旦那様は私ではなく妹が好きなのですね。

藍川みいな

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失礼な男

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 やっと二人から解放されたアイリスは、隣の町へと着いていた。
 一人で出かけたことなどなかったアイリスは、見るもの全てが新鮮だった。

 「えーーーーーん!」

 ベンチで女の子が泣いているのを見つけ、女の子の側へと行き話しかける。

 「どうしたの?大丈夫?」

 女の子は泣きながら、

 「お爺ちゃんが病気で…ぐすっ…でもお金がなくて…ぐすっ…お薬買えないの…ヒック…」

 アイリスは女の子の頭を撫で、荷物から全財産を取り出し女の子に渡した。

 「これでお爺さんに薬を買って飲ませてあげて!」

 女の子は泣きやみ、
 
 「お姉ちゃんありがとう!」

 そう言うと、町の中央へと走っていった。

 「あんた…今、騙されたよ?」

 振り返ると、冒険者らしき男の人が立っていた。
 歳は20くらいで、顔はかなりの美形。

 「騙されたってどういう事ですか?」

 「あの子に、じいさんなんていない。親さえいない孤児だ。バカそうなカモ探しては、あーやって泣き真似して金を出させてるんだ。」

 「そう、それなら良かった!」

 アイリスは心の底から喜んでいる。

 「………はぁ?!あんた、金を騙し取られたんだぞ?」

 「病気のお爺さんはいないんですよね?本当に良かった!それに、孤児なら食べる物にも困ってるだろうし…美味しいもの、食べてくれるといいなあ。」

 「ぷぷーっ!あははははははは!あんたそれ、お人好しすぎるだろ!ぷぷーっ!」

 男の人は笑い転げている。

 そんなに笑わなくても…
 
 グーッ

 …お腹がなってしまった。

 「ぶっ!あんた面白すぎ!どうせあんたの事だから、あの子に有り金全部渡したんだろ?飯くらいご馳走してやるよ。」

 …その通りだ。
 だけど、こんな失礼な人にご馳走になりたくない!
 私にだってプライドはある!

 「結構です!」

 ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうッ!!

 ものすごいお腹の音がなった!

 「ぶっ!!ぷぷーっ!ダメだ、面白すぎて、あはははは!!」



 そして…

 「好きな物頼んでいいぞ。」

 …結局この男に、ご馳走してもらう事にした。
 この際だから、いっぱい食べてやる!
 これでもかと言うくらい、注文をした。
 そして料理が次々に運ばれて来た。

 「おいしー!」

 お腹が空いてたのもあるけど、自分以外の誰かが作った料理を食べるのは久しぶりだった。

 「美味そうに食うな。誰も取らないからゆっくり食いな。なあ、あんた…なんでこの町に来たんだ?」

 「隣の国に行くついでに、寄っただけです。」

 料理を頬張りながら答える。

 「じゃあ目的は隣の国に行く事か。…俺と一緒に行くか?」


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