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カレンの本気

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 両親とカレンには、シオン様と結婚した事を手紙で伝えました。
 シオン様に、なるべく実家には近寄らない方がいいと言われ、私もそう思ったからです。
 ですがカレンは、堂々とこのお邸へと乗り込んできたのです。

 「奥様、カレン様がいらっしゃっています。」

 メイドのその言葉に、私は驚きのあまり目を見開きました。
 シオン様がお出かけになっていて、留守なのも分かっているのでしょう。
 あの日、カレンは私に宣戦布告をして来ました。
 カレンはきっと、汚い手を使ってくるでしょう。

 きっとまだ、カレンはシオン様が好きなはずです。シオン様を奪う気なのでしょうか?
 ですが、ずっと追いかけていたのに相手にされなかったカレンが、今更シオン様を誘惑した所で、なびかないのは分かっているはず……
 
 このまま会わないという事も可能でしたが、それではカレンが何をしたいのか分からないまま。
 私は覚悟を決めて、カレンに会うことにしました。
 もしかしたら、自分で持ってきた毒を飲んで、私に殺されそうになったと言われるかもしれないので、メイドに飲み物や食べ物を一切出さないように言いました。(前回は、それで罪を着せられました。)

 「カレン、よく来たわね! いきなり結婚なんて、驚いたでしょう?」

 「白々しい……そんな演技はしなくていいわ。わざわざ、リュード公爵が留守の時に来ているのだから、本音で話しましょう。」

 これがあの、可愛かったカレンなのでしょうか。
 私もまんまと騙されていました。

 「どうして、リュード公爵があんたなんかと結婚したの? 脅した?」

 シオン様が私を好きになったとは、素直に思えないのでしょうか。

 「あなたじゃないんだから、そんな事しないわ。」

 「私の事、よく分かっているみたいじゃない。どうして? あんたはずっと、私の演技に騙されていたわよね?」

 鋭い……   

 「残念ながら、あなたに騙されていたわけじゃなくて、騙されていたフリをしていただけよ。
 あなたの演技、臭いのよね。」

 本当は、カレンの演技は完璧だった。
 私は断罪されるあの日まで、カレンを信じていたのだから……

 「そう、それならこれからは堂々とあんたを苦しめる事にするわ。今日はそれを言いたかっただけだから、失礼するわ。」

 そう言って、カレンは帰って行きました。

 堂々と苦しめるって……
 どうしてカレンは、わざわざそんな事を言いに来たのでしょう?
 シオン様が私と結婚した事が、そんなに悔しかったのでしょうか……

 翌日から、カレンからの嫌がらせが始まりました。

 「……っ!!」

 服を着ると、激痛が走りました。
 その服の裏には、カミソリが仕込まれていました。切れたのはほんの少しですが、肩からは真っ赤な血が流れてきます……

 どうやらカレンは、この邸の使用人を味方につけたようです。

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