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お姉様
しおりを挟む手紙を出して数日が経ち、お姉様からの返事を待っていたのですが……
「妹に会わせて頂けますか?」
手紙の返事ではなく、お姉様が直接、ジーユ伯爵邸にやって来たのです。
「ドーグ伯爵夫人が、どのようなご用でしょうか?」
姉シンディの夫、ビンセントはドーグ侯爵の次男で、侯爵の爵位は兄が継ぎ、2つ目の爵位の伯爵をビンセントが継いだ。
侯爵家は女性が継ぐことは出来ない為、シンディが男児を産むことで、その子がブラウン侯爵の爵位を継ぐことになっていた。
「あなたに用なんてないわ。私は、妹とアレクシスを迎えに来たの。」
「何を言っているのだ!? アレクシスはジーユ家の跡取りだ! アレクシスを平民にするつもりか!?」
「アレクシスは平民になんてならないわ。伯爵にもならない。アレクシスはブラウン侯爵家を継ぐのよ!」
「お姉様!? 何を……」
「セシディ、アレクシスを連れて来なさい。帰りましょう。」
「ふざけるな!! セシディにアレクシスは渡さん!! 」
「ジオード様、アレクシスなんて渡しちゃいましょうよ。跡継ぎなら、私のお腹の中にいるじゃないですか。」
ジオードの腕に体を擦り寄せながら、クネクネするシモーヌ。
「お前は黙っていろ!!」
ドンッ!!
ジオードはシモーヌを突き飛ばした。
「キャッ!!」
シモーヌは尻もちをついた。
「シモーヌは追い出すから、セシディとアレクシスを連れていかないでくれ!!」
「「「……はあ!?」」」
ジオード以外の3人の声がハモった。
「シモーヌに子供が出来たと知った時、俺はアレクシスにヤキモチを妬いていただけだったと分かったんだ。これからは、アレクシスを愛する努力もする! だから、行かないでくれ!」
開いた口が塞がりません。アレクシスが侯爵を継ぐかもしれないと思って、手離したくないだけなのでしょう。
アホ面の愛人シモーヌに、子供が出来た事を知りながら追い出そうとしている方の妻に、誰が戻りたいと思うのでしょうか?
「ジオード様、私はもう、あなたを愛していませんし、やり直す事も絶対にありません。あなたの顔を見るのは、うんざりなんです!」
何も持たず、アレクシスを連れて邸を出る。
「セシディ! お前には俺しかいない! お前は絶対に戻って来る! 絶対だ!」
馬車に乗り込み、去っていくセシディに大声で叫ぶジオード。ジオードの後ろ姿を睨みつけるシモーヌ。
「ジオード様、さっきおっしゃた事は、嘘ですよね? 」
「まだ居たのか? お前がいたら、セシディが帰って来れないだろ! さっさと出て行け!!」
「私のお腹には、ジオード様の子供がいるのですよ!?」
「子供などいらん! 俺は子供が、大っ嫌いなんだよ!」
ジオードは子供が嫌いだった。自分の子供が生まれれば変わると思っていたが、あんなに愛していたセシディとの子、アレクシスでさえ愛する事が出来ず、セシディをとられたと感じ、嫌っていた。
「誰か! 誰かいないのか!? この女を、邸から追い出せ!」
シモーヌは使用人達に腕を掴まれ、邸の外に放り出された。
「ジオード様! 門を開けてください! ジオード様ーーーッ!!」
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