43 / 61
8.UNFORGETTABLE
5
しおりを挟む
「午前中に、申し訳なかったね。・・・久しぶり、一カ月、いや、もう一カ月半になるのかな」
アンヌの姿を認めて、ランドルフは柔らかな微笑みを浮かべた。
ランドルフの後方には、これからどこかへ出かける用でもあるのか、いつものように馬ではなく、御者台に御者が座る、車室付きの馬車があった。
表に出て、ランドルフのその姿を眼にした時、アンヌは、痺れるような想いが沸き上がった。
ランドルフの優しい眼差しに、一瞬、縋り付きたいような気持が込み上げた。
けれどは、決して、そうはできないのだと、ぐっと、奥歯をかみしめた。
「ご用件は?」
敢えて冷淡に、アンヌはそう尋ねた。
「少し、痩せた?顔色もあまり良くないようだ」
ランドルフは、鳶色の瞳を曇らせて、アンヌの顔色を探った。
「用件を聞いています」
表情を崩さずに、重ねてアンヌは尋ねた。
「用件は・・・、少し言いにくいんだけどね、あれから色々考えてみたんだが、やはり、母の勧めで、今度、シャーロットと正式に婚約をすることにした。ああ・・・、シャーロットというのが、僕の交際相手の名前だ」
屈託なく、ランドルフは言った。
「それで?」
「僕たちは、上手くいっている。とても、上手くいっていた。だけど・・・、先日、彼女が僕と君のことを、どこかで耳にしてきたようなんだ。僕が、このひと夏、君の農園を手伝っていたことをね。それで、彼女は、僕たちの関係を疑いだしたんだ。君と僕が、その・・・、交際をしていたんじゃないか、まだ、交際が続いているんじゃないかって」
「否定しなかったのですか?」
「もちろん、否定したよ。本当のことを、言う訳にはいかないからね。君と僕は、何の関係もないって。君の農園の農園監督者が、怪我をして困っていたから、隣人として見かねて、手伝っただけだって。だけど、僕の言葉を、信用してくれない。彼女の不信は強くなるばかりで、このままだと、せっかく決まった婚約を断られるかもしれない。母も、随分、気を揉んでいる」
「それで、わたくしにどうしろと?」
「・・・シャーロットに、話してくれないかな?」
「つまり?」
「シャーロットが、僕の言葉だけじゃ、信用が出来ないから、君の言葉で聞きたいって言うんだ。僕と君の間には、一切、何もなかったって。・・・頼めるかな?」
申し訳なさそうに、ランドルフは言った。
アンヌは黙ったまま、目の前に広がる、土ばかりになった、十二月の綿花畑を見つめていた。
「こんなことになって、君には、申し訳ないと思っている。でも、君の方からシャーロットに僕との関係を否定してくれれば、彼女も納得すると思う。機嫌を直して、無事に婚約を済ませられると思うんだ。僕も母も、助かる」
「・・・わかりました。では、住所をお知らせください。その方に、お手紙を差し上げます」
「いや、手紙じゃ駄目なんだ。シャーロットが言うには、君に会って、直接君の口から聞きたいそうなんだ。その方が、確かだからって。僕としては、シャーロットの言い分を尊重したい。シャーロットは、僕の妻になる人だからね」
ランドルフは、穏やかに微笑んだ。
アンヌは、再び、黙ったが、
「では、改めて、日時をお知らせください」
そう、答えた。
「今日、これからじゃ駄目かな?」
「これから?」
「実は、昼に、シャーロットが屋敷に来るんだ。ちょうど、いい機会だろう?」
「わたくしは、マーガレット様にモーガン邸への出入りを、禁止されています」
「君が僕の屋敷に来るのは、僕とシャーロットの婚約が、滞りなく取り行われるためだよ。君の来訪を、拒むはずない」
そんなことを、気にしていたのかい、とでもいう様に、ランドルフは笑った。
それで、アンヌは何故、ランドルフが、今日に限って、馬ではなく馬車でやってきたのかが、わかった。
ランドルフはアンヌを、モーガン邸へ連れて行くつもりだったのだ。
「・・・いいでしょう。支度をしてきます」
「助かる。恩に着るよ、アンヌ。君が支度をしている間、少し寒いけど、散歩をしてくるよ。中へ入れては、もらえなさそうだからね」
ランドルフは上機嫌で、そう告げると、畑の方へとひとりで歩いて行った。
アンヌは、扉を開け、屋敷の中へ戻ると、締まった扉に寄りかかって、しばらく時間を過ごした。
産むわけには、いかない。
早く、早く・・・、始末してしまわなくては。
「アンヌ様・・・」
心配そうに、エマが奥から出て来た。
「これから、モーガン邸へ行きます」
「モーガン邸へ?」
アンヌの思いがけない言葉に、驚いたエマだった。
「詳細は、支度をしながら話します。あなたも、付いてきなさい」
「アンヌ様、お身体は・・・」
「大丈夫です。今日一日、何とか・・・、乗りきってみせます」
重い身体に鞭打って、アンヌは、一段、一段、踏みしめるように、階段を上がった。
広大な邸宅のリビングのソファに、どっかりと腰を下ろし、はああっ、と、深いため息をつくのは、誰あろう、マーガレット・モーガンその人だった。
クリスマスを間近に控え、やらなくてはならないことは、山ほどあった。
クリスマスツリーに、屋敷内の飾り付け、親戚や知人たちへのクリスマスカードに、クリスマスメニューの確認、家族や大人数の使用人たちへの、クリスマスプレゼント・・・。
例年ならば、自らが先頭に立って仕切るそれらの準備を、マーガレットは義妹レイチェルに全て任せて、時間をただ無意味に過ごしていた。
秋の夜会を成功裏に収めて以降、モーガン家は社交界で、一際の名声を博していた。
社交界のいかなる集いに参加しても、社交界の重鎮として、これまで以上に、丁重にもてなされ、その権力は強まり、地位は高まるばかりだった。
けれども、マーガレットの心が晴れやかになることは、なかった。
その原因は・・・、ランドルフとシャーロットの縁談が、破談になったからだった。
秋の夜会で、ランドルフが仕出かした失態を、直接謝罪しようと、マーガレットは、ブラウン家に何度も面会を申し入れた。
が、謝罪の必要はありません、と。
そちらは、社交界で随分と高い地位をお持ちのせいか、若い娘の純粋な真心など、取るに足らないものとお考えなのでしょう、と。
強烈な厭味が認められた返信が届き、ブラウン家はモーガン家と、今後一切の、お付き合いをお断りします、と締めくくられていた。
つまり、マーガレットが、半年以上かけて、手を尽くしたランドルフとシャーロットの縁談は、あっけなく終わった。
マーガレットは、空しさを覚えた。
自分のやって来たことは、一体何だったのだろうと。
こうまで手を尽くして、どうして上手く行かないのだろう、と。
時間が経てば経つほど、マーガレットの味わう空虚感は、大きくなるばかりだった。
こんなことになるのなら・・・、最初から、あの高慢な娘でもよかったのかもしれない、と、そんな思いすらよぎった。
ベアトリス・アンダーソンの屋敷で、マーガレットは、穏やかな表情を浮かべるアンヌの姿を見た。
自分に自信が持てない、目の見えない娘を、励まし、勇気づける姿を、目にした。
そうして、ランドルフが、アンヌに惹かれる理由が、ようやくわかった。
もう一度、ランドルフがアンヌとの交際を持ち出してきたなら、考えてみてもいいとさえ 思い始めていた。
ところが、ランドルフは、そんな話を切り出してくるどころか、淡々と仕事をこなす日々で、相変わらず、従兄弟のイーサンと、何やら話し込んでいる姿を、度々、目撃するマーガレットだった。
ランドルフが秋の夜会を抜け出した夜、アンヌと一夜を過ごしたに違いないという勘が働く一方で、アンヌがモーガン家に何かを迫ってくることもなく、ランドルフもアンヌの存在などすっかり忘れ去ったかのように、仕事に励む日々だったので、ふたりが一夜を過ごしたと思うのは、自分の思い過ごしかもしれないと、思う様にもなってきた。
秋の夜会に向けて気合十分だったマーガレットは、それが大成功を収めて、燃え尽き、そして、一方ではランドルフの縁談が水の泡となって、さりとて、アンヌとの間にも、なにかある気配はなく、生きる張り合い、というものをすっかり失ってしまっていた。
はああっ、と、自分以外に誰もいないリビングで、深いため息を、何度も繰り返していると、一層、空しさは深まっていくばかりだった。
「何だ、そんなに深いため息をついて」
物思いにふけっていたせいで、自分しかいないと思っていたリビングに、ヘンリーが姿を見せたことに、マーガレットは気づいていなかった。
「あら、あなた、何か、御用ですか?」
気の抜けた声で、マーガレットは応じた。
「随分、張り合いのない声だ。君らしくないね」
「私のことを言えませんよ。あなただって、つい先日まで、心ここにあらずだったじゃないですか」
ランドルフとアンヌが別れたことに、自分でも思わぬほど落胆していたヘンリーだったが、近頃ようやく、そのショックから立ち直ったようだった。
「それは、認めよう。ランディが、例のお嬢さんを好いていたのは、間違いなかったし、あのお嬢さんは、気の強いところはあったが、本当は優しい娘だったから、うまくいくようにと願っていたからね」
「・・・ランディとあの娘との間を割いたのは、私ですよ」
「もちろん、知っている」
ヘンリーは、マーガレットの座るソファに、並んで腰を下ろした。
「余計なことをしたと、私を叱らないんですか?」
「君を叱る?まさか。君なりに一生懸命だったことを、私は良く知っているよ」
「何とかしたいと思ったんですよ・・・、私」
ヘンリーの優しい言葉に、マーガレットの瞳から、ぽろりと涙が零れた。
「マギー・・・」
ヘンリーは、マーガレットの肩を抱いた。
マーガレットの瞳から、次々と涙が零れ落ちた。
それで、自分がこれまで、夜会のことでも、ランドルフのことでも、どれほど張り詰めていたのかということに、ようやく気付いた。
「マギー、君は、本当によくやっている。夜会の成功も、君のお蔭だ。君無くして、夜会の成功は、あり得なかった。君には、いつも本当に、感謝している。ランディのことだって、君は本当に一生懸命だった。ランディを何とか幸せにしてやりたいと、一生懸命すぎるほど、一生懸命だった。君は、世界一の妻で母親だ。さあ、涙を拭いて」
と、ヘンリーは、年相応に皺の刻まれたマーガレットの頬を伝う涙を、指で拭った。
「私と結婚したことを、後悔していない、ヘンリー?」
とんでもない、とヘンリーは笑い、
「後悔なんかするはずがない。もし、仮に今、三十九年前に戻ったとしても、私はもう一度、君にプロポーズするよ、マギー。あの時のように、もう一度、君に跪いて、結婚を申し入れるよ」
プロポーズからの、三十九年分の信頼と尊敬と愛情をこめて、ヘンリーはマーガレットの手の甲に唇を落とした。
「ヘンリー・・・」
くすん、とマーガレットは鼻をすすった。
ヘンリーは、マントルピースの上の時計を見ながら、
「本当なら、昼食前に、君と一緒に、庭を歩きたいんだがね。ランディにここで待つように言われている。そろそろかな」
そう言った。
それを聞いて、マーガレットも、えっ、と驚きの表情を浮かべ、
「まあ、あなたも?私も、昼食前に話があるから、ここで待つように、ランディに言われているんですよ」
「君も?」
と、ふたりが顔を見合わせたその時、ランドルフに伴われたアンヌが、リビングに姿を現した。
「・・・あなた!」
リビングに入って来たアンヌの姿を見るや否や、マーガレットは、驚きで声を上げた。
ランドルフに伴われて、リビングに足を踏み入れたアンヌだった。
そこに、シャーロットの姿があると信じて。
疑うこともなく。
けれども、アンヌが足を踏み入れたリビングにいたのは、シャーロットではなく、ヘンリーとマーガレットだった。
はっ、と、アンヌが傍らのランドルフを見上げると、ランドルフは、パタンとリビングの扉を閉め、
「お父さんと、お母さんに、話があります」
改まった様子で、そう切り出した。
ランドルフの瞳に、いつもの穏やかな微笑みはなかった。
その眼差しは、真剣で、決意を秘めていた。
どくん、とアンヌの鼓動が打つ。
ここにいては、いけない。
・・・これは罠。
ランドルフ様の仕掛けた罠!
「わたくしは・・・、帰ります」
アンヌは、鋭く踵を返したが、ランドルフの腕が身体に回り、強く引き寄せられた。
「話はまだ、始まってもいないよ」
「いいえ・・・、いいえ、聞く必要はありません。わたくしは、帰ります!」
人払いをしていなかったせいで、お茶の支度を尋ねに来たモーガン家のメイドに、アンヌは、すぐに帰るので、エマを呼ぶように命じた。
けれども、ランドルフは、アンヌに構わず、話を始める。
「お父さん、お母さん、僕は、先夜、アンヌと、夫婦の契りを結びました」
一瞬、その場が、静まり返った。
「いいえ・・・、いいえ!そのような事実はありません!作り話でわたくしを辱めるのは、お止めなさい!」
アンヌは、耳を塞いでしまいたかった。
「君は言った。・・・あの夜、わたくしのランディ、と」
「そのような覚えはありません!あなたの、聞き間違いです!」
「聞き間違い?じゃあ、一緒に夜を過ごしたことは認めるね?」
ああ・・・、用意周到な罠。
最初から、仕組まれた罠。
わたくしは、自分から、罠に入りこんでしまった・・・。
「僕は、軽々しい気持ちで、アンヌと契ったのではありません。僕たちは、もう夫婦です。正式に、教会で神の祝福を受けてはいませんが、僕は彼女以外の女性を、妻にするつもりはありません」
アンヌは、この場を離れようと、ランドルフの腕を引き離そうと試みたが、全く敵うことはできなかった。
ヘンリーも、マーガレットも、突然始まった、全く予想していなかった事態に、言葉を失っていた。
「僕は、アンヌと結婚します。アンヌを、この屋敷に迎えます。もし、それがどうしても認められないと言うのなら、僕は、今すぐにアンヌと一緒に、この屋敷を出て行きます。僕がいなくなっても困ることがないよう、必要なことは、全て、イーサンに引き継いであります」
「なんですって!」
思わず、マーガレットが声を上げた。
ランドルフのその言葉で、何故近頃、ランドルフとイーサンが必要以上に行動を共にしていたのかが、わかった。
農園の業務を、イーサンに引き継ぐためだったのだ。
けれども、マーガレットが何よりも驚いたのは、ランドルフが屋敷を出て行くと宣言したことではなかった。
三十九年前、マーガレットは、同じ言葉を聞いた。
ヘンリーの口から、同じ言葉を・・・。
「お父さん、僕たちの結婚を認めてもらえなければ、僕はマギーと共に、出て行きます。モーガン家の全てを放棄します」
自分の父親に向かって、ヘンリーは、いささかの迷いもなく、そう告げた。
三十九年前の、その光景が、今、マーガレットの脳裏に、まざまざと甦った。
「・・・我々は、時間をかけて話し合う必要があるようだ」
ランドルフに、そう告げるヘンリーの顔にも、いつもの柔和さはなかった。
「もちろん、そのつもりです」
「いいえ・・・、その必要はありません!わたくしは、誰とも結婚しません!理由は、以前にもお話ししました」
「そのことも、一度、ふたりでゆっくり話合おう、アンヌ」
「わたくしは、生涯、結婚はしません!」
「何故、そう決めつける必要がある?」
「これ以上、あなたと話す必要はありません!・・・手を放しなさい」
呼吸が、乱れる。
ああ・・・、こんな時に、発作が・・・。
息が、苦しい。
息が、出来ない!
「アンヌ、少し落ち着くんだ。・・・いや、アンヌ、アンヌ・・・、大丈夫か?」
ランドルフは、アンヌの只ならぬ様子に、気づいた。
真っ青な表情で、喘ぎ、身体が前のめりになる。
ヘンリーもマーガレットも、アンヌの異変に、顔を見合わせた。
「ランディ、とにかく、アンヌをソファへ」
「あなた、大丈夫?誰か・・・、誰か、いないの!誰か、冷たい飲み物を持ってきなさい!」
自分を気遣うその声が、アンヌには煩わしかった。
「エマを・・・、エマを・・・!」
アンヌは、そう小さな声を上げるのが、精一杯だった。
早く、ここを出て、帰らなくては。
自分の屋敷に、帰らなくては!
そう思えば思うほど、息苦しさは、一層激しくなるばかりだった。
ランドルフに抱えられて、ソファに下された瞬間、身体を支えきれずに、そのまま前のめりに倒れこむ。
「アンヌ、しっかりするんだ」
ランドルフが、アンヌの手を握り、優しく背中を擦った。
止めて・・・。
もう、止めて!
もうこれ以上、誰も、わたくしに、優しくしないで!
「エマ・・・、エマ!」
エマが、来てくれれば・・・。
エマさえ来てくれれば、ここを出て、屋敷に帰れる・・・。
わたくしの・・・、わたくしの農園に。
「アンヌ様!」
リビングに姿を見せたエマは、アンヌに駆け寄ると、異変に素早く対応した。
「落ち着いて、息を吐きます。ゆっくり、少しずつ、長く息を吐きます。少し吸って、長く吐きます・・・」
それを繰り返すうちに、アンヌの呼吸の乱れは、次第に落ち着いていった。
「エマ、帰ります・・・、支度を・・・」
まだ、肩で呼吸する、疲れた表情のアンヌは、かすれた声で、エマにそう命じた。
「アンヌ様・・・」
エマの瞳から、涙が溢れた。
これ以上、アンヌに全てを背負わせるのは、あまりに酷だと、エマは覚悟を決めた。
「アンヌ様・・・、もうしばらく、こちらで休まれる方が、お身体にも、お腹の赤ちゃんにも・・・、差し障りがないと思います」
「エマ・・・」
アンヌは、眼を見開いて、エマの泣き顔を見つめた。
エマは、顔を覆った。
「赤ちゃん?アンヌ、君は、お腹に子供がいるのか?」
ランドルフは、すぐには事態がよく呑み込めなかった。
それは、ヘンリーとマーガレットも、同様だった。
「いいえ・・・」
「はい、アンヌ様のお腹には、赤ちゃんがいます。ランドルフ様のお子に、間違いありません」
アンヌの言葉を遮って、エマは、はっきりとそう告げた。
アンヌの身体は、ぐったりと、ソファに崩れ落ちた。
もうこれで、アウラにはいられなくなるのだと、農園を失う時が来たと、アンヌは、希望を失って、眼を閉じた。
アンヌの姿を認めて、ランドルフは柔らかな微笑みを浮かべた。
ランドルフの後方には、これからどこかへ出かける用でもあるのか、いつものように馬ではなく、御者台に御者が座る、車室付きの馬車があった。
表に出て、ランドルフのその姿を眼にした時、アンヌは、痺れるような想いが沸き上がった。
ランドルフの優しい眼差しに、一瞬、縋り付きたいような気持が込み上げた。
けれどは、決して、そうはできないのだと、ぐっと、奥歯をかみしめた。
「ご用件は?」
敢えて冷淡に、アンヌはそう尋ねた。
「少し、痩せた?顔色もあまり良くないようだ」
ランドルフは、鳶色の瞳を曇らせて、アンヌの顔色を探った。
「用件を聞いています」
表情を崩さずに、重ねてアンヌは尋ねた。
「用件は・・・、少し言いにくいんだけどね、あれから色々考えてみたんだが、やはり、母の勧めで、今度、シャーロットと正式に婚約をすることにした。ああ・・・、シャーロットというのが、僕の交際相手の名前だ」
屈託なく、ランドルフは言った。
「それで?」
「僕たちは、上手くいっている。とても、上手くいっていた。だけど・・・、先日、彼女が僕と君のことを、どこかで耳にしてきたようなんだ。僕が、このひと夏、君の農園を手伝っていたことをね。それで、彼女は、僕たちの関係を疑いだしたんだ。君と僕が、その・・・、交際をしていたんじゃないか、まだ、交際が続いているんじゃないかって」
「否定しなかったのですか?」
「もちろん、否定したよ。本当のことを、言う訳にはいかないからね。君と僕は、何の関係もないって。君の農園の農園監督者が、怪我をして困っていたから、隣人として見かねて、手伝っただけだって。だけど、僕の言葉を、信用してくれない。彼女の不信は強くなるばかりで、このままだと、せっかく決まった婚約を断られるかもしれない。母も、随分、気を揉んでいる」
「それで、わたくしにどうしろと?」
「・・・シャーロットに、話してくれないかな?」
「つまり?」
「シャーロットが、僕の言葉だけじゃ、信用が出来ないから、君の言葉で聞きたいって言うんだ。僕と君の間には、一切、何もなかったって。・・・頼めるかな?」
申し訳なさそうに、ランドルフは言った。
アンヌは黙ったまま、目の前に広がる、土ばかりになった、十二月の綿花畑を見つめていた。
「こんなことになって、君には、申し訳ないと思っている。でも、君の方からシャーロットに僕との関係を否定してくれれば、彼女も納得すると思う。機嫌を直して、無事に婚約を済ませられると思うんだ。僕も母も、助かる」
「・・・わかりました。では、住所をお知らせください。その方に、お手紙を差し上げます」
「いや、手紙じゃ駄目なんだ。シャーロットが言うには、君に会って、直接君の口から聞きたいそうなんだ。その方が、確かだからって。僕としては、シャーロットの言い分を尊重したい。シャーロットは、僕の妻になる人だからね」
ランドルフは、穏やかに微笑んだ。
アンヌは、再び、黙ったが、
「では、改めて、日時をお知らせください」
そう、答えた。
「今日、これからじゃ駄目かな?」
「これから?」
「実は、昼に、シャーロットが屋敷に来るんだ。ちょうど、いい機会だろう?」
「わたくしは、マーガレット様にモーガン邸への出入りを、禁止されています」
「君が僕の屋敷に来るのは、僕とシャーロットの婚約が、滞りなく取り行われるためだよ。君の来訪を、拒むはずない」
そんなことを、気にしていたのかい、とでもいう様に、ランドルフは笑った。
それで、アンヌは何故、ランドルフが、今日に限って、馬ではなく馬車でやってきたのかが、わかった。
ランドルフはアンヌを、モーガン邸へ連れて行くつもりだったのだ。
「・・・いいでしょう。支度をしてきます」
「助かる。恩に着るよ、アンヌ。君が支度をしている間、少し寒いけど、散歩をしてくるよ。中へ入れては、もらえなさそうだからね」
ランドルフは上機嫌で、そう告げると、畑の方へとひとりで歩いて行った。
アンヌは、扉を開け、屋敷の中へ戻ると、締まった扉に寄りかかって、しばらく時間を過ごした。
産むわけには、いかない。
早く、早く・・・、始末してしまわなくては。
「アンヌ様・・・」
心配そうに、エマが奥から出て来た。
「これから、モーガン邸へ行きます」
「モーガン邸へ?」
アンヌの思いがけない言葉に、驚いたエマだった。
「詳細は、支度をしながら話します。あなたも、付いてきなさい」
「アンヌ様、お身体は・・・」
「大丈夫です。今日一日、何とか・・・、乗りきってみせます」
重い身体に鞭打って、アンヌは、一段、一段、踏みしめるように、階段を上がった。
広大な邸宅のリビングのソファに、どっかりと腰を下ろし、はああっ、と、深いため息をつくのは、誰あろう、マーガレット・モーガンその人だった。
クリスマスを間近に控え、やらなくてはならないことは、山ほどあった。
クリスマスツリーに、屋敷内の飾り付け、親戚や知人たちへのクリスマスカードに、クリスマスメニューの確認、家族や大人数の使用人たちへの、クリスマスプレゼント・・・。
例年ならば、自らが先頭に立って仕切るそれらの準備を、マーガレットは義妹レイチェルに全て任せて、時間をただ無意味に過ごしていた。
秋の夜会を成功裏に収めて以降、モーガン家は社交界で、一際の名声を博していた。
社交界のいかなる集いに参加しても、社交界の重鎮として、これまで以上に、丁重にもてなされ、その権力は強まり、地位は高まるばかりだった。
けれども、マーガレットの心が晴れやかになることは、なかった。
その原因は・・・、ランドルフとシャーロットの縁談が、破談になったからだった。
秋の夜会で、ランドルフが仕出かした失態を、直接謝罪しようと、マーガレットは、ブラウン家に何度も面会を申し入れた。
が、謝罪の必要はありません、と。
そちらは、社交界で随分と高い地位をお持ちのせいか、若い娘の純粋な真心など、取るに足らないものとお考えなのでしょう、と。
強烈な厭味が認められた返信が届き、ブラウン家はモーガン家と、今後一切の、お付き合いをお断りします、と締めくくられていた。
つまり、マーガレットが、半年以上かけて、手を尽くしたランドルフとシャーロットの縁談は、あっけなく終わった。
マーガレットは、空しさを覚えた。
自分のやって来たことは、一体何だったのだろうと。
こうまで手を尽くして、どうして上手く行かないのだろう、と。
時間が経てば経つほど、マーガレットの味わう空虚感は、大きくなるばかりだった。
こんなことになるのなら・・・、最初から、あの高慢な娘でもよかったのかもしれない、と、そんな思いすらよぎった。
ベアトリス・アンダーソンの屋敷で、マーガレットは、穏やかな表情を浮かべるアンヌの姿を見た。
自分に自信が持てない、目の見えない娘を、励まし、勇気づける姿を、目にした。
そうして、ランドルフが、アンヌに惹かれる理由が、ようやくわかった。
もう一度、ランドルフがアンヌとの交際を持ち出してきたなら、考えてみてもいいとさえ 思い始めていた。
ところが、ランドルフは、そんな話を切り出してくるどころか、淡々と仕事をこなす日々で、相変わらず、従兄弟のイーサンと、何やら話し込んでいる姿を、度々、目撃するマーガレットだった。
ランドルフが秋の夜会を抜け出した夜、アンヌと一夜を過ごしたに違いないという勘が働く一方で、アンヌがモーガン家に何かを迫ってくることもなく、ランドルフもアンヌの存在などすっかり忘れ去ったかのように、仕事に励む日々だったので、ふたりが一夜を過ごしたと思うのは、自分の思い過ごしかもしれないと、思う様にもなってきた。
秋の夜会に向けて気合十分だったマーガレットは、それが大成功を収めて、燃え尽き、そして、一方ではランドルフの縁談が水の泡となって、さりとて、アンヌとの間にも、なにかある気配はなく、生きる張り合い、というものをすっかり失ってしまっていた。
はああっ、と、自分以外に誰もいないリビングで、深いため息を、何度も繰り返していると、一層、空しさは深まっていくばかりだった。
「何だ、そんなに深いため息をついて」
物思いにふけっていたせいで、自分しかいないと思っていたリビングに、ヘンリーが姿を見せたことに、マーガレットは気づいていなかった。
「あら、あなた、何か、御用ですか?」
気の抜けた声で、マーガレットは応じた。
「随分、張り合いのない声だ。君らしくないね」
「私のことを言えませんよ。あなただって、つい先日まで、心ここにあらずだったじゃないですか」
ランドルフとアンヌが別れたことに、自分でも思わぬほど落胆していたヘンリーだったが、近頃ようやく、そのショックから立ち直ったようだった。
「それは、認めよう。ランディが、例のお嬢さんを好いていたのは、間違いなかったし、あのお嬢さんは、気の強いところはあったが、本当は優しい娘だったから、うまくいくようにと願っていたからね」
「・・・ランディとあの娘との間を割いたのは、私ですよ」
「もちろん、知っている」
ヘンリーは、マーガレットの座るソファに、並んで腰を下ろした。
「余計なことをしたと、私を叱らないんですか?」
「君を叱る?まさか。君なりに一生懸命だったことを、私は良く知っているよ」
「何とかしたいと思ったんですよ・・・、私」
ヘンリーの優しい言葉に、マーガレットの瞳から、ぽろりと涙が零れた。
「マギー・・・」
ヘンリーは、マーガレットの肩を抱いた。
マーガレットの瞳から、次々と涙が零れ落ちた。
それで、自分がこれまで、夜会のことでも、ランドルフのことでも、どれほど張り詰めていたのかということに、ようやく気付いた。
「マギー、君は、本当によくやっている。夜会の成功も、君のお蔭だ。君無くして、夜会の成功は、あり得なかった。君には、いつも本当に、感謝している。ランディのことだって、君は本当に一生懸命だった。ランディを何とか幸せにしてやりたいと、一生懸命すぎるほど、一生懸命だった。君は、世界一の妻で母親だ。さあ、涙を拭いて」
と、ヘンリーは、年相応に皺の刻まれたマーガレットの頬を伝う涙を、指で拭った。
「私と結婚したことを、後悔していない、ヘンリー?」
とんでもない、とヘンリーは笑い、
「後悔なんかするはずがない。もし、仮に今、三十九年前に戻ったとしても、私はもう一度、君にプロポーズするよ、マギー。あの時のように、もう一度、君に跪いて、結婚を申し入れるよ」
プロポーズからの、三十九年分の信頼と尊敬と愛情をこめて、ヘンリーはマーガレットの手の甲に唇を落とした。
「ヘンリー・・・」
くすん、とマーガレットは鼻をすすった。
ヘンリーは、マントルピースの上の時計を見ながら、
「本当なら、昼食前に、君と一緒に、庭を歩きたいんだがね。ランディにここで待つように言われている。そろそろかな」
そう言った。
それを聞いて、マーガレットも、えっ、と驚きの表情を浮かべ、
「まあ、あなたも?私も、昼食前に話があるから、ここで待つように、ランディに言われているんですよ」
「君も?」
と、ふたりが顔を見合わせたその時、ランドルフに伴われたアンヌが、リビングに姿を現した。
「・・・あなた!」
リビングに入って来たアンヌの姿を見るや否や、マーガレットは、驚きで声を上げた。
ランドルフに伴われて、リビングに足を踏み入れたアンヌだった。
そこに、シャーロットの姿があると信じて。
疑うこともなく。
けれども、アンヌが足を踏み入れたリビングにいたのは、シャーロットではなく、ヘンリーとマーガレットだった。
はっ、と、アンヌが傍らのランドルフを見上げると、ランドルフは、パタンとリビングの扉を閉め、
「お父さんと、お母さんに、話があります」
改まった様子で、そう切り出した。
ランドルフの瞳に、いつもの穏やかな微笑みはなかった。
その眼差しは、真剣で、決意を秘めていた。
どくん、とアンヌの鼓動が打つ。
ここにいては、いけない。
・・・これは罠。
ランドルフ様の仕掛けた罠!
「わたくしは・・・、帰ります」
アンヌは、鋭く踵を返したが、ランドルフの腕が身体に回り、強く引き寄せられた。
「話はまだ、始まってもいないよ」
「いいえ・・・、いいえ、聞く必要はありません。わたくしは、帰ります!」
人払いをしていなかったせいで、お茶の支度を尋ねに来たモーガン家のメイドに、アンヌは、すぐに帰るので、エマを呼ぶように命じた。
けれども、ランドルフは、アンヌに構わず、話を始める。
「お父さん、お母さん、僕は、先夜、アンヌと、夫婦の契りを結びました」
一瞬、その場が、静まり返った。
「いいえ・・・、いいえ!そのような事実はありません!作り話でわたくしを辱めるのは、お止めなさい!」
アンヌは、耳を塞いでしまいたかった。
「君は言った。・・・あの夜、わたくしのランディ、と」
「そのような覚えはありません!あなたの、聞き間違いです!」
「聞き間違い?じゃあ、一緒に夜を過ごしたことは認めるね?」
ああ・・・、用意周到な罠。
最初から、仕組まれた罠。
わたくしは、自分から、罠に入りこんでしまった・・・。
「僕は、軽々しい気持ちで、アンヌと契ったのではありません。僕たちは、もう夫婦です。正式に、教会で神の祝福を受けてはいませんが、僕は彼女以外の女性を、妻にするつもりはありません」
アンヌは、この場を離れようと、ランドルフの腕を引き離そうと試みたが、全く敵うことはできなかった。
ヘンリーも、マーガレットも、突然始まった、全く予想していなかった事態に、言葉を失っていた。
「僕は、アンヌと結婚します。アンヌを、この屋敷に迎えます。もし、それがどうしても認められないと言うのなら、僕は、今すぐにアンヌと一緒に、この屋敷を出て行きます。僕がいなくなっても困ることがないよう、必要なことは、全て、イーサンに引き継いであります」
「なんですって!」
思わず、マーガレットが声を上げた。
ランドルフのその言葉で、何故近頃、ランドルフとイーサンが必要以上に行動を共にしていたのかが、わかった。
農園の業務を、イーサンに引き継ぐためだったのだ。
けれども、マーガレットが何よりも驚いたのは、ランドルフが屋敷を出て行くと宣言したことではなかった。
三十九年前、マーガレットは、同じ言葉を聞いた。
ヘンリーの口から、同じ言葉を・・・。
「お父さん、僕たちの結婚を認めてもらえなければ、僕はマギーと共に、出て行きます。モーガン家の全てを放棄します」
自分の父親に向かって、ヘンリーは、いささかの迷いもなく、そう告げた。
三十九年前の、その光景が、今、マーガレットの脳裏に、まざまざと甦った。
「・・・我々は、時間をかけて話し合う必要があるようだ」
ランドルフに、そう告げるヘンリーの顔にも、いつもの柔和さはなかった。
「もちろん、そのつもりです」
「いいえ・・・、その必要はありません!わたくしは、誰とも結婚しません!理由は、以前にもお話ししました」
「そのことも、一度、ふたりでゆっくり話合おう、アンヌ」
「わたくしは、生涯、結婚はしません!」
「何故、そう決めつける必要がある?」
「これ以上、あなたと話す必要はありません!・・・手を放しなさい」
呼吸が、乱れる。
ああ・・・、こんな時に、発作が・・・。
息が、苦しい。
息が、出来ない!
「アンヌ、少し落ち着くんだ。・・・いや、アンヌ、アンヌ・・・、大丈夫か?」
ランドルフは、アンヌの只ならぬ様子に、気づいた。
真っ青な表情で、喘ぎ、身体が前のめりになる。
ヘンリーもマーガレットも、アンヌの異変に、顔を見合わせた。
「ランディ、とにかく、アンヌをソファへ」
「あなた、大丈夫?誰か・・・、誰か、いないの!誰か、冷たい飲み物を持ってきなさい!」
自分を気遣うその声が、アンヌには煩わしかった。
「エマを・・・、エマを・・・!」
アンヌは、そう小さな声を上げるのが、精一杯だった。
早く、ここを出て、帰らなくては。
自分の屋敷に、帰らなくては!
そう思えば思うほど、息苦しさは、一層激しくなるばかりだった。
ランドルフに抱えられて、ソファに下された瞬間、身体を支えきれずに、そのまま前のめりに倒れこむ。
「アンヌ、しっかりするんだ」
ランドルフが、アンヌの手を握り、優しく背中を擦った。
止めて・・・。
もう、止めて!
もうこれ以上、誰も、わたくしに、優しくしないで!
「エマ・・・、エマ!」
エマが、来てくれれば・・・。
エマさえ来てくれれば、ここを出て、屋敷に帰れる・・・。
わたくしの・・・、わたくしの農園に。
「アンヌ様!」
リビングに姿を見せたエマは、アンヌに駆け寄ると、異変に素早く対応した。
「落ち着いて、息を吐きます。ゆっくり、少しずつ、長く息を吐きます。少し吸って、長く吐きます・・・」
それを繰り返すうちに、アンヌの呼吸の乱れは、次第に落ち着いていった。
「エマ、帰ります・・・、支度を・・・」
まだ、肩で呼吸する、疲れた表情のアンヌは、かすれた声で、エマにそう命じた。
「アンヌ様・・・」
エマの瞳から、涙が溢れた。
これ以上、アンヌに全てを背負わせるのは、あまりに酷だと、エマは覚悟を決めた。
「アンヌ様・・・、もうしばらく、こちらで休まれる方が、お身体にも、お腹の赤ちゃんにも・・・、差し障りがないと思います」
「エマ・・・」
アンヌは、眼を見開いて、エマの泣き顔を見つめた。
エマは、顔を覆った。
「赤ちゃん?アンヌ、君は、お腹に子供がいるのか?」
ランドルフは、すぐには事態がよく呑み込めなかった。
それは、ヘンリーとマーガレットも、同様だった。
「いいえ・・・」
「はい、アンヌ様のお腹には、赤ちゃんがいます。ランドルフ様のお子に、間違いありません」
アンヌの言葉を遮って、エマは、はっきりとそう告げた。
アンヌの身体は、ぐったりと、ソファに崩れ落ちた。
もうこれで、アウラにはいられなくなるのだと、農園を失う時が来たと、アンヌは、希望を失って、眼を閉じた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる