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15、変わり始めたクラスメイト
しおりを挟むダンスパーティーが終わり、いつもの学園生活へと戻ったのだけれど……
「ディアム様とのダンス、素晴らしかったです!」
「もしかして、お二人は付き合っていらっしゃるのですか?」
今まで関わろうとして来なかったクラスメイト達に、なぜか囲まれている。
「あの……」
オリビア様とエリック様の婚約は、陛下に許可を得たものではなかった。勝手に婚約をすると宣言したことで、エリック様と一緒にまた停学処分になってしまった。そんなオリビア様の目を、クラスメイト達は気にするのはやめたようだ。それでも、急に変わったクラスメイト達に戸惑う。
「レイチェル様のことを、もっと知りたいです!」
「父から聞いたのですが、レイチェル様は王妃様にそっくりだとか。王妃様に似ているなんて、羨ましいです」
それを聞いた瞬間、そういうことかと納得がいった。昨日のダンスパーティーで、私を見た貴族達が驚いていたのを思い出す。
似ているからといって、まさか私とオリビア様が入れ替わっているとは思わないだろうけれど、この噂はすぐに広まるだろう。そして、母にも届く。
噂が広まってしまったら、母が大人しくしているとは思えない。けれどまだ、私達が入れ替えの件を知っていることを気付いてはいないだろう。
どちらにしろ、今まで以上に用心しなければならない。
「ちょっとちょっと! みんな、何なのよ!? 今まで関わろうとしなかったくせに、今さらレイチェルと仲良くしようだなんて図々しい! 王妃様に似ているから何? オリビア様とレイチェルが入れ替わっているとでも言いたいの?」
デイジーから飛び出した言葉に、私とディアム様の心臓が飛び跳ねた。デイジーは何も知らない。危険に巻き込みたくなかったから、話さなかった。何も知らないからこそ、素直に思ったことを口にしたのだろう。
「デイジーったら、そんなわけないじゃない。王妃様にも、オリビア様にも失礼よ。お昼休みが終わってしまうから、お昼を食べに行きましょう!」
必死に平静を装いながら、私とディアム様でデイジーを屋上へと連れ出す。
ダニエル殿下との待ち合わせ時間にはまだ早かったけれど、あのまま教室にいられるほど冷静ではいられなかった。
「どうしたの? お昼休みは、まだ始まったばかりじゃない」
これ以上、無自覚に確信をつかれる前に、デイジーにも全てを知ってもらうことにした。
「デイジーに、黙っていたことがあるの。実はね、さっきデイジーが言ったことはあっているの」
デイジーは自分が言ったことを思い出すように、考え込む。
「……えぇーーーっ!!」
デイジーが目を見開いて驚いたところで、ダニエル殿下が屋上に来た。
殿下に事情を話し、デイジーに全てを話した。デイジーは驚いていたけれど、オリビア様が王女ではないことを喜んでいるように見える。
「また復讐が出来るのね……ふふふっ……」
今まで見た中で、一番悪い顔になっている。オリビア様にされたことを、相当根に持ってるようだ。
「デイジー嬢、ありがとう。レイチェルの友人になってくれたそうだな。仲良くしてくれて、感謝している」
「とんでもありません! 私の方こそ、感謝しています!」
気のせいか、殿下を見るデイジーの瞳がキラキラしているように見える。
「これからも、レイチェルを頼む」
「もちろんです!」
殿下が微笑むと、デイジーの瞳はさらにキラキラと輝いた。どうやら、デイジーは殿下に恋をしているようだ。
「ごめんね、デイジー。こんなことに巻き込んでしまって……」
このことを知っているというだけで、デイジーが危険になるのは避けられない。それだけでなく、私と一緒にいること自体が危険かもしれない。
「謝るなら、今まで私に黙っていたことを謝って欲しい。私は、レイチェルを親友だと思っているわ。隠し事なんてされたら、悲しい」
デイジーを危険に巻き込みたくないということばかり考えていたけれど、肝心のデイジーの気持ちを考えられていなかったのだと反省した。
「隠していてごめんね」
「私を、守ろうとしてくれたのよね。分かってる」
私は本当に、恵まれていると思う。
「デイジーが危険になるかもしれないなら、殿下が守るのはどうだろう? 殿下はもうすぐ卒業だ。殿下とデイジーがそういう仲だと噂になれば、デイジーに会いに来ても違和感はないと思う」
ディアム様、ナイス!
デイジーはまた瞳をキラキラさせながら、殿下を見ている。
「そうか……私が、デイジー嬢を守ろう。それで、構わないか?」
「はい! もちろんです!」
嬉しそうなデイジーの様子を見れば、殿下に恋をしているのは一目瞭然なのに、殿下だけはその気持ちに気付いていないようだ。
殿下が守ってくださるなら、デイジーも心配いらない。
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