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  第五章 謝れと言われました



 マーカスのおかげで、昨日はぐっすり眠る事が出来た。ベッドが無いので少し体が痛いけど、いつもの事だ。
 相変わらず水しか出されないであろう朝食をとりに、食堂へ行き、テーブルに着く。叔父と叔母、そしてロクサーヌは、楽しそうに雑談しながら私の前で豪華な朝食を食べている。
 一緒のテーブルに着いているのに、誰一人私を見ようともしない。私の前に置かれたグラスの中の水には、私自身の顔が映し出されていた。水面に揺れる自分の顔を見ながら、苦痛でしかない朝食の時間を過ごす。
 朝食の間、私は声を出す事も音を立てることも許されない。息を殺しながら、叔父達が食事を終えるまでじっと待つだけだ。
 苦痛な時間を終え、馬車に乗り込み、学園へ登校した。学園に行けば、また悪口の嵐が待っている。
 それでも、息を潜めてビクビクしながら過ごさなければならない邸に比べれば、レイチェルとレイド様のいる学園は天国のように思えた。
 学園に到着すると、デリオル様が門の前に立っていた。相変わらず沢山の令嬢達に囲まれている。顔しか取り柄が無いデリオル様が、どうしてこんなにモテるのか疑問だ。
 ロクサーヌを待っているのだろうか? そう思いながら、馬車から降りてデリオル様の横を通り過ぎようとした。

「挨拶くらいしろ」

 デリオル様はそう言って私の前に立つと、通さないと言わんばかりに道を塞いだ。
 もう私に関わらなければいいのに、どうして話しかけてくるのだろうか。

「おはようございます」

 これ以上絡まれるのも面倒だから、挨拶くらいはしてあげる。そのまま歩き出そうとすると私の腕を掴んで、デリオル様がさらに続けた。

「なぜ、俺を裏切った?」

 その言葉、そのまま返してさしあげたい。裏切ったのはデリオル様の方だ。
 義理とはいえ、妹のロクサーヌを選んだ。自分がしたことをかえりみず、何故私ばかりを責めるのだろうか。
 それに、私が本当にレイド様と何かあったとして、今更なんだと言うのだろうか。もう婚約者でもなんでもないのに、責められる意味が分からないし、デリオル様にはそんな資格はない。
 自分のした事を棚に上げて、私に謝罪しろとでも言いたいのだろうか……
 心の中でそう思っていても、無害な令嬢を演じ続けなければならないから口には出せない。
 内心の反感を悟られないように、私は静かに口を開いた。

「裏切っていません。離して下さい」

 そう言うと、私の腕を掴む手に更に力がこもった。私の言葉など、最初から信じていないと言わんばかりだ。

「ロクサーヌを散々いじめてきたくせに、浮気までしていたのか!? 謝れ! 地面に両手をついて謝れ‼」

 腕を思い切り引っ張られ、地面に引き倒される。打ち付けた左手の手首がジンジンするが、痛いと訴えたところで激高したデリオル様に嘘をつくなと言われるだけだろう。
 これ以上刺激しないよう、ゆっくりと見上げると、怒りで顔を真っ赤にしたデリオル様が私を見下ろしていた。
 そこに、この状況とは不釣り合いな甲高い声が響き渡った。

「デリオル様! 私を待ってて下さったのですか? あら、お義姉ねえ様? 地面に這いつくばって、何をなさっているの?」

 今登校して来たロクサーヌは、私の様子を見ても平然としている。そして誰も、ロクサーヌのそんな様子をおかしいとは思っていない。確か私がロクサーヌをいじめていたという設定なのに、まるでそんなことはどうでもいいみたいだ。

「ちょうどいい。ロクサーヌも来たことだし、俺達二人に謝ってもらおうか」

 デリオル様もおかしいとは思わないのだろうか。先程、『ロクサーヌを散々いじめてきた』と言っていたのに、私を見ても怯えもしないロクサーヌの事を信じているというのか。違う。
 デリオル様の目には、『裏切った』私の姿しか映っていない。本気で私が浮気をしていたと思い込んで、怒りで周りが見えなくなっている。そんなに謝って欲しいなら、いくらでも謝ってあげる。
 だけどそれは、悪いと思っているからじゃない。
 もう二度と、デリオル様と関わりたくないからだ。
 私が地面に倒され、地べたに這いつくばっている姿を見ながら、周りにいる令嬢達はクスクスと笑っている。
 私があなた達に、何をしたというのだろうか。こんな姿を、こんなふうに笑われなければならない程の罪を犯したのだろうか。
 笑いたければ、笑えばいい。
 こんなことで、私は負けたりしない。
 こんなことで、私の心は折れたりしない。
 私は両手を地面につけ、ゆっくりと頭を下げた。

「……申し訳……ありませんでした……」

 頭を下げてもなお、令嬢達の笑い声は聞こえてくる。私は頭を下げたままそれに耐え続ける。プライド? そんなもの、両親が亡くなった時に捨ててしまった。叔父夫婦の機嫌を損ねないように生きてきた私に、プライドなどという大層なものは残っていない。
 デリオル様はそんな私の姿を見て満足したのか、何も言わずにロクサーヌと一緒に校舎に入って行った。私は下げていた頭を少し上げ、周囲の様子をうかがった。ロクサーヌは、終始ニヤニヤしていた。
 それを確認した私はようやく立ち上がると、服についた土をはらった。
 これで、今日の夕食の席でロクサーヌに文句を言われる事はないだろう。今日の事を、叔父達に嬉しそうに話すに違いない。私の不幸話をしている間、私自身はゆっくり食事を味わう事が出来る。
 あと少しの我慢だが、その『あと少し』が辛い。
 ……なんて、弱気になっちゃダメ! 強く生きなくちゃ! 教室に行くと、昨日よりも聞こえよがしな悪口が増えていた。
 耳に入らないフリをして、自分の席に座り教科書を開く。本を読むフリが出来れば良かったけれど、本なんて買うお金がない。

「あれ見た? 地面に這いつくばるなんて、プライドはないのかしら?」
「見た見た! デリオル様とロクサーヌに謝っていたのでしょう? 自業自得ね!」
「あの子、生きてる価値あるのかしら? 死ねばいいのに」

 お父様やお母様と一緒に、事故で死んでいたら良かったと思った事は何度もある。
 どんなに辛くても、誰かに話す事も相談することも出来なかった。叔父達に気に入られようと努力もして来た。どんなに頑張っても、こんなふうに言われてしまうなら、私はどうすれば良かったの? 
 私の気持ちを、理解して欲しいなんてもう思わない。私が嫌いなら、それで結構。
 生きてる価値? そんなもの、生まれて来た事そのものよ! と言いたいけど、我慢我慢。
 悪口にどんどん拍車がかかり、それだけでは飽き足らず……バシャッ……と、バケツの水を頭からかけられた。
 水をかけられる気配は感じていた。だけど、抵抗するわけにもいかない。大人しく、水をかけられるしかなかった。ビショビショになりながらも、そのまま教科書を読み続けた。

「何あれ……」
「ただの水じゃなくて、泥水にすればよかったな」
「やだー! 床がビショビショじゃない。本当に疫病神やくびょうがみだわ」

 私が何かしても、何もしなくても、結局は悪口を言われるみたいだ。
 レイド様が教室に入って来ると、私の姿を見てギョッとした。そのまま近付いて来て、私の手を引いて教室を出る。
 ……これって、昨日と同じ? そう思ったけど、昨日とは全然違う。
 レイド様は、怒っているようだ。それも、ものすごく……

「あの……レイド様、ごめんなさい!」
「何で謝るんだ?」

 そう言いながらも、レイド様は足を止める気はないようだ。

「怒っていらっしゃるようなので……」
「あんたに怒っているわけじゃない」

 そう言われても、私のせいで怒っていることくらいは分かる。それ以上、何も言うことが出来ないまま、レイド様に手を引かれ連れてこられた場所は、生徒会室だった。

「どうして、ここに……?」

 レイド様はノックもせずにドアを開け、中に入って行く。

「お待ち下さい! どのようなご用件でしょうか?」

 部屋の中に居た生徒会の女子生徒が、レイド様の前に立ちふさがると、レイド様は一旦足を止めた。

「彼女に合ったサイズの、新しい制服を出してくれ。それと、タオルも頼む」

 頼んでいる態度ではないような……
 生徒会室に、制服があるとは思えないけど、どうしてここに来たのだろうか。

「それは、生徒会長の承諾がないと……」
「それなら、早く承諾をもらって来い!」
「はい……」
「その前に、タオル!」
「はいぃぃ!」

 レイド様が声を荒らげると、女子生徒はタオルを棚から取ってレイド様に渡し、会長のもとへ走って行った。

「風邪引くぞ」

 頭にふわりとタオルが乗せられた。キツめの口調とは裏腹に、タオルで優しく私を包み込む。

「ありがとうございます……」

 髪も制服もビショビショなのに、何故かすごく暖かい。タオルで髪を拭いていると、先程の女子生徒が戻って来て、隣の部屋から新しい制服を持って来た。

「どうぞ。着替えは、こちらの部屋を使って下さい」

 制服を渡され、小さな個室に案内された。レイド様はこくりと頷くと、その場で待機してくれた。案内してくれた女子生徒は、そのままドアを閉めて出て行った。
 言われるがまま、個室で新しい制服に着替え、生徒会室に戻る。

「制服とタオルを、ありがとうございました」 

 女子生徒にお礼を言うと、彼女は不機嫌そうにしていた。

「教室に戻るぞ。ああ、制服代は父上に請求してくれ。それと、放課後に取りに来るからこの制服を乾かしておいてくれ」

 レイド様は、濡れた制服を女子生徒に渡す。まるで使用人のような扱いだ……

「制服代の請求を、こ、国王陛下に!?」

 濡れた制服を素直に受け取ったまま目を見開いて驚いている女子生徒を無視して、レイド様はさっさと生徒会室を出て行ってしまった。

「あの……お世話になりました!」

 深々と頭を下げてから、急いでレイド様を追いかける。


  ◇ ◆ ◇


 ――マリッサとレイドが出て行った生徒会室に、別の人影が現れた。

「会長、よろしかったのですか?」
「構わないわ。あんな姿でうろつかれたら、学園の品位が下がってしまうもの。もう、マリッサは終わりなのだから、慈悲くらいはかけてあげないとね」
「それにしても、なぜレイド殿下はあのような者を助けるのでしょうか?」
「放っておけばいいわ。レイド殿下も、学園のゴミよ」


  ◇ ◆ ◇


「待って下さい!」

 レイド様を呼び止めると、ピタリと足を止めてくれた。廊下を歩くのが速すぎて、私は息切れをしている。

「はぁはぁ……あの、ありがとうございました。でも、どうして生徒会室に制服があることをご存知だったのですか?」

 レイド様は、少しだけ考える仕草をした後に話し出した。

「入学式に俺が普通の服で登校したら、生徒会室で制服に着替えさせられたんだ。あそこには、突然誰かが転入して来ても大丈夫なように、制服がストックされている」

 なんともレイド様らしいエピソードではないか。
 その時のレイド様の不機嫌そうな顔が、目に浮かぶ。

「そんな事があったのですね。あ、制服代……」

 支払わなければと思ったけど、私にはお金がないし、叔父が出してくれるとも思えない。

「あんたに、金がないのは知ってるし。父上に、出世払いしてくれ」

 そう言いながら、レイド様はまた歩き出した。レイド様には、感謝しかない。私に関わる必要なんてないのに、こうしていつも助けてくれる。
 教室に戻ると、それまで多くの生徒が話をしていたのに、レイド様の姿を見て静まり返った。レイド様はそのまま教室に入り、ガンッと壁を殴りつけた。その音に、生徒達がビクッとする。

「……二度とするな」

 低い声で怒りをにじませて発した声は、怒鳴り声よりも恐ろしかった。
 あの時私は、バケツに水が入っていると分かっていて、わざと水をかけられた。そんな私の為に怒ってくれている彼に、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
 自分の席に戻ると、床にあった水溜みずたまりがなくなっていた。

「もしかしてレイチェルが、拭いてくれたの?」

 前の席に座るレイチェルの肩をツンツンすると、レイチェルは振り返って大きく頷いた。

「教室に来たらびっくりしたよ。マリッサの机も床もビショビショだし、マリッサはいないし。こんなことしか出来なくて、ごめんね」
「ううん、凄く嬉しい。ありがとう」
「それにしても、バケツで水を頭からかけるなんて酷いことするよね。新しい制服があって本当に良かったね! 濡れたままじゃ、風邪を引いちゃう」

 まるでその場面を見ていたみたいに話すレイチェルに、違和感を覚えた。机も床もあんなに水浸しだったのだから、何かの道具を使った事は分かる(それがバケツなのだと推測は出来る)としても、頭から水をかけられて新しい制服を着ていると何故分かったのだろうか。まるでどこかからずっと見ていたようだ。
 ……いや、きっと、誰かから聞いたのね。レイチェルを疑うなんて、私って本当に最低。



  第六章 レイド様の噂の真相



 午前の授業が終わり、いつものように中庭のベンチに座る。『私がケチだとでも言いたいのか』なんて言っていたのに、結局お昼代すらくれない。叔父は今まで通り私にお金を渡す気はないようだ。
 それにしても、今日は寒いな……

「クシュンッ‼」

 水をかけられたからだと思っていたけど、空気が冷たくなっている。そろそろ寒くなって来たから、お昼は教室で過ごさなきゃとは思うけど、誰かに見られているような気がして落ち着かない。あと九日だし、我慢出来るかな。

「またここにいるのか?」
「レイド様……」

 昨日と同じように、レイド様が話しかけて来た。レイド様は私の隣に座ると、空を見上げる。
 そして、袋に入ったパンを私の方に放った。

「ほら、食え。それは、食堂のおばちゃんからだ」

 パンを放った後、また空を見上げている。

「え? どうして食堂のおばさんが?」
「昨日、あんたが本当に美味そうに食べてくれたからだってさ。食べに来てくれて、ありがとうって言ってた」

 その言葉を聞いただけで、涙がポタリと落ちた。
 こんなに、心が温かい人達がいるなんて……レイド様といい、レイチェルといい、食堂のおばさんといい、私には優しくしてくれる人がいる。
 今までどんなに辛い目にあっても、決して涙を流すことのなかった私の目から、勝手に涙がこぼれる。

「……ありがとうございます……レイド様は、どうして私に優しくして下さるのですか?」

 私とは、昨日まで話したこともなかったのに。

「俺と同じ……だからかな」

 空を見上げていた視線が、真っ直ぐに私を見た。どこか悲しげで寂しげな目に、ドキッとしてしまう。

「同じ、とは?」

 レイド様も養子? そんな話、聞いた事はない。

「あんたは義妹に、俺は兄におとしめられたんだ」

 寂しげな目をしていた理由は、どうやらお兄様だったようだ。

おとしめられた……?」
「父が『次の王は三人の兄弟で競わせて決める』と言ったのがきっかけだった。それまで仲が良かったはずの俺達兄弟は、その日を境にライバルとなった」

 王位継承権争い……王座というのは、人を狂わせるものだという記述を何かで読んだことがある。レイド様は、凄く辛そうな表情をしている。

「俺は王位になんか興味はない。そう断言した。だが、兄達はそれを信じなかった。俺の噂、知ってるだろ? 乱暴で素行が悪く、すぐ暴力をふるう危険な奴って」
「レイド様のお兄様達が、噂を広めたのですか!?」

 私……最低だ。レイド様は私を信じて下さって、助けて下さったのに、一方の私は噂を信じてレイド様を嫌っていた……

「まあ、その噂のおかげで、俺はだいぶ楽にはなったけどな。授業中は寝れるし、元から口は悪いから怖がって誰も寄ってこないし、勉強しなくても怒られない。今は、かえって自由になれたような気がしてる」

 諦めたように笑うレイド様は、はかなげに見える。
 本当はとても心が温かくて、お優しい方。私にとってのロクサーヌは、私をおとしめることを平気で……いいえ、楽しんでやると分かっているけど、レイド様はきっと、お兄様を愛し、信じていたのだろう。だから、そんなに悲しい顔を……

「私とレイド様は違います! 私は、自分のことしか考えていません! 叔父夫婦も、ロクサーヌも、みんな追い出そうと思っていますし、デリオル様には莫大な慰謝料を請求して借金を全額返済していただくつもりです! 私は、これまでされたことを仕返ししたくて、うずうずしているような悪党です‼ はぁはぁ……」

 勢いで、息継ぎすることなく一気に言ってしまった。レイド様はきっと呆れている……

「ぷッ……あははははははっ‼ 自分を悪党だとか……ぷぷっ……」

 予想に反して、めちゃくちゃ笑われた。私、何か面白い事を言ったかな……ポカンとした顔で、レイド様を見つめていると……

「悪い。あまりにもあんたのキャラが変わったから。だけど、あんたはそれほど辛い目にあってきたって事だろ?」

 目をじっと見つめ、頭にポンと優しく手を乗せてくれた。私はすっかりレイド様から、目をそらすことが出来なくなっていた。どうしてこの方は、私の気持ち全てを分かってくれるのだろうか……

「追い出すか……てことは、もうすぐ十八歳になるんだな」
「どうしてそれを?」

 そんなにズバズバ言い当てられたら、全てを知る神か何かなのかと思ってしまう。

「俺はこれでも王子だ。この国の貴族のことは、全員把握している。あんたは十八歳になれば、後見人なしで正式に侯爵こうしゃくとなれる」

 もしかしたら、この方はものすごく優秀な方なのでは? この国は、男女の区別なく爵位を継ぐことが出来る。当主の長男、または長女がその爵位を継ぐ。そして、その人物が十八歳未満であれば後見人が必要とされる。理由は、議会に出席出来る年齢が十八歳からだからだ。
 叔父本人が侯爵こうしゃくだと、ほとんどの生徒達は思っていて、その爵位を継ぐのは養子の私ではなく娘のロクサーヌだと勘違いしているようだ。デリオル様も、その一人。
 それは、仕方のない事ではある。私が八歳で侯爵こうしゃくになった時、みんなもまだ子供だった。叔父が代理人として侯爵こうしゃくをずっと名乗って来たのだから、そう勘違いするのも無理はない。
 王家と貴族では事情が違うのは分かっているけど、長子が跡を継ぐという法律があるのに、国王様はどうして兄弟を競わせたりするのだろうか。

「レイド様は、どうして王位に興味がないのですか?」

 王位に……というより、レイド様は何に対しても興味がないように思える。だけどそれは、お兄様に王位に興味がない事を信じて欲しかったという心の表れなのかもしれない。

「う~ん。ガキの頃から、兄のゼントが王になるものだと俺は思っていたし、民を一番に考える兄を尊敬していた。それに今でも、兄が王に相応ふさわしいと思っているからだ」

 お兄様の話をする時のレイド様の顔は、イキイキしている。おとしめられたと言っていたのに、王としてのゼント殿下の話をしている時は、瞳に尊敬の念が込められている。

「……これは私の考えなのですが、お兄様達はレイド様をおとしめる為に噂を流したわけではないのでは?」
「どういう意味だ?」
「先程、レイド様はおっしゃっていましたよね。その噂のおかげで楽になったし、自由になれたと。お兄様達は、レイド様を王家のシガラミから解放し、自由にしてさしあげたかったのではないでしょうか。レイド様が、お兄様を今も尊敬していることは、私にも伝わって来ます。お互いに思い合っている兄弟だと感じます」


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