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17、始まり
しおりを挟む煌びやかな会場で、談笑する出席者達。
これから起こることを知る者も、知らない者も、皆笑顔を浮かべている。
その中に、カーターとその妻セシルの姿があった。カーターが他の貴族に話しかけようとしても避けられ、誰も関わろうとはしない。
長年勤めていた使用人を全員解雇し、前の妻を追い出し、娘も一切見かけることのなくなった邸に、結婚式も行われずに新しい妻を迎えたカーターをよく思っている者など噂が広がる前からいなかった。
「ずいぶん嫌われているのね。こんなのの妻だなんて、恥ずかしい」
無視されまくるカーターに、嫌味を言うセシル。デリード公爵の娘というだけの彼女と、関わりたい者なんて誰も居ない。彼女が平民の男性と遊び回っていることも、皆が知っていた。カーターだけでなく、セシルも嫌われていることに本人は気付いていないようだ。
カーターはセシルが哀れに見えた。自分は特別だとでも思っているのか、誰も挨拶をして来ないのはカーターのせいだと思っていた。
「セシル、来ていたのか」
会場に入って、初めて話しかけて来たのはデリード公爵だった。
「お父様もいらしていたのですね」
カーターの前とは明らかに違う態度。父親だというのに、セシルもデリード公爵を恐れているようだ。
「お久しぶりです、デリード公爵」
三人が集まっていたところに、ドーランド公爵が声をかけて来た。
「これはこれは、ドーランド公爵ではないですか! このような場所にいらっしゃるのは、久しぶりですね」
これまでドーランド公爵は、社交の場に顔を出すのを避けていた。デリード公爵がこの国の実権を握ってから、出来るだけ関わらないようにしていたからだ。
「今日は大切な知らせがあるとのことでしたので、出席した次第です」
「そうですか。久しぶりの社交の場です。楽しんで行ってください」
今まで出席しなかったドーランド公爵を怪しんでいたデリード公爵だったが、理由を聞いて納得した。
「ありがとうございます」
ドーランド公爵がこの場にいることを受け入れたデリード公爵は、これから起こることを知らないまま笑顔で夜会を楽しんでいる。
招待客が全て会場に入ったのを確認した近衛兵長は、会場の出入口や窓に兵を配置した。デリード公爵だけでなく、デリード公爵側の貴族を全て捕らえる為だ。
夜会の開始と同時に、それぞれの邸に同盟国であるガダルガ国の兵と味方になった貴族達の私兵が突入している。家族を邸に軟禁することにより、反撃されることを防ごうという考えだ。
国王が夜会の招待状を貴族達に送った際、ホルス王子はガダルガ国王に手紙を送っていた。その手紙を読んだガダルガ国王は、ホルス王子の為に兵を出していた。
全ての準備が整い、国王が壇上に上がる。国王の隣には、元気な王妃の姿があった。
「これは……どういうことですか!?」
どんな時も冷静だったデリード公爵が、初めて慌てた瞬間だった。
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