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出発
しおりを挟む「隣国に行くのが遅くなるけど…。」
ギルはアイリスが隣国に用があるのだと思っていた。
「大丈夫ですよ。隣国にはとりあえず行こうと思っただけですから。」
「そうか、安心した。まさか、聖女に会えるとは思ってもみなかった。だが、あまり知られないようにしないとな。」
アイリスは首をかしげ、
「知られたらダメなのですか?」
「あんたには保護者が必要だな。聖女は、誰もが欲しがる存在。あんたが聖女だとバレたら、売られるだけじゃすまない。死ぬまで道具として使われるだろう。」
聖女は貴重なのは知っていたけど...怖い...
「大丈夫だ。あんたが拒絶したら、誰もあんたに触れることさえ出来ない。それに、俺もいるしな。」
ギル...ありがとう。
ギルがいなかったら、今頃私はどうなっていたのか分からない。
ギルのおかげで、私は目標を見つけられた。
神様...出会えたことに感謝します!
翌日、ギルは馬車をどこからか借りてきた。
「その馬車は、どうしたのですか?」
「冒険者をしてると、色んな知り合いが出来るんだよ。まあ、乗れ。」
言われた通り、馬車へと乗り込む。
荷台には沢山の食材が積み込まれていた。
「町があった場所までは、馬車で10日はかかるからな。」
こんなに立派な馬車を、簡単に借りてくるなんて...ギルは一体何者なんだろう。
「アイリス、馬車に結界を張ってくれるか?10日は馬車で寝泊まりすることになる。」
馬車で寝泊り?!
それってこの馬車にギルと2人で寝るって事?!
「そんな顔するな。しょうがないだろ?他の町に寄ってたら更に5日はかかる事になる。」
ギルは私と2人きりで寝ても、何も感じないんだろうな...って、私は何を?!
これじゃ、ギルに何かして欲しいみたいじゃない!
パンパンッ
アイリスは顔を叩き、集中して結界を張った。
結界を張るのはまだ緊張するな。
結界を張った馬車は、廃墟の町へと走り出した。
草原を抜け、山へと入り、日が暮れた。
「今日はここまでだな。」
ギルは馬に水をやり、休ませる。
「ギル!なにか来ます!」
アイリスは魔物の気配を察知できるようになっていた。
ズドドドドドドドドドドドドドッッ!!
すごい音を立てて、すごい勢いでやってきた魔物は、ギルへと襲いかかる!
襲ってきた魔物は、一つ目巨人!
ズザザザザザザザザザッッ!
一つ目巨人は、持っていた巨大なこん棒を振り下ろした!
ギルはすんでの所で避け、一つ目巨人の足に斬りかかる!
ザバッ!
「クソッ!デカすぎて足しか攻撃出来ない...」
このままじゃギルが...!
結界を馬車にしか張っていなかった...
今から結界を張るには時間がかかり過ぎる...
倒すしかない......!
魔力を...手のひらに集中...
アイリスは頭の上で両手を広げ、手のひらへと魔力を集中した。
すると、魔力が光となり、手のひらに集まっていった!
「きーえーてーーーっっっ!!」
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