドが二十歳の時、馬車の事故で、両親を失ったフィンドレー兄弟だったが、それから五年が過ぎ、オーランドがようやく領主としての務めにも慣れ、次は嫁取りと、周囲から期待を抱かれるのは、おかしいことではなかった。
それで、オーランドは、周囲に勧められるがまま、近頃、二度程、見合いに臨んだのだったが、あることが原因で、残念ながら、二度とも結婚話はまとまらなかった。
そのことを知るエリオットが、ジャスパーに、オーランドへの縁談話を持ちかけて来たのだった。
エリオットの推薦する令嬢というのは、コーディリア・エリザベス・グラハム、伯爵令嬢、二十歳。
コーディリアという名前を聞いて、ジャスパーは目を丸くして驚いた。
ウォルトンの社交界で、コーディリアの名前を知らぬ者はなかった。
何故なら、コーディリアの曾祖母というのが、先代国王陛下の妹という、一際格式の高い、由緒正しい家系の伯爵令嬢であり、コーディリアの父親は、王立ウォルトン大学の前学長で、今は、有名私立大学の名誉教授、文化財保護団体の理事長だった。
そして、コーディリアは、ウォルトンの社交界では、美しさと気品で名高い令嬢だった。
エリオットの妙案というのは、コーディリアに縁談を持ちかけようというものだった。
その縁談の相手というのが、エリオットの憎き敵、オーランド・ウィリアム・フィンドレー。
年齢的に釣り合いが良く、良縁ではないかと、エリオットはジャスパーに持ちかけた。
良縁でなど、あるはずがなかった。
一方は、王室に縁を持つ、由緒正しき都会の伯爵令嬢、もう一方は、あると言えば果樹園しかない、両側を大きな領地に挟まれた、小さな土地の田舎貴族。
誰が、どこをどう見ても、不釣り合いだった。
そもそも、コーディリアほどの令嬢になると、幼少の頃からの許嫁がいて当然だった。
だから、これは、エリオットの仕返し、嫌がらせだ、とジャスパーは、すぐに感づいた。
つまり、アールーズの領主として、オーランドの世話を焼くふりをして、その実、恥をかかせてやろうと。
断られるのを承知で、見当違いの申し込みをしてやって、オーランドに赤っ恥をかかせてやろうというのだ。
グラハム家が、この縁談の申し込みを、身の程知らずと怒るか、嘲笑するか、これはちょっとした見ものだ・・・。
自分自身もオーランドに、可愛くない額を巻き上げられていたジャスパーは、エリオットの計略に加担することを決めた。
グラハム家からの縁談を断る連絡に、事情を知らないオーランドは、目を白黒させることだろう。
オーランドが、自分やエリオットの仕業と気づいて、苦情を言って来たとしても、オーランドの将来を心配しての気遣いと、言い逃れをすればいい。
まあ、事実を知ったところで、あの吞気者のオーランドが、アールーズに、強く抗議してくるとは思えないが。
ちょっとした、見世物だ。
ジャスパーは、エリオットと顔を見合わせて、くくくっと、笑った。
ジャスパーは、早速、ペンを取り、ウォルトンのグラハム家へ、手紙を書くことにした。
こちらは、アールーズの領主ハットン家であるが、懇意にしている隣の領主、オーランド・ウィリアム・フィンドレーの縁談がまとまらずに、心を痛めている、ということ。
社交界で名高いご令嬢コーディリア殿には、あまたの縁談が舞い込んで来ることと推察申し上げるが、ぜひその末尾に、オーランドの名を加えていただきたい、ということ。
そして、最後に、――この点は、ジャスパーにとって、重要な点であったのだが、あくまで、これはチェストルの領主フィンドレー家の縁談であり、アールーズとしては、オーランドを見かねての手助けに過ぎないため、この手紙の返事や、今後一切の連絡は、フィンドレー家へお願いしたい、と。
つまりは、アールーズのお節介者めと、グラハム家からの矛先が、ハットン家に向くことがないよう、ジャスパーは、慎重に、慎重に、手紙を認めた。
と、エリオットが持ち出したのは、オーランドの縁談だった。
今年二十五歳になるオーランドが、結婚相手を探しているということは、知られた話だった。
オーランドが二十歳の時、馬車の事故で、両親を失ったフィンドレー兄弟だったが、それから五年が過ぎ、オーランドがようやく領主としての務めにも慣れ、次は嫁取りと、周囲から期待を抱かれるのは、おかしいことではなかった。
それで、オーランドは、周囲に勧められるがまま、近頃、二度程、見合いに臨んだのだったが、あることが原因で、残念ながら、二度とも結婚話はまとまらなかった。
そのことを知るエリオットが、ジャスパーに、オーランドへの縁談話を持ちかけて来たのだった。
エリオットの推薦する令嬢というのは、コーディリア・エリザベス・グラハム、伯爵令嬢、二十歳。
コーディリアという名前を聞いて、ジャスパーは目を丸くして驚いた。
ウォルトンの社交界で、コーディリアの名前を知らぬ者はなかった。
何故なら、コーディリアの曾祖母というのが、先代国王陛下の妹という、一際格式の高い、由緒正しい家系の伯爵令嬢であり、コーディリアの父親は、王立ウォルトン大学の前学長で、今は、有名私立大学の名誉教授、文化財保護団体の理事長だった。
そして、コーディリアは、ウォルトンの社交界では、美しさと気品で名高い令嬢だった。
エリオットの妙案というのは、コーディリアに縁談を持ちかけようというものだった。
その縁談の相手というのが、エリオットの憎き敵、オーランド・ウィリアム・フィンドレー。
年齢的に釣り合いが良く、良縁ではないかと、エリオットはジャスパーに持ちかけた。
良縁でなど、あるはずがなかった。
一方は、王室に縁を持つ、由緒正しき都会の伯爵令嬢、もう一方は、あると言えば果樹園しかない、両側を大きな領地に挟まれた、小さな土地の田舎貴族。
誰が、どこをどう見ても、不釣り合いだった。
そもそも、コーディリアほどの令嬢になると、幼少の頃からの許嫁がいて当然だった。
だから、これは、エリオットの仕返し、嫌がらせだ、とジャスパーは、すぐに感づいた。
つまり、アールーズの領主として、オーランドの世話を焼くふりをして、その実、恥をかかせてやろうと。
断られるのを承知で、見当違いの申し込みをしてやって、オーランドに赤っ恥をかかせてやろうというのだ。
グラハム家が、この縁談の申し込みを、身の程知らずと怒るか、嘲笑するか、これはちょっとした見ものだ・・・。
自分自身もオーランドに、可愛くない額を巻き上げられていたジャスパーは、エリオットの計略に加担することを決めた。
グラハム家からの縁談を断る連絡に、事情を知らないオーランドは、目を白黒させることだろう。
オーランドが、自分やエリオットの仕業と気づいて、苦情を言って来たとしても、オーランドの将来を心配しての気遣いと、言い逃れをすればいい。
まあ、事実を知ったところで、あの吞気者のオーランドが、アールーズに、強く抗議してくるとは思えないが。
ちょっとした、見世物だ。
ジャスパーは、エリオットと顔を見合わせて、くくくっと、笑った。
ジャスパーは、早速、ペンを取り、ウォルトンのグラハム家へ、手紙を書くことにした。
こちらは、アールーズの領主ハットン家であるが、懇意にしている隣の領主、オーランド・ウィリアム・フィンドレーの縁談がまとまらずに、心を痛めている、ということ。
社交界で名高いご令嬢コーディリア殿には、あまたの縁談が舞い込んで来ることと推察申し上げるが、ぜひその末尾に、オーランドの名を加えていただきたい、ということ。
そして、最後に、――この点は、ジャスパーにとって、重要な点であったのだが、あくまで、これはチェストルの領主フィンドレー家の縁談であり、アールーズとしては、オーランドを見かねての手助けに過ぎないため、この手紙の返事や、今後一切の連絡は、フィンドレー家へお願いしたい、と。
つまりは、アールーズのお節介者めと、グラハム家からの矛先が、ハットン家に向くことがないよう、ジャスパーは、慎重に、慎重に、手紙を認めた。
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