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幼い頃の婚約者
しおりを挟むラウルは笑顔でメリッサを迎え入れてくれた。
「元気になられたのですね。」
「はい。ラウル様のおかげで、ゆっくり休む事が出来ました。ありがとうございました。」
メリッサはラウルに深く頭を下げた。
「あの……どうしてそんなに優しくしてくださるのですか?」
やっぱりまだ、誰かを信じるのが怖い。何か裏があるんじゃないかと疑ってしまう自分が、心底嫌だった。
「困った時はお互い様じゃないですか。それに、あなたみたいな美しい女性が、無防備に町を歩くのは危険ですよ。」
……ラウル様は何を言っているの?醜い私をからかっているの?
「ご冗談はおやめ下さい!こんなに醜い私をからかって楽しいですか!?」
急に怒鳴り出したメリッサの様子に、ラウルは困惑した。
「あなたは、自分が醜いと思ってるのですか?」
「醜いじゃないですか!私がこんなに醜いから、お母様もサマーも私を嫌いなんです!ティナだって……」
話を聞いたラウルの表情が変わった。
「失礼ですが、あなたの名前を聞いても?」
「……メリッサです。」
ラウルはいきなりメリッサを抱きしめた!
「……え?」
「やっと会えた!!」
何が起きてるのかメリッサにはわからず、動けずにいた。
「私を忘れたのか?幼い頃、よく一緒に遊んだじゃないか。」
幼い頃……幼い頃の記憶は、ほとんどなかった。覚えているのはお母様が私を醜いから恥ずかしいと、あまり外に出してはもらえなかった事くらい。
「君は醜くなんかない。とても美しい。」
私が……美しい?
「そんなはず……」
「自分の姿を鏡で見たりはしないのか?」
鏡なんてずっと見ていない。醜い姿を見たいなんて思わなかったから部屋に鏡はないし、窓に映る姿も目を背けてきた。醜い自分の姿を見てしまったら、耐えられる自信がなかった。
ラウルは部屋にある鏡の前にメリッサを立たせた。
「よく見て。君はこんなにも美しい。」
鏡に映った姿を恐る恐る見ると、まるで自分じゃないように感じた。何年も自分の姿を見なかったのだから別人に思うのは当然だが、その姿は、息を飲むほど美しかった。
「これが……私……?」
ラウルは知ってる事を全て話し出した。
ラウルとメリッサが五歳の頃、二人は婚約していた。ある日メリッサの母サシャが病で他界し、テイラー侯爵はすぐに後妻を迎えた。
その後妻が今のメリッサの母ルーズだった。テイラー侯爵は、サシャが生きていた頃からルーズと不倫していて、ルーズとテイラー侯爵には四歳になる娘がいた。その娘がサマーだ。
「お母様は……私の本当のお母様ではなかったの……!?」
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