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魔王に会いました。

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 「私の幸せを返して!!」

 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!!

 アリアは、何度も何度も短刀を突き刺した!

 「おまえ…聖女のくせに短刀で攻撃して来るとは…。くくくくっ!面白い!さすがプリシラの娘だ!」

 「何を言って…」

 ズバッ!

 「だが甘い。短刀などで、私を殺せるとでも思ったか?」

 アリアの身体は、センキの爪で貫かれていた。

 「目的は達した!後は好きにしろ。」

 臣下たちにそう言い残し、センキは1人、ヒダリヤ王都を飛び立って行った。

 センキはヒダリヤを出てすぐの森で、休む事にした。
 思ったより血を流していたようだ。
 木に寄りかかり、休んでいると、

 「あの…大丈夫ですか?」

 声をかけたのは、森にキノコを採りに来ていたリローナだった。
 リローナはセンキの元に駆け寄り、癒しの魔法をかけた。

 「おまえ…私が怖くないのか?」

 センキはどう見ても魔人だ…

 「…怖いです。ですが、ケガをしてる者を見捨てる事は出来ません。」

 先程までの人間と違う心優しきリローナに、センキは戸惑っていた。

 「おまえは、聖女なのか?」

 「はい…ですが力が弱く、傷を完全に治して差し上げることが出来ず…申し訳ありません。」

 「何故謝るのだ?聖女よ、名はなんと言うのだ?」

 15歳位の聖女…
 センキは名を確認せずにはいられなかった。

 「リローナと申します。」

 違った名に、センキは安堵していた。
 魔人である自分に、優しくしてくれた人間など今までいなかった。
 この子を傷つけなくて済む…それが嬉しかった。

 「果物をいくつか置いていきますね。では、私はこれで失礼します。」

 リローナはお弁当の為に持ってきていた果物を置き、去っていく。

 「リローナ…私の名はセンキだ。また縁があったら会おう。」

 リローナは振り返り、笑顔を見せた。
 醜い顔…のはずなのに、センキの目にはリローナの笑顔がとても美しく映った。

 「リローナ…か。」

 そう言うと、センキはリローナの残した果物を持ち、魔王城へと飛び立って行った。


 リローナが森で採れたキノコを持ち、お爺さんの家へと戻ると、アーロン王子が来ていた。
 アーロン王子は、あれから毎日来ている。
 リローナの涙を見た時、その涙があまりにも綺麗で…アーロン王子はリローナに一目惚れをしていたのだ。

 「アーロン王子、またいらしたのですか?」

 リローナの、『また』 という言葉にも負けず、アーロン王子は答える。

 「リローナに会うためなら、何があろうと毎日来る!」
 
 言い切るアーロン王子…そんなアーロン王子に、少しづつだが、リローナは心を開いていった。

 「大変です!!!」

 そこへ、息を切らした兵士がアーロン王子の元にやって来た。

 「なぜここが分かったのだ!?」

 アーロン王子は、護衛を巻いたと思っていたのか、かなり驚いている。

 「王子の居場所など、すぐに分かります!彼女に会いに来たのでしょう?」

 「う、うるさい!会いたいのだから仕方がないだろ!」

 アーロン王子は、皆にリローナの話ばかりしていた。
 毎日リローナに会いに行っていることを、知らない者などいなかった。

 「あの…大変とは?」

 話が進みそうになかったので、リローナは聞いてみた。

 「あ、そうでした!大変なんです!」

 「だから何が大変なのだ?」

 ようやくアーロン王子も、話を聞く気になったようだ。

 「ヒダリヤ国が魔王軍に襲撃され、壊滅しました!」

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