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天国と地獄
しおりを挟むテイラー侯爵が爵位を返上した為、必然的にルーズとサマーは貴族ではなくなった。
「お前達の処分を言い渡す!」
どんな刑が言い渡されるのかと、ヒヤヒヤしながらルーズとサマーは聞いていた。
「この国から追放とする!以上だ!」
国王を欺いたにしては、追放という軽い罪だったことに拍子抜けする二人。
「メリッサに感謝するんだな。」
それだけ言い残し、王は去っていった。
追放にして欲しいと、国王に頼んだのはメリッサだった。
「そんな事でいいのか!?そなたは11年もの間、蔑まれ続けてきたのだろう!?」
「あの二人には、これは決して軽い罪ではありません。二人は私を陥れてまで、ラウル様の婚約者になりたかった。それも叶わず、父が爵位を返上した事で、地位も失いました。全てを失い、国も追放される事が、何より苦痛だと思います。」
メリッサのささやかな復讐だった。
国を追放されたルーズとサマーは、数枚の銀貨を渡され王都から追い出された。
そして数ヶ月が過ぎた頃、ラウルとメリッサの結婚式が盛大に行われた。
「メリッサ……やっと君を妻に迎える事が出来る。」
ラウルは美しい花嫁姿のメリッサを、そっと抱き締める。
「ふふっ。あの日から一緒に暮らしていたじゃないですか。」
婚約発表の後、父テイラーが爵位を返上し地方に移り住んだ為、メリッサの帰る邸がなくなり、城に住んでいた。
「気持ち的な問題だ!私がどれだけこの日を待ち望んで来たか……。」
「分かってます。」
メリッサはラウルの背に腕を回した。
「ラウル様……私……とても幸せです。」
11年もの間、ラウル様を忘れていた私をお許しください。こんな私を、ずっと想っていてくださり、本当にありがとうございます。
あの日、ラウル様が助けて下さらなかったら、きっとあのまま私は……。
もう決して離れません。覚悟してください。
お母様、これから私は愛する人に嫁ぎます。ずっと見守っていてください。
END
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