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アンソニー様から精霊の加護の力がなくなりました。
しおりを挟むジェンセンがベナミンへと出発した頃、アンソニーの精霊の加護の力が消えた。
そうとも知らずに、元愛人だった今の妻ミランダとソファーでイチャイチャしている。
「もう、旦那様ったら、まだ昼間ですよ。」
「いいじゃないか。私はお前と堂々とこうしたくて、アイツと別れたんだ。お前だって、アイツが居なくなればと言っていたじゃないか。」
「それは、旦那様とずっと一緒に居たかったからですよぉ。旦那様が、帰ってしまうのが寂しくて……」
「おぉ、そうかそうか。それはすまなかった。お前は可愛いな。これからはずっと一緒にいるからな。」
ミランダの言葉は全て嘘だった。ミランダは、愛人のままでは満足出来なかった。父親である、パターソン男爵は病で先が長くなかった為、一刻も早く妻にならなければならなかった。
その為には、アンソニーの妻ジョアンナが邪魔だった。
だが、精霊の加護を受けたジョアンナと離縁させることは、そう簡単ではなかった。
アンソニーに精霊の加護を迷信だと思わせる為に、戦いに勝つ度に、精霊の力ではなくアンソニーの力だと褒めたたえていた。
悪女に引っかかった……といえば、そうかもしれないが、そもそも尽くしてくれている妻を蔑ろにし愛人を作り、愛人の誘惑に負け妻を捨てたのだから自業自得だろう。
「旦那様、約束ですよ? 愛人なんか作っちゃダメですからね!」
どの口が言っているのか。
「当たり前だ! 私はお前を愛しているのだからな!」
前の愛人にも、同じ事を言っていたアンソニー。
前の愛人とミランダの違いは、前の愛人が精霊の加護を受けたジョアンナの力を信じていた事。
アンソニーの力ではないと、分かっていた。
まあ、普通なら少し付き合えば分かる。アンソニーなんかが、戦場の悪魔と呼ばれる程の器ではないことを。
「アンソニー様! 大変です! 隣国ゼラフが攻めて来ました!」
国境を警備していた兵が、邸の中まで報告に来るのは余程の事だった。
「何を言っている? ゼラフは、先月返り討ちにしたばかりではないか。」
確かにゼラフ王国は、アンソニーが返り討ちにしていた。というより、勝てないと踏んだゼラフのクーパー将軍は、早々に撤退したのだ。
そしてゼラフ王国へと向かっていた軍に、2週間前、密偵から精霊の加護を受けた妻をアンソニーが追い出したと聞き、そのままもう一度進軍して来たのだった。
「ゼラフ軍に攻撃を受け、国境を突破されました!」
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