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お茶会

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 バークリー侯爵の邸へと向かう馬車の中で、ウォルシュ様は一言も言葉を発しませんでした。
 昨日の夕食では会話出来たのに、何だか残念です。……って、ダメですね。ウォルシュ様に何かを期待してはダメ。ウォルシュ様が望まない事はしないと決めて結婚したのだから、少しのことで気持ちがブレたらいけないわ。
 シエル! しっかりしなさい! この先何十年も、ウォルシュ様と一緒に過ごす事が出来るのだから、それだけで満足じゃない!

 馬車はバークリー侯爵邸へと到着し、お茶会の会場へと向かう。

 「シエル! ウォルシュ! 良く来てくれたね。会うのは随分久しぶりだ。また3人で会えて嬉しいよ!」

 キール様が出迎えてくれました。

 「久しぶりだな、キール。」

 「お久しぶりです、キール様。お変わりありませんでしたか?」

 「君達の結婚式に出席出来なくてすまなかった。」

 キール様は先月他国から帰国したばかりで、結婚式をした日は他国に留学していました。

 「気にしないでください。それより、ハンナ様はまだいらっしゃっていないのですか?」

 ハンナ様は、キール様と5年前に婚約をしました。とても穏やかな方で、仲良くなれそうな気がします。

 「ハンナは今日は来れないんだ。」

 「そうなんですか? お会いしたかったから、残念です。」

 「そういえば、父がウォルシュに会いたがっていた。何か話があるみたいだ。」

 「そうか。分かった。バークリー侯爵はどちらに?」

 「先程までその辺にいたんだが……邸の中を探してみてくれ。」

 ウォルシュ様はキール様に言われた通り、邸の中へとバークリー侯爵を探しに行きました。

 「それにしても、びっくりしたよ。まさか、シエルがウォルシュと結婚するなんて。」

 キールはウォルシュが座っていた席に移り、シエルのとなりで話し出す。

 「私もびっくりしました。」

 「そうだよな。君は俺が好きだったのに、ウォルシュじゃ役不足だろうな。」

 え……? 今なんて?

 「あの……」

 「すまなかった。ハンナとの婚約を親が勝手に決めた事で、君を傷つけて。お互い相手が出来てしまったから、これから内緒で付き合わないか?」

 キール様はいったい何をおっしゃっているのでしょう? キール様って、こんな方だったかしら?

 「私、傷ついてもいませんし、キール様に特別な感情を抱いた事もありません。何か勘違いをされているようですね。」

 「隠さなくてもいい。俺は君が好きだ。」

 見えないように、テーブルの下で太ももを撫でるキール。

 「ちょッ!!?」
 「おいッ!!」

 私が声を発したのと同時に、怒ったようなウォルシュ様の声が聞こえました。



 
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