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使用人
しおりを挟む「アイリスお嬢様ですよね!?」
商人の1人は、アイリスの父サザーランド男爵の元使用人だった。
「ロイド...?」
「はい!ご無沙汰しております!」
ロイドはアイリスに深々とお辞儀をし、2人は再会を喜んだ。
アイリスとギル、そして商人達は近くの木陰で野宿をすることにした。
アイリスは両の手を組み、目をつぶり、ここから半径50メートル辺りに静かに結界を張った。
「お嬢様...やはり、聖女の力を...。」
サシャに聖女の話をしたのはロイドだった。
「ロイドは知っていたのですか?」
結界を張り終え、焚き火の近くに腰を下ろす。
「旦那様に固く口止めされておりました。ですが...私はサシャ様に話してしまいました...。」
「サシャは知っていたのですか?!」
ロイドは小さく頷いた。
知っていたのに、どうして言わなかったんだろう...。
オーウェン様を手に入れたかったのなら、私を聖女だと公表すれば簡単だったはず。
ギルの言う通り、きっと私は道具として使われ、二度と家には帰れなかったはず...。
「ロイド...サシャに話したことを、私にも話してくれませんか?」
ロイドはアイリスの母、オリエの事やサザーランド男爵の気持ちなど、サシャに話した全てをアイリスに話した。
「お父様もお母様も...私を守ろうとしてくれていたのですね。それほどの愛情をもらっていたのに...私は夫を捨て、家を出てしまった...。」
それまで静かに話しを聞いていたギルが、アイリスの頭を撫でた。
「あんたはバカか?その旦那との間に何があったかは知らないが、あんたの両親はあんたの望むとおりに生きて欲しいと思っているはずだ。今から幸せになればいい。」
頭を撫でてくれるギルの手が、温かくて気持ちがいい。
「お嬢様はどちらへ行かれるところだったのですか?」
「北の廃墟の町です。」
「あそこは強力な魔物が沢山います!なぜそんな危険な場所へ!?」
商人達は慌てた!
そこへ行くなど、正気の沙汰ではない。
それほど危険な場所なのだ。
「親のいない子供達や、国を追放され行き場をなくした人達のための町を作りたいのです。これはギルの夢でしたが、今は私の夢でもあります。」
アイリスはギルの事を見る。
ギルはアイリスの視線に気づき、にっこりと笑顔を見せた。
「...お嬢様は信頼する相手を見つけたのですね。お嬢様の力があれば、町を作ることが出来るような気がします。私にも、協力出来ることがあるかもしれません!お手伝いさせてください!」
「ありがとう、ロイド。廃墟の町に結界を張り終えたら、その時に協力をお願いします。」
アイリスはロイドに深々と頭を下げた。
「お嬢様!こんな私に頭を下げるなどおやめ下さい!私は...旦那様の言いつけも守れず、サシャ様に...。」
「ロイドはサシャが好きなのですね。」
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