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1巻
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その時、突然人影が現れ、目の前に水の入ったグラスが乱暴に置かれた。
「マリッサ! お前、ずっと浮気していたんだな‼」
その人影は、デリオル様だった。グラスからは、水が半分以上こぼれている。
「浮気……とは?」
何故怒っているのかも、何を言っているのかも全く分からない。
レイド様と話したのは今日が初めてだし、婚約を破棄された今、私が誰と食事をしようとデリオル様には全く関係のないことだ。……食事といっても、学食だけど。
「俺が誘っても、一度も学食に来た事なんかなかったじゃないか! それなのに婚約破棄した途端、他の男と食事か!?」
それは、デリオル様が私にはお金がないことに気付いていなかったからだ。言い返したいけど、先程のデリオル様の声で、食堂にいる生徒達皆がいよいよこちらに注目している。こんなに大勢の生徒がいる前で、騒ぎを起こしたくない。
「浮気してたのは、お前の方だろ?」
レイド様は頬杖をつきながら、蔑むような目でデリオル様を見ていた。さっきまで私に見せてくれた表情とは、明らかに違っている。
「な!?」
事実なのだから、言い返すことなんて出来ないのだろう。デリオル様は図星をつかれて、固まってしまった。
「彼女が何をしようと、お前には関係ない。楽しく食事をしているんだから、邪魔するな」
鋭い目付きでデリオル様を睨み付けるレイド様。確かに、楽しい時間だった。デリオル様が、現れるまでは……
どうして、デリオル様はわざわざ文句を言いに来たのか。
もう放っておいて欲しい。
このままここに居たら、デリオル様はこの場から離れて行きそうにない。これ以上、レイド様に迷惑をかけるわけにはいかない。
急いで食事を平らげ、トレイを持ち席を立つ。レイド様は、黙ってその様子を見ていた。
こんなに良くしてくれたのに、ゆっくり食事を味わうことも出来なかった。それに、迷惑までかけてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
「レイド様、ごちそうさまでした」
軽く頭を下げ、その場から立ち去る。ごちそうしてもらっておいて、こんなに失礼な去り方をしているのに、レイド様は微笑んでくれた。
「おい! なぜ、俺を無視するんだ!?」
デリオル様の叫ぶ声が虚しく響き渡る。
もう話すことなど、何もない。
私は食堂のおばさんに、『ごちそうさまでした』とお礼を伝え、トレイを返却して食堂から出て行った。
◇ ◆ ◇
――マリッサが去った後。
「お前さ、何がしたいわけ?」
マリッサの姿を見送った後、レイドはデリオルに疑問を投げかけた。
「……レイド殿下には、関係ありません」
レイドと目を合わせることなく、言い捨てるデリオル。
「確かに関係ないが、俺はお前みたいなやつが大嫌いなんだよ。自分は人を傷付けても平気なくせに、自分が傷付けられたら激怒するなんて、ガキかよ」
言い方こそ静かだが、声に怒りが滲んでいる。
「マリッサは、傷付けられるべきなのです! ずっとロクサーヌを虐めていた! あの女は性悪で、最低な女です!」
レイドの怒りに触発されて、デリオルは声を荒らげる。
「それは、誰が言ったことだ?」
レイドはデリオルの顔を見ながら、はぁ……とため息をついて立ち上がる。
「まあ、いーや。ガキと話しても時間のムダ」
呆れた様子でそう言い捨てると、トレイを片付け、デリオルがこぼしたテーブルの水を丁寧に拭いてから去って行った。それを見計らっていたかのように、デリオルの周りを令嬢達が取り囲んだ。
「デリオル様、大丈夫でしたか?」
「レイド殿下って、怖いですよね。乱暴ですし!」
「マリッサ様ったら、浮気までしていたなんて……本当に最低な方ですね‼」
令嬢達は、デリオルにまとわり付いて媚びを売りまくる。一途だと思っていたデリオルが婚約者を替えた事で、自分達にもチャンスがあるのではと思っているのだろう。
ロクサーヌは可愛らしい見た目ではあるが、飛び抜けて美人というわけではない。どちらが美人かといえば、誰が見てもマリッサの方が美しかった。感情を表に出さず、笑うこともなかったから、冷たい印象ではあるが。
今までマリッサには勝てないと思っていた令嬢達だったが、ロクサーヌには勝てると思ったのだ。
「マリッサ様は、デリオル様と一緒に居る時よりも楽しそうにしていましたね。絶対に、このまま許してはなりません。デリオル様をバカにした、マリッサ様に思い知らせるのです」
喧騒にまぎれて、デリオル狙いの令嬢達とはどこか雰囲気の違う令嬢が、デリオルの耳元でそう囁いた。
「そうだ、マリッサは最低だろ!? 何なんだ、あの笑顔は! あの女、浮気した挙句に俺を無視しやがって……絶対に許さない‼」
怒りで拳を震わせながら、デリオルはマリッサが去って行った出口を見つめていた。
第三章 ロクサーヌ登場
教室に戻ると、さっきの食堂での騒動が既に噂になっていた。すぐに戻って来たはずなのに、噂になるのが早すぎる。
「マリッサ様ったら、浮気までしていたんですって!」
「食堂で、レイド殿下と笑い合っていたそうよ!」
「私達の前では、笑った事なんてないのに……、結局はただの男好きじゃない‼」
「デリオルも気の毒だな。浮気する女なんか、最低極まりない!」
デリオル様に責められた時は私も驚いたが、『笑っていたから浮気』と言われるのは納得がいかない。
けれど今は、悪口が少し増えたくらいなんとも思わない。一度は心が折れそうになったけど、レイド様のおかげで本来の自分を取り戻すことが出来た。
もう、弱気になったりしない。私は平然とした顔で、自分の席に着いた。
「気にしない方がいいよ。あの人達は、マリッサが不幸になって、優越感に浸っているだけなんだから!」
こちらを振り返って話しかけて来たのは、前の席に座っているレイチェルだ。レイチェルは、一年生の頃から私と仲良くしてくれている。午前中は姿が見えなかったから、今日は午後から登校して来たようだ。
「レイチェル……ありがとう」
レイチェルだけは変わらずにいてくれて、心が温かくなった。
「ごめんね。私が遅刻したせいで、マリッサを独りぼっちにしちゃった……」
目を伏せ、今にも泣き出しそうな顔で謝ってくれるレイチェル。謝る必要なんてないのに、本当に心が優しい子だ。
「ううん、レイチェルがいてくれて良かった!」
心からそう思えた事で、私はまた自然と笑顔になっていた。
「え……マリッサが、笑ってる? 初めて見た! 可愛い!」
レイチェルは驚きながらも、私の手を握って喜んでくれる。今まで笑えなかった私が、今日は二度も笑顔になれた。これもレイド様のおかげだと思う。
「ごめんね、レイチェル」
レイチェルに、きちんと謝らなくてはならない。私はずっと自分を押し殺して生きてきた。邸でも学園でも、目立たないようにとばかり思っていたから、友達とも距離を置いてきた。
そんな私に、変わらず声をかけてくれたレイチェルをこれからはもっと大切にしたい。
「私はずっと、あなたと距離を置いていたの。だけどこれからは、レイチェルと本当の友達になりたい」
こんな事にならなければ、完全に心を開く事は出来なかったかもしれない。そう思うと複雑な気持ちだ。
「私は、マリッサとは本当の友達だと思って付き合ってきたよ。マリッサの気持ちがどうとかは、関係ないの。大切なのは、私がマリッサを大切な友達だと思っている事だから、これからもそれは変わらないよ」
そう言って、屈託のない笑顔を向けてくれたレイチェルが眩しかった。
ずっと思っていた。いつも笑顔で可愛いレイチェルのように、笑えたらいいなって。
レイチェルに見とれていると、鋭い舌打ちが聞こえた。
「おい、浮気女! 学園の恥だから、消えてくれ!」
楽しそうにしている私が気に入らなかったのか、隣の席の男子生徒が文句を言って来た。直接言われたのは初めてで、新鮮だ。不思議と辛くはない。レイド様や、レイチェルが居るからだと思う。
「消えるのは、あなたでしょう!? 私の親友に、変な言いがかりを付けないで!」
レイチェルの気迫に驚いた男子生徒は、イスに座ったまま後ずさりしている。
レイチェルをこんなに頼もしいと思ったのは初めてかもしれない。というのも、今までのレイチェルは大人しい部類の女の子だったからだ。私以外の生徒に、こんなにはっきり物事を言うところは見たことがなかった。私の為に怒ってくれて、嬉しい。
「……ありがとう、レイチェル」
私には、こんなに素敵な親友がいる。それだけでこれから誰に何を言われても、平気で居られる気がする。
「マリッサが浮気なんかするはずないもの。それにしても、みんなはどういうつもりなのかな。いっせいにマリッサを敵視し始めるなんて、少しおかしくない?」
確かに、その通りだと思った。
婚約を破棄されてから、ロクサーヌを虐めていたとか、浮気をしたとか……あまりにも、噂が広まるのが早過ぎる。悪口を言うのは決まって同じ生徒で、他の生徒はそれを聞いて頷いているだけだ。それに、生徒だけじゃなく、先生達からも嫌われている理由が分からない。あれこれ考えていると、なんだか教室の入り口が騒がしくなった。
「……ロクサーヌ?」
騒ぎの中心にいたのはロクサーヌだった。
ロクサーヌは二年生だ。二年の教室は三年の教室とは階が違う。わざわざ三階まで来たという事は、デリオル様に会いに来たのだろうけれど、デリオル様は隣のクラスだ。
私が教室に居るのを確認したロクサーヌは、私の席までゆっくりと歩いて来た。
「お義姉様……浮気をしてらっしゃったのですか? デリオル様が、お可哀想……」
ロクサーヌも既にその噂を知っているようだ。
泣きそうな顔をしながら、声を震わせるロクサーヌ。ここまで演技が上手いと、私まで騙されてしまいそうになる。
ロクサーヌとは直接面識がなかったはずのクラスメイトも、何故か彼女の周りに集まっている。
「……」
私は、何も言わなかった。言い返したら本性を知られてしまうし、謝ったら浮気を認めた事になり、レイド様に迷惑をかけてしまうと思ったからだ。
「なんとか言いなさいよ!」
「ロクサーヌ様を泣かせて平然としてるなんて、まるで悪魔ね!」
「あなたがレイド殿下と親しそうに話していたのを、みんなが見ているのよ‼」
取り巻きたちがギャーギャー言う中で、ロクサーヌ本人は顔を両手で隠して泣き真似をしている。
「誰が浮気したって? 俺達は今日、初めて話したんだけど?」
教室に戻って来たレイド様が、私とロクサーヌの間に割って入った。こちらからは背中しか見えないけど、私の事を守ってくれているようでドキッとする。
「……確かに、二人が話しているところを見たのは初めてじゃない?」
毅然としたレイド様の言葉を聞いて、誰かがそう言うと……
「そうね……一緒に居るところは、今日初めて見たわ」
「浮気……とは、言えない気もして来た」
レイド様の言葉で、教室の雰囲気が変わり始めた。
「今までは、隠れて会っていたのでしょう? デリオル様が、お可哀想……」
このままではまずいと思ったのか、泣いていたはずのロクサーヌが口を開いた。
「私はどんなに酷い事をされても我慢出来ます! でも、お願いだからデリオル様の事は傷付けないで!」
ロクサーヌの迫真の演技に、パチパチパチと拍手が沸き起こった。可哀想なロクサーヌが、自分を虐めていた私に気丈に言い返したというところなのだろう。しかも、ご丁寧にデリオル様を想う優しい女の子まで演じている。
周りの生徒達は、それに気付くこともなく、よく言った! と拍手をおくっている。ロクサーヌの迫真の演技で、教室の雰囲気は元に戻っていた。
「……すげー演技だな。恥ずかしくないのか?」
レイド様がボソッと言った言葉に、思わず笑いそうになってしまった。
クラスメイト達が簡単に信じてしまう程のロクサーヌの演技を目の当たりにしているのに、レイド様は私を信じてくれる。
ダメよ! ロクサーヌの前で本当の性格を出したら終わりよ! そう言い聞かせ、私は無表情の顔をキープするのに必死だった。
「そろそろ授業が始まるわ。ロクサーヌ様も、教室に戻られた方がよろしいのではないですか?」
レイチェルが、さりげなくロクサーヌを追い払ってくれた。結局、デリオル様が姿を見せることはなく、ロクサーヌは私を貶めるために三階まで来たようだ。
ロクサーヌが姿を現した事で、他の生徒達は私の事をいっそう嫌いになったようだった。
第四章 マーカスからの手紙
その日の授業が終わって邸に帰ると、門番がこっそり手紙を渡して来た。
手紙は私のせいで解雇された元執事のマーカスからのものだった。さっそく読もうと自室である物置部屋へ急いでいると、途中で叔父が呼んでいると使用人が知らせに来た。
待たせれば何をされるか分からない。私はそのまま、叔父の待つリビングへ行くことにした。
「ただいま帰りました」
リビングの入口で立ち止まり、帰宅の挨拶をする。私は、中に入ることを許されていない。リビングは家族で寛ぐものだから、私を家族の一員だと認めたくないようだ。
「お前、レイド殿下と仲良くしていたそうだな」
私の顔も見ずに、背中を向けてリビングのソファーに座ったまま話す叔父。その隣で、叔母は本を読んでいる。
情報が伝わるのが早すぎるけど、ロクサーヌが話したのだろうか?
「……レイド様は、昼休みに食事をしていない私を気遣ってご馳走して下さっただけです」
中に入ることをゆるされていない私は、入口に立ったまま答える。
「なんだと!? お前は私がケチだとでも言いたいのか!?」
ソファーから立ち上がってこちらを振り返り、凄い剣幕で怒り出した叔父は、手に持っていたワイングラスを投げつけた。
ワイングラスはガシャンッと音を立てて、私のすぐ横にある壁に当たって割れた。グラスに入っていた赤ワインが、壁を流れ落ちていく。外れたのか、わざと外したのかは分からないけど、叔父の怒りはそれだけではおさまらない。
「お前なんか、すぐに追い出してもいいんだぞ! それを兄上の忘れ形見だから育ててやっているというのに、この恩知らずが‼」
叔父がこれほど激怒しているというのに、なんの反応もせずに本を読み続ける叔母。叔父が私に向かって怒鳴ることに、慣れきっている。
「……申し訳ありません」
泣きそうな表情を作って、怯えるフリをする。叔父が怒りに任せて物を投げつけるのは、日常茶飯事だった。正直、これくらいではもう動じない。それでも私が怯えなければ更に酷い事をしてくる。だから私は、いつも怯えるフリをしている。
『兄上の忘れ形見』……そんな扱い、された事なんかない。
叔父が、私にはお金を使いたくないことは知っている。叔父の養子になってから、最低限の学用品以外の物を買ってもらった記憶はない。むしろ、奪われて来た。
ドレスも宝石も家具も、ぬいぐるみさえ全て私から奪ってロクサーヌに与えた。お父様とお母様から買っていただいた物を、ひとつも残してくれなかった。
「とにかく、これからはレイド殿下と関わるな。そろそろお前も十八歳だ。十八歳になったら、この邸を出て行ってもらう」
気が済んだのか、叔父はまたソファーに腰を下ろした。
……出て行くのは、叔父達の方だ。
叔父が誕生日になれば私を追い出せると思っている限り、私の命は安全だ。
その日の為に私が準備しているのを悟られてはならないと、改めて気を引き締める。
その時、馬車が敷地内に入ってくる音が聞こえて来た。叔母はここに居るのだから、ロクサーヌの馬車だろう。
ロクサーヌが今帰宅したのなら、叔父はレイド様の事を誰から聞いたのだろうか……
「お父様、ただいま。聞いてよ! マリッサったら、レイド殿下と昼食なんかとっていたのよ!」
やっぱり、叔父に話したのはロクサーヌではないらしい。
ロクサーヌは、入口に立っている私を無視してリビングに入って行った。
「おお! お帰り、ロクサーヌ。今、その事を話していたところだ。それで、お前には伝えていなかったが、もうすぐマリッサはこの邸を出て行く事になる」
さっきまで激怒していた叔父は、ロクサーヌの顔を見るとすぐに笑顔になった。
「ほんと!?」
一転、ロクサーヌは目を輝かせて喜ぶ。私はこの邸で自分を殺して生きてきた。叔父やロクサーヌにどんな仕打ちをされても、逆らった事はなかったはずだ。正直、どうしてこんなに彼らに嫌われているのか分からない。
「マリッサは、部屋に戻りなさい」
用が済んだらもう私の顔を見たくないらしい。叔父は犬にでもするように、右手でシッシと追い払う仕草をする。叔母は終始、私の存在を無視していた。
「……はい」
追い払われるのは慣れているし、暴力を振るわれるよりはマシだ。素直に部屋に戻る事にする。
「待って、マリッサ。明日の夕食にデリオル様を招待したの。デリオル様ったら、朝も昼も夜も、私と離れたくないんですって! 愛され過ぎて困るわ」
だから何だと言うのか。ロクサーヌは、私がデリオル様を好きだとでも思っているのだろうか? マウントを取るかのように、わざわざ惚気けてみせる。
「おめでとう。デリオル様と幸せになってね」
私は冷静に答えた。
ロクサーヌは私に近付いてきて、耳元に顔を寄せた。
「マリッサのものは、私が全て奪ってあげる。だってあなたみたいな女、誰にも愛されるはずないでしょう?」
ロクサーヌは、私が幸せになることを許さない。この邸での私の居場所も全て奪った。
心の拠り所だった大切な花壇を踏み潰されてぐしゃぐしゃにされた時に、この邸で大切な物を作るのはやめようと決めた。もう奪うものがなくなったから、ついには婚約者を奪う事にしたのだろう。その上で、学園での居場所まで奪おうとしている。
「そう……では、失礼します」
私のものを欲しがっているだけの子供。そんなロクサーヌに構っている暇はない。早く物置部屋に戻って、マーカスからの手紙を読みたい。私は、背中を向けて歩き出す。
「なんなのよ、あの態度は! あんなんだから、みんなに嫌われるのよ! お父様にも見せたかったわ! 学園の嫌われ者のマリッサ! おかしいったらないのよ」
そう仕向けたのはあなたじゃない。
物置部屋に戻った私はイスが無いので床に座り、手紙を読み始めた。手紙には、私が十八歳になった時にするべきことが書かれていた。書類は全てマーカスが揃えてくれているようだ。解雇されてもずっと私の事を心配して、何度も手紙をくれたマーカスには感謝しかない。
十八歳になるまで、あと十日。もうすぐ私は、自由になれる。
「マリッサ! お前、ずっと浮気していたんだな‼」
その人影は、デリオル様だった。グラスからは、水が半分以上こぼれている。
「浮気……とは?」
何故怒っているのかも、何を言っているのかも全く分からない。
レイド様と話したのは今日が初めてだし、婚約を破棄された今、私が誰と食事をしようとデリオル様には全く関係のないことだ。……食事といっても、学食だけど。
「俺が誘っても、一度も学食に来た事なんかなかったじゃないか! それなのに婚約破棄した途端、他の男と食事か!?」
それは、デリオル様が私にはお金がないことに気付いていなかったからだ。言い返したいけど、先程のデリオル様の声で、食堂にいる生徒達皆がいよいよこちらに注目している。こんなに大勢の生徒がいる前で、騒ぎを起こしたくない。
「浮気してたのは、お前の方だろ?」
レイド様は頬杖をつきながら、蔑むような目でデリオル様を見ていた。さっきまで私に見せてくれた表情とは、明らかに違っている。
「な!?」
事実なのだから、言い返すことなんて出来ないのだろう。デリオル様は図星をつかれて、固まってしまった。
「彼女が何をしようと、お前には関係ない。楽しく食事をしているんだから、邪魔するな」
鋭い目付きでデリオル様を睨み付けるレイド様。確かに、楽しい時間だった。デリオル様が、現れるまでは……
どうして、デリオル様はわざわざ文句を言いに来たのか。
もう放っておいて欲しい。
このままここに居たら、デリオル様はこの場から離れて行きそうにない。これ以上、レイド様に迷惑をかけるわけにはいかない。
急いで食事を平らげ、トレイを持ち席を立つ。レイド様は、黙ってその様子を見ていた。
こんなに良くしてくれたのに、ゆっくり食事を味わうことも出来なかった。それに、迷惑までかけてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
「レイド様、ごちそうさまでした」
軽く頭を下げ、その場から立ち去る。ごちそうしてもらっておいて、こんなに失礼な去り方をしているのに、レイド様は微笑んでくれた。
「おい! なぜ、俺を無視するんだ!?」
デリオル様の叫ぶ声が虚しく響き渡る。
もう話すことなど、何もない。
私は食堂のおばさんに、『ごちそうさまでした』とお礼を伝え、トレイを返却して食堂から出て行った。
◇ ◆ ◇
――マリッサが去った後。
「お前さ、何がしたいわけ?」
マリッサの姿を見送った後、レイドはデリオルに疑問を投げかけた。
「……レイド殿下には、関係ありません」
レイドと目を合わせることなく、言い捨てるデリオル。
「確かに関係ないが、俺はお前みたいなやつが大嫌いなんだよ。自分は人を傷付けても平気なくせに、自分が傷付けられたら激怒するなんて、ガキかよ」
言い方こそ静かだが、声に怒りが滲んでいる。
「マリッサは、傷付けられるべきなのです! ずっとロクサーヌを虐めていた! あの女は性悪で、最低な女です!」
レイドの怒りに触発されて、デリオルは声を荒らげる。
「それは、誰が言ったことだ?」
レイドはデリオルの顔を見ながら、はぁ……とため息をついて立ち上がる。
「まあ、いーや。ガキと話しても時間のムダ」
呆れた様子でそう言い捨てると、トレイを片付け、デリオルがこぼしたテーブルの水を丁寧に拭いてから去って行った。それを見計らっていたかのように、デリオルの周りを令嬢達が取り囲んだ。
「デリオル様、大丈夫でしたか?」
「レイド殿下って、怖いですよね。乱暴ですし!」
「マリッサ様ったら、浮気までしていたなんて……本当に最低な方ですね‼」
令嬢達は、デリオルにまとわり付いて媚びを売りまくる。一途だと思っていたデリオルが婚約者を替えた事で、自分達にもチャンスがあるのではと思っているのだろう。
ロクサーヌは可愛らしい見た目ではあるが、飛び抜けて美人というわけではない。どちらが美人かといえば、誰が見てもマリッサの方が美しかった。感情を表に出さず、笑うこともなかったから、冷たい印象ではあるが。
今までマリッサには勝てないと思っていた令嬢達だったが、ロクサーヌには勝てると思ったのだ。
「マリッサ様は、デリオル様と一緒に居る時よりも楽しそうにしていましたね。絶対に、このまま許してはなりません。デリオル様をバカにした、マリッサ様に思い知らせるのです」
喧騒にまぎれて、デリオル狙いの令嬢達とはどこか雰囲気の違う令嬢が、デリオルの耳元でそう囁いた。
「そうだ、マリッサは最低だろ!? 何なんだ、あの笑顔は! あの女、浮気した挙句に俺を無視しやがって……絶対に許さない‼」
怒りで拳を震わせながら、デリオルはマリッサが去って行った出口を見つめていた。
第三章 ロクサーヌ登場
教室に戻ると、さっきの食堂での騒動が既に噂になっていた。すぐに戻って来たはずなのに、噂になるのが早すぎる。
「マリッサ様ったら、浮気までしていたんですって!」
「食堂で、レイド殿下と笑い合っていたそうよ!」
「私達の前では、笑った事なんてないのに……、結局はただの男好きじゃない‼」
「デリオルも気の毒だな。浮気する女なんか、最低極まりない!」
デリオル様に責められた時は私も驚いたが、『笑っていたから浮気』と言われるのは納得がいかない。
けれど今は、悪口が少し増えたくらいなんとも思わない。一度は心が折れそうになったけど、レイド様のおかげで本来の自分を取り戻すことが出来た。
もう、弱気になったりしない。私は平然とした顔で、自分の席に着いた。
「気にしない方がいいよ。あの人達は、マリッサが不幸になって、優越感に浸っているだけなんだから!」
こちらを振り返って話しかけて来たのは、前の席に座っているレイチェルだ。レイチェルは、一年生の頃から私と仲良くしてくれている。午前中は姿が見えなかったから、今日は午後から登校して来たようだ。
「レイチェル……ありがとう」
レイチェルだけは変わらずにいてくれて、心が温かくなった。
「ごめんね。私が遅刻したせいで、マリッサを独りぼっちにしちゃった……」
目を伏せ、今にも泣き出しそうな顔で謝ってくれるレイチェル。謝る必要なんてないのに、本当に心が優しい子だ。
「ううん、レイチェルがいてくれて良かった!」
心からそう思えた事で、私はまた自然と笑顔になっていた。
「え……マリッサが、笑ってる? 初めて見た! 可愛い!」
レイチェルは驚きながらも、私の手を握って喜んでくれる。今まで笑えなかった私が、今日は二度も笑顔になれた。これもレイド様のおかげだと思う。
「ごめんね、レイチェル」
レイチェルに、きちんと謝らなくてはならない。私はずっと自分を押し殺して生きてきた。邸でも学園でも、目立たないようにとばかり思っていたから、友達とも距離を置いてきた。
そんな私に、変わらず声をかけてくれたレイチェルをこれからはもっと大切にしたい。
「私はずっと、あなたと距離を置いていたの。だけどこれからは、レイチェルと本当の友達になりたい」
こんな事にならなければ、完全に心を開く事は出来なかったかもしれない。そう思うと複雑な気持ちだ。
「私は、マリッサとは本当の友達だと思って付き合ってきたよ。マリッサの気持ちがどうとかは、関係ないの。大切なのは、私がマリッサを大切な友達だと思っている事だから、これからもそれは変わらないよ」
そう言って、屈託のない笑顔を向けてくれたレイチェルが眩しかった。
ずっと思っていた。いつも笑顔で可愛いレイチェルのように、笑えたらいいなって。
レイチェルに見とれていると、鋭い舌打ちが聞こえた。
「おい、浮気女! 学園の恥だから、消えてくれ!」
楽しそうにしている私が気に入らなかったのか、隣の席の男子生徒が文句を言って来た。直接言われたのは初めてで、新鮮だ。不思議と辛くはない。レイド様や、レイチェルが居るからだと思う。
「消えるのは、あなたでしょう!? 私の親友に、変な言いがかりを付けないで!」
レイチェルの気迫に驚いた男子生徒は、イスに座ったまま後ずさりしている。
レイチェルをこんなに頼もしいと思ったのは初めてかもしれない。というのも、今までのレイチェルは大人しい部類の女の子だったからだ。私以外の生徒に、こんなにはっきり物事を言うところは見たことがなかった。私の為に怒ってくれて、嬉しい。
「……ありがとう、レイチェル」
私には、こんなに素敵な親友がいる。それだけでこれから誰に何を言われても、平気で居られる気がする。
「マリッサが浮気なんかするはずないもの。それにしても、みんなはどういうつもりなのかな。いっせいにマリッサを敵視し始めるなんて、少しおかしくない?」
確かに、その通りだと思った。
婚約を破棄されてから、ロクサーヌを虐めていたとか、浮気をしたとか……あまりにも、噂が広まるのが早過ぎる。悪口を言うのは決まって同じ生徒で、他の生徒はそれを聞いて頷いているだけだ。それに、生徒だけじゃなく、先生達からも嫌われている理由が分からない。あれこれ考えていると、なんだか教室の入り口が騒がしくなった。
「……ロクサーヌ?」
騒ぎの中心にいたのはロクサーヌだった。
ロクサーヌは二年生だ。二年の教室は三年の教室とは階が違う。わざわざ三階まで来たという事は、デリオル様に会いに来たのだろうけれど、デリオル様は隣のクラスだ。
私が教室に居るのを確認したロクサーヌは、私の席までゆっくりと歩いて来た。
「お義姉様……浮気をしてらっしゃったのですか? デリオル様が、お可哀想……」
ロクサーヌも既にその噂を知っているようだ。
泣きそうな顔をしながら、声を震わせるロクサーヌ。ここまで演技が上手いと、私まで騙されてしまいそうになる。
ロクサーヌとは直接面識がなかったはずのクラスメイトも、何故か彼女の周りに集まっている。
「……」
私は、何も言わなかった。言い返したら本性を知られてしまうし、謝ったら浮気を認めた事になり、レイド様に迷惑をかけてしまうと思ったからだ。
「なんとか言いなさいよ!」
「ロクサーヌ様を泣かせて平然としてるなんて、まるで悪魔ね!」
「あなたがレイド殿下と親しそうに話していたのを、みんなが見ているのよ‼」
取り巻きたちがギャーギャー言う中で、ロクサーヌ本人は顔を両手で隠して泣き真似をしている。
「誰が浮気したって? 俺達は今日、初めて話したんだけど?」
教室に戻って来たレイド様が、私とロクサーヌの間に割って入った。こちらからは背中しか見えないけど、私の事を守ってくれているようでドキッとする。
「……確かに、二人が話しているところを見たのは初めてじゃない?」
毅然としたレイド様の言葉を聞いて、誰かがそう言うと……
「そうね……一緒に居るところは、今日初めて見たわ」
「浮気……とは、言えない気もして来た」
レイド様の言葉で、教室の雰囲気が変わり始めた。
「今までは、隠れて会っていたのでしょう? デリオル様が、お可哀想……」
このままではまずいと思ったのか、泣いていたはずのロクサーヌが口を開いた。
「私はどんなに酷い事をされても我慢出来ます! でも、お願いだからデリオル様の事は傷付けないで!」
ロクサーヌの迫真の演技に、パチパチパチと拍手が沸き起こった。可哀想なロクサーヌが、自分を虐めていた私に気丈に言い返したというところなのだろう。しかも、ご丁寧にデリオル様を想う優しい女の子まで演じている。
周りの生徒達は、それに気付くこともなく、よく言った! と拍手をおくっている。ロクサーヌの迫真の演技で、教室の雰囲気は元に戻っていた。
「……すげー演技だな。恥ずかしくないのか?」
レイド様がボソッと言った言葉に、思わず笑いそうになってしまった。
クラスメイト達が簡単に信じてしまう程のロクサーヌの演技を目の当たりにしているのに、レイド様は私を信じてくれる。
ダメよ! ロクサーヌの前で本当の性格を出したら終わりよ! そう言い聞かせ、私は無表情の顔をキープするのに必死だった。
「そろそろ授業が始まるわ。ロクサーヌ様も、教室に戻られた方がよろしいのではないですか?」
レイチェルが、さりげなくロクサーヌを追い払ってくれた。結局、デリオル様が姿を見せることはなく、ロクサーヌは私を貶めるために三階まで来たようだ。
ロクサーヌが姿を現した事で、他の生徒達は私の事をいっそう嫌いになったようだった。
第四章 マーカスからの手紙
その日の授業が終わって邸に帰ると、門番がこっそり手紙を渡して来た。
手紙は私のせいで解雇された元執事のマーカスからのものだった。さっそく読もうと自室である物置部屋へ急いでいると、途中で叔父が呼んでいると使用人が知らせに来た。
待たせれば何をされるか分からない。私はそのまま、叔父の待つリビングへ行くことにした。
「ただいま帰りました」
リビングの入口で立ち止まり、帰宅の挨拶をする。私は、中に入ることを許されていない。リビングは家族で寛ぐものだから、私を家族の一員だと認めたくないようだ。
「お前、レイド殿下と仲良くしていたそうだな」
私の顔も見ずに、背中を向けてリビングのソファーに座ったまま話す叔父。その隣で、叔母は本を読んでいる。
情報が伝わるのが早すぎるけど、ロクサーヌが話したのだろうか?
「……レイド様は、昼休みに食事をしていない私を気遣ってご馳走して下さっただけです」
中に入ることをゆるされていない私は、入口に立ったまま答える。
「なんだと!? お前は私がケチだとでも言いたいのか!?」
ソファーから立ち上がってこちらを振り返り、凄い剣幕で怒り出した叔父は、手に持っていたワイングラスを投げつけた。
ワイングラスはガシャンッと音を立てて、私のすぐ横にある壁に当たって割れた。グラスに入っていた赤ワインが、壁を流れ落ちていく。外れたのか、わざと外したのかは分からないけど、叔父の怒りはそれだけではおさまらない。
「お前なんか、すぐに追い出してもいいんだぞ! それを兄上の忘れ形見だから育ててやっているというのに、この恩知らずが‼」
叔父がこれほど激怒しているというのに、なんの反応もせずに本を読み続ける叔母。叔父が私に向かって怒鳴ることに、慣れきっている。
「……申し訳ありません」
泣きそうな表情を作って、怯えるフリをする。叔父が怒りに任せて物を投げつけるのは、日常茶飯事だった。正直、これくらいではもう動じない。それでも私が怯えなければ更に酷い事をしてくる。だから私は、いつも怯えるフリをしている。
『兄上の忘れ形見』……そんな扱い、された事なんかない。
叔父が、私にはお金を使いたくないことは知っている。叔父の養子になってから、最低限の学用品以外の物を買ってもらった記憶はない。むしろ、奪われて来た。
ドレスも宝石も家具も、ぬいぐるみさえ全て私から奪ってロクサーヌに与えた。お父様とお母様から買っていただいた物を、ひとつも残してくれなかった。
「とにかく、これからはレイド殿下と関わるな。そろそろお前も十八歳だ。十八歳になったら、この邸を出て行ってもらう」
気が済んだのか、叔父はまたソファーに腰を下ろした。
……出て行くのは、叔父達の方だ。
叔父が誕生日になれば私を追い出せると思っている限り、私の命は安全だ。
その日の為に私が準備しているのを悟られてはならないと、改めて気を引き締める。
その時、馬車が敷地内に入ってくる音が聞こえて来た。叔母はここに居るのだから、ロクサーヌの馬車だろう。
ロクサーヌが今帰宅したのなら、叔父はレイド様の事を誰から聞いたのだろうか……
「お父様、ただいま。聞いてよ! マリッサったら、レイド殿下と昼食なんかとっていたのよ!」
やっぱり、叔父に話したのはロクサーヌではないらしい。
ロクサーヌは、入口に立っている私を無視してリビングに入って行った。
「おお! お帰り、ロクサーヌ。今、その事を話していたところだ。それで、お前には伝えていなかったが、もうすぐマリッサはこの邸を出て行く事になる」
さっきまで激怒していた叔父は、ロクサーヌの顔を見るとすぐに笑顔になった。
「ほんと!?」
一転、ロクサーヌは目を輝かせて喜ぶ。私はこの邸で自分を殺して生きてきた。叔父やロクサーヌにどんな仕打ちをされても、逆らった事はなかったはずだ。正直、どうしてこんなに彼らに嫌われているのか分からない。
「マリッサは、部屋に戻りなさい」
用が済んだらもう私の顔を見たくないらしい。叔父は犬にでもするように、右手でシッシと追い払う仕草をする。叔母は終始、私の存在を無視していた。
「……はい」
追い払われるのは慣れているし、暴力を振るわれるよりはマシだ。素直に部屋に戻る事にする。
「待って、マリッサ。明日の夕食にデリオル様を招待したの。デリオル様ったら、朝も昼も夜も、私と離れたくないんですって! 愛され過ぎて困るわ」
だから何だと言うのか。ロクサーヌは、私がデリオル様を好きだとでも思っているのだろうか? マウントを取るかのように、わざわざ惚気けてみせる。
「おめでとう。デリオル様と幸せになってね」
私は冷静に答えた。
ロクサーヌは私に近付いてきて、耳元に顔を寄せた。
「マリッサのものは、私が全て奪ってあげる。だってあなたみたいな女、誰にも愛されるはずないでしょう?」
ロクサーヌは、私が幸せになることを許さない。この邸での私の居場所も全て奪った。
心の拠り所だった大切な花壇を踏み潰されてぐしゃぐしゃにされた時に、この邸で大切な物を作るのはやめようと決めた。もう奪うものがなくなったから、ついには婚約者を奪う事にしたのだろう。その上で、学園での居場所まで奪おうとしている。
「そう……では、失礼します」
私のものを欲しがっているだけの子供。そんなロクサーヌに構っている暇はない。早く物置部屋に戻って、マーカスからの手紙を読みたい。私は、背中を向けて歩き出す。
「なんなのよ、あの態度は! あんなんだから、みんなに嫌われるのよ! お父様にも見せたかったわ! 学園の嫌われ者のマリッサ! おかしいったらないのよ」
そう仕向けたのはあなたじゃない。
物置部屋に戻った私はイスが無いので床に座り、手紙を読み始めた。手紙には、私が十八歳になった時にするべきことが書かれていた。書類は全てマーカスが揃えてくれているようだ。解雇されてもずっと私の事を心配して、何度も手紙をくれたマーカスには感謝しかない。
十八歳になるまで、あと十日。もうすぐ私は、自由になれる。
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