上 下
7 / 11

忘れられない人

しおりを挟む

 数日後

 お姉様がアンソニー様に、私が離縁した事を伝えたようで、アンソニー様が邸へとやって来ました。

 「久しぶりだな、セシディ。」

 「アンソニー様、お久しぶりです。」

 12年振りにお会いしたアンソニー様は、とても素敵になっていました。
 薄茶の髪に薄茶の瞳……昔のままなのに、大人になったアンソニー様に見惚れてしまう。
 私はバカですね。こんなに素敵な方が、私の事を今もまだ好きなはずがないです。余計な心配をしていたようです。

 「騎士になって、大活躍だったそうですね。」

 「騎士になり、国境を守る事が、セシディとの結婚を認めてもらう条件だったからな。」

 「え……?」

 「やっと認めてもらい、セシディを迎えに来たら、君はすでに結婚をしていた。まあ、君に連絡もしなかった私が悪かったんだ。」

 それは、どういうことなのでしょう?
 アンソニー様は、私との結婚を認めてもらうために、今まで頑張って来たのですか?
 
 「認めてもらうまでは、君に知らせないと決めていた。いつまでも待たせてしまうと思ったからね。君を訪ねて来た時、君が結婚をしているかもしれないと、半分は覚悟していたんだが……あまりのショックに、頭をハンマーで殴られたようだった。」

 私のために、こんなにも努力してくれていたことを知らずに、私はアンソニー様を忘れようと必死にもがいていました。
 ずっと忘れられず、私は一生1人だと思っていた時に、ジオード様に出会いました。
 毎日毎日、愛してるとストレートに仰ってくれた事で、アンソニー様がいない悲しみが薄れていったのです。
 アンソニー様は私の為に、ずっと頑張って来てくださっていたのだと知った今も、結婚した事を後悔はしていません。何よりも大切な、アレクシスが生まれてくれたから……

 「アンソニー様には、本当に申し訳ないことをしてしまいました。」

 「もう一度、言わせて欲しい。私と結婚してくれないか?」

 幼い頃のプロポーズを思い出します。あの時、すごく嬉しかった。でも今は……

 「アンソニー様、申し訳ありません……。私は、アンソニー様と結婚出来ません。」

 アンソニー様の事は、今も大好きです。嫌いになる事なんて、一生ないでしょう。
 ですが、今の私には大切な息子がいるのです。この子のためなら、命だって惜しくない。
 この子を立派に育てる事しか、考えられないのです。

 「うーん……予想どおりの返事だな。」

 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

うるさい!お前は俺の言う事を聞いてればいいんだよ!と言われましたが

仏白目
恋愛
私達、幼馴染ってだけの関係よね? 私アマーリア.シンクレアには、ケント.モダール伯爵令息という幼馴染がいる 小さな頃から一緒に遊んだり 一緒にいた時間は長いけど あなたにそんな態度を取られるのは変だと思うの・・・ *作者ご都合主義の世界観でのフィクションです

あの素晴らしい愛をもう一度

仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは 33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。 家同士のつながりで婚約した2人だが 婚約期間にはお互いに惹かれあい 好きだ!  私も大好き〜! 僕はもっと大好きだ! 私だって〜! と人前でいちゃつく姿は有名であった そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった はず・・・ このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。 あしからず!

姉の引き立て役として生きて来た私でしたが、本当は逆だったのですね

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵家の長女のメルディナは美しいが考えが浅く、彼女をあがめる取り巻きの男に対しても残忍なワガママなところがあった。 妹のクレアはそんなメルディナのフォローをしていたが、周囲からは煙たがられて嫌われがちであった。 美しい姉と引き立て役の妹として過ごしてきた幼少期だったが、大人になったらその立場が逆転して――。 3話完結

許して貰わなくても結構です

音爽(ネソウ)
恋愛
裏切った恋人、二度と会いたくないと彼女は思った。愛はいつしか憎悪になる。 そして懲りない男は今でも愛されていると思い込んでいて……

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。 結婚だってそうだった。 良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。 夫の9番目の妻だと知るまでは―― 「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」 嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。 ※最後はさくっと終わっております。 ※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

処理中です...