13 / 15
シレディ伯爵 ―ダリア視点―
しおりを挟むこんな山奥に1人で住んで、本当に惨めね!
「ライアン、さっさと帰るわよ!」
ライアンはシレディ伯爵家の使用人になっていた。あの邸を離れたくなかったからだ。
そしてそこに、ダリアが後妻として来た。
「こんな山奥にお嬢様をお連れした事が、旦那様に知られたら大変です。急いで帰りましょう。」
どうせライアンも、この子(マリアナ)がお姉様に似てるから大切なんでしょ。どいつもこいつも、お姉様の事ばかり! お姉様は死んでからも鬱陶しい!!
ライアンはマリアナがシュリルに似ているから大切にしているわけではなく、使用人の仕事をしているだけだった。
確かに、マリアナはシュリルを幼くした感じでよく似てはいるが、性格が全く違う。4歳にして、ライアンにはかなりの悪女に思えていた。
ライアンはシュリルの見た目を愛したわけではなく、使用人の自分にも優しく接してくれて、温かい笑顔を向けてくれたシュリルを愛していた。
見た目が似ているからといって、シュリルの代わりだなどとは思わない。
「おかあさまは、ずっと一緒にくらすの?」
マリアナが突然、私の顔を見上げながら言ってきた。お姉様にそっくりなこの子を、私は愛せないでいた。
「どうしてそんな事を聞くの? もちろん、ずっと一緒に暮らすわよ。あなたが、侯爵家に嫁ぐまでは。」
この子は嫌いだけど、いずれ侯爵家に嫁ぐのだから、大切にしなくちゃ。
「でもおとうさまは、もうすぐおかあさまがいなくなるって言ってたわ。」
はあ!? どういう事!?
なんで私がいなくなるの!?
急いで邸に戻り、旦那様の帰りを待っていた。
だけど、いつまで待っても一向に帰って来ない……
旦那様が帰宅したのは、翌日の昼でした。
「旦那様!! 昨日はどうして帰宅されなかったのですか!?」
帰宅した旦那様を問いつめた。
「私が何をしてようとお前には関係ないが、教えてやる。
愛人の所に行っていた。これで満足か?」
愛人……? 今、愛人って言った!?
あんたいくつよ!? 60歳にもなって、まだ愛人を作るなんて……
「愛人なんて、いらないではありませんか。私がずっとお側にいます。」
そう言って、ダリアはシレディ伯爵に寄り添おうとすると、シレディ伯爵はダリアを払い除けた。
「何か勘違いしているようだな。私はお前など愛していない。他の男の愛人だった女を、本気で愛するとでも思っていたのか? 私はただ、子が欲しかっただけだ。」
私だって、こんなジジイを愛してるわけないじゃない! 若くて美しい私が、ジジイの妻になってやったのに!!
「そろそろ、いい頃合いだな。この邸を出て行きなさい。次の妻は、とても美しくて穏やかな性格なんだ。それに、お前みたいな元男爵令嬢とは違い、正真正銘の令嬢だ。彼女と生涯を共にする。それと、マリアナを連れて行く事は許さない。お前だけ出て行きなさい。これは手切れ金だ。」
袋に入った金を、無造作にダリアの足元に投げ捨てた。
「ふざけないで! マリアナは私の子よ!! フーラル侯爵が黙っていないわ!!」
フーラル侯爵とは、マリアナの婚約者の父親だ。
「フーラル侯爵は、既にご存知だ。お前と結婚したのも、マリアナを養子にする為だ。私には息子1人しか居ない。息子の為に、他の貴族と親類関係になりたかった。お前は用済みなんだよ。」
フーラル侯爵は全部承知の上で、莫大な財産を持つシレディ伯爵との縁組を喜んで受け入れた。
「ライアン、この小汚い女をつまみ出せ。」
シレディ伯爵は嫡子を授かった後、他に子が出来ずに悩んでいた。シレディ伯爵には親族がおらず、養子を探していた矢先に子を連れたダリアと出会い、結婚をした。
女性好きなシレディ伯爵だったが、まっさらで純粋な女性が好みだった。他の男の愛人だったダリアを愛する事は有り得なかったのだ。
ライアンは全て知っていたが、ダリアに教えようとはしなかった。シュリルを苦しめたダリアを、許す事が出来なかったからだ。
「またつまみ出されるとは、お気の毒ですね。」
ダリアはライアンを、キッと睨みつけてから金の入った袋を拾い、自ら邸を出て行った。
113
お気に入りに追加
3,923
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる