〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。

藍川みいな

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アンソニー様が現れました。

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 「旦那様は、きっとまだ戦っていらっしゃるわ。」

 ミランダが邸の外に出ると、

 「「「わああああああああぁぁぁ!!!」」」

 大きな歓喜の声が聞こえて来た。

 「やっぱり! あの男、嘘をついたのね! 旦那様が勝利したんだわ!」

 「奥様! 奥様、大変です!」

 アンソニーについていた使用人が、息を切らせて走って来た。

 「分かってるわよ! 旦那様が勝利したんでしょ?」

 「違います! 旦那様は、クーパー将軍の一撃で馬上から落ち、そのまま逃走しました!」

 「…………は? そんなはずないわ。だって、勝利の歓喜の声が上がってるじゃない!」

 使用人は気まずそうな顔をしながら……

 「旦那様が逃走した後、援軍が到着し、敵兵を降伏させました!」

 「じゃあ……旦那様は、どこに?」

 「おそらく、奥様……元奥様の元ではないかと。」

 「冗談じゃないわ! やっと妻の座を手に入れたのに、あの女にとられるなんて!! 王都へ行くわよ! 馬車を出してちょうだい!」




 「ジェンセン様! 本当にありがとうございました! ジェンセン様がいらしてくれなかったら今頃……」

 ライデッカー軍の兵士達は、ジェンセンに感謝し、涙を流した。
 まさか、自分のあるじが一目散に逃げ出すとは夢にも思わず、あの時皆が『終わった。』と思っていた。

 「皆の勝利だ。すまないが、後のことは頼む。気になる事があるから、私は先に王都に戻らせてもらう。」

 アンソニーをいくら探しても見つからなかった。あの日出会ったジョアンナは、アンソニーの元妻で、精霊の加護を受けた者だと、城でキーベル伯爵の話を聞いた時に気づいた。
 気付いたからこそ、ジョアンナが守って来たこのベナミンを守りたいと思い、自らこの地へ赴いたのだった。
 アンソニーはきっとまた力を欲し、ジョアンナを手に入れようとするだろう。
 そう思ったジェンセンは、馬に跨り、急いで王都へと戻って行った。

 

 「ジョアンナ……」

 庭の散歩をしていると、名前を呼ぶ声が聞こえた。
 辺りを見回してみても、誰もいないようだ。

 「気のせい……かな?」

 「……ジョアンナ……」

 気のせいじゃない!
 
 もう一度、辺りをよく見てみると……

 木の影から、アンソニー様が現れた!

 「アンソニー様!? どうしてここに!?」

 「どうしてって、お前を迎えに来たに決まってるだろ。」

 アンソニーは全力で走って逃げた後、馬車に乗り
、ジョアンナの元までやって来ていた。(馬車は盗んだ。)

 アンソニー様……なんか変。なんか怖い。
 
 「何を仰ってるのですか? 私達はもう、離縁したではありませんか。」

 どんどん近付いてくるアンソニー。
 後ずさりするジョアンナ。

 「お前は私の物だ! お前がいれば、私は戦場の悪魔でいられるのだ。ジョアンナ、帰るぞ!」

 アンソニーは無理やりジョアンナの腕を掴み、強引に連れて行こうとする!

 「キャッ!! やめてください!」

 少しづつ、ズルズルと引きずられるジョアンナ。

 「お嬢様!! お嬢様を離せ!」

 ジョアンナの悲鳴に気付き、使用人のダンテが止めに入る!

 「うるさい!! 邪魔をするな!!」

 バッ!ドスッ……

 アンソニーは使用人を振り払い、腹に蹴りを入れた!

 「ダンテ!! アンソニー様、離して! ダンテー!」

 ジョアンナを引きずり、馬車に乗せようとしたその時、

 「その汚い手を離せ!」

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