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カイトが戻った

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 レノン様が処刑され、レノン様を自由に出入りさせていたエイリーン様は、修道院へと送られました。
 側室は私とハンナ様の2人になり、どちらかが王妃にとの意見が臣下達から出ているそうです。
 陛下はそのことを、先延ばしにしているようで、臣下達が私に説得を頼んで来ます。
 陛下からご寵愛を受けている私が、次の王妃になるだろうと思っているようです。
 陛下がこの事を先延ばしにしている理由は、分かっております。カイト様の事があるからだと思います。

 「カイトが見つかった。」

 そう言われた私は、複雑な気持ちでした。
 カイト様が生きていたと聞いた時は、すごく嬉しかったし、安心しました。
 それと同時に、カイト様はこの国に帰るつもりがないのだと知り、ホッとしていた。
 それは、陛下の側室になった事が原因ではありません。私の心の問題でした。
 あんなにも想っていたカイト様……今、私の心にいるのは、カイト様ではなくなっているからです。

 陛下は私が側室になってからも、ずっとカイト様を探してくださっていました。
 レノン様にアルビスがデシタニアでカイト様を見かけた事を聞いて、兵士達に探させていたようなのですが、カイト様は自らこの国へ戻って来たようです。
 側室が身内以外の男性と、2人きりになるのは禁止されているのですが、陛下は私とカイト様を2人きりにしてくださいました。


 「リサ様とカイト様を2人きりになさるなんて、よろしいのですか? 」

 ロベルトに言われ、リサとカイトを2人きりにするために、ルビーは部屋の外で待っていた。

 「リサの想い人は、カイトだ。リサが幸せなら、私も幸せだ。
 もしもリサが、カイトと逃げるという選択をしたら、お前が手助けをしてやってくれ。」

 「陛下……
 かしこまりました。」

 ロベルトはこんな日が来ることを覚悟していた。
 リサを側室にしたのは、ドレステードの国王の側室にしない為。
 誰よりもリサの事を考え、誰よりもリサを愛していた。



 「久しぶりだな。リサ。」

 平然と挨拶をするカイト。
 1年半も死んだ事にして行方をくらましていた事を、悪いとは思っていないようだ。

 「お久しぶりです。」

 自分の気持ちが変わってしまった事に負い目を感じ、カイトを責めることが出来ない。

 「約束通り、君の元へ帰って来た。
 まさか君が、陛下の側室になるとは……
 俺の事を待っていてくれなかったんだね。」

 私がの側室になるのは、想定外だったのですよね。
 カイト様が仕組んだ事なのに、私を責めるのですね。負い目を感じていた自分が、バカみたいです。

 「私が邪魔だったから、死まで偽装してお逃げになったのですよね。ドレステードの国王の側室にならなかった事は、カイト様の計画の邪魔になりましたか?」

 陛下はすでに知っているはず。
 私を傷付けないように、黙ってくれていた事も分かっています。

 「な、何を言っているんだ!?」

 アルビスからカイト様をデシタニアで見かけたと聞いた後、色々調べてもらいました。
 カイト様には、私以外に恋人がいたようです。

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