〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

私はあなたのせいで死ぬ

 毒を用意した私は、レナード様に一言だけの手紙を書きました。

 『私はあなたのせいで死にます。』

 こんな手紙を残した所で、レナード様は後悔も反省もしないかもしれない。
 だけど、少しでも考えて欲しかった。自分がどんなに酷い事をして来たのかを……
 
 お父様の葬儀だったのに、レナード様はお金だけ出して姿を現さなかった。感情はないのでしょうか？
 ダリアは他の愛人達と一緒に、離れに住み着きました。私の悪口を、愛人達と言いながら楽しく暮らしているようです。
 
 コンコン……
 「奥様、少しよろしいですか？」

 ライアン……

 「どうぞ。」

 ライアンは部屋に入るなり頭を下げた。

 「先日は、本当に申し訳ありませんでした！！」

 「頭を上げて。謝る必要なんてないわ。あなたには、本当に感謝してるの。」

 「奥様……」

 ライアンは泣きそうな顔をしている。ずっと気にしていたのね。最後に、ライアンの顔を見られて良かった。
 この邸で、ライアンだけが信頼出来る相手だった。私の事は忘れて、幸せになって欲しい。
 
 「これを持っていてくれない？」

 お父様の形見のペンダントを、引き出しから取り出しライアンに渡す。

 「これは？」

 「お父様の形見よ。レナード様には持っていて欲しくない。だから、あなたが持っていて。」

 「……分かりました！ 大切にします！」

 よほど嬉しかったのか、先程まで泣きそうだった顔が満面の笑顔になった。

 「もう休むわ。」

 「はい。では、失礼します。」

 部屋から出て行ったライアンに、心の中で『さようなら』とつぶやいた。

 ベッドに座り、グラスに水を注ぐ。
 肌身離さずに持っていた毒を口に含み、一気に水で流し込んでベッドに横になる。

 この毒はすぐには効かないようです。天井を見ながら、ここに嫁いで来た日を思い出す。
 あの時は幸せいっぱいで、毎日がワクワクドキドキしていました。あれからそんなに経っていないのに、何十年も何百年も時が経ってしまったように感じます。
 自害するのだから、私はお父様やお母様のいる天国には行けないかもしれませんね。……会いたいです。
 もしも生まれ変わる事が出来たなら、ライアンと……

  な……んだが、眠くなってきま……した……
 もう私は……目覚める事は……ないのですね……
 安心して……眠れます。やっと……この地獄から……かいほ……う……され……る………………



 毒が全身にまわり、シュリルは息を引き取った。