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本当は…
しおりを挟む「なぜですか!?」
アレックスには、理由がまるで分からなかった。
「なぜだと!?私がお前を王子の身分に戻すのに、どれだけ苦労したと思っているのだ!?お前はこの国の王になるのだ!王妃が顔を見せられぬ程醜いだなどと、あってはならん!」
「親父……父上はお忘れになったのですか!?ご自分が先王にされた事を!愛する人と引き裂かれる事が、どんなにつらいか分かってくださると思っていました!」
「な!?……それは……」
「キャシディと結婚できないのならば、私はこの国を去ります!」
「わ、分かった!分かったから、とにかくその娘を連れて来い!」
王はアレックスに言われたことを考えていた。自分が先王と同じ考えかたをするようになっていた事に愕然とした。だがこのままでは、アレックスが王になる事を反対する者が増えてしまうだろう。
「私はどうすればいいのだ……!?」
王の問いに答えてくれるものなどいなかった。
「陛下、ホワイト伯爵のご令嬢、キャシディ様が謁見を求めております。」
「何!?アレックスと共にではなく、1人で私に会いに来たのか!?……通しなさい。」
キャシディは覚悟を決めて王に会いに来た。
「話はアレックスから聞いている。その話で来たのだろう?」
「はい。私の事をお話したくまいりました。私は幼い頃病にかかり、顔に酷い痕が残りました。その事で、アレックス様の足枷にはなりたくないのです。」
キャシディは顔に巻いてある包帯を外し始めた。
「その痕を見せに来たというのか!?」
「いいえ……」
パサッ
包帯を外し終えたキャシディは、王の顔を真っ直ぐに見た。
「な……!?どういう事なのだ!?」
王はキャシディの顔を見て驚いた。なぜなら、包帯を外したキャシディの顔には痕などなかったからだ。
「3年ほど前に、痕は全てなくなっていました。」
「……それならば、なぜ包帯を巻いていたのだ!?」
「怖かったのです。ずっと顔を隠して来たのに、今更顔を出して……それでも恐れられ嫌われたらと思うと、包帯を外す勇気がありませんでした。」
「外す勇気を与えたのは、アレックスというわけか。」
「はい。アレックス様に、私の心は救われました。あんなに真っ直ぐに私の顔を見てくれた方はいませんでした。」
「そうか。アレックスのあの様子だと、この事はまだ知らないのであろう?それならば、婚約発表まで包帯を巻いていて欲しいのだが……頼めるか?これは、アレックスの為だ。」
アレックスとキャシディの結婚に、なんの障害もなくなったことに安堵した王は、これを機にアレックスの敵になりそうな者を排除しようと考えた。
「仰せのままにいたします。」
王の意図はキャシディには分からなかったが、アレックスの為になるのならと承諾した。
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