旦那様は私ではなく妹が好きなのですね。

藍川みいな

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聖女

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 「聖女?私が?そんなわけないです。今まで1度もこんな事なかったし…」

 「今まで平和に暮らしてたから、知らなかっただけじゃないか?今のモンスターは、上級モンスターだ。それをあんなにあっさりと…。」

 聖女とは、強い魔力を持って生まれ、その魔力で魔物を倒したり、結界を張る事が出来る存在。
 昔はどの国にも、聖女が1人は居て、国全体を結界で守っていた。
 だが、だんだん強い魔力を持つ聖女が現れなくなり、どの国にもいなくなったという話だ。
 今は魔法使いが、町ごとに魔除の魔法をかけている。
 魔法使いの魔力では、町を守るのが精一杯のため、国の中の森でも強力な魔物が現れるようになった。
 
 「試しにこの森に結界を張ってみないか?さっきので、あんたの魔力はかなり強いことは分かった。あとはやってみるしかない。」

 「…やってみる!」
 
 私が聖女だなんて思ってはいない。
 聖女はとても特別な存在…
 もうこの世界には聖女はいないとまで言われるほど希少な存在…
 だけど、こんな私でも誰かの役に立つことが出来るかもしれない!

 アイリスは目をつぶり…

 お願い!この森から魔物を追い出して!
 人々が安全に他の町へ行けるように…

 アイリスの身体から何かが発せられてる気がした…目に見えない何かが辺りを覆い尽くす。
 ギルの目には見えなくても、凄まじい威圧感を感じていた。
 だんだん森が明るくなっていく。

 アイリスが目を開けた時、森の空気が澄み渡っていた。

 「成功…したの?」

 ギルは辺りを見渡し、

 「そうみたいだ。さっき倒したフェンリルが、跡形もなく消えている。…やはり、あんたは聖女みたいだ。」

 聖女はなろうとしてなれるものではない。
 どんなに修行を積んだ冒険者でも、聖女の生まれながらにして持つ神聖な力には敵わない。
 聖女には神の血が流れているという噂がある程、力が圧倒的なのだ。

 アイリスとギルは、森を抜け次の町へと入った。
 フェンリルを倒した時に落としたアイテムを換金し、宿に泊まる。
 宿の一階で食事をしながら、これからの事を話していた。

 「あんたがいれば、俺の夢が叶う。力を貸してくれ!」

 いつになく真剣な顔をしたギルは、アイリスに頭を下げた。


 その頃、森に魔物がいなくなったと噂が広まり、森は行き来する人々で溢れていた。

 「この森を通ることが出来るなんて、夢にも思わなかった!」
 「危険なモンスターだらけだったのに…どうして魔物がいなくなったのかな?」
 「聖女様が現れたって噂だぞ!」

 そこにアイリスを追ってきた、オーウェンの姿があった。

 「アイリス…どこにいるんだ!?この森を抜けたらおまえに会えるような気がする!」

 森へ入ろうと、足を踏み出したオーウェン…

 バチバチバチッ!!

 「痛てーーーっ!!」

 森の結界は、オーウェンを拒絶した!
 アイリスの最初の結界は、恐怖のあまり全てを拒絶した為、ギルは触れることが出来なかった。
 だがこの結界は魔物を消滅させ、魔物が森へ入らせないためのもの…
 アイリスは無意識に、オーウェンを魔物だと分類したようだ。

 「お兄様?こんな所で、何をなさってるのですか?」

 そこへサシャが現れた。

 「まさかお姉様を追っているのですか!?」

 「サシャ!?う、うるさい!おまえこそ何をしているんだ!?」

 二人は森の入口で再開した。

 「お兄様は入れないのですね。」

 サシャは森へと足を踏み入れた。

 「な、な、なんでおまえは入れるのだ!?」

 サシャは、これがアイリスの張った結界だと気づいていた。


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