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番外編 ミランダ
しおりを挟むあの役立たずのせいで、私の人生は台無しになった。アンソニーを刺した後、隣国に逃げてきたのはいいけど、お金がもう底をつきそう。
こんな事になるなら、あの使用人みたいにお金になりそうな物を持ってくればよかった。
でもあの時は、アンソニーを追うのに夢中で、そこまで考えられなかった。
そんな事を考えながら歩いていると、
ドンッッ!
「どこ見て歩いてんのよ!」
ミランダが顔を上げると、あの使用人が立っていた。
「あんたッ!!」「お前っ!!」
「「なんでこんな所に!?」」
ハモる2人……どうやら気が合うようだ。
その時ミランダは思った。
こいつはお金を持ってる。こんな奴に頼るのはしゃくだけど、お金もないし……
ミランダはこの国にいる経緯を話す事にした。
「あははははッ! 腹が痛てー! アンソニーを刺したのか、ぷぷッッ!」
「笑い事じゃないわよ! 逃亡者になったのよ!?」
「だけど、俺は見直した! ただの媚び売り令嬢かと思ってたからな。」
「アンソニーなんかに賭けたのが間違いだったわ。あいつのせいで、私の人生終わったのよ!」
「なあ、俺達はお互い逃げなきゃいけない身だし、2人で逃げないか? アンソニーはクズだったが、盗んだ物は高値で売れたんだ。そこはさすが辺境伯だよな。」
思惑通りになった。やっぱり男は、私の美貌に弱いわね。
「いいわ。あんたと一緒に逃げてあげる。」
隙を見てそのお金、全部頂いてやるわ。
「俺の名前はドリスだ。よろしくな、ミランダ。」
こんな男に呼び捨てにされるなんて、虫唾が走るけど、我慢よ! 数日間我慢すれば、きっとチャンスはある。お金さえ頂いたら、こんな男サヨナラよ。
と、思っていたのに……
1週間経っても、ドリスは全く隙を見せない。
と言うより、全くお金を手放さない。寝る時も抱いて寝てる始末。どんだけがめついのよ!
「ドリス、これからどうするの? いつまでもここに居たら、見つかるのも時間の問題だと思うんだけど。」
「そうだな。そろそろだと思うんだが……」
「なんの事?」
「お、きたきた。ここでーす。」
ドリスが誰に手を振っているのか、振り返ると……
「ミランダ・ライデッカーだな。」
そこにはマトヌークの兵士が立っていた。
「な、何よあんた達!」
「コイツです。コイツがアンソニー様を殺しました!」
「ドリス! 騙したのね!?」
ドリスは最初から、ミランダをマトヌークに引き渡すために一緒にいた。
この国で懸賞金がかかっているミランダを見つけ、マトヌークに手紙を出し、兵士が来るまでの間、時間稼ぎをしていたのだった。
「誰がお前みたいな人殺しと一緒にいたいと思うんだ? お前がずっと、俺の金を狙ってた事も気づいてたんだよ。バーカ!」
ドリスは、兵士から懸賞金を貰い去って行った。
「あんただって、泥棒じゃない! なんであいつを捕まえないのよ!?」
ドリスが盗んだのは、アンソニー邸からで、そのアンソニーは亡くなり、盗みの現場を見ていたのはミランダのみ。ドリスには容疑がかかっていなかった。
抵抗虚しく、ミランダはマトヌークに連行されて行った。
「あいつはもうおしまいだな。それにしても、あいつの懸賞金すげーな。これだけあれば、一生遊んで暮らせそうだ。」
ドリスが上機嫌で歩いていると、
「兄さん、景気がいいね。」
「俺達にも少し分けてよ。」
ガラの悪い男達に囲まれた。
「な、な、なんだお前達!?」
「さっき、懸賞金がどうのって言ってたよな? もしかして、その袋の中全部金か?」
男達はニヤニヤしながらジリジリと、ドリスに近づいて行く……
「く、来るな! これは俺の物だ!」
「やれ!」
リーダー格の男の声で、男達はドリスに殴りかかる。
ドゴッ!ガッ!ドスッ!バスッッ!!
ドリスの持っていた、お金の入った袋を取り上げる。
「……か、か……えせ……」
「聞こえないねぇ、なんて言ったの?」
「かえ……せ!」
「おい、足りないみたいだぞ?」
ガッ!ドスッ!!ガンッッ!!!
「もういいだろう。行くぞ。」
男達は満足して帰って行った。
「………………くそ…………動けねぇ……俺の……金……が………………………………」
ドリスはそのまま動かなくなった。
マトヌークへと連行されたミランダは、夫殺しの罪で死刑が下された。
「私はただ、貴族でいたかっただけなのに……」
それがミランダの最後の言葉だった。
END
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退会済ユーザのコメントです
効果音を書くよりも、情景描写を文章で表した方がいいと思いますよ。
アンソニーもミランダも使用人も最後はみんな一緒でしたね。
因果応報かな❓
完結お疲れ様でした。楽しく読ませていただきました( ^ω^ )