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レノンの思惑

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 「陛下、少しお休みになった方が……」

 リサが倒れてから、1週間が過ぎた。ロベルトは毎日リサに付き添い、看病をしている。
 そしてレノンは、毎日ロベルトに会いに来ていた。

 「……お前がどうしてここにいるんだ?」

 「私も、リサ様が心配なのです!
 あの香水……私も、他のご側室の方も、王妃様からいただいていました。もしかしたら、王妃様は私達全員を……」

 「なぜ、お前にまで香水を?」

 「お忘れですか? 私は、3人目の側室になるはずだったのです。」

 ロベルトには、そんな事どうでもよかった。誰が側室になろうが知った事ではない。リサ以外には、何の興味もなかった。

 「陛下、カイト様の件はどうなりましたか?」

  側室になるはずだった事を伝えても、何の反応も示さないロベルトに苛立ちを隠せないレノンは、別の話をする事にした。

 「兵士達が、行方を追っている。商人がカイトを見かけたのが3ヶ月前だからな……まだそこにいてくれたらいいが。」

 アルビスがカイトを見かけたのは3ヶ月前。3ヶ月かけてこの国に来たのだから仕方がない。
 話を聞いてすぐに兵士を向かわせたが、どんなに急いでもデシタニアまでは2ヶ月はかかる。
 カイトが5ヶ月もの間、デシタニアにいるとは考えにくかった。
 レノンがカイトの事を自分で話すとアルビスに言ったのは、ロベルトに近付く為だった。

 「探さなくても、いいのではありませんか?」

 「何を言っているんだ!?」

 「陛下は不器用過ぎます。リサ様がお好きなのですよね?
 それなのに、リサ様の想い人であるカイト様をお探しするなんて、お辛くはないのですか?」

 ロベルトはその問いに答えなかった。
 辛くないはずがない。だが、リサに幸せでいて欲しいという気持ちの方が勝っていた。
 カイトが生きている事をリサに話さなかったのは、カイトがこの国に帰ろうとはしていなかったからだった。リサの元へ帰ろうとはしなかったカイトを見つけ出し、理由を聞いたあとに生きている事を伝えるつもりだった。リサを傷付けたくなかったのだ。

 「リサと2人きりにしてくれ。」

 何を言っても、リサの事しか頭にないロベルトに、レノンは怒りを覚え、拳をギュッと握りしめた。

 「……はい。何かありましたら、いつでもお呼びください。陛下の為なら私……」

 「早く出て行け。」

 レノンが何を言おうと、ロベルトの頭にはリサしかいない。 
 部屋から追い出されたレノンは、思いきりくちびるを噛み締めた。くちびるの端から、真っ赤な血が滴り落ちる。

 「……せっかく邪魔な王妃もいなくなったのに、意識もないくせに陛下を独占するあの女、許せないわ!」

 全ては、レノンが仕組んだ事だった。
 あの日、香水を開けた時に香水を毒の入った瓶と入れかえていた。王妃は側室にも自分にも、あの香水を渡したのだから、リサにも渡すだろうと考えた。自分が王妃から貰った香水に毒を入れ、リサの香水と入れかえたのだった。
 予定外だったのは、香水が沢山あった事だが、瓶を開けた事により、開いてる香水を使わせる事に成功した。
 リサに捨てろと助言したが、リサは捨てずに使うだろうと予想していたのだ。
 レノンの思惑通り、王妃が犯人として捕まり、地下牢へと投獄された。レノンは見張りの兵を買収し、王妃に会いに地下牢へと行った。
 そして、必ず助け出すからと信用させて、差し入れを渡した。その差し入れには毒が入っており、王妃は亡くなった。

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