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35、襲撃
しおりを挟むヒヒーーーーーンッッ!!!!
「キャッ!!」
急に勢いよく馬車が止まり、大きく揺れました!
「大丈夫か?」
リオン様は私の体を抱き寄せ、衝撃から守ってくれていました。
「大丈夫です。いったい何が……」
外の様子を見ようとすると、
「殿下! ティアナ様! 敵襲です! 危険ですので、外には出ないでください!!」
護衛の兵が応戦しながら、馬車の中の私達を守ってくれているようです。
敵襲……こんな街中で、襲撃してくる人なんて1人しか思い当たりません。
「エリック様でしょうか?」
「だろうな。エリックを見張っていた兵士からの報告は入っていない。捕まったか、あるいは殺されているかだな。
まさかこのような街中で、堂々と襲って来るとは……」
キーン、キーンと、馬車の外から剣がぶつかり合う音が絶え間なく聞こえて来ます。馬車から外の様子を伺うと、敵は100人以上はいそうです。護衛は20人……相手はならず者や盗賊のようです。20人でも多いと思っていたのに、敵の数が多過ぎて、護衛の方達がおされています。
しばらく大人しくしていたのは、王都へ盗賊やならず者達を少しずつ呼び寄せていたからだったのですね。
「リオン様、申し訳ありません!」
ビリビリビリビリッ!!!っと、私はドレスを太ももまで破きました!
「ティアナ!?」
驚いて目を見開いているリオン様。
「あのままでは動きづらかったので、せっかくいただいたドレスを破いてしまい、申し訳ありません! 私は2度目のチャンスをいただいた時に、強くなると決心したのです。このまま、守られているだけなんて、耐えられません。だから、私は戦います!」
リオン様は、私の頬にチュッとキスをしました。
「え、え、えぇーッ!!」
あまりに突然のキスに戸惑っていると、
「共に戦おう!」
リオン様は私の手をギュッと握り、馬車の扉を開いて2人で外に出ました。
リオン様は腰から剣を抜き、その剣を私に手渡してくれました。
「これを使え!」
剣を受け取ると、リオン様は倒れている護衛の剣を拾い構えました!
「おいおい、王子だけならともかく、お嬢様まで戦う気かよ!? ケガしても知らねーぞ?」
盗賊の頭らしき男が、卑下た笑いをしながら私を見ています。見た目だけで判断すると、痛い目に合うということを教えてあげなければなりませんね。
「あなた達が、ダンカン子爵を手にかけたのですか?」
「そうだ。そして今から、お前の愛する王子もあの世に送ってやる!」
自白するなんて、余程のアホか、それだけ腕に自信があるということですね。
「おい! 時間をかけるな! 援軍が来てしまうぞ! さっさとティアナを捕まえて来い!」
エリック様の声が、少し先に止まっている馬車の中から聞こえて来ました。ご自分は、安全なところから命令するだけですか……つくづく情けないですね。
「へいへい。お嬢様を丁重にお連れしますよ!」
盗賊の頭らしき男は言葉とは裏腹に、大きな剣を勢いよく振り下ろして来ました!
私は剣で、振り下ろして来た剣を受け止めました。
頭上で受け止めはしましたが、さすがに重いですね……
いつまでも我慢比べしていたら、体力が持ちません! 私は少し力を緩め、その剣を左にそらし、男が体制を崩したところで脇腹を斬りつけました!!
「ぎぁぁぁぁぁぁッッ!!」
男は膝を付き、肩で息をしています。急所は外しました。ですが、もう立つことは出来ないでしょう。
「「「お頭!?」」」
盗賊の頭が斬られたことで、他の盗賊達は怒り狂っています!
「このクソアマッ! 俺達のお頭に、何してくれてんだゴラァ!!!」
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