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10.マーガレット<後編>
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晩餐が終わると、招待客たちは、広間から、舞踏会の開かれる大広間へと、向かった。
これから、日にちを跨いで、深夜まで続く宴に、人々は心ゆくまで、踊り、笑い、喋り、思い思いに、時を満喫するのだった。
ペンナの街から少々離れた、アウラでの舞踏会ということもあって、深夜まで宴を楽しむ人の中には、そのままモーガン邸に泊まり、翌日の昼前、のんびりと帰ってゆく客もあった。
マーガレットも、ヘンリーに誘われて、席を立ち、大広間へと向かう人の流れに入ったが、しばらく歩いたところで、
「ヘンリー、私、これで失礼するわ」
マーガレットは、小さな声で、そう告げた。
「舞踏会は、これからだよ」
「最初から、決めていたのよ。お食事にだけ、出席しようって。私がダンスを楽しむのは、不謹慎だわ。そうでしょう?」
「踊らなくてもいいよ。僕も、踊らないから、話をしていよう」
「まさか」
マーガレットは、笑いだした。
主催者の男性が、舞踏会で踊らないなどという話は、聞いたことがなかった。
そもそも、舞踏会は、男性と女性が、パートナーを変えながら踊り、親交を深める場であり、結婚相手を見つける場としても、大変重要な場所だった。
「ヘンリー、今夜は、楽しかったわ。あなたのお蔭よ。ずっと家の中に引きこもってばかりだったけど、あなたの言う通り、少しずつでも・・・、何か、私にできることを探してみるわね。今夜は、本当に、ありがとう」
久しぶりに、明るい光が、心の内で弾けるのを実感するマーガレットだった。
「一緒に、舞踏会へ」
「ヘンリー・・・」
「僕が踊らないのは、君のせいじゃない。君は僕が、舞踏会で踊っているのを、見かけたことがある?」
確かに、そう言われれば、これまでに、何度か舞踏会で顔を合わせる機会があったものの、ヘンリーは、いつも、壁際で、誰かと何かを話していて、女性と踊っている姿を、見たことがなかった。
「もしかして、一度も踊ったことがないの?」
「ご名答」
「どうして、そんなこと・・・」
マーガレットは、驚きを隠せなかった。
「とにかく、大広間へ。舞踏会が始まる時間だ」
ヘンリーは、マーガレットの背中を押すようにして、大広間へ誘う。
「でも、私・・・」
「いいから、さあ、行くよ」
ヘンリーを断りきることが出来ず、そのまま、マーガレットは、シャンデリアの光が眩い大広間へと、向かった。
ヘンリーとマーガレットが大広間へ入ると、ちょうど、一曲目のカドリーユが、始まったところだった。
楽団の演奏に合わせて、大広間の中央では、老若男女問わず、踊りを楽しむ姿があった。
しばらく、その様子を、端の方でヘンリーと共に、眺めていたマーガレットだったが、
「あの方、あなたのお父様でしょう?」
と、フロアで踊る、年配の紳士に気づいた。
小柄なヘンリーと違って、背が高く、堂々たる体格の持ち主だった。
豊かな黒髪を丁寧に整え、少々厳めしいとも思える顔つきで、遠目にも、その威厳が伝わるようだった。
「そうだよ」
「お父様がフロアから、戻っていらしたら、紹介してくれる?お食事の時は、席が離れていたから、まだ、ご挨拶もしていないもの。夜会に招待してくださったお礼も、申し上げないと」
「必要ない」
ヘンリーは、素っ気なかった。
「そういう訳にはいかないわ」
「君が、父のところへ、挨拶へ行く必要はない。招待したのは、僕だ。父じゃないよ」
ヘンリーが、聞き入れる気配はなかった。
そして、どことなく表情が、険しくなったようだった。
ちょうど、その時、柱の向こうから、年配の婦人たちの話し声が、聞こえて来た。
椅子に座って、お喋りに興じる婦人たちは、柱の反対側に立つヘンリーと、マーガレットの存在には、気が付いてはいないようだった。
「それにしても、ご覧になって、奥様?あの、厚顔無恥な娘を」
「マーガレット・ジョーンズ」
「そうですとも」
「あんな、とんでもない事件を起こしておきながら、よく夜会になど、出席できたものですわね。あの娘の事を考えると、寒気がしそう」
「ヘンリーもヘンリーですよ。あんな娘を、隣の席につかせるなんて。みんなが、どんな噂をするか、少し考えればわかることでしょうに。性悪娘に、すっかり誑かされてしまったのかしら」
「まあ、奥様。私はヘンリーが、そんな浅はかだとは思いませんわ。私、これは、ヘンリーの、お父様への・・・、パトリックへの反抗心ではないかと、思いますのよ」
「つまり、どういうことですの、オルコット夫人?」
話を振られたオルコット夫人は、事情通のようで、モーガン家の内部事情を、婦人たちを前に、語り始めた。
「ヘンリーとパトリックの間に、亡き母親を巡っての確執があるのは、ご存知ね。ヘンリーの母親のルイーズは、三年前に亡くなっているのだけど、パトリックは、他所に別の女性が何人もあって、そのことで、長い間、ルイーズは辛い思いをしてきましたのよ。ヘンリーも、弟のトーマスも、母親思いの息子だったから、母親を苦しめ続けたパトリックを、許すことができないのでしょう。だから、パトリックが何度強引に見合いをさせても、ヘンリーは、断る一方で、パトリックも頭の痛い話だと思いますわ。今夜のモーガン邸の夜会は、もちろん、立派だとは思いますが、ルイーズが元気で取り仕切っていた頃に比べると、どこがどうというわけではないけれど、少しばかり、華やかさがねえ・・・。やはり、女性の役割は、重要ですわ」
「パトリックは、ヘンリーの伴侶に、モーガン家の奥方としての役割を、期待しているのですわね」
「そうだと思いますわ。パトリック自身が再婚して、奥方を迎えたとしても、ヘンリーとトーマスとの関係を考えると、ただでさえ、混乱している親子関係が、余計混乱しそうですものね」
オルコット夫人の予想に、その場の誰もが、頷いた。
「でも、ずっとこのままと言う訳にはいかないでしょう。ヘンリーが結婚して、跡継ぎが生まれなければ、モーガン家は、途絶えてしまいますわ」
「おっしゃる通りよ。だから、こんなことがずっと続くようだったら、パトリックもヘンリーは諦めて、トーマスに伴侶を迎えて、トーマスを跡継ぎにするのではないかしら。でも、それも、簡単なことではないでしょう。ヘンリーの二の舞にならなければ、いいけれど・・・」
オルコット夫人の推察に、その場に集う夫人の誰もが、さもありなんと、頷き合った。
「でも、その件が、マーガレット・ジョーンズと、どういう関係があるのかしら?」
ですから、と、ここぞとばかり力を籠め、オルコット夫人は、周囲に集まった貴婦人たちを見渡して、
「ですから、それが、ヘンリーのパトリックへの当てつけなのですわ。マーガレット・ジョーンズのような、ふしだらな娘を隣に座らせて、良縁を待ちわびる父親に、反抗しているのです」
と、言い切った。
オルコット夫人のその意見に、その場に集う夫人たちの誰もが、納得の声を上げた。
その話は全て、柱の反対側に立っていた、ヘンリーとマーガレットの耳にも入った。
「ちょっと、外へ行こうか、ここは、熱気がすごい」
ヘンリーは、その場に立ちすくんで動けなくなっている、マーガレットに小さく囁くと、柱の向こうの婦人たちには気づかれないように、その場から、マーガレットを連れ出した。
大広間のガラス扉を開けて、バルコニーへ出ると、若い男女が語らう姿が、何組も見受けられた。
ヘンリーは、マーガレットの手を引いて、バルコニーを進み、庭へと続く階段を降りた。
そして、ポール・ポーターを呼び止め、灯りをひとつと、マーガレットのケープを持って来させると、両脇に木立の並ぶ、石の小道を進んだ。
その先には、手入れの行き届いた池と、広めに設えた屋根付きのベンチがあった。
煌々と輝く邸宅の明かりが、ふたりのいるところからは小さく映り、舞踏会の音楽と人々の騒めきが、わずかに耳に届いていた。
ヘンリーは、ベンチの傍に灯りを置くと、寒くない、と尋ねて来た。
マーガレットは、小さく首を振った。
「嫌な話を、聞かせてしまったね」
それにも、マーガレットは首を振った。
心なしか、瞳が潤んでいるようだった。
「マーガレット・・・」
「謝らないで。私、本当に、気にしていないわ。でも、こういうことは、もう止めておく方がいいと思うの」
「マーガレット、違うんだ」
「私・・・、自分のせいで、母と姉を失ったから、多分、余計に、そう思うのよ。自分から、お父様との溝を広げるようなことを、してはいけないわ。どれほど、いがみ合っていても、家族は大切よ。失ってから、気づいても遅いの」
マーガレットの頬を、涙が伝った。
「僕の話を、聞いてくれ」
「言い訳は、聞きたくないの。謝罪も、聞きたくないの。自分が、惨めになるだけですもの。でも、理由はどうでも、夜会に誘ってくれて・・・、優しくしてもらえて、嬉しかったわ。だから、私の事は、心配しなくていいのよ。それじゃあ・・・、おやすみなさい」
マーガレットは、涙を拭って、微笑むと、ヘンリーに背を向けた。
ヘンリーは、そのマーガレットの腕を強く掴んだ。
「君はまだ、僕の話を聞いていないよ」
真摯な眼差しだった。
「さっきの婦人たちの話は・・・、半分は真実で、半分は真実じゃない」
ヘンリーは、マーガレットに向かい合って、静かに話し出した。
「僕たち兄弟は、父との間に、どうしても解決できないわだかまりがある。理由は、先ほどの婦人たちが話していた通りだよ。長い間、母を裏切り、苦しめ続けた父を、僕たち兄弟は、どうしても許すことはできない。その父に、家のために、結婚しろと、強引に見合いに引っ張り出されたところで、そんな気持ちにはなれないんだ」
夜風に木の葉が揺れ、コミミズクの鳴き声が、遠くの方で聞こえた。
「だけど、僕が君を夜会に誘ったのは、父への当てつけじゃない。僕は、君に自信を取り戻してほしかった」
「どういうこと?」
「初めて、君が僕に声をかけて来た時、君は、僕を、君の取り巻きのひとりにするつもりだっただろう?君は、僕に興味があったから、誘ったわけじゃない。君が、僕に声をかけたのは、多分、僕が、モーガン家の後継者だからだ。大農園の息子の僕を、取り巻きの一人に加えられれば、鼻が高い。違う?」
「・・・私は、本当に嫌な娘よね。でも、あなたは、断ったわ。取り付く島もなかった」
「君の、その他大勢の男になるのは、たくさんだよ」
と、ヘンリーは、笑った。
「僕は、君の事を、自己中心的で、我儘な人だと思った。でも、そう思う一方で、君は、堂々として、自信に溢れていて・・・、とても眩しかった。僕にはないものを持っていて、とても魅力的な人だと思った。だから、この夏、あんな風に自信を失って、取り乱した君を見て、僕は、ショックだったんだ。あれほど、美しく、自信に満ち溢れていた人が、すっかりを自分を見失って、まるで、翼を叩き折られた鳥の様に震えて・・・、見ていられなかった。だから、僕は、もう一度、君に自信を取り戻してほしかったんだ。以前の様に、堂々と、力がみなぎっていた君を、取り戻してほしかった。だから、君を夜会に誘った。少しずつでも、前向きになって、明るさを取り戻してほしかったんだ。でも、夜会で君に辛い思いをさせないように努めるって、君の父上に約束したのに、約束を守れなかった。自己嫌悪だ」
ヘンリーは、ふっ、とため息を漏らした。
「あなたが・・・、そんな風に思う必要ないわ。人前に出る以上、誰かに何かを言われるのは覚悟の上だったもの。辛くないと言えば、嘘になるけれど、あなたのような、誠実で優しい人とお友達になれたことの方が、嬉しいわ」
「友達?」
ヘンリーの瞳が、かすかに陰った。
「ええ、そう・・・、お友達」
そう答えつつ、マーガレットも、何か胸につかえる想いがあった。
ヘンリーは、もの言いたげな顔で、しばらく、言葉を探しているようだったものの、やがて、曖昧に笑った。
「ねえ・・・、ほら、ワルツが始まったわ。ここで、踊らない?」
ふたりの間に流れる微妙な空気に区切りをつけようと、邸宅から漏れてくる音色を耳にして、マーガレットは明るい声で言った。
「それは・・・、無理なんだ。僕は、踊らない」
明るい表情のマーガレットに対して、ヘンリーの表情は、一気に曇った。
「どうして?さっき、舞踏会で、一度も踊ったことがないって言っていたけれど、一体どうしてなの?そんなこと、信じられないわ」
「マーガレット、その、正確に言うと、僕は・・・、踊らないわけじゃない。踊れないんだ」
そう言う、ヘンリーの歯切れは、悪かった。
「踊れない?踊れないって、どういうこと?」
マーガレットは、聞き違いかと、思わず、聞き返した。
「つまり・・・、苦手なんだ、ダンスが」
「でも、社交界にデビューするまでに、きちんと先生に習うでしょう?」
「習ったけど・・・、どうしても、上手く踊れないんだ」
ヘンリーのその言葉を聞きながら、マーガレットは、思い出していた。
夏、マーガレットが水に入って、死のうとしたところを、ヘンリーは助けようとしてくれた。
けれども、実際、溺れかけたのは、マーガレットではなく、ヘンリーだった。
ヘンリーは川辺に辿り着くまで、何度もバランスを崩して、転倒しかけるので、ヘンリーの方が溺れてしまうのではないかと、マーガレットは青くなりつつ、手を貸した。
その出来事と、今、ダンスが苦手だと言うヘンリーが、マーガレットの頭の中で、一致したような気がした。
「もしかして・・・、身体を動かすことが、苦手?」
「苦手だよ。乗馬も、狩りにも、全く興味がない」
「じゃあ、得意なことは?」
「画を描くことと、読書かな」
「悪い趣味だとは思わないけれど・・・、ダンスを踊れないことは、大きな問題よ。女性は男性に誘ってもらえないと、つまらないと思うものよ。社交界のお付き合いも、滞ってしまうでしょう。折角のあなたの魅力が、半減してしまうわ」
「本当のことを言うと、とても困っているんだ。でも、今更、習うのも、何だか気恥ずかしくて・・・」
「ダンスの先生も、あなたに、もう少し根気よく教えるべきだったわね」
「悪いのは、ダンスの先生じゃないよ。僕が少しも上達しないのを見かねた先生が、ある時、パートナーがいた方が踊りやすいだろうって、若い助手の女性をつれてきてくれたんだ」
「綺麗な人だったのね」
「多分・・・、いや、きっと・・・、確かに、綺麗な人だったよ」
マーガレットの冷やかしに、ヘンリーは照れて、頬を赤くした。
そのヘンリーが可愛らしく思えて、マーガレットは、ふふっ、と笑みを漏らした。
「僕としては、習ったことを、一生懸命やったつもりだったんだ。だけど・・・、すごく笑われてしまって」
ヘンリーの声は、どことなく哀しげだった。
初対面で、すこしばかり好感を持った婦人に、うまく踊れなくて、笑われて、傷ついた若いヘンリーの傷心が、マーガレットにはよくわかった。
「それ以来、踊るのを止めてしまったのね」
「そうなんだ。自分でも、何とかしないとって、思っているんだけど」
「・・・いいわ、じゃあ、今から、少し練習しましょう。とりあえず、ふたりで踊れるし、ステップの数も少ないから、ワルツにしましょうか?」
「今から?ここで?」
「そうよ」
と、マーガレットは羽織っていたケープを、脱いだ。
少し、肌寒かったが、踊っていれば、すぐ温かくなるに違いなかった。
ターコイズブルーの清楚なドレスが、灯りに浮かび上がった。
「最初は、大きなホールドで・・・、足元が見えるように、組むのではなく手をつなぎましょう。じゃあ、まず、ナチュラルターンをボックスで、男性は、右足前進から・・・、さあ、一、二、三」
と、始めたものの、マーガレットはすぐに、これは中々、根気がいると覚悟した。
何故なら、ヘンリーは、前進は踵から、後退はつま先からという、基本中の基本の動作さえ、あやふやだった。
「ヘンリー、歩く時と一緒よ。前へ歩くときは、踵から、後ろへ下がる時はつま先から、何も、特別な動きではないのよ。それを三拍子にあわせるだけ。膝を柔らかく使って・・・」
と、マーガレットがリードし、ワルツのリズムで、ただひたすら、ふたりでボックスを踏み続けた。
ダンスを踊るのが、何年ぶりというというのに加えて、リズム感とバランス感覚、つまりは運動神経が、一般より、随分、劣っているヘンリーは、足の踏み出し方ひとつを習得するのにも、通常より何倍の時間も要した。
けれども、マーガレットは根気よく教え、ヘンリーも何とか習得しようと熱心だったため、次第に、間違えずに、滑らかに三拍子のボックスステップが踊れるようになってきた。
「そのままの、リズムをキープして・・・」
と、マーガレットがリードして、右回りの回転を加え、円を描くように一周した。
「ほら、できたじゃない!ナチュラルターンひとつ覚えるだけで、今、あなたは一周したのよ!」
マーガレットは思わず笑顔がはじけた。
「本当だ・・・」
足元に夢中で、何が何だかまだよくわかっていないヘンリーだったが、とにかく足を踏み間違えずに、今、くるくると回りながら、踊ったことだけはわかった。
ヘンリーの額には、うっすらと汗が滲んでいた。
「踊れたのよ、今、あなた、踊れたのよ!」
マーガレットは、はしゃいだ声で言った。
まるで、自分の事の様に嬉しかった。
「君のお蔭だよ、マーガレット。・・・いや、マギー」
ヘンリーは、真顔になった。
そうして、マーガレットに近づくと、そっと、その手を取った。
つい今しがた、踊っていた時にも手をつないでいたはずなのに、その時とは違う、男の気配を感じ取って、思わず、マーガレットは手を引きかけた。
けれども、ヘンリーは、マーガレットの手を離さなかった。
そうして、そのまま、マーガレットの頭を引き寄せた。
「君が好きだ・・・、マギー」
マーガレットは、返事をしなかった。
ただ黙って、ヘンリーの胸の中で、眼を閉じた。
大広間から、わずかに耳に届くバイオリンの音色が、マーガレットの心に沁みた。
これから、日にちを跨いで、深夜まで続く宴に、人々は心ゆくまで、踊り、笑い、喋り、思い思いに、時を満喫するのだった。
ペンナの街から少々離れた、アウラでの舞踏会ということもあって、深夜まで宴を楽しむ人の中には、そのままモーガン邸に泊まり、翌日の昼前、のんびりと帰ってゆく客もあった。
マーガレットも、ヘンリーに誘われて、席を立ち、大広間へと向かう人の流れに入ったが、しばらく歩いたところで、
「ヘンリー、私、これで失礼するわ」
マーガレットは、小さな声で、そう告げた。
「舞踏会は、これからだよ」
「最初から、決めていたのよ。お食事にだけ、出席しようって。私がダンスを楽しむのは、不謹慎だわ。そうでしょう?」
「踊らなくてもいいよ。僕も、踊らないから、話をしていよう」
「まさか」
マーガレットは、笑いだした。
主催者の男性が、舞踏会で踊らないなどという話は、聞いたことがなかった。
そもそも、舞踏会は、男性と女性が、パートナーを変えながら踊り、親交を深める場であり、結婚相手を見つける場としても、大変重要な場所だった。
「ヘンリー、今夜は、楽しかったわ。あなたのお蔭よ。ずっと家の中に引きこもってばかりだったけど、あなたの言う通り、少しずつでも・・・、何か、私にできることを探してみるわね。今夜は、本当に、ありがとう」
久しぶりに、明るい光が、心の内で弾けるのを実感するマーガレットだった。
「一緒に、舞踏会へ」
「ヘンリー・・・」
「僕が踊らないのは、君のせいじゃない。君は僕が、舞踏会で踊っているのを、見かけたことがある?」
確かに、そう言われれば、これまでに、何度か舞踏会で顔を合わせる機会があったものの、ヘンリーは、いつも、壁際で、誰かと何かを話していて、女性と踊っている姿を、見たことがなかった。
「もしかして、一度も踊ったことがないの?」
「ご名答」
「どうして、そんなこと・・・」
マーガレットは、驚きを隠せなかった。
「とにかく、大広間へ。舞踏会が始まる時間だ」
ヘンリーは、マーガレットの背中を押すようにして、大広間へ誘う。
「でも、私・・・」
「いいから、さあ、行くよ」
ヘンリーを断りきることが出来ず、そのまま、マーガレットは、シャンデリアの光が眩い大広間へと、向かった。
ヘンリーとマーガレットが大広間へ入ると、ちょうど、一曲目のカドリーユが、始まったところだった。
楽団の演奏に合わせて、大広間の中央では、老若男女問わず、踊りを楽しむ姿があった。
しばらく、その様子を、端の方でヘンリーと共に、眺めていたマーガレットだったが、
「あの方、あなたのお父様でしょう?」
と、フロアで踊る、年配の紳士に気づいた。
小柄なヘンリーと違って、背が高く、堂々たる体格の持ち主だった。
豊かな黒髪を丁寧に整え、少々厳めしいとも思える顔つきで、遠目にも、その威厳が伝わるようだった。
「そうだよ」
「お父様がフロアから、戻っていらしたら、紹介してくれる?お食事の時は、席が離れていたから、まだ、ご挨拶もしていないもの。夜会に招待してくださったお礼も、申し上げないと」
「必要ない」
ヘンリーは、素っ気なかった。
「そういう訳にはいかないわ」
「君が、父のところへ、挨拶へ行く必要はない。招待したのは、僕だ。父じゃないよ」
ヘンリーが、聞き入れる気配はなかった。
そして、どことなく表情が、険しくなったようだった。
ちょうど、その時、柱の向こうから、年配の婦人たちの話し声が、聞こえて来た。
椅子に座って、お喋りに興じる婦人たちは、柱の反対側に立つヘンリーと、マーガレットの存在には、気が付いてはいないようだった。
「それにしても、ご覧になって、奥様?あの、厚顔無恥な娘を」
「マーガレット・ジョーンズ」
「そうですとも」
「あんな、とんでもない事件を起こしておきながら、よく夜会になど、出席できたものですわね。あの娘の事を考えると、寒気がしそう」
「ヘンリーもヘンリーですよ。あんな娘を、隣の席につかせるなんて。みんなが、どんな噂をするか、少し考えればわかることでしょうに。性悪娘に、すっかり誑かされてしまったのかしら」
「まあ、奥様。私はヘンリーが、そんな浅はかだとは思いませんわ。私、これは、ヘンリーの、お父様への・・・、パトリックへの反抗心ではないかと、思いますのよ」
「つまり、どういうことですの、オルコット夫人?」
話を振られたオルコット夫人は、事情通のようで、モーガン家の内部事情を、婦人たちを前に、語り始めた。
「ヘンリーとパトリックの間に、亡き母親を巡っての確執があるのは、ご存知ね。ヘンリーの母親のルイーズは、三年前に亡くなっているのだけど、パトリックは、他所に別の女性が何人もあって、そのことで、長い間、ルイーズは辛い思いをしてきましたのよ。ヘンリーも、弟のトーマスも、母親思いの息子だったから、母親を苦しめ続けたパトリックを、許すことができないのでしょう。だから、パトリックが何度強引に見合いをさせても、ヘンリーは、断る一方で、パトリックも頭の痛い話だと思いますわ。今夜のモーガン邸の夜会は、もちろん、立派だとは思いますが、ルイーズが元気で取り仕切っていた頃に比べると、どこがどうというわけではないけれど、少しばかり、華やかさがねえ・・・。やはり、女性の役割は、重要ですわ」
「パトリックは、ヘンリーの伴侶に、モーガン家の奥方としての役割を、期待しているのですわね」
「そうだと思いますわ。パトリック自身が再婚して、奥方を迎えたとしても、ヘンリーとトーマスとの関係を考えると、ただでさえ、混乱している親子関係が、余計混乱しそうですものね」
オルコット夫人の予想に、その場の誰もが、頷いた。
「でも、ずっとこのままと言う訳にはいかないでしょう。ヘンリーが結婚して、跡継ぎが生まれなければ、モーガン家は、途絶えてしまいますわ」
「おっしゃる通りよ。だから、こんなことがずっと続くようだったら、パトリックもヘンリーは諦めて、トーマスに伴侶を迎えて、トーマスを跡継ぎにするのではないかしら。でも、それも、簡単なことではないでしょう。ヘンリーの二の舞にならなければ、いいけれど・・・」
オルコット夫人の推察に、その場に集う夫人の誰もが、さもありなんと、頷き合った。
「でも、その件が、マーガレット・ジョーンズと、どういう関係があるのかしら?」
ですから、と、ここぞとばかり力を籠め、オルコット夫人は、周囲に集まった貴婦人たちを見渡して、
「ですから、それが、ヘンリーのパトリックへの当てつけなのですわ。マーガレット・ジョーンズのような、ふしだらな娘を隣に座らせて、良縁を待ちわびる父親に、反抗しているのです」
と、言い切った。
オルコット夫人のその意見に、その場に集う夫人たちの誰もが、納得の声を上げた。
その話は全て、柱の反対側に立っていた、ヘンリーとマーガレットの耳にも入った。
「ちょっと、外へ行こうか、ここは、熱気がすごい」
ヘンリーは、その場に立ちすくんで動けなくなっている、マーガレットに小さく囁くと、柱の向こうの婦人たちには気づかれないように、その場から、マーガレットを連れ出した。
大広間のガラス扉を開けて、バルコニーへ出ると、若い男女が語らう姿が、何組も見受けられた。
ヘンリーは、マーガレットの手を引いて、バルコニーを進み、庭へと続く階段を降りた。
そして、ポール・ポーターを呼び止め、灯りをひとつと、マーガレットのケープを持って来させると、両脇に木立の並ぶ、石の小道を進んだ。
その先には、手入れの行き届いた池と、広めに設えた屋根付きのベンチがあった。
煌々と輝く邸宅の明かりが、ふたりのいるところからは小さく映り、舞踏会の音楽と人々の騒めきが、わずかに耳に届いていた。
ヘンリーは、ベンチの傍に灯りを置くと、寒くない、と尋ねて来た。
マーガレットは、小さく首を振った。
「嫌な話を、聞かせてしまったね」
それにも、マーガレットは首を振った。
心なしか、瞳が潤んでいるようだった。
「マーガレット・・・」
「謝らないで。私、本当に、気にしていないわ。でも、こういうことは、もう止めておく方がいいと思うの」
「マーガレット、違うんだ」
「私・・・、自分のせいで、母と姉を失ったから、多分、余計に、そう思うのよ。自分から、お父様との溝を広げるようなことを、してはいけないわ。どれほど、いがみ合っていても、家族は大切よ。失ってから、気づいても遅いの」
マーガレットの頬を、涙が伝った。
「僕の話を、聞いてくれ」
「言い訳は、聞きたくないの。謝罪も、聞きたくないの。自分が、惨めになるだけですもの。でも、理由はどうでも、夜会に誘ってくれて・・・、優しくしてもらえて、嬉しかったわ。だから、私の事は、心配しなくていいのよ。それじゃあ・・・、おやすみなさい」
マーガレットは、涙を拭って、微笑むと、ヘンリーに背を向けた。
ヘンリーは、そのマーガレットの腕を強く掴んだ。
「君はまだ、僕の話を聞いていないよ」
真摯な眼差しだった。
「さっきの婦人たちの話は・・・、半分は真実で、半分は真実じゃない」
ヘンリーは、マーガレットに向かい合って、静かに話し出した。
「僕たち兄弟は、父との間に、どうしても解決できないわだかまりがある。理由は、先ほどの婦人たちが話していた通りだよ。長い間、母を裏切り、苦しめ続けた父を、僕たち兄弟は、どうしても許すことはできない。その父に、家のために、結婚しろと、強引に見合いに引っ張り出されたところで、そんな気持ちにはなれないんだ」
夜風に木の葉が揺れ、コミミズクの鳴き声が、遠くの方で聞こえた。
「だけど、僕が君を夜会に誘ったのは、父への当てつけじゃない。僕は、君に自信を取り戻してほしかった」
「どういうこと?」
「初めて、君が僕に声をかけて来た時、君は、僕を、君の取り巻きのひとりにするつもりだっただろう?君は、僕に興味があったから、誘ったわけじゃない。君が、僕に声をかけたのは、多分、僕が、モーガン家の後継者だからだ。大農園の息子の僕を、取り巻きの一人に加えられれば、鼻が高い。違う?」
「・・・私は、本当に嫌な娘よね。でも、あなたは、断ったわ。取り付く島もなかった」
「君の、その他大勢の男になるのは、たくさんだよ」
と、ヘンリーは、笑った。
「僕は、君の事を、自己中心的で、我儘な人だと思った。でも、そう思う一方で、君は、堂々として、自信に溢れていて・・・、とても眩しかった。僕にはないものを持っていて、とても魅力的な人だと思った。だから、この夏、あんな風に自信を失って、取り乱した君を見て、僕は、ショックだったんだ。あれほど、美しく、自信に満ち溢れていた人が、すっかりを自分を見失って、まるで、翼を叩き折られた鳥の様に震えて・・・、見ていられなかった。だから、僕は、もう一度、君に自信を取り戻してほしかったんだ。以前の様に、堂々と、力がみなぎっていた君を、取り戻してほしかった。だから、君を夜会に誘った。少しずつでも、前向きになって、明るさを取り戻してほしかったんだ。でも、夜会で君に辛い思いをさせないように努めるって、君の父上に約束したのに、約束を守れなかった。自己嫌悪だ」
ヘンリーは、ふっ、とため息を漏らした。
「あなたが・・・、そんな風に思う必要ないわ。人前に出る以上、誰かに何かを言われるのは覚悟の上だったもの。辛くないと言えば、嘘になるけれど、あなたのような、誠実で優しい人とお友達になれたことの方が、嬉しいわ」
「友達?」
ヘンリーの瞳が、かすかに陰った。
「ええ、そう・・・、お友達」
そう答えつつ、マーガレットも、何か胸につかえる想いがあった。
ヘンリーは、もの言いたげな顔で、しばらく、言葉を探しているようだったものの、やがて、曖昧に笑った。
「ねえ・・・、ほら、ワルツが始まったわ。ここで、踊らない?」
ふたりの間に流れる微妙な空気に区切りをつけようと、邸宅から漏れてくる音色を耳にして、マーガレットは明るい声で言った。
「それは・・・、無理なんだ。僕は、踊らない」
明るい表情のマーガレットに対して、ヘンリーの表情は、一気に曇った。
「どうして?さっき、舞踏会で、一度も踊ったことがないって言っていたけれど、一体どうしてなの?そんなこと、信じられないわ」
「マーガレット、その、正確に言うと、僕は・・・、踊らないわけじゃない。踊れないんだ」
そう言う、ヘンリーの歯切れは、悪かった。
「踊れない?踊れないって、どういうこと?」
マーガレットは、聞き違いかと、思わず、聞き返した。
「つまり・・・、苦手なんだ、ダンスが」
「でも、社交界にデビューするまでに、きちんと先生に習うでしょう?」
「習ったけど・・・、どうしても、上手く踊れないんだ」
ヘンリーのその言葉を聞きながら、マーガレットは、思い出していた。
夏、マーガレットが水に入って、死のうとしたところを、ヘンリーは助けようとしてくれた。
けれども、実際、溺れかけたのは、マーガレットではなく、ヘンリーだった。
ヘンリーは川辺に辿り着くまで、何度もバランスを崩して、転倒しかけるので、ヘンリーの方が溺れてしまうのではないかと、マーガレットは青くなりつつ、手を貸した。
その出来事と、今、ダンスが苦手だと言うヘンリーが、マーガレットの頭の中で、一致したような気がした。
「もしかして・・・、身体を動かすことが、苦手?」
「苦手だよ。乗馬も、狩りにも、全く興味がない」
「じゃあ、得意なことは?」
「画を描くことと、読書かな」
「悪い趣味だとは思わないけれど・・・、ダンスを踊れないことは、大きな問題よ。女性は男性に誘ってもらえないと、つまらないと思うものよ。社交界のお付き合いも、滞ってしまうでしょう。折角のあなたの魅力が、半減してしまうわ」
「本当のことを言うと、とても困っているんだ。でも、今更、習うのも、何だか気恥ずかしくて・・・」
「ダンスの先生も、あなたに、もう少し根気よく教えるべきだったわね」
「悪いのは、ダンスの先生じゃないよ。僕が少しも上達しないのを見かねた先生が、ある時、パートナーがいた方が踊りやすいだろうって、若い助手の女性をつれてきてくれたんだ」
「綺麗な人だったのね」
「多分・・・、いや、きっと・・・、確かに、綺麗な人だったよ」
マーガレットの冷やかしに、ヘンリーは照れて、頬を赤くした。
そのヘンリーが可愛らしく思えて、マーガレットは、ふふっ、と笑みを漏らした。
「僕としては、習ったことを、一生懸命やったつもりだったんだ。だけど・・・、すごく笑われてしまって」
ヘンリーの声は、どことなく哀しげだった。
初対面で、すこしばかり好感を持った婦人に、うまく踊れなくて、笑われて、傷ついた若いヘンリーの傷心が、マーガレットにはよくわかった。
「それ以来、踊るのを止めてしまったのね」
「そうなんだ。自分でも、何とかしないとって、思っているんだけど」
「・・・いいわ、じゃあ、今から、少し練習しましょう。とりあえず、ふたりで踊れるし、ステップの数も少ないから、ワルツにしましょうか?」
「今から?ここで?」
「そうよ」
と、マーガレットは羽織っていたケープを、脱いだ。
少し、肌寒かったが、踊っていれば、すぐ温かくなるに違いなかった。
ターコイズブルーの清楚なドレスが、灯りに浮かび上がった。
「最初は、大きなホールドで・・・、足元が見えるように、組むのではなく手をつなぎましょう。じゃあ、まず、ナチュラルターンをボックスで、男性は、右足前進から・・・、さあ、一、二、三」
と、始めたものの、マーガレットはすぐに、これは中々、根気がいると覚悟した。
何故なら、ヘンリーは、前進は踵から、後退はつま先からという、基本中の基本の動作さえ、あやふやだった。
「ヘンリー、歩く時と一緒よ。前へ歩くときは、踵から、後ろへ下がる時はつま先から、何も、特別な動きではないのよ。それを三拍子にあわせるだけ。膝を柔らかく使って・・・」
と、マーガレットがリードし、ワルツのリズムで、ただひたすら、ふたりでボックスを踏み続けた。
ダンスを踊るのが、何年ぶりというというのに加えて、リズム感とバランス感覚、つまりは運動神経が、一般より、随分、劣っているヘンリーは、足の踏み出し方ひとつを習得するのにも、通常より何倍の時間も要した。
けれども、マーガレットは根気よく教え、ヘンリーも何とか習得しようと熱心だったため、次第に、間違えずに、滑らかに三拍子のボックスステップが踊れるようになってきた。
「そのままの、リズムをキープして・・・」
と、マーガレットがリードして、右回りの回転を加え、円を描くように一周した。
「ほら、できたじゃない!ナチュラルターンひとつ覚えるだけで、今、あなたは一周したのよ!」
マーガレットは思わず笑顔がはじけた。
「本当だ・・・」
足元に夢中で、何が何だかまだよくわかっていないヘンリーだったが、とにかく足を踏み間違えずに、今、くるくると回りながら、踊ったことだけはわかった。
ヘンリーの額には、うっすらと汗が滲んでいた。
「踊れたのよ、今、あなた、踊れたのよ!」
マーガレットは、はしゃいだ声で言った。
まるで、自分の事の様に嬉しかった。
「君のお蔭だよ、マーガレット。・・・いや、マギー」
ヘンリーは、真顔になった。
そうして、マーガレットに近づくと、そっと、その手を取った。
つい今しがた、踊っていた時にも手をつないでいたはずなのに、その時とは違う、男の気配を感じ取って、思わず、マーガレットは手を引きかけた。
けれども、ヘンリーは、マーガレットの手を離さなかった。
そうして、そのまま、マーガレットの頭を引き寄せた。
「君が好きだ・・・、マギー」
マーガレットは、返事をしなかった。
ただ黙って、ヘンリーの胸の中で、眼を閉じた。
大広間から、わずかに耳に届くバイオリンの音色が、マーガレットの心に沁みた。
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