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33、好きな人との食事
しおりを挟む「父上の命について、聞きたいのだったな」
自分で聞いたのに、忘れていました。
「ホークダムへ行っていたのだ。ホークダムの王子が結婚する事になったから、その結婚式に行っていた」
……え?
それのどこが、極秘の命なのでしょう??
「それのどこが、極秘の命だと思っているな?」
コクコクと頷きます。
「極秘の命ではないからな」
「……えっと……?」
「シェイドが勘違いをしただけだ。全く、シェイドはそそっかしいからな」
シェイド様の勘違いだったのですね。
それじゃあ……
「国王様が、激怒されていたというお話は?」
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「よく覚えているな。エリックを裏切ったのは事実だから、何をされても仕方がないと思っていた。だが、今は違う。あいつが君にした事を許せないし、あいつに君は渡せない」
「絶対ですよ? 絶対、何があっても、私を渡さないでください!」
リオン様がエリック様を裏切ったのではありません。私がリオン様を求めているのです。だから、苦しまないでほしいです。
馬車は街で一番大きなレストランの前で止まりました。
「初めてのデートだから、記憶に残るように完璧にするぞ」
差し出したリオン様の手を、しっかりと握りしめてお店の中へ入りました。
お店の中には、お客さんが誰もいません。これって、貸し切り!?
「客はいない方が護衛も楽だから、貸し切りにした」
耳を真っ赤にしてるところを見ると、理由は違うようです。完璧……ということですね。
テーブルに着くと、注文をしていないのに、次々と料理が運ばれて来ます。
「美味しい……」
料理はどれもこれも美味しくて、頬っぺたが落ちそうです。このお店には何度か来た事がありますが、こんなに美味しいと感じるのは、リオン様と一緒だからでしょうか。
「君はすごく美味しそうに食べるな。その顔をずっと見ていたいくらいだ」
食べている所を、じーっと見てくるリオン様。そういえば、リオン様とお茶をいただいた事はあっても、食事をご一緒するのは初めてですね。
「ずっと食べていたら、太ってしまいます。それに、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」
恥ずかしさから、フォークとナイフを置きました。
「たとえ君が太ったとしても、変わらず愛する事を誓うよ」
そんなに見つめないで欲しいです。胸がいっぱいになって、食事どころではなくなってしまいます。
「女心を分かっていませんね。リオン様が良くても、私が嫌です。
大好きな人の前では、いつまでも綺麗な姿でいたいのです」
私の言葉に顔を真っ赤にするリオン様。こちらまで赤くなってしまいます。
この日は、最高に完璧な1日でした。リオン様は、意外と照れ屋だということも知ることが出来ました。こんな日が、ずっと続けばいいのに……
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