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21、刑の執行

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 ビクトリア、バーバラ、ジョアンナ、そしてジョゼフの取り調べが行われていた。
 ビクトリアは全てを素直に自供したが、他の三人は違っていた。

 
 「私は悪くありません! ジョアンナが、私を騙して全てをやらせたんです!」

 バーバラは、全てをジョアンナのせいだと言い張っている。たとえジョアンナにそそのかされていても、自分がワイヤット侯爵家の血を引いていないことは自覚していた。侯爵家の血を引いていないのにもかかわらず、自分はワイヤット侯爵家を継ぐのだと言っていたのは事実だ。侯爵家を乗っ取る意思があったことは明白だ。バーバラの自供がなくても、証拠は揃っていた。

 「エミリーに会わせて下さい! きっと誤解がとけます! 私は、エミリーの義姉ですよ! エミリーは、キーグル公爵の姪なんです!」

 あれほどバカにしていじめていた相手を、自慢気に自分の義妹だというバーバラ。取り調べをしている兵士も、ウンザリしていた。

 「自分の立場が、分かっていないようだな。お前がしたことは大罪だ。そのような態度でいれば、お前自身が、後悔するだけだ」

 取り調べをしている兵が、何を言ってもバーバラは態度を変えることはなかった。そして、バーバラの刑が決まった。

 「お前には、反省の色が見られない。隣国へ、奴隷として送ることとする」

 この国には奴隷制度がない為、隣国に奴隷として送られることになった。奴隷の扱いは、雇い主に一任される。毎日倒れるまで働かされ、食事は一日一食与えられればいい方。たとえ体罰で殺してしまっても、罪に問われることはない。この国で、処刑の次に重い刑だった。

 ビクトリアは罪を認め自供したことで、バーバラよりも軽い刑に決まったのだが、娘と同じ奴隷にして欲しいと自ら申し出た為、母娘二人で隣国に奴隷として送られることになった。

 隣国へ向かう馬車の荷台には、鉄で出来た檻が乗せられている。その中に二人は入れられて、晒されながら隣国まで連行される。

 「お母様、私達はどうしてこんなことになってしまったの? 創立記念パーティーの日までは、あんなに幸せだったのに……」 

 「欲を出してしまった私達が悪いのよ……」
  
 もう二度と戻ることのない幸せだった日々を思い出しながら、檻の中に入る。
 馬車が出発すると、罪人の輸送を一目見ようと集まった国民達が大勢待っていた。

 「侯爵家を乗っ取ろうとした悪女よ!」
 「エミリー様に酷いことをして来た報いを受けろ!!」
 「あの女達、偉そうで最初から気に食わなかったのよ!」
 「欲をかいたばっかりに、豪勢な暮らしから奴隷に真っ逆さまに落ちるなんて笑える」

 隣国に着くまで国民から罵声を浴びせられ、隣国に着けば奴隷の仕事が待っている。馬車が王都を出る頃には、あれほど強気だったバーバラの顔から笑顔が消え、生きる希望が消え去っていた。



 ジョゼフもまた、バーバラに騙されたと主張し続けていた。ジョゼフはバーバラがワイヤット侯爵家の血を引いていないことを知らなかったのを考慮し、国の南にある小さな島へと送られることになった。
 ジョアンナもまた、バーバラのせいだと主張し続けていたが、そそのかした罪は重く、ジョゼフと同じ島に送られることになった。
 二人が送られる島は、島全体が監獄になっていて、そこにジョゼフは十年、ジョアンナは十五年収監されることに決まった。

 モード侯爵も、フラン子爵も、罪を償って二人が島から出て来たとしても、受け入れることはないだろう。
 戻っても、誰も待っていてはくれないという現実を受け止めながら、高い壁に囲まれた外の見えない監獄の中で反省し続ける日々が待っていた。

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