旦那様は私ではなく妹が好きなのですね。

藍川みいな

文字の大きさ
上 下
1 / 18

さよならです。

しおりを挟む

 目の前の光景に絶句した…
 妹が、私の夫と唇を重ねているではないか…
 私には気付いていないのか、角度を変え何度も唇を交わしている。
 気のせいか、妹がこちらを見て笑った様な気がした…
 あまりの光景に、私はその場から逃げるように立ち去った。

 サザーランド男爵の長女、アイリスは、父の決めた相手、オーウェンと3年前に結婚した。
 オーウェンはケーユ伯爵家の長男で、結婚は、ケーユ伯爵からの熱烈な申し出だった。
 アイリスは、いわゆる箱入り娘で、大切に育てられてきた為、世間知らずな所が多々あった…が、あの光景は世間知らずのアイリスにも、してはいけないことだとは分かった。

 私は昨日見た事を、夫に言えずにいた。
 相手が相手なだけに、どう言ったらいいのか分からなかった…
 夫も見られていたことに気付いていないようで、いつも通りだった。
 夫に嫁いで3年…
 親が決めた相手とはいえ、信頼関係も築け、少しは愛されていると思っていた 。
 全てが私の勘違いだったということなのか…
 夫は本当は、私の妹のサシャが好きだったのだろうか…
 あの光景からは、どう考えてもサシャが好きなんだろうと考えざるを得ない。
 私のこの3年間は、なんだったのだろう…
 夫がサシャを好きなら仕方ない…この家を出て行こう!
 そう決めたら、心が楽になった。
 どうやら私は、夫を愛してはいなかったようだ。
 荷物をまとめ、最後のご挨拶をしようと夫の帰りを待っていたら、サシャが訪ねてきた。

 「お姉様、お元気でしたか?」

 昨日、この家で夫といやらしい口付けを交わしておきながら白々しい…
 
 「ええ、元気よ。サシャこそ元気だったの?」

 サシャが元気だろうと、そうでなかろうとどうでもいいけど…

 「元気でしたわ。お兄様に愛して頂きましたから。」

 !!

 この子は何を言っているのだろう…?
 昨日のは、キスだけでは終わらなかった…と? 

 「そう…。それは良かった。じゃあ帰ってくれる?」

 もうどうでもよかった…
 サシャが夫と愛し合っていようが、私には関係ない。
 
 「まだ来たばかりですのに。話は終わってませんよ?」

 サシャは何がしたいのだろう…
 
 「話す事なんてないわ。旦那様が欲しいのならあなたにあげる。」

 「負け惜しみですか?お姉様との夜の営みは、つまらないと言っていましたよ。」

 つまらない…か。
 確かにされるがままで、自分から欲した事もなかった。
 ただ子供を持つための行為としか思っていなかった…
 それは、私が夫を愛していなかったからなのだと今ならわかる。

 「それならこれからは、あなたが相手をしてあげればいいわ。」
 
 夫に最後の挨拶をしてから家を出ようと思っていたが、このまま去ることにした。

 「旦那様はそろそろ帰っていらっしゃるだろうから、このままここで待つといいわ。」 

 そう言い残し、まとめてあった荷物を持ち家を出た。


 
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

白い結婚がいたたまれないので離縁を申し出たのですが……。

蓮実 アラタ
恋愛
その日、ティアラは夫に告げた。 「旦那様、私と離縁してくださいませんか?」 王命により政略結婚をしたティアラとオルドフ。 形だけの夫婦となった二人は互いに交わることはなかった。 お飾りの妻でいることに疲れてしまったティアラは、この関係を終わらせることを決意し、夫に離縁を申し出た。 しかしオルドフは、それを絶対に了承しないと言い出して……。 純情拗らせ夫と比較的クール妻のすれ違い純愛物語……のはず。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

処理中です...