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悲しい別れ
しおりを挟む「シエルは私の妻だ。幼なじみだからといって、やっていい事と悪い事がある。」
「ウォルシュ様……」
「じょ、冗談だよ! じゃ、じゃあまたな!」
キール様はウォルシュ様に見つかった事で、そそくさと逃げていきました。
「帰るぞ。」
「……はい。」
帰りの馬車の中で、一言も話さなかったウォルシュ様。嘘の妻でも、あんな事されたらいい気はしないですね。はぁ……もう、嫌われたかも。
あれから一ヶ月……ウォルシュ様とは気まずいまま、月日だけが過ぎていく。
もっと私がしっかりしていれば、ウォルシュ様を嫌な気分にさせることはなかったのに……。いくら後悔しても、時は戻せません。こんな状態なのに、ウォルシュ様への気持ちはどんどん募って行く。結婚してからまだ一年も経っていないのに、愛していないフリが辛くなっていました。
ウォルシュ様は私をなんとも思っていないのは分かっているのに、彼に触れられると、愛されているような錯覚を起こしてしまう。
今日は週に一度のあの日。彼に触れられるのが怖い。気持ちが溢れ出してしまいそうで……
「すぐにすませよう。」
その言葉を聞いた私の目には、涙が溢れ出していました。
……私は思い上がっていました。私に触れる手が優しかったから、私を見つめる目が切なかったから、私のことを感じてくれていると思っていたから……少しだけ、少しだけでも、私を想ってくれているのかもと。
もう、涙を止めることは出来ませんでした。
「シエル……? すまない。そんなに嫌だったのだな。」
!? 違う!!!
そう伝えたいけど、言葉が出ない。
たとえそう伝えたから、何?
彼にとっては、どちらでも変わりはない。
私が嫌がっていようと、愛していようと、彼にはどうでもいいこと……
「……もう、終わりにしよう。」
終わり……って?
「嫌な思いをさせて、すまなかった。別れよう。」
ウォルシュはそう言うと、寝室から出て行った。
い……や……いやだ……なんでこんな事に……?
どうして我慢しなかったのよ……バカ……私のバカ……
寝室で一人、朝まで泣き続けました。
朝食の時間になっても、ウォルシュ様が現れることはなく、テーブルの上に彼がサインした離縁の書類が置いてありました。
こんなにも簡単に終わってしまうのですね。私の気持ちは、ウォルシュ様にとっては重荷でしかない。最初から分かっていたのに……。
私はウォルシュ様の嫌がることはしないと決めて結婚しました。だから、この離縁も受け入れます。
荷物をまとめ、書類にサインをし、最後に本当の気持ちを伝えようと手紙を残し、邸を出ます。
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