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さよならです。
しおりを挟む目の前の光景に絶句した…
妹が、私の夫と唇を重ねているではないか…
私には気付いていないのか、角度を変え何度も唇を交わしている。
気のせいか、妹がこちらを見て笑った様な気がした…
あまりの光景に、私はその場から逃げるように立ち去った。
サザーランド男爵の長女、アイリスは、父の決めた相手、オーウェンと3年前に結婚した。
オーウェンはケーユ伯爵家の長男で、結婚は、ケーユ伯爵からの熱烈な申し出だった。
アイリスは、いわゆる箱入り娘で、大切に育てられてきた為、世間知らずな所が多々あった…が、あの光景は世間知らずのアイリスにも、してはいけないことだとは分かった。
私は昨日見た事を、夫に言えずにいた。
相手が相手なだけに、どう言ったらいいのか分からなかった…
夫も見られていたことに気付いていないようで、いつも通りだった。
夫に嫁いで3年…
親が決めた相手とはいえ、信頼関係も築け、少しは愛されていると思っていた 。
全てが私の勘違いだったということなのか…
夫は本当は、私の妹のサシャが好きだったのだろうか…
あの光景からは、どう考えてもサシャが好きなんだろうと考えざるを得ない。
私のこの3年間は、なんだったのだろう…
夫がサシャを好きなら仕方ない…この家を出て行こう!
そう決めたら、心が楽になった。
どうやら私は、夫を愛してはいなかったようだ。
荷物をまとめ、最後のご挨拶をしようと夫の帰りを待っていたら、サシャが訪ねてきた。
「お姉様、お元気でしたか?」
昨日、この家で夫といやらしい口付けを交わしておきながら白々しい…
「ええ、元気よ。サシャこそ元気だったの?」
サシャが元気だろうと、そうでなかろうとどうでもいいけど…
「元気でしたわ。お兄様に愛して頂きましたから。」
!!
この子は何を言っているのだろう…?
昨日のは、キスだけでは終わらなかった…と?
「そう…。それは良かった。じゃあ帰ってくれる?」
もうどうでもよかった…
サシャが夫と愛し合っていようが、私には関係ない。
「まだ来たばかりですのに。話は終わってませんよ?」
サシャは何がしたいのだろう…
「話す事なんてないわ。旦那様が欲しいのならあなたにあげる。」
「負け惜しみですか?お姉様との夜の営みは、つまらないと言っていましたよ。」
つまらない…か。
確かにされるがままで、自分から欲した事もなかった。
ただ子供を持つための行為としか思っていなかった…
それは、私が夫を愛していなかったからなのだと今ならわかる。
「それならこれからは、あなたが相手をしてあげればいいわ。」
夫に最後の挨拶をしてから家を出ようと思っていたが、このまま去ることにした。
「旦那様はそろそろ帰っていらっしゃるだろうから、このままここで待つといいわ。」
そう言い残し、まとめてあった荷物を持ち家を出た。
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