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しおりを挟む玉座の下、階段の手前で止まり礼をする
「初めのお言葉を賜る栄誉に感謝致します。」
「うむ、構わん。
もっと、こちらまで来なさい。」
御前まで行くの…?!
通常はここでお話をさせて頂く筈…
周囲の人々もひそひそと驚いているようだ
「は、はい…有り難きご配慮に従います。」
仕方ない、陛下が来いというのだから
行かない訳にはいかないものね
緊張で足が重い、でも一歩ずつ進む
「到着致しましてございます、陛下。」
「顔を上げなさい、
名を教えてくれるか?」
「金色の至宝に止めて頂くだけで身に余る栄誉です。
私はパルスヴァイン公爵が娘、
フェリシア・パルスヴァインと申します。」
「ほう、やはり近くで見ると誠に美しい
それに建国記第十章か…
その歳で読んでおるとは、なんと聡明な子だ。」
陛下だけではなく、貴族達からも感嘆の声があがる
掴みは上々だったみたい、良かった…
金色の至宝とは、建国記に出てくる表現だ
建国者である陛下の祖先は
神より金色の宝玉を賜ったことにより
瞳の色が金色に変化し、その後生まれる子孫も
代々瞳が金色をしている為、王家の証となっている
建国記は5冊で一つの物語になっている
だが物語というには子供にとって難しい表現も多く、
1冊が5センチ位の分厚さになっている
その為、学習するのは13歳で学園に入ってから
というのが大抵の貴族の認識である
やっぱり早いわよね、凄く難しかったもの
お父様から渡されたのが5歳の時だったから
読めるようになるまで1年はかかったかな…
この時の為に読ませたのでしょうね
そればかりはお父様に感謝だわ
「まだ幼きこの身には理解が及ばぬ所もありますが
この国に生きる者として読んでおかなければ、と。」
「人民としての自負もある、と…。
そなたの価値は美しさだけには留まらぬようだ。
これからもよく励みなさい、民の為に。」
「はい、この国と民の為日々精進致します。」
再び礼をし階段を降りる、最後まで気は抜けない
上がる前よりも視線が降り注いでいる
最後の礼までを終わらせ、足早に両親の元まで戻る
何も失敗していない筈…大丈夫だったかしら…
「お言葉を賜りました、…お父様。」
「あぁ、陛下のお言葉通り励みなさい。」
恐る恐るお父様を見るがこちらを向く事もない
それだけか…労いの言葉も無いのね
緊張からの解放と落胆でどっと疲れが押し寄せる
汗の滲んだ手が気持ち悪いし、少し1人になりたい…
「はい、お父様。
…少し席を外しても宜しいでしょうか?」
「ん…?あぁ、早く戻るのだぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
了承を貰い、外へと向かう
周囲の視線は次の子に移っていたので丁度良かった
足早に扉を抜け、周囲に人がいない事を確認して
大きく溜息をつき、少しだけ気持ちが落ち着いた
「お手洗い…どこなのかしら…。」
初めてくる王宮、軽く説明は受けていたが
あまりの広さに目的の場所が見つけられないでいた
早く戻らないといけないのに、どうしましょう…
諦めて一度戻ってみようかしら
そう踵を返そうとした時、
不意に呼びかけられた
「ねぇ…ここで何してるの…?」
………………………………………………
お読み頂きありがとうございました!
少しづつ、見返しては気になる部分を修正しています。
何か気になる所など有れば
教えて頂けるとありがたいです。
よろしくお願いします!
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