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特級

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 思うよりも先に、体が動いていた。

 ぱあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 リーアの体から光が立ち上り、それと同時に光の鎖がキマイラの体を拘束した!

 「大丈夫か!?」

 隣のグーゼの間から、特級3級クラスのモーラ先生が顔を出した。

 「だ、大丈夫かじゃありません!どうしてこんな事になっているのですか!?」

 「すまないすまない。キメラと間違えてキマイラを召喚しちゃった。ほら、名前似てるから。ははッ。」

 嘘だ。あのレベルの魔物を呼び出すには、それ相応の力を使うはず。キメラとキマイラではレベルが違いすぎるから直ぐに気づくし、何より私が封印するまで助けにも来なかった。

 「おっ!一般クラスなのにキマイラを封印するやつがいるなんて!あんた名前は?」

 「……リーア・シュバインです。」

 「リーアか。あんたは明日から特級3級クラスね。寮に戻って荷造りしたら、特別寮に来なさい。」

 「リーアが特級3級!?」「うそ…」

 クラスメイト達の驚きの声、そして、

 「な、なんでよ!?リーアはもうすぐこの学院を追い出されるのよ!?特級なんてありえない!」
 
 シアは自分を救ってくれたことには触れず、リーアの特級昇級を抗議した。

 「あんたは貴族?」

 モーラ先生は、シアに問いかけた。

 「そうよ!伯爵令嬢よ!」

 「伯爵令嬢か。それなら、聖女の階級も詳しいはずだろう?特級3級クラスは侯爵と同じ権限を持つ。あんたがそんな口を聞いていい相手ではない。口の利き方も知らないガキは黙ってろ!」

 モーラ先生の言葉に、シアは言葉を失った。

 モーラ先生に言われた通り、荷造りして特別寮へとやって来たけど…豪華過ぎて落ち着かない!
 待合室で待っていたら、モーラ先生が迎えに来て、部屋へと案内された。

 部屋に着き荷物を下ろすと、疑問に思ってたことを聞いてみる事にした。

 「先生、なぜキマイラを召喚したんですか?」

 モーラ先生は、聞かれることが分かっていたのか、ソファーに座り話し出した。

 「やっぱり気づくよな。あんたを試した…ただそれだけだ。」

 「試したって…あんな危険な事して、なにかあったらどうするつもりだったんですか!?」

 「まあ、例えあんたが封印をしなかったとしても、誰かに触れる寸前で封印が発動するようにはしていたんだが、危険な事には変わりないな。謝るよ。」

 「どうして私を試したのですか?」

 素朴な疑問だった。

 「前からあんたが力を隠していたことには気づいていた。それと、昨日のあんたと伯爵令嬢のやり取りを見たからかな。」

 ああ…もう…色んな人に知られてるんだ。

 「私も平民出身だから、あんたを他人事には思えなかった。それに、なぜ力を隠しているのか気になっていたからな。」

 「どうして私が力を隠しているのが分かったのですか?」

 マリヤ様にもバレていたんだから、他の人にバレていてもおかしくはないけど……。

 「それは私の能力が関係している。私の力は、他の力をオーラで感じることができる。あんたのオーラは凄まじかったからな。」

 オーラ…マリヤ様にも同じ力があったのかな。

 「で?なぜ力を隠していた?」

 平凡な暮らしをしたかったから、力がある事に気づいても隠してきたが、姉の病を治すためにこの学院に入ったことをモーラ先生に話した。

 「お姉さんの病を治すためなら、特級クラスで勉強した方がいい。私があんたの癒しの能力を最大限引き出してやる。」

 「本当ですか!?」

 モーラ先生のおかげで特級クラスに入れ、お姉ちゃんの病を治す力を得られるかもしれない。待っててお姉ちゃん!必ず治してみせる!

 翌日学院へ行くと、全てが変わっていた。



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