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31、エリック様の過去 後編
しおりを挟むエリック様が初めてこの邸に訪れる1年前から、私の事を知っていたようです。
恋をしたエリック様はみるみるうちに元気になり、私に会いに来るまでに準備を終わらせました。
準備というのは、レミアさんと付き合う事……
それはエリック様なりの、私への愛だったようなのです。
私を愛し過ぎて、お父様であるホージー侯爵のようにならないようにと、先に恋人を作り、私だけに固執しないようにする事で、自分を抑えようとしていました。結婚してからも愛人を次々作っていたのは、私への愛が止まらなくなっていたと……
そして私が離縁してくださいと言った事で、ずっと抑えてきたエリック様の本性を出させてしまったようです。
全てにおいて、やり方が間違っています。
これがエリック様の過去と、豹変してしまった理由。私は、エリック様の事を何も知りませんでした。
ですが、この話を聞いた今も、彼を許せそうにはありません。
暴力をふるわれた時の、彼の狂気に満ちた顔が、まだ私の中から消えてくれません。それに、乱暴された時の恐怖と苦痛……絶対に許すことなど出来ません。
「俺もエリックと共に、君達が出会う前から君を見ていた。そして、気付いたらティアナに恋をしていた。エリックの気持ちを知っていたから、見守ることしか出来なかったのだが、君がバルコニーから落ちるところを見て、君は俺が必ず守ると決めた」
時が戻る前から、リオン様は私を見守ってくれていたのですね。
「申し訳ありません! 伝えていなかった事があります!」
リオン様と気持ちが通じ合えたことに浮かれて、肝心な事をお話していなかった!
「伝えていなかった事とは?」
「エリック様も、時が戻る前の記憶を持っています」
あの瞬間に時が戻ったのだから、私が飛び降りた事に原因があるのかもしれない。
「……エリックもか。それならば、納得が行く」
「どういうことですか?」
「エリックは前の時とは、違っていたんだ。あんなに父親を恨んで、自分もそうなるのではと怯えていたのに、2度目は父親を恨んでいなかった。言葉にはしなかったが、態度でそう感じた。
……君は、虐待されていたのか?」
正直、その事はあやふやなままにしておきたかったです。リオン様に知られたくなかったから……でも、嘘はつきたくありません。
「はい。エリック様が愛人を次々に連れて来て、耐えられなくなった私は、離縁してくださいと言いました。その時から、エリック様は別人のように変わられてしまいました。
殴られ、蹴られ、そして……」
その瞬間、リオン様に抱きしめられていました。
「もう言わなくていい。守ってやれなくて、すまなかった……」
耳元で聞こえるすごく優しい声に、心が癒されていきます。ずっとこうしていたいです。
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