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7、行動開始
しおりを挟むホルス王子がこの国、ベルミードへと戻っていることを知るのは国王と王妃、ホルス王子の護衛ハリーと医師ドーグと看護師、信頼出来る兵士数人、そしてスージー。
クレアが生きている事を他の者に知られるわけにはいかないと、ホルス王子は王妃の部屋へクレアを連れて来た。そして王妃は自分が病にかかったことにし、医者が出入りしても不自然に思われないようにしていた。
「王妃様は、どちらにいらっしゃるのですか?」
「母上は、父上の部屋にいる。国王の部屋に無断で入る者など居ないはずだからね」
国王も王妃も、クレアを信じていた。幼い頃から聡明で、心優しいクレアがそんな事をするはずがない。クレアを救うことすら出来なかった自分達の無能さに、苦しんでいた。
お飾りでしかない国王は、残忍なデリード公爵に実権を握られ、何の決定権すら持っていないのが現状だった。
「クレアの身体が、傷や痣だらけだった理由は知っているか? クレアは拷問は受けていないと聞いた。それに、傷は何年も前からあるようなんだ。どうしてこんなに……」
それは五年間、カーター達から虐待された傷だった。傷が癒える間もなく殴られ続けたクレアの身体は、戦場の兵士よりも多くの傷を負っていた。
「それは、叔父であるカーター様と奥様、そしてカーター様のお嬢様のメリル様から、毎日毎日殴られた傷です。あの方達は、クレア様をドレイのように扱って来ました!」
「!?」
自分がいなかった間、クレアはそんな辛い目にあっていたのかと思うと、ホルス王子は言葉も出なかった。
「……クレア、守ってやれなくてすまなかった。これからは、君に指一本触れさせはしない!
君を苦しめた奴らに、何をしたのかきっちり思い知らせてやる!」
クレアの手を握る手に力がこもる。ホルス王子は、本気で怒っていた。
「……王家が無能なせいで、デリード公爵ごときに国を好きなようにされている。クレアのご両親も守れず、クレアまで失う所だった」
ホルス王子はクレアと離れた事を悔やんでいた。辛い時にそばに居てやれず、命まで失う所だったクレアに、どう償えばいいのか……
「クレア様は、ホルス王子様を恨んだりしていません。ホルス王子様がお帰りになる日を、ずっと待ち望んでいらっしゃいました。
ご自分を責めないでください。そのような事、クレア様は望んでおられません」
スージーはクレアが信じたホルス王子を信じていた。きっとクレアを救ってくれると。
「ありがとう。勇気が出たよ。
クレアの無実を証明し、この国を取り戻し、そしてクレアと結婚する!!」
ホルス王子はスージーにクレアを頼み、密かに城を出て行った。
「クレア様、お聞きになりましたか?
ホルス王子様は、クレア様とご結婚したいそうですよ。早く目を覚まさないと、ホルス王子様が悲しみますよ」
スージーはクレアの手を、強く強く握った。
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