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さようなら
しおりを挟む「だからなんだと仰るのですか?」
「だから、俺は君を愛し……」
「バカですか? それに、先程の質問に答えてもらっていません。愛人は何人いらっしゃったんですか?」
愛している?
そんな事をよく言えますね。
100歩譲って……いいえ、10000歩譲って、愛し過ぎて抱けなかったというのは分かりました。ですが、愛人を何人も作っておいて、許されるとでも思っているのでしょうか?
「……分からない。」
つまり、分からないほどいるのですね。
もう帰りましょう……ここに居ても、仕方ないわ。
「待ってくれ!」
ガシッと右の手首を掴まれた。
「離してください。二度とライナス様の顔を見たくありません。」
ライナスは離そうとはせず、掴む手に余計に力を込めた。
「君じゃないとダメなんだ。婚前契約さえなかったら、絶対に離婚などしなかった! もう一度、やり直そう!!」
ガシッ!!
私の手首を掴んでいたライナス様の腕が離れ、
「イテテテテテテッ!!」
ライナス様の腕を、とても美しい男性がひねりあげていました。
「いい加減にしろ。見苦しいぞ。」
「な、なんだお前は!? 関係ないやつは、引っ込んでろ!!」
「関係なくはないぞ? なあ、レイチェル。」
「ロディアル様……!?」
男性の名前は、ロディアル・クーパー。クーパー侯爵の三男で、私の初恋の人です。
ロディアル様とは幼い頃によく遊んでいたのですが、10歳になると他国に留学してしまい、それ以来会う事はありませんでした。
「いつ戻られたのですか?」
「先週戻って来たんだ。両親が結婚しろってうるさくてね。君が離婚したと聞いて邸に行ったら、お茶会に出席してると聞いて、迎えに来たんだ。」
お会いしていなかった9年間で、こんなに素敵に成長したんですね。前は私より小さかった。
でも面影は残ってる……銀色の髪に吸い込まれそうなほど綺麗な青い瞳。
「おいッ! 俺を無視するな! 手を離せ!!」
「あ、ごめんごめん。」
ロディアルはライナスの手を離した。
「じゃあ、帰ろうか。邸まで送るよ。」
「はい。」
レイチェルとロディアルは、出口に向かって歩き出した。
「レイチェル!! 俺以外の男と楽しそうにするな!!」
ブチッと何かが切れた音がしました。
「はあ!? あなたは何様!? そんな事言う権利、ライナス様にはありません!
あなたは何人もの愛人を作っていたのに、私は話す事すら許さない!? そもそも、私達は離婚したんですよ! り・こ・ん!!
あなたとは、もう何の関係もありません! さようなら!!」
「ぷッ!! 君は変わっていないな。」
ライナス様のせいで、ロディアル様に笑われちゃったじゃない!!
「変わりましたよ。こんなに美しくなったじゃないですか!」
「確かに、綺麗になった。」
……それはずるいです。
キュンてしちゃうじゃないですか。
「レイチェルううう……」
ライナスは膝から崩れ落ち、去って行くレイチェルを見つめながら涙を浮かべていた。
「ライナス様、私がいるじゃないですか!」
マリーはまだまだ、諦めていなかった。
「お前など知らんしいらん!!」
その様子を見ていた貴族達は、とても冷ややかな目をマリーに向けていた。
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